孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型肺炎  「日本は災難が降りかかった他国をあざ笑ったことはこれまでに一度もない」中国ネット

2020-01-28 22:58:59 | 疾病・保健衛生

(日本のドラッグストアなどの店先や商品棚に「中国頑張れ、武漢頑張れ」と書かれた張り紙 
「中国中国メディアの新浪新聞の中国版ツイッター・微博アカウントは27日、「中国人が日本各地で見た涙を誘う光景」を紹介した。」【1月27日 レコードチャイナ】)

【メンタル的に追い詰められている武漢市民】
新型コロナウイルス肺炎に関するニュースが溢れていますが、そのなかで一番印象的だった記事が下。

****窓開けて「頑張れ」と励まし合う武漢市民、医師「危険だからやめて」****
新型コロナウイルスによる肺炎が発生した中国湖北省武漢市で、市民の間で集合住宅の窓を開けて「加油(頑張れ)」などと声を上げて励まし合う動きが出ているようだ。 

中国版ツイッターの微博(ウェイボー)には、こうした様子を撮影した動画がいくつか投稿されており、「涙が出てきた」「悲しくなってくる」「なんとか助ける方法はないのか」「遠く海外からも応援したい」「落ち着いて」「感染拡大につながる」「気持ちは分かるが支持できない」など、さまざまなコメントが寄せられている。 

また、中国のネット上では「武漢市民は27日午後8時に一斉にベランダの窓を開けて国歌を歌おう」とする呼び掛けも拡散されていた。 

こうした動きについて、中国共産党中央政法委員会のウェイボー公式アカウントは、「武漢市民の気持ちはよく分かるが、飛沫(ひまつ)感染したら割に合わない」などと自制を求めている。 

中国紙・環球時報の公式アカウントも、医師の話として「とても危険だ。唾液などの飛沫が飛散するし、人は歌う際に深呼吸をする。建物間の飛沫も風で運ばれてくる」などとし、「窓を開けて歌うのを今すぐやめよう」と促している。【1月28日 レコードチャイナ】
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「窓を開けて歌う」ことの危険性はともかく、“市民の間で集合住宅の窓を開けて「加油(頑張れ)」などと声を上げて励まし合う動きが出ている”というあたりに、隔離状態にある武漢市民のメンタル的に追い詰められた状況が示されています。

拡大する感染者、不足する物資・食糧、外出もできない状況、何よりも、先が見えない状況・・・不安に駆られて、何かせずにはいられない気持ちがよくわかります。

“新型肺炎に乗じてマスクを10倍の値段で販売! 薬局を摘発―天津市”【1月28日 レコードチャイナ】の類の記事も連日目にしますが、この類はどこの世界でも、日本でもある話です。

1974年、日本の店頭からトイレットペーパーが消えた「第1次オイルショック」の狂乱物価のさなか、某大手石油会社が「石油危機は千載一遇のチャンス」と社内文書に書いていたことが発覚して、大批判を受けて社長は辞任しました。

【情報隠蔽は上級部門の判断】
感染が拡大した背景に、武漢市当局の消極的な情報公開(“隠蔽”と言うべきか)があったことは以前のブログでも触れましたが、そこには省や中央政府など上級部門の判断があったことをうかがわせる市長発言も。

****新型肺炎 “情報公開の遅れ 上級部門の判断も” 中国 武漢市長****
新型コロナウイルスの感染拡大が最も深刻な中国、湖北省武漢の周先旺市長は、国営の中国中央テレビの番組にマスク姿で出演しました。

この中で周市長は、武漢の街を事実上封鎖した措置について、「1000万を超す人口の都市で都市を封鎖するのは人類史上例のないことだ。われわれは歴史に汚名を残すかもしれないが、感染を抑え込み、人々の生命の安全のためになるならば、市民に批判されてもやるべきだと考えた」と述べました。

そして、情報提供の遅れが批判されていることはわかっているとしたうえで、「理由の1つは、伝染病の情報は、法律に基づいて、情報を得たあとに許可を得てからでないと公開できないからで、この点は理解してほしい」と述べ、情報公開の遅れの中には市の判断ではなく、湖北省や中央政府など上級部門の判断によるものもあることを明らかにしました。【1月27日 NHK】
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中央政府からの指示となると、習近平政権の責任も問われます。

上記記者会見と同じ会見なのかどうかはわかりませんが、マスク姿で会見ということに関しては下記のような記事も。

****新型ウイルス、湖北省の当局会見にネットで批判 世論の怒り押さえきれず****
新型コロナウイルス流行の中心地となっている中国中部・湖北省と同省の省都武漢市の幹部が26日に開いた記者会見が、中国のインタネットユーザーらによってやり玉に挙げられている。
 
テレビ中継された会見には、同省の王曉東省長ら当局者3人が登場。しかしまず、武漢では公共の場所でのマスク着用が義務付けられたにもかかわらず、王省長自身がマスクを着けずに会見を行ったことに多くのネットユーザーが反応した。さらに武漢市の市長もマスクを裏表逆に着けていた。
 
中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」ではユーザーらが「市長もマスクの着け方を知らないのに、一般人が知っているわけがないではないか?」「無能で無責任な政治家たち」といった批判の声を上げた。
 
さらにネットユーザーらは、王省長が同省のマスクの年間生産数を間違え、108億枚から18億枚、最後は108万枚に3度も言い直したことを攻撃。あるユーザーは「湖北省の省長のくせに、どうしたら湖北省のマスクの生産数を知らないでいられるのか?」と疑問を突きつけた。
 
政府当局に対する批判コメントは通常削除される中国で、大量動員によるオンライン監視でも押さえきれずに世論の怒りが漏れ伝わるのは珍しい。 【1月28日 AFP】
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中国世論の怒りも湧き立っているようです。

【WTO 事務的なミス?】
武漢・湖北省当局の対応も疑問ですが、世界の危機管理元締めWTOの対応にも不思議な話が。

****新型肺炎の世界的危険度、WHOが事務的ミス…「中程度」から「高い」に修正****
世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルスによる肺炎に関する26日付の日報で、世界的に見た危険度を「中程度」としてきたこれまでの表記は誤りで、正しくは「高い」だったと修正した。事務的なミスで、判断の変更を意味するものではないという。
 
WHOは、中国を中心に感染が拡大している新型コロナウイルスの現状について日報を出しており、危険性について、25日までは「中国は非常に高い、周辺地域は高い、世界的には中程度」としてきた。しかし実際には22日の判定以降、世界的な危険度は「高い」だったという。【1月28日 読売】
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“事務的なミス”・・・・世界の危機管理元締めの最も基本的な情報にそんなミスがあるのだろうか?とも思いますが、ミスというものは、往々にしてそんなものでしょうか。
まさかそんなところにミスが起きるとは誰も思わないので、誰もチェックしなかった・・・ということでしょうか。

もしそういう話なら、非常に教訓的な話で、例えば核兵器管理などについても、「あり得ないミス」が実際には起こり得るということです。

【収束は当分先?】
今後については、すぐには収束しそうにないことを指摘する記事も。

****新型コロナ“武漢市だけで25万人以上に”****
イギリスの大学などの研究チームは、新型コロナウイルスの感染者数が来月4日に武漢市だけで25万人以上に達するとの推計値を明らかにした。

人から人への感染について、1人が平均3.8人に感染させる可能性があるとも指摘している。これはWHO(=世界保健機関)が公表した数値を上回っている。【1月28日 日テレNEWS24】
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****新型肺炎「ピークは4、5月」 香港大の試算**** 
香港メディアによると、香港大の梁卓偉・医学院長は27日、中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の発症者について25日現在、武漢市だけで2万5000人を超え、潜伏期の感染者も含めると約4万4000人に上る可能性があるとする試算結果を発表した。

今後、感染者は重慶や北京、上海、広州などで急増した後、4、5月ごろにピークを迎え、6月ごろから減少するとの見方を示した。試算結果を世界保健機関(WHO)に報告するとしている。【1月27日 産経】
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少なくとも、“報告されている感染者数は氷山の一角”(WHO緊急委員会のメンバーである喜田宏北海道大特別招聘教授)【1月28日 共同】というのは間違いなさそうです。

【中国ネット「今回の日本の対応は本当に素晴らしい」】
そうした状況にあって目に付くのが、日本国内の対応に関して中国ネットの好意的な評価に関する記事。

****日本の厚生労働省が新型肺炎感染者の国籍非公表に=中国ネット「これぞ文明国家」「なんだか日本のことが…」****
中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が拡大する中、厚生労働省が日本国内で感染が確認された患者の国籍を明らかにしなかったことが、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)で大きな注目を集めている。 

日本国内で3例目の新型コロナウイルス感染者(30代女性)が確認された25日の会見で、記者から感染者の国籍に関する質問が出た際、担当者は「厚生労働省の立場としては、感染者が2次的に日本国内で感染を拡大させないことが大きな目的で、この目的と国籍は関係ないと考えている。人権侵害にもつながるので公表は避けさせていただきたい」とした。 

この対応は、中国のネットユーザーの関心を集めている。新浪新聞の微博アカウント・微天下の関連の投稿には800件近くのコメントが寄せられており、「素晴らしい」「理性的だ!」「日本人は公正で客観的!」「これぞ文明国家、人権の尊重だ」「日本は考え方がしっかりしているなあ」「筋が通っている。重要なのはウイルスの拡散を防ぐことで国籍や地域とは関係ないよ」「これは称賛しないと。ありがとうございます」といった声が多くの共感を集めている。 

中には、「それに、マスクを値下げしたりして武漢を応援してくれている。なんだか日本のことがそんなに嫌いじゃなくなってきた」「今回の件で日本への好感度がだいぶ上がった」というユーザーも見られた。 

なお、産経新聞などの報道によると、厚生労働省は日本国内で感染が確認された患者の国籍についてはいずれも非公表としている。【1月27日 レコードチャイナ】
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****中国人が日本各地で見た涙を誘う光景「前は日本が大嫌いだったけど…」****
中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスへの感染者が拡大する中、日本の店に貼り出された中国を応援する貼り紙が中国のネット上で話題になっている。 

中国メディアの新浪新聞の中国版ツイッター・微博(ウェイボー)アカウントは27日、「新型肺炎との戦いがますます激しくなる中、何人もの中国人観光客が日本各地で涙を誘う『マスク商品棚』を撮影した」と投稿。

ツイートに付された写真には、日本のドラッグストアなどの店先や商品棚に「中国頑張れ、武漢頑張れ」「We Love China」などと書かれた紙が貼られている様子が写っている。 

新浪新聞は、「この一つひとつの言葉に無数の中国のネットユーザーが涙した」と伝えた。さらに、日本の民間から支援物資として100万枚のマスクが送られたことにも言及し、「ありがとう皆さん!」とつづっている。 

これについて、中国のネットユーザーからは、「ありがとう」「とても感動したよ」「日本の友人に感謝(泣)」「今回の日本の対応は本当に素晴らしい」「ほとんどの日本人は善良なんだ。ありがとう!」など、称賛や感謝の声が上がった。 

また、「日本は災難が降りかかった他国をあざ笑ったことはこれまでに一度もない」「四川大地震の時、最初に駆け付けてくれたのも日本だった」といった声や、「前は日本が大嫌いだったけど、武漢に身を置く今、本当に感動している」という声も。さらには、「日本、待ってろよ。いつか必ず行くからな。富士山のため、浅草寺のため、波多野先生のため、それ以上に、今回の中国への応援に応えるために」という声も寄せられている。(後略)【1月27日 レコードチャイナ】
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もっとも、“静岡のラーメン店が中国人観光客を追い出す”【1月28日 レコードチャイナ】という報道もありますが、これについても中国ネットでは意外にも、「中国国内でも武漢人を避けている。日本人が中国人を避けるのも驚くことじゃない」など、店側の対応に理解を示すものがほとんどだったとか。

****「こんなことしてくれるの日本だけ」=日本政府の対応に感謝と称賛****
中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が拡大する中、日本政府の対応に中国のネットユーザーからまたしても称賛の声が上がった。 

日本政府は現地に在留する邦人を避難させるための民間のチャーター便を手配しているが、往路の機内には現地の人々へ提供するマスクなどの支援物資を積み込むという。中国側との調整により、チャーター便は29日以降に現地へ向かうことになるそうだ。 

この情報を中国メディアの環球時報などが伝えると、中国のネットユーザーからは「感動した」「ありがとうございます!日本は本当に温かい」「こんなことしてくれるの、日本だけだよ」「この恩は忘れない」「助けてくれる方、一人ひとりに感謝」「中国人は昔から恩とあだははっきり区別するんだ。ありがとう」「ポイントは今回の中国への支援について、いつも言い争いをしている日本の国会でほとんど反対の声がなかったこと。これはすごいと思う」「騒動が静まったらきっと(日本に)旅行に行くよ。私一人のお金なんて微々たるものだろうけど、気持ちだけ」といったコメントが寄せられた。 

中国のネット上ではこれまでにも、日本の民間から現地に100万枚のマスクが寄付されたこと、厚生労働省が「人権侵害になる」と感染者の国籍を非公表としていること、日本政府が新型肺炎を「指定感染症」に決定して外国人も含む治療に公費が投じられること、日本各地の店で「中国頑張れ、武漢頑張れ」と書かれた貼り紙が見られることなどが伝えられ、日本に対する称賛や感謝の声が相次いで投稿されている。【1月28日 レコードチャイナ】
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ただ、一部には誤解も。

****日本の報道を誤解か、中国で間違った情報広がる―中国メディア****
2020年1月28日、中国のニュースサイトの国際在線によると、中国のSNS上で27日、中国の新型肺炎について伝える日本の情報番組のキャプチャー画像を添えて「日本が医療関係者約1000人を武漢に派遣」とする間違った情報が拡散されているという。 

国際在線によると、キャプチャー画像は、27日放送の「情報ライブ ミヤネ屋」(読売テレビ系)のもの。同番組では、中国で感染が拡大している新型肺炎について中国の衛生当局の担当者が会見を開き、医療関係者約1000人を武漢に派遣したと明らかにしたことについて、説明テロップの1行目で「“新型肺炎”中国政府が会見」、2行目で「医療関係者約1000人『武漢に派遣』」と伝えた。 

国際在線は、テロップの2行目について、「日本語では主語が省略されることがよくある。『医療関係者を派遣』の主語は1行目の『中国政府』だが、そそっかしいネットユーザーが、日本が医療関係者を派遣すると誤解してしまったようだ」と伝えている。【1月28日 レコードチャイナ】
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何はともあれ、日本に対する印象が好意的なものになることは、今回の不幸な出来事のなかでは、歓迎すべき数少ないことのひとつでしょう。

「日本は災難が降りかかった他国をあざ笑ったことはこれまでに一度もない」という評価は、大切にしたいものです。

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