孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  外国戦闘部隊撤退後に向けたガニ新政権 わずかな期待と大きな懸念

2014-12-10 21:28:06 | アフガン・パキスタン

(12月5日の国際ボランティアデーの取り組み かつて150種類以上の野鳥が生息していたカブール近郊のエリアの清掃作業に200名ほどのボランティアが参加したそうです。 政府・国連の支援事業です。
とても素晴らしいことではありますが、正直なところ、「もっと先に取り組むことがあるだろう・・・」という感も。 “flickr”より By undpaf https://www.flickr.com/photos/undpafghanistan/15765530629/in/photolist-q29sZB-q22e79-qipMGn-q29sor-q22RYs-q29rmX-q22iNJ-qipPLH-qipNsv-q22izY-qipRrM-qgiBso-qipNWg-q22mod-pmQ58c-qgiCsu-q22eBY-qipJEF-pmQ9Gx-q2aSt6-qiwt6w-qgiFE1-qgiH6s-pmQ5wD-qiwpy1-qgiBeC-pmAw9j-qipNMi-qipL3k-qipQjg-qipKCn-qipLqK-qizTp8-qipRBr-q22ZTq-qipPqT-qizKWc-q29onF-q5x8YK-qmLUJD-q5pkk1-q5vLHx-pmAviS-qiwsMf-qiwuFf-qf5C6u-q1Qnn8-qket5G-qjf3cd-q1jH8b)

来月1日から1万2500人規模で、アフガン国軍の訓練・支援・助言
このブログでも、これまで何回も“アフガニスタンでは14年末の米軍など外国戦闘部隊撤収を控え・・・”といった記載を行ってきましたが、いよいよその“期限”となりました。

****<アフガン>ISAF司令部が任務終了 カブールで式典****
アフガニスタンで治安維持を担っていた国際治安支援部隊(ISAF)の司令部が8日、任務を終了し、カブールで旗を降ろす式典が行われた。

キャンベル司令官は「アフガン国軍は有能になりつつある。我々は戦闘任務を終え、アフガン国軍を長期に維持するためシステム作りに専念する」と述べた。

式典には、ISAFの任務を担った北大西洋条約機構(NATO)加盟国や、協力国の代表が参加した。NATOなどは、来月1日から1万2500人規模で、アフガン国軍の訓練・支援・助言にあたる「決然たる支援」を開始する。

一方、武装組織タリバンはNATOの戦闘任務終了を狙って攻勢を強めており、8日には南部カンダハルの警察署が攻撃され、5人が死亡した。【12月9日 毎日】
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アメリカ・ヘーゲル国防長官は、反政府武装勢力タリバンの攻勢が強まるなか、現地に駐留する米軍の規模を今後数か月の間は当初の予定よりも1000人多い10800人にすると発表しました。

アフガニスタン軍を後方で支援する欧米の兵力を一定の規模、維持する必要があるとの判断からと見られています。

ドイツ連邦議会(下院)は5日、アフガニスタンから国際治安支援部隊(ISAF)が撤収する2014年末以降も、ドイツ連邦軍850人を駐留させることを賛成多数で承認しています。

【「アフガンを見捨てることはない」】
こうした来年以降の軍事的支援体制と併せて、資金的な支援を含めて、今後のアフガニスタンを支えるための国際的支援体制を整備するための会議が4日、ロンドンで開催されました。

****<アフガニスタン支援会議>汚職撲滅などの改革案支持し閉幕****
アフガニスタンを支援するためロンドンで開かれた閣僚級国際会議は4日、アフガン新政府の汚職撲滅への取り組みなどを柱とした改革案への支持を確認して閉幕した。

アフガン政府が表明した改革案は、汚職の撲滅▽治安状況の改善▽女性の地位向上▽輸出の促進--などが柱になっている。

閉幕の記者会見でアフガンのガニ大統領は「歴史は繰り返さない。我々は過去を克服する」と改革への意欲を表明し、国際社会に支援の継続を要請した。

一方、同じ会見でキャメロン英首相は、安全保障や財政などあらゆる面で国際社会が一致してアフガンを支援していくことを約束した。

ケリー米国務長官は会議で、米政府として2017年に向けた対アフガン特別支援策を承認するよう議会に要請することを約束した。【12月5日 毎日】
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前回会合は2012年に日本とアフガニスタン両政府の共催により、東京で開かれています。

“東京会合では、国際社会が15年までに総額160億ドル(約1兆9000億円)を超える規模の支援を行う一方、アフガン側も民主化や治安改善に向け対応を強化することなどを盛り込んだ東京宣言を採択しており、ロンドン会合では宣言内容の履行状況を確認し、今後の支援計画を話し合った。”【12月4日 時事】 

会議では、“キャメロン英首相は演説で「アフガンを見捨てることはない」と強調。ガニ大統領も「(外国からの)戦闘上の直接支援を二度と必要としなくなるよう望んでいる」と述べた。”【12月5日 時事】とのことです。

新政権:汚職や失政にメスを入れる姿勢も
今後のアフガニスタンが自立できるか否かは、タリバンの問題は別にして、まずアフガニスタン政府自身が“良き統治”を実現できるどうかにかかっています。

この点に関しては懸念を示す向きが多いようですが、そうした懸念の前に、やや期待を感じさせる話題から。

****アフガン大統領、「刷新」強調 就任2カ月、前政権下の汚職にメス****
9月末に就任したアフガニスタンのガニ新大統領が、カルザイ前大統領のもとでの汚職や失政にメスを入れる姿勢を鮮明にしている。

国際社会の支援が今も必要ななか、失われた政府への信用を取り戻すためだ。だが、2カ月近くたっても閣僚は決まらず、危うさも垣間見える。

アフガンの特別法廷は今月11日、前政権下で最大の疑獄事件について決定を出した。巨額の負債を抱えて2010年に破綻(はたん)した旧カブール銀行の不正融資事件だ。

経営陣が預金8億ドル(約940億円)以上を私物化し、カルザイ氏の実兄マフムード・カルザイ氏を含む政界の有力者に乱脈融資をした。

決定では、主犯格の旧経営陣2人の量刑を禁錮5年から15年に引き上げ、マフムード氏やファヒム元副大統領の弟ら融資先の個人や団体の資産を全額返済まで凍結するよう命じた。

ガニ氏が、就任から2日後に事件の再調査を命じる大統領令を出し、特別法廷が再審理をした結果だった。

マフムード氏は「命令は新政権による政治的なものだ」と反発するが、カルザイ氏の威光は色あせつつある。
空港やカブール市庁舎など首都のあちこちにあったカルザイ氏の大型の肖像写真は一斉に撤去された。カルザイ氏自身、退任後に住むために大統領府脇に公費で建てた邸宅を政府に返納せざるを得なくなった。

ガニ氏はほかにも、大量の未決勾留者の存在が疑われていた首都郊外の刑務所を事前連絡なしに訪問し、1カ月以内に全収容者の調査を終えるよう指示。夜間勤務をサボっていると報じられた警察署や公立病院も「アポなし」で乗り込んで幹部の更迭を命じ、政治刷新をアピールしている。

ガニ氏事務所のハバス・ノヤン報道担当は「カルザイ氏を継承した政権と見られたくない。前政権下で国民が失った信頼や希望を取り戻すことが重要」と話す。

政府として、国際的な信頼を回復する必要性に迫られている面も、背景にある。12月には、アフガン支援国の国際会議がロンドンで開かれる。支援をつなぎとめるため、汚職追放や法治の徹底など支援国がカルザイ政権に長年不満を募らせてきた分野で、目に見える成果を出す必要がある。

外交でも、前政権で冷え込んだ関係を立て直そうとする姿勢が見える。
武装勢力を捜して夜間に民家に踏み込む作戦などであつれきが生じ、カルザイ氏が署名を拒んできた米軍の駐留延長協定には、就任翌日に署名。

関係が悪化していたパキスタンも今月14日から初訪問し、「前政権の外交には計画性や戦略がなかった」と批判した。(後略)【11月28日 朝日】
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アフガニスタンの汚職・腐敗体質は世界最低水準にあります。

“世界各国の腐敗や汚職を監視するNGO(非政府組織)「トランスペアレンシー・インターナショナル」が3日に発表した報告書によると、アフガンの清潔度は175カ国・地域のうち172番目だった。清潔度を最高100とした場合のアフガンの指数は12。過去2年に比べ4ポイント上がったとはいえ、これより下位にはスーダンと北朝鮮、ソマリアしかなく、最低水準であることに変わりはない。・・・・国連によれば、アフガンでは国民の半数が公共サービスを受けるために賄賂を払っているという。・・・・”【12月5日 産経】

麻薬対策も全く効果をあげていません。

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ケシ栽培も深刻度を増している。ヘロインの原料となるケシの栽培はイスラム原理主義勢力タリバンの資金源となるため、支援国は農地の代替作物転用を後押ししてきたが、効果は上がっていない。

国連薬物犯罪事務所によれば、今年の栽培面積は昨年比7%増で過去最悪の22万4千ヘクタール。このうち9割近くがタリバンの動きが活発な9州に集中していた。

ケシ畑の除去面積は、昨年より63%減って2692ヘクタールにとどまった。国際部隊の規模縮小後の混乱を見越した農民らが、ケシ栽培に回帰しているとされる。【同上】
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ロンドン会議を前にして“目に見える成果を出す必要”があった・・・という面はあるものの、ガニ新大統領の姿勢に、腐敗と汚職にまみれ、麻薬対策などまともな施策も実行できなかった前政権から少し変わるのか・・・という期待も感じました。

権力対立から政治空白 前途への大きな懸念
しかし、新政権に対する評価は総じて厳しいものがあります。

最大の問題は、混乱した大統領選挙の後遺症で、未だ閣僚の顔ぶれすら決まらないという政治空白が続いていることです。

混乱した大統領選を収拾するため、「挙国一致」の旗印のもと、対立候補だったアブドラ氏が首相格の行政長官として政権入りしましたが、閣僚ポストの配分を巡って両陣営の調整が長引いています。

****アフガンは政治空白を埋めるべき****
アフガニスタン支援国による閣僚級の会合が先週、ロンドンで聞かれた。この国のために大金をつぎ込んでいる60力国以上の支援国にとっては、「カルザイ後」の経済と安全保障の針路を把握しておきたいところだ。

しかしガニ大統領が9月に就任してから2ヵ月以上がたち、イスラム原理主義勢力タリバンやアルカイダの脅威も増しているというのに、いまだに組閣すらできていない。

憲法では新大統領の就任後60日以内に、前閣僚は職務を辞職しなければならないと決まっている。その規定に基づいて、下院は前閣僚職の失効を宣言済みだ。

つまりアフガニスタンには現在、内閣は存在せず、政府にいるのはガニ大統領と、ガニと大統領選を争ったアブドラ・アブドラ行政長官、数名の側近とアドバイザーだけ。

このような政治空白が続けば、国の不安定化は目に見えている。再び内戦に陥る可能性も否定できない。

組閣の遅れはガニとアブドラが対立している証しだ。2人は自分かちが有能で当てにできる政権だと支援国にアピールして資金援助を仰ぐべきときに、足並みの乱れをさらすことを選んだ。

これでは治安の回復も経済復興も無理だろう。

政府が一枚岩で臨まなければ、汚職の撲滅も不可能だ。国内最大の民間銀行、カブール銀行による不正融資問題への対処の甘さにも、指導部の団結の弱さが表れている。

経済的自立を本気で目指しているのかも疑わしい。10年に完了予定だったナグルダムの補修工事はいまだ終わらず、その理由を責任者に問いただすこともしていない。

結果、電力は輸入に依存し、その支払いも支援国に頼ったままだ。国内最大の資源とされるハジガク鉱山の開発は3年以上も遅れている。

トップ2人が国民や国益のために協力しなければ、アフガニスタンは立ち直れない。援助資金もドブに捨てるようなものだ。

カルザイ時代には腐敗まみれの政府に何十億ドルもが費やされた。いったい何の役に立ったのかは今も分からないままだ。【12月16日号 Newsweek日本版】
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ガニ氏とアブドラ氏の権力の二分化・対立は予想されたことではありますし、おそらく閣僚ポストで揉めるだろうとも予測されてはいました。

両氏とも選挙戦では閣僚ポストの見返りを乱発して各方面の協力を仰いだことでしょうが、「挙国一致内閣」ということで、割り振れるポストが半減してしまったことから、ひとつでも多くを確保したい・・・というところなのでしょう。

事情はわかりますが、自立・再建にむけたこの重要な時期に何をやっているのか・・・という失望感は否めません。

国際社会からの支援に寄生して、自身の権益確保にしか関心が向かないような政権であれば、攻勢を強めるタリバンに遠からず飲み込まれてしまうでしょう。かつての南ベトナム政権のように。

一日も早く挙国一致内閣」を樹立して、前政権下で失った国民の信頼や希望を取り戻してほしいものです。

アフガニスタンでは駐留外国軍戦闘部隊の撤収が進む一方、治安が急速に悪化しています。
特に、外国人に対するタリバンの攻撃が目立っています。

首都カブールでは11月27日、イギリス大使館の車両を標的とした自爆テロがあり、英国人ら5人が死亡。同日夜にも外国人が利用するゲストハウスが襲撃されています。

やはりカブールで11月29日、武装集団が国際援助団体の施設を襲撃し治安部隊と交戦し、外国人1人を含む少なくとも2人が死亡しました。【11月30日 毎日より】

こうした攻撃によって外国が手を引けば、腐ったアフガニスタン政府はおのずから倒れる・・・というタリバン側の考えでしょうか。
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