孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

台湾東部地震に示された日台の良好な関係・国民感情 台湾の日本重視へ中国の反発も

2018-02-09 22:40:16 | 東アジア

(羽田グランドスタッフによって、ボールペンで「加油!!take care」と書かれた台湾人乗客の搭乗券 心の琴線に触れる神対応です。【2月9日 Record china】)

台湾東部で6日夜に起きた地震は、日本からの専門家チームも参加して、生存者の救出が時間との勝負になっています。

****地震の死者、12人に=残る5人の捜索急ぐ―台湾****
台湾東部で6日発生した地震の死者が9日、12人になった。花蓮市内の大きく傾いたビルの中から新たに2人が発見されたが、いずれも死亡が確認された。

ビルにはなお5人が取り残されており、救助隊は8日に到着した日本の専門家チームの支援を得ながら捜索を急いでいる。【2月9日 時事】 
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一刻も早い救出を願います。

相思相愛の良好な日台関係
過去の歴史をめぐってとげとげしい感情が浮き出す韓国や中国と異なり、日本による統治を経験した台湾がきわめて親日的なことは今更の話です。

言葉に日本語由来のもがあったり、多くの日本建築が残っているのは当然ですが、文化的にも日本への関心が強く見受けられます。

****親日国【台湾】の日本文化人気がすごい!台湾の生活に溶け込んでいる日本とは****
親日で知られる台湾ですが、実はその親日さは凄まじく、90年代には「哈日族(ハールーズー)」という日本マニアを示す言葉が流行したほど。もちろん今でもそんな日本人気は衰えず、普段の生活のあちこちに日本の面影や文化が見られます。今回は、そんな台湾に溶け込む日本をご紹介します。

台湾語の中に日本語の言葉がある
(中略)そんな台湾語ですが、単語の中にいくつか日本語と全く同じ発音のものがあるのです。例えば、「オートバイ」や「おばさん」。日本語の単語と意味も発音も変わらないので、実際耳にすると驚いてしまいます。

日本ネタがドラマに頻出する
台湾のドラマを見ていると、日本に関する設定が全く入っていないドラマの方が少ないのではないか、と思うほど日本ネタが頻出します。

例えば、主人公が日本からの帰国子女、登場人物が日本語を話せる設定で突然日本語のセリフが飛び出す・・・など、挙げ出したら切りがなくなってしまうほど。台湾の親日さが窺い知れますね。

次は街で見かける、台湾の中の日本です。

街の至るところに日本建築がある
台湾には、1895年から約50年間日本に統治されていた歴史があるため、今でもあちこちに当時の日本建築が残されています。太平洋戦争終結後に台湾を統治した中国の反日運動などにより、取り壊されてしまったものも少なくありませんが、近年こういった歴史的建築物の保存運動が高まっていて、昔の日本建築を利用したカフェなどが若者の集まる人気スポットにもなっています。

日式○○とは?
日本ブームの台湾だけあり、店名に「日式(日本風)」という名前がついているお店がとにかく多い!例えば、「日式弁当」「日式居酒屋」など。(中略)

このように、台湾では色々な面で日本を感じることができ、台湾の人が日本に対して心理的な距離の近さを感じてくれていることにも頷けます。(後略)【1月18日 ガジェット通信】
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こうした台湾と日本とのつながりの強さを、中台統一を目指す中国は複雑な思いで見ています。

****台湾はまさに日本車の天下・・・なぜ台湾人はこれほど日本車を好むのか=中国****
中国と台湾は似ているようで、大きな違いも存在する。たとえば日本に対する感情や、日本製品に対する支持度合いは中国と台湾における違いの1つだ。

中国メディアの今日頭条はこのほど、2017年に台湾で販売された新車のうち、約8割が日本車だったと伝え、なぜ台湾人はこれほどまでに日本車を好むのかと疑問を投げかけている。

記事は、台湾を訪れたことのある中国人ならば「台湾で最も見かけるのは日本車であることを知っている」はずだと伝えつつ、日本車メーカーは台湾の自動車市場をほぼ独占していると主張。

さらに、これはデータでも裏付けられているとし、台湾の自動車市場の2017年1ー11月における新車販売台数のうち、日本車は約8割のシェアを獲得したとし、日本車は台湾でなぜここまで支持されているのだろうかと疑問を呈した。

これに対し、台湾独特の環境が関係しているとし、たとえば台湾は市場規模が大きくないため、中国ほど多くのメーカーが参入していないことを挙げたほか、日本と台湾は経済的に緊密で、台湾人消費者も日本製品を高く評価していることを挙げた。

続けて、台湾での売れ筋車種を見るだけでも日本車の人気ぶりがわかるとし、同期間中における販売台数1位はカローラで、15.5%のシェアを獲得したと紹介。また、販売台数2位から10位まですべてが日本車だったと伝え、実用性が高い車が評価される台湾において、日本車はほぼ市場を独占しているのだと伝えている。【1月18日 Record china】
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もちろん、過去の日本統治の問題を含めて、日本に対する厳しい見方をする国民も一定に存在します。

****台湾民進党の政治家が選挙用PR看板に日本語、ネットで批判浴びる****
2018年1月3日、観察者網は、台湾・台北市会議員選挙の立候補者が、PR用の看板に日本語を記載したことが物議を醸していると報じた。

台湾メディアの3日付報道によれば、台北市会議員選挙に立候補した緑色(民進党)陣営の新人候補が掲示したPR看板で、「題目:我的願望」という中国語キャッチコピーのすぐ下に、「タイトル:私の望み」という同じ意味の日本語が書かれている。

繁華街の西門町に掲げられた大きなPR看板を発見したネットユーザーは、「市会議員になるのに日本語の説明が必要なのか。選ぶのは日本の特別行政区の議員なのか。こんなに日本に媚びる必要があるのか」と疑問を呈したという。

このユーザーはさらに「今回の件が、この政党においてたまたま発生した事件だと認識するならば、それは誤りだ。日本の放射能汚染食品を支持しているし、日本の政府関係者に対して卑しげにひざまずくし、台中では日本の鳥居を復活させようとした。こんな政党の指導のもとで、われわれは国としての体をなしているのだろうか。われわれは今も植民時代にあるとでも言うのか」と批判したという。他のネットユーザーからは「日本で立候補すべき」との声も出たようだ。

問題のポスターを掲げたのは、元台北市議を親に持つ陳彦丞(チェン・イエンチャン)氏。陳氏は「日本留学経験があり、日本語の教師を務めたこともある。これらの経歴が間接的に出馬の動機になったので、看板のキャッチコピーに日本語を加えた」と説明している。【1月4日 Record china】
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台湾の日本への好感もあって、日本側の台湾への好感度も高いものがあります。

****親しみ」「信頼」が過半数=日本人の台湾意識調査****
台湾の大使館に当たる台北駐日経済文化代表処は22日、日本人の台湾への意識調査結果を発表し、「親しみ」「信頼」を感じている人が半数以上に上ったと明らかにした。代表処は「昨年とほぼ同様の傾向で、台湾に対する国民感情が引き続き良好であることを示す」と歓迎している。
 
調査結果によると、台湾に「親しみを感じる」が69.0%。歴史的に親密な関係や、東日本大震災時の支援を理由に挙げた人が多かった。「信頼できる」と答えた人は57.9%。

一方、日台間の懸念については「漁業問題」(23.2%)、「領土問題」(13.7%)という回答が続いた。【2017年12月22日 時事】 
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安倍晋三首相が直筆でエール 蔡英文総統は日本語でメッセージを返す
一般的には“相思相愛”ともいえる異例なほど良好な日台関係にありますので、今回地震についても日本側からの見舞い・支援も自然な形で生じています。(もちろん、首相の支援などは、政治面も配慮したものでしょうが)

****安倍首相が直筆で「台湾加油」、台湾メディアが評価****

2018年2月8日、首相官邸は、6日夜の地震で多数の被害が出た台湾に向けて「全力を尽くして支援を行っていく」とのメッセージをフェイスブック上に掲載した。

安倍晋三首相の署名が入った「台湾加油(台湾頑張れの意)」の文字が添えられており、中国・観察者網は台湾メディアがこれを評価したことを伝えている。

この地震では複数の建物が倒壊するなどし、多数の死傷者が出ている。メッセージは被害に遭った人々に見舞いの意を伝えるなどした上で、東日本大震災で日本が台湾から受けた支援への謝意を表明。最後は「日本政府として(中略)全力を尽くして支援を行ってまいります」という言葉で締めくくられており、これに添えられたのが、毛筆で書かれた「台湾加油」だ。

台湾・中央社は「安倍首相が就任後、初めて『直筆の書』という形で台湾にエールを送った。しかも一目瞭然だ」と評価。

また、中華圏のネットユーザーからは「日本の思いやりに感謝します」「安倍首相はかっこいいし、文字もきれい」「ありがとう日本!」などのコメントが寄せられていた。【2月8日 Record china】
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安倍首相の見舞いに応えて、台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は日本語でメッセージを返しています。

****「台湾加油」とエールを送った安倍首相、蔡総統が日本語でツイート****
2018年2月9日、環球時報は、地震で大きな被害の出た台湾に安倍晋三首相が直筆でエールを送ったことに対し、台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が日本語でメッセージを返したと報じた。

(中略)これ(安倍首相の見舞いメッセージ)に蔡総統がツイッター上に日本語で「このような困難な時の人道救助は台日双方の友情と価値観を体現するものだと思う」などとつづったことを伝えた上で、「日本が台湾に『特別な対応』をするのは日本が津波で被害を受けた時に台湾から大きな支援を受けたためだ。台湾が送った義援金の額は世界のどの国・地域よりも多かった」との分析が台湾メディアから出ていることを指摘した。【2月9日 Record china】
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【「台湾独立分子の目には、中国は敵で日本は身内と映っている」】
中国側には、中国からの支援の申し出が断られたのに、なぜ日本だけが・・・という反発も。

****日本特別扱いに中国反発=台湾地震の救援めぐり****
台湾東部の地震で、蔡英文政権が中国ではなく日本の救援チームを受け入れたことに中国国内で反発が出ている。共産党機関紙・人民日報系の環球時報(電子版)は8日、「大陸を拒絶しながら日本の援助を受けるのか?」と題する記事を配信した。
 
環球時報によると、台湾総統府報道官は8日、救援の人員や物資は足りていると説明し、中国などの援助を辞退しながら「唯一の例外は日本だ。高価な探査機を持っている」と発言した。日本の救援チームは8日、震源地に近い花蓮で、傾いたビルで人命探査装置による捜索活動を始めた。
 
中国ではもともと、台湾独立志向の民進党・蔡政権への警戒心が強い。中国のインターネット交流サイト(SNS)は、今回の地震で改めて浮き彫りになった日台の親密ぶりに「台湾独立分子の目には、中国は敵で日本は身内と映っている」などと台湾を非難する書き込みであふれている。
 
中国メディアは、安倍晋三首相が毛筆で「台湾加油(頑張れ)」と慰問のメッセージを書いたことも併せて伝えている。【2月9日 時事】 
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中国の申し出を断っておきながら・・・という不満はわかりますが、“日本は身内”かどうかはともかく、台湾の武力統一もちらつかせ、折にふれて台湾への政治的・経済的圧力をかける中国に対し、台湾が“中国は敵”といった反応を示しても不思議はないでしょう。

台湾問題を最大の“核心的利益”とする中国の立場はありますが、世界を敵に回して、本気で武力統一に乗り出す考えがあるのならともかく、そうでないなら、現在のような“一つの中国”にこだわるより、台湾を独立国として容認する方が、将来的中台統一には早道であるように思います。

“二つの中国”として容認したうえで、同族国家として良好な関係を構築していけば、台湾側の中国への感情も変わります。

中国の国際的影響力は、今後は現在以上に強まりますので、台湾としても中国と一体化するメリットは十分に認識していくことでしょう。何と言っても民族的つながりがありますので。

そのような関係を続ければ、30年後、50年後には、熟した柿が落ちるように、一体化に向けた動きも現実となるのでは・・・・。今のように“力づくで”という対応では、離れていくだけでしょう。

国民レベルで示された日本からの支援
今回の台湾地震への日本からの支援は安倍首相のメッセージに限らず、ひろく国民的な形で展開されています。

****羽田空港で台湾人旅行者が大感激!搭乗券に「加油!」のメッセージ*****
2018年2月8日、台湾・TVBSは、台湾人旅行者が日本で大感激する出来事があったと報じた。

同メディアが取り上げたのはネット上に投稿された羽田空港でのエピソード。投稿者は「今日(8日)、台湾に戻るために羽田空港で搭乗手続きをしたら、グランドスタッフが搭乗券に『加油!(頑張って)』と書き込んでくれた」と報告。記事に付された写真には、ボールペンで「加油!!take care」と書かれた2枚の搭乗券が写っている。

これを見たネットユーザーからは「もし自分がこれを見たら絶対に涙ボロボロ」「日本に感謝、台湾頑張ろう」などのコメントが寄せられたという。

また、別の台湾人観光客は大阪の家電量販店で「台湾での震災に心よりお見舞い申し上げます」「台湾頑張れ、皆様のご無事をお祈りいたします」とのメッセージが掲げられているのを見つけて感激したと報告。

この報告に対してもネットユーザーらは「ありがとう日本」「台湾と日本は仲の良い友人!」「台日友好」などの声を上げているという。【2月9日 Record china】
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****日本のヤフーで台湾東部地震の募金、台湾ネットユーザーが感謝****
2018年2月8日、台湾・アップルデイリーによると、台湾東部で起きた大規模地震で、ポータルサイト大手のヤフー・ジャパンが7日、被災者への義援金募集を始めたところ、初日だけで約5万3000人が参加した。

ヤフーは特設ページ「台湾東部地震 緊急支援募金」の募集ページを開設。1口500万円を上限に支援を募ったところ、7日午後5時半までに約5万3000人が参加し、計4187万円が集まった。募金活動は今月末まで行われる。

この情報が台湾で伝えられると、台湾のネットユーザーからは「日本の友好に感謝します。この世界に一番足りないのは、誠意と思いやりです」「日本は台湾の良い友達です」「ありがとう、日本!台日友好!」「募金ありがとう、日本。こんなに台湾を気にかけ、救援隊まで送ってくれて」「日本のさまざまな援助に感謝します。もう災難が起きませんように」などのコメントが寄せられた。【2月9日 Record china】
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地震は不幸な災害ですが、こうした形で支援の手を差し伸べることは、とてもすばらしいことです。

日本側について言えば、きわめて良好な関係にある台湾に対する支援は自然な流れですが、そうした関係のない、日ごろ政治的に対立しがちな国の不幸にも同様に人道的な配慮を示せるかどうかが、度量の大きさ・民度の目安となるでしょう。
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