孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  武力攻撃と和平交渉 タリバン内に異なる動き

2014-02-24 21:44:19 | アフガン・パキスタン

(2月2日 街角に掲げられ大統領選挙候補者のポスター(写真中央) “flickr”より By UNAMA Multimedia http://www.flickr.com/photos/34736081@N04/12267481245/in/photolist-jG33Mk-jUhCRm-jUf8kn-jUfcxF-jLCDHa-jLDrxz-jLDt4R-kbi3au-kbfMgB-kbgjDe-kha5av-khbQLo-k6FLJz-k6FLj6-k6FKUD-knjXED-knjYyH)

タリバンの分裂につながる可能性?】
アフガニスタン・カルザイ大統領と14年末までの撤退を控えたアメリカとの間はギクシャクした関係が続いていますが、4月5日にはポスト・カルザイを決める大統領選挙が行われます。

一方、大統領選挙と米軍撤退という大きな節目への対応が注目されているタリバンについては、武装闘争路線と和平交渉路線という、硬軟相反するような動きが報じられています。

****アフガン軍:タリバン襲撃で兵士21人が死亡****
パキスタン国境に近いアフガニスタン東部クナール州ガジアバード地区で23日未明、100人以上の武装集団がアフガン軍の検問所を襲撃した。AP通信などによると、軍の兵士21人が死亡、3人が負傷した。旧支配勢力タリバンが犯行声明を出した。タリバンによる攻撃で、アフガン治安部隊側に一度に20人以上の戦死者が出るのは極めて異例。

現地からの報道によると、タリバンはロケット弾などで襲撃し、交戦が数時間にわたって続いた。兵士数人が行方不明となっており、タリバンが人質とした可能性がある。【2月24日 毎日】
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****タリバーン穏健派、政権と和平協議へ 内部抗争の恐れも****
アフガニスタンの反政府武装勢力タリバーンの穏健派グループが、カルザイ政権と和平協議に入ることで合意した。同派指導者が朝日新聞と単独会見して詳細を明らかにした。政権側との直接協議に消極的な指導部と一線を画する動きで、タリバーンの分裂につながる可能性がある。

会見に応じたのは、旧タリバーン政権下で財務相を務めたアガ・ジャン・ムタシム氏。2001年の政権崩壊後も、ゲリラ活動やテロを続けるタリバーンの指導部の有力メンバーだったが、潜伏先のパキスタン南部カラチで10年に何者かの襲撃を受け、その後、トルコに拠点を移して活動している。

ムタシム氏によると、旧タリバーン政権の元閣僚7人や、アフガン国内で戦闘を続けている地方司令官らを含む計19人が2月中旬、中東ドバイに集結。18日にカルザイ政権の代表団とも接触し、和平協議に入ることで合意したという。

カルザイ政権で和平問題を担当する高等和平評議会も22日夜の声明で、接触の事実を確認。近く同グループの代表団と国内外で協議を始めると明らかにした。

和平協議に入る理由についてムタシム氏は、アフガン駐留米軍の駐留期限切れが年末に迫る中、「駐留延長協定への署名を拒むカルザイ氏の決定を評価した」と指摘。

カルザイ氏の後任を決める大統領選が4月に迫るが、「紛争状態のまま選挙を実施しても、問題の根本的解決にならない」と述べ、和平協議を優先させるべきだと主張した。

来年以降もアフガンに米軍の一部を残す方針の米オバマ政権内では、協定に消極的なカルザイ氏ではなく、後任の大統領に署名を期待する空気が広がっていると報じられていた。駐留延長に異を唱えるムタシム氏らと政権側の和平協議が本格化した場合、米側が描くシナリオに影響が出る可能性もある。

タリバーンにとっても、ムタシム氏らの動きが過去最大規模の分派活動となるのは確実。
タリバーン指導部は声明を出し、「ムタシム氏にタリバーンを代表する権限はない。米国とその手下を利するだけだ」と批判した。ドバイでの会合に参加したとされる元閣僚の一人は、潜伏先のパキスタン北西部ペシャワルに戻った後、何者かに暗殺された。路線対立に端を発した内部抗争との見方がもっぱらだ。

アフガン和平をめぐっては、タリバーン指導部が米政府との秘密交渉の末、昨年6月、中東カタールに交渉のための事務所を開設した。しかし、頭越しの動きにカルザイ氏が強く反発し、頓挫した経緯がある。

ムタシム氏は「カタールでの動きは、指導部の一部と米国による交渉だった。我々は外国の干渉を排除し、アフガン人同士で話し合おうとしている。国の平和と安定を求めるという意味では、我々の方がむしろタリバーン本来の理念に近い」と話している。【2月23日 朝日】
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カタールでアメリカとの交渉を狙った勢力とはまた別の勢力による交渉路線のようです。

タリバンの和平交渉参加にはアメリカも賛同するところでしょうが、カルザイ政権がタリバンとの交渉に前のめりになり、“アフガニスタン人同士の話し合い”で15年以降の米軍残留が難しくなるような事態は望んでいないでしょう。

旧タリバン政権崩壊後に消息不明となった最高指導者オマル師については、パキスタン情報機関ISIの保護下にあるという話や、度々の死亡説が流れていますが、これだけ長期にわたり姿を見せず、タリバン組織内にも異なる路線の対立があるということになれば、常識的には死亡しているのでは・・・と思われます。

生きているのか、死んだのかはわかりませんが、少なくとも明確な指導力を発揮できない状況では、今後、タリバン内の分裂の動きが加速することも十分にありえる話です。

危ぶまれる大統領選挙実施
大統領選挙の方は、あと40日ほどに迫っていますが、選挙をめぐる不正の横行やタリバンの妨害など、アフガニスタン国内の状況をNHKは下記のように伝えています。

****特集・アフガニスタン・まもなく大統領選挙****
アフガニスタンではカルザイ大統領の任期が終わることに伴う大統領選挙が4月に行われる。

2001年の同時多発テロ事件。米国は国際テロ組織・アルカイダを匿っているとしてアフガニスタンでの軍事作戦に踏み切り、タリバン政権を崩壊させた。
カルザイ大統領の下で国の再建が図られた。カルザイ大統領は「国際社会とともに大きな一歩を踏み出したい」と述べた。復興は思うように進まず、タリバンが息を吹き返し、治安は悪化の一途を辿っている。

アフガニスタンではカルザイ大統領が国を統治してきたが、復興は進んでいない。
かつて後ろ盾だった米国との関係も悪化。米軍は今年末の戦闘任務終結に向けて撤退を進めている。

今回の選挙には11人が立候補しているが、テロをおそれて屋外で選挙運動を行う候補者の姿はほとんど見られない。
有力候補はアブドラ元外相、ガニ元財務相(かつて世界銀行などで働き国際社会にも顔が広い)、カルザイ元下院議員などがあげられている。

反政府武装勢力・タリバンの脅威が増し、選挙が無事に行われるのか危ぶまれている。タリバンは選挙を否定し、再び厳格なイスラムの教えに基づく国の統治を目指している。

選挙管理委員会の職員が各地に出向き、投票を呼びかけている。クンドゥズ州選挙管理委員会は「皆が選挙に参加しないと子どもたちに未来はない」と話した。

タリバンが選挙妨害を宣言し、大きな懸念となっている。
タリバンスポークスマンが「選挙は茶番で、我々は認めない。我々こそイスラムに基づく国の正当な統治者だ」と電話コメント。
タリバンはクンドゥズ州で投票を呼びかける先頭に立ってきた選挙管理委員長を殺害。厳重な警備が行われている首都・カブールでもテロや攻撃を仕掛け、先月には大使館などが立ち並ぶ地域のレストランを襲撃し、国連職員など21人が死亡した。

国際部隊の撤退が進む中、高まる治安への不安。
新しい大統領に最優先で取り組んでほしい課題として世論調査でも49%が「治安の確保」と答えている。

治安悪化で選挙への参加を断念する人も出てきている。クンドゥズ州で商店を営む男性は前回の選挙では国の復興を願い、希望を抱いて投票したが、今回は「投票に行かない」と言う。
村の住民たちに向けたタリバンからの脅迫状を紹介。男性は「投票に行けばタリバンに知られ、家族全員殺されるだろう」と話す。

投票に必要な有権者登録の証明書が闇で売り買いされている。密売人が投票を諦めた住民から証明書を買い取っている。転売先は候補者の陣営。第三者による不正投票に悪用され、高値で売りさばける。
密売人は「投票をおそれた住民たちが売りに来ている。農村部に治安当局の力は及ばない。逮捕の心配もなく密売を続けられる」と話す。

タリバンによる妨害が拡大している。選挙は予定通り行われる見込みだが、楽観できる状況ではない。
治安上の懸念から約100か所の投票所で「投票は無理」と判断されている。

不正投票をどう防ぐかも課題。前回も不正投票が相次ぎ、カルザイ大統領が再選したものの選挙の正当性が問われ、求心力を失った。

有力候補とされカルザイ路線からの脱却を訴えているアブドラ元外相とガニ元財務相は米国との関係改善を訴え、国際部隊の駐留延長を認めるとしている。
カルザイ大統領の兄・カルザイ元下院議員などカルザイ派の候補が勝利すれば大統領の影響力が残り、米国との関係はぎくしゃくしそう。

現地の政治評論家は「国際社会の支援をいかにつなぎ止めるかが新大統領の課題」と指摘している。
政治評論家・ジャウィードコヒスタニは「誰が大統領になっても最初にするのは外国との関係を再構築すること。国際部隊の駐留延長と国際社会の支援なしで誰も大統領として良い政府はつくれない」と話す。

国際社会は来年までに1兆6000億円余の支援を約束するなど、「アフガニスタンが再び破綻国家となるのだけは避けたい」との思いがある。
新しい大統領には復興の遅れが治安悪化を招くという負の連鎖を断ち切るための確固たる指導力が求められ、カギを握るのはタリバンとの和平だが、候補者の多くはかつて国を荒廃させた軍閥のリーダーなどを副大統領候補に指名し、内戦時に戦火を交えた仇敵との和平は容易ではない。【2月23日 NHK総合[海外ネットワーク] JCCより】
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“新しい大統領には復興の遅れが治安悪化を招くという負の連鎖を断ち切るための確固たる指導力が求められる”とのことですが、誰が選ばれるにせよ、あまり明るい期待が持てないのが現実です。
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