孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  国民からもアメリカからも期待されない政府  撤退希望のトランプ氏 米軍再編も

2019-12-25 22:32:01 | アフガン・パキスタン

(【1129日 BBC】1128日、トランプ大統領は感謝祭に合わせてアフガニスタンの米軍基地を訪れ、タリバンとの和平協議を進めていると明らかにしました。)

 

【国民の期待の小ささを示す低投票率】

9月に投票が行われ、「あの選挙の結果は一体どうなったのだろうか?」との疑問もあった、あるいは、選挙が行われた自体が忘れ去られていた感もあるアフガニスタンの大統領選挙。ようやく「暫定結果」が発表されました。

 

****現職ガニ氏、過半数獲得=アフガニスタン大統領選暫定結果―不服申し立て紛糾も*****

アフガニスタンの選管は22日、大統領選(9月28日投票)の暫定結果を公表し、現職のガニ大統領が当選に必要な過半数の票を獲得したと発表した。選管は今後、最終結果を発表予定で、その時点でガニ氏の得票が過半数に達しなければ決選投票が実施される。

 

選管によると、ガニ氏は全体の50.64%を獲得。政権ナンバー2のアブドラ行政長官が39.52%で続いている。投票率は20%弱とみられ、治安への不安から、6割弱だった前回より大幅に低下した。候補者は今後3日間、不服を申し立てることができる。

 

暫定結果は当初、10月19日に発表が予定されていた。しかし、選挙の公正さを疑う声が相次ぎ、票を数え直した影響などで2度も延期された。ガニ氏は22日、暫定結果発表を受け「われわれは国家の結束に向け前進している」と演説した。

 

アブドラ氏は投票日直後の9月30日、一方的に「わが陣営の得票が一番だ。決選投票にはならない」と宣言、選管がこれを否定して緊迫した。不信感は今も解消されていない。

 

アブドラ氏は22日の声明でも「暫定結果を拒絶する」と表明した。不服申し立てを行うとみられ、事態は紛糾する恐れがある。

 

ガニ氏とアブドラ氏は、2014年の前回大統領選で決選投票を争ったが、アブドラ氏が不正を理由に選挙結果を認めず、アフガンは一時、国家分裂の危機に陥った。ガニ氏が、新設したナンバー2の行政長官にアブドラ氏を任命して権力を分け合う形で混乱を収束させた経緯がある。

 

国連アフガン支援団(UNAMA)トップの山本忠通事務総長特別代表は声明で、暫定結果が公表に至ったことを歓迎。最終結果公表を前に「アフガンのすべての当事者は、選挙を完遂する責任を行動で示さなければならない」と強調した。【1222日 時事】

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50.64%”・・・・決選投票なしで決まる過半数ギリギリ。微妙な数字ですね。

上記にもあるように、前回、そして今回の投票直後のアブドラ氏の対応からして、すんなり了承するとは思えません。

 

まあ、「もし不正をするなら、こんなギリギリの数字ではなく、もっと都合のいい数字にするだろう・・・」という勘繰りもあり得ますが・・・・

 

誰が当選したかより重要なのは、投票率が20%弱(暫定で18.8%)だったという点でしょう。

タリバンの妨害で選挙がまともに行えない状況にあること、国民も選挙結果に殆ど期待していないことの現れです。

 

****アフガン政府、続く苦悩 ガニ氏2期目に前進も投票率過去最低****

アフガニスタン大統領選(9月投票)で現職のガニ大統領が暫定結果で過半数を得票した。再選が正式に決まれば、2期目の政権は治安や経済など国内の混乱をいかに収束させるかが課題となる。

 

イスラム原理主義勢力タリバンは攻勢を強めており、安定実現は見通せない。再開された米国とタリバンの和平協議に立ち合いすらできない状況も変わらず、苦悩は続きそうだ。(中略)

 

ただ、待ち受けるのは苦難の道だ。投票率は暫定的ながら18・8%で過去最低。2004年の第1回大統領選では70%を超えており、低下が続く。

 

「和平が実現するかが国民の最大の関心事。政府への期待は低く、(有権者は)選挙に関心がなかった」とは政治評論家のモハメド・ハキヤール氏の分析だ。タリバンが大統領選を「国民を欺くもの」と批判し、投票所への攻撃を宣言したことも低投票率の一因となった。

 

国内ではタリバンなど武装勢力の伸長で政府の支配領域が減少を続け、国土全体で政府の支配や影響力がおよぶ地域は6割に満たない。4日には日本人医師、中村哲さん(73)が殺害される事件も起きたように、治安の悪化は深刻だ。

 

政治家や公務員の腐敗も批判の的で、国際NGO(非政府組織)が汚職の状況を指数化した「腐敗認識指数」によると、アフガンは180カ国・地域の中で172位だ。「こうした課題に政府は打つ手立てがない」と外交筋は話す。

 

“国民の最大の関心事”である和平についても、ガニ氏は「政府抜きにはありえない」と主張するが、米国とタリバンの協議に参加できない状態に変化はない。

 

タリバンの報道担当者は20日、政府を含めアフガン国内の勢力との和平協議については「米軍の完全撤退が完了するまで行われない」との姿勢を改めて表明した。

 

ソ連のアフガン侵攻から24日で40年を迎え、続く混乱に国民の疲労は蓄積している。「それでも政府が平和と安定をもたらすという期待は小さい」(ハキヤール氏)といい、求心力拡大は容易ではなさそうだ。【1225日 産経】

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【「アフガニスタン・ペーパーズ」・・・・アフガニスタンに強力な中央政府を作ろうとしていたが、それは愚かな政策だった】

これまでアフガニスタン政府を支援してきたアメリカの歴代政権も「アフガニスタンは失敗だった」との認識を持ちながら、そのことを隠蔽しつつアフガニスタンに関与し続けてきた実態が、内部文書でも明らかにされています。

 

*****アフガン文書公失敗を隠蔽実態解明求める声強まる *****

アメリカの有力紙が、アフガニスタンでの軍事作戦や復興支援をめぐり、アメリカ政府高官らが失敗を認識しながら、国民に隠蔽していたとする内部文書を公表したことを受け、議会は文書をまとめた特別監察官に証言を要求するなど、実態の解明を求める声が強まっています。

 

この文書は、アメリカ政府の特別監察官室が18年にわたって続く、アフガニスタンでの軍事作戦や復興支援に関わった政府高官や軍の幹部らに聞き取り調査した際の2000ページにわたる証言記録をアメリカの有力紙、「ワシントン・ポスト」が入手し、公表したもので、ベトナム戦争の内実を記録したアメリカ国防総省の機密文書、「ペンタゴン・ペーパーズ」になぞらえて、「アフガニスタン・ペーパーズ」と呼ばれています。

文書には多くの当局者が作戦が失敗だったことを認識し、成果が上がっているように装うため、意図的に不利な統計データの隠蔽や改ざんが繰り返し行われていたことが記されています。

国防総省は「文書はいずれ公表される予定で、国民に隠蔽するつもりはなかった」と釈明していますが、議会からは文書に登場する政府高官らを議会に呼んで証言させるべきだとの声が上がっています。

議会下院の外交委員会は、来年の初めに、文書をまとめた特別監察官を議会に呼んで公聴会を開催することを明らかにしていて、アメリカ国内では、実態の解明を求める声が強まっています。

 

失敗認識しながら見せかけの成果を強調

アフガニスタンでの軍事作戦と復興支援をめぐって、アメリカの歴代大統領や政府高官は、長年にわたり成果はあがっていると強調してきましたが、アフガニスタン・ペーパーズには、多くの当局者が失敗だったと認識していたにもかかわらず、見せかけの成果ばかりが誇張されてきたことが赤裸々に記録されています。

 

<失敗の認識>
▽ブッシュ政権とオバマ政権で、ホワイトハウスの軍事顧問を務めたダグラス・ルート退役陸軍中将は2015年に行われた聞き取り調査に対し「アフガニスタンに関する根本的な理解が欠けていた。われわれは何をやろうとしているのか分かっていなかったし、何の考えも方向性もなかった」と証言しています。

▽また、国務省でアフガニスタン政策を担当したジェームス・ドビンズ元特別代表は、2016年の調査で「われわれは紛争の絶えない国家に侵攻し、平和的な国家につくりかえようとしたが、アフガニスタンでは明らかに失敗した」と述べ、失敗を率直に認めています。

▽アフガニスタンの復興支援が失敗した理由について、国務省の当局者は「われわれはアフガニスタンに強力な中央政府を作ろうとしていたが、それは愚かな政策だった」と述べ、各地の部族が大きな力を持つ現地の実情を無視した国造りを進めた結果だと指摘しています。

18年間に及ぶ軍事作戦と復興支援のために、およそ1兆ドルが投じられたとの研究機関の分析を念頭に、ブッシュ政権とオバマ政権でアフガニスタン担当上級部長を務めたジェフリー・エッガー氏は、2015年の聞き取り調査で「1兆ドルを投じてわれわれは何を得られたのだろうか? 果たして1兆ドルの価値があったのだろうか? オサマ・ビンラディンは、アメリカがどれだけの資金をアフガニスタンに投じたのかを考えて、きっと墓の中で笑っているだろう」と述べ、巨額の資金に見合う成果は得られなかったと指摘しています。

<データ改ざんや隠蔽>
また、文書には軍事作戦の成果があがっているように装うため、意図的に不利な統計データの隠蔽や改ざんが繰り返し行われていたと記録されています。(後略)【1214日 NHK】

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「われわれはアフガニスタンに強力な中央政府を作ろうとしていたが、それは愚かな政策だった」・・・大統領選挙の投票率が20%弱という実態は、こうした認識を裏付けるものでもあります。

 

ただ、ではどうすればいいのか・・・・という問いかけには、答えがわかりません。

 

【米タリバンの和平交渉を妨害する勢力】

アメリカの対応はある意味簡単です。なんとか理由をつけて撤退すればすむ話ですから。

 

もはやアフガニスタン政府に期待もしていないアメリカは、アフガニスタン政府抜きのタリバンとの直接交渉を断続的に続けてきました。

 

そうしたアメリカ・タリバン交渉を妨害するように、9月に続き、再びタリバンによる米兵殺害が。

 

*****タリバンの襲撃で米兵1人死亡 アフガニスタン*****

アフガニスタンで22日夜、駐留米軍の車列が旧支配勢力タリバンの攻撃を受け、その後発生した戦闘で米兵1人が死亡、数人が負傷した。米軍が明らかにした。

 

タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官は23日、メッセージアプリ「ワッツアップ」で、タリバン戦闘員らが「北部クンドゥズ州で米軍車両を爆破した」と述べ、犯行を認めた。

 

今回の襲撃は、現在進行している米国とタリバンの和平交渉に影響する可能性が高い。9月にアフガニスタンの首都カブールでタリバンが実行した爆破攻撃で米兵1人が死亡した際には、ドナルド・トランプ米大統領が交渉は「死んだ」と述べて協議を打ち切っている。

 

その後、協議はカタールの首都ドーハで再開されたが、今月カブール北方にあるバグラム空軍基地で新たに爆破攻撃が発生して以降「一時中止」されていた。

 

今回の襲撃の前日には、今年928日に実施されたアフガニスタン大統領選の暫定結果を選挙管理委員会が発表し、現職のアシュラフ・ガニ氏が半数を超える票を獲得したと明らかにしていた。タリバンはこれまで、ガニ氏が米国の言いなりになってきたとの見解を示している。 【1223日 AFP】AFPBB News

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交渉がまとまりそうになると起きる米軍への攻撃・・・・おそらくタリバン内部に和平をめぐる路線対立があり、和平を望まない勢力が和平交渉の進展を妨害するために行っているのでは・・・・とも想像されます。

 

そうした勢力に打撃を与えるためには、交渉を中断することではなく、和平を実現することであるようにも思うのですが。

 

****トランプ米政権、タリバンとの和平思惑通りにいかず アフガン情勢****

トランプ米政権は、アフガニスタン大統領選でガニ大統領が再選の運びとなったのを受け、引き続きガニ政権とアフガン和平に向けた取り組みを進めていく考えだ。しかし、アフガン北部クンドゥズ州では23日、駐留米軍の兵士1人がイスラム原理主義勢力タリバンとの戦闘で死亡するなど、和平協議が米政権の思惑通り進展する保証はない。(中略)

 

アフガニスタンなどでの「終わりなき戦争」の終結を公約に掲げるトランプ大統領は、タリバンとの和平を模索。昨年7月からの和平協議では、駐留米軍の大規模撤収や「包括的停戦」で合意寸前に達していたが、今年9月にタリバンが米兵を殺害したことを理由に協議を打ち切った。

 

だが、トランプ氏は11月28日、アフガンを初訪問し、「タリバンは停戦を求めている」と述べ、和平協議を再開させた。

 

米政権が9月に和平協議を打ち切ったのは、当時のボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)ら一部のホワイトハウス高官が合意内容はアフガン情勢の不安定化につながる恐れが高いなどとして合意締結に反対したためでもある。

 

しかし、ボルトン氏はその後間もなくして辞任。来年の米大統領選で再選を目指すトランプ氏としては、米軍撤収の公約を果たして有権者の支持の上積みを図るため協議再開に踏み切った可能性がある。

 

しかし、米政権は今月13日、タリバンがアフガンの首都カブール北郊にあるバグラム米空軍基地に攻撃を仕掛け、70人以上を死傷させたとして、協議の一時中断を表明。米政権としてはタリバンのペースで和平協議が運ばれることのないよう慎重に対応していくとみられる。【1225日 産経】

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【アフガニスタンを含めて世界規模で進む米軍再編】

16日には“米政権、アフガン駐留米軍4000人撤収を今週発表か 報道”【1216日 AFP】という報道がありましたが、その後一部撤退のニュースは見ていません。

 

“早ければ今週にも”撤収発表があるのでは・・・との記事でしたので、少しずれこんでいますが、これから・・・ということでしょうか。

 

単にアフガニスタンだけの問題ではなく、米軍の世界戦略としても、見直しが進むようです。

 

****米軍、世界規模で再編を検討か 対中ロ、西アフリカ削減****

米紙ニューヨーク・タイムズは24日、国防総省が西アフリカに駐留する米軍の大幅な削減・撤退を検討していると報じた。

 

トランプ政権が大国間競争の相手と位置付ける中国、ロシアに対抗するための措置で、世界規模での米軍再編の第1段階となる可能性があるとしている。

 

削減した兵力を中ロ対応に充てるとみられる。同紙はアフリカでの駐留見直しに続き、中南米、その後、イラクやアフガニスタンでの駐留軍の削減が進むとの見通しを伝えた。

 

トランプ大統領は再選がかかる来年11月の大統領選に向け海外駐留米軍の縮小を進めたい考えで、大規模再編と同時並行で進める可能性がある。【1225日 共同】

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