孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型コロナで世界の労働者の8割に打撃 2億人が失業も ベーシックインカムを導入する国も

2020-04-12 22:31:04 | 経済・通貨

(日本の有効求人倍率と完全失業率の推移【4月1日 朝日】 21年は一気に2本の線がクロスする可能性が濃厚です)

【着飾って「ごみ出し」】
最近目にした面白い記事。

****世界各地で外出制限、着飾れる唯一の機会は…ごみ出し!****
新型コロナウイルス対策による都市封鎖で、一日中家に居てうんざり…そんな世界各地で他者の気分を明るくしようと、写真を撮って共有し始めたものがある。それは特別に着飾っての「ごみ出し」の様子だ。
 
オーストラリア・シドニー在住のDJ、ビクトリア・アンソニーさんは「家でドレスアップするなんて本当にどうかしていると思うけど、この封鎖の間に正気を保つにはこれしかない。おしゃれしてごみ箱をがらがら外に出すと、ハッピーな気分が戻ってくる」と話した。
 
アンソニーさんはインスタグラムに、カクテルドレスを着た自身の写真に「#」というハッシュタグを添えて投稿した。(中略)
 
「たくさんの人の気分を明るくする」ことができてうれしいと語った(流行の火付け役の)アスキューさんの元には、落ち込んだり新型ウイルスにおびえたりしていたというユーザーらから、アスキューさんのページを見て笑顔になれたというメッセージが届いているという。 【4月10日 AFP】
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目を吊り上げて、あるいは不安に怯えて「自粛、自粛」ばかりでは息が詰まります。
カクテルドレスに着飾ってゴミ出し・・・そんな心の余裕がいいですね。

【2億人近くが失業する可能性への対策なしには感染予防も成立しない】
しかし現実世界に目をやると、そうも言っていられない厳しい現実も。

****「われわれは働きたい」=ブラジルで隔離反対デモ―新型コロナ****
ブラジル最大都市サンパウロの中心街パウリスタ通りで11日夜、新型コロナウイルス対策としてサンパウロ州政府により実施されている隔離措置に反対するデモが行われた。参加者らは、通りを車でふさぎ、「ドリア知事は辞めろ、われわれを働かせろ」とシュプレヒコールを上げた。
 
参加者らは通信アプリや口コミでデモを知ったといい、主催者によると、車1000台とオートバイ2000台、トラック200台が加わった。

国旗を振って隔離措置解除を訴えた教師チコ・ペンチアドさん(53)は「このままでは経済は2、3カ月で崩壊する。効果と犠牲をはかりに掛けると、こんな措置は見合わない。隔離は高齢者だけでいい」と語った。
 
新型コロナの感染者2万人以上、死者が1000人を超えているブラジルではサンパウロをはじめ、ほとんどの州で商業活動などが停止。市民は外出自粛を求められている。経済への打撃は深刻化しており、国内企業の99%を占める零細・小企業の3割は1カ月で事業閉鎖に追い込まれるとの調査がある。
 
世論調査では8割が隔離措置を支持しているが、ボルソナロ大統領は「雇用が破壊され、人々は餓死する」などと主張し、隔離に反対する態度を変えていない。

大統領に反発する市民は毎日午後8時半になると、自宅の窓から突き出した鍋をけたたましく打ち鳴らし、抗議の意思を示している。【4月12日 時事】
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ちょっと“変わった” ボルソナロ大統領と外出制限措置を強める州政府の対立、厳しい制限が暴動・略奪にもつながりかねない国情などについては、3月26日ブログ“ブラジル 州政府の外出禁止措置に反対するボルソナロ大統領 国情を考えると配慮すべき点も”でも取り上げました。

ブラジルに限らず、「働かないと生きていけない」という貧困層が存在することも事実であり、「自宅にとどまって」と規制を強める政府はそうした人々への配慮も不可欠です。

そうでないと、「可能性の小さいコロナ感染での死」か「確実なコロナ失業での飢え」かの選択になってしまいます。
「働かないと生きていけない」者には、自宅にとどまり危機をやり過ごすような「贅沢」は許されない現実も。

東京都が休業要請の対象になったインターネットカフェで寝泊まりをしていた人など、新型コロナウイルスの影響で居場所を失った人にホテルなど一時的な宿泊場所を提供するようですが、そういった配慮も必要でしょう。

新型コロナ対策で大量の失業者が発生する事態はもはや避けられない様相ともなっています。

****新型ウイルス、世界の労働者の8割に打撃 2億人が失業も****
新型コロナウイルスの影響で、世界中の33億人の労働者の81%が、職場の全面的または一部閉鎖に直面している。
日常生活における様々な制限により、多くの企業は閉鎖を余儀なくされ、労働者は解雇、あるいは一時的な解雇に見舞われている。

国連の国際労働機関(ILO)(中略)のガイ・ライダー事務局長は、「先進国でも発展途上国でも、労働者や企業が破壊的状況に直面している。(中略)我々は、迅速かつ断固たる行動を共に取らなければならない。適切な緊急措置が、生き残りと崩壊を分けるだろう」と述べた。

2億人近くが失業する可能性も
新型ウイルスのアウトブレイクにより、2020年の第2四半期中に、世界中の労働時間の6.7%が消滅するとみられる。これは、1億9500万人のフルタイム労働者が職を失うことに相当する。

最も被害が大きいのは、労働時間が8.1%(フルタイム労働者500万人分に相当)減少するアラブ諸国と予測されている。

ILOは、第2次世界大戦以来の「最も深刻な危機」としている。

ILOは、2020年中に、世界の失業者数が最終的に増加するかどうかは、2つの要因に大きく左右されるだろうと付け加えている。
その2つの要因は次の通り。

・世界経済が下半期にどれだけ早く回復するか
・政策措置がどれだけ効果的に労働需要を押し上げるか

今年末の世界の失業者数が、ILOの当初予測の2500万人を大幅に上回る危険性が高い。

宿泊サービスや製造業に大打撃
経済の異なる分野が、突然の仕事の落ち込みにより様々な打撃を受けている。
移動が最小限に抑えられ、社会生活が中断されていることから、宿泊業や飲食業はもちろんのこと、製造業や卸売・小売業者、不動産業が最も影響を受けている。

これらの分野では、世界の労働人口の38%近くにあたる、12億5000万人が雇用されている。
失業リスクが最も高い労働者は北米と欧州に集中

リスクの高い仕事に就いている人の割合は、世界各国でかなり異なっている。
北米では労働者の43.2%が、欧州と中央アジアでは42.1%が、リスクの高い分野で働いている。

これらの地域に比べ、アフリカやアラブ諸国、アジア太平洋地域では、非正規労働者の数がはるかに多く、労働力の大半を占める。

非正規労働者は、特にインドやナイジェリア、ブラジルなどの国で、経済において重要な役割を果たしている一方で、正規労働者に付与される社会保障などが受けられない。

ILOのライダー事務局長は、「これは、75年以上にわたる国際協調における最大の試練だ。一国が失敗すれば、私たち全員が失敗することになる。私たちは国際社会のあらゆる分野や、とりわけ最も弱い立場にある人々、あるいは自分自身を守れない人々を助ける解決策を見つけなければならない」と述べた。【4月8日 BBC】
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****世界の貧困層、新型コロナで約5億人増の可能性=オックスファム****
国際非政府組織オックスファムは9日に公表した報告書で、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響により、1日1.90ドル以下で生活する貧困層が約5億人増えるとの見方を示した。

オックスファムは、新型コロナの感染拡大を受けて明らかになりつつある経済への打撃は、2008年の世界金融危機時よりも深刻だと指摘した。

世界銀行が設定する貧困ラインを採用し所得が20%減少するという最も深刻なシナリオを想定した場合、1日1.90ドル以下で生活する極めて貧しい人は4億3400万人増え、9億2200万人に増加する見通し。5.50ドル以下で生活する人は5億4800万人増え、40億人近くに達するという。

女性は、雇用に関する権利がほとんどないなどの理由から、男性よりも貧困に陥るリスクが高いという。

オックスファムは「豊かな国は今回の危機で、自国の経済を下支えするため数兆ドルという規模の資金を活用できることを示している」と指摘したうえで「発展途上国が健康や経済への打撃に対応できない限り、危機は続き、豊かな国と貧しい国、全ての国がより大きな打撃を受ける」と強調した。【4月9日 ロイター】
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自国だけ混乱からのがれようとしても、貧しい国が多い世界全体の混乱が収まらないかぎり、大きく制約を受けます。

国家レベルの「協調」が必要とされていますが、各国は自国の対応に追われ、まだその気運は高まっていないのも現実です。

【大富豪の寄付 国家レベルの「ベーシック・インカム」】
個人レベルでは、以下のような話も。

****ツイッターCEO、1100億円を新型コロナ対策に拠出 総資産の28%****
米ツイッターの共同創業者で最高経営責任者のジャック・ドーシー氏は7日、新型コロナウイルス対策として、総資産の約28%に相当する10億ドル(約1100億円)を自身の慈善基金を通じて拠出すると発表した。
 
ドーシー氏は一連のツイートで、共同創業したデジタル決済サービス「スクエア」の所有株を、自身の有限責任会社「スタート・スモール」に譲渡すると表明。
 
ドーシー氏は、「なぜ今か? ニーズは緊急度を増している。生きているうちに(支援の)影響を目にしたい」と投稿。自身の行動が他の人々を感化することを期待しており、「人生は短い。だから、人々を助けるためにきょうできることは全部しよう」と呼び掛けた。
 
他のIT起業家らも、それぞれの金額で支援を表明している。
 
米アマゾン・ドットコムのジェフ・ベゾスCEOは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)に伴い、食料支援として1億ドル(約110億円)の寄付を表明。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは、マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏の慈善団体「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団」を通じて、研究支援として2500万ドル(約27億円)超を提供した。 【4月8日 AFP】AFPBB News
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国家レベルの国内対策として注目されるのは、「ベーシック・インカム(最低所得保障制度)」制度導入の動きです。

****スペインで「ベーシック・インカム」導入、経済大臣が宣言****
新型コロナウイルスの感染者数が世界2位に達したスペインは、経済の立て直しに向け、可能な限り迅速に「ユニバーサル・ベーシック・インカム(最低所得保障制度)」制度を導入することを決定した。

4月5日、経済大臣のナディア・カルビニョが発表した新たなスキームは、終了期限を設けずに導入されることになる。カルビニョは現地メディアの取材に対し、感染拡大の脅威が去った後も、ユニバーサル・ベーシック・インカム制度は継続すると述べた。

予算規模などの詳細は未定というが、政府は既に導入に向けた調整を進めている。感染拡大による経済的ダメージからの復興に向け、スペインのペドロ・サンチェス首相は3月17日、2000億ユーロ(約24兆円)の支援策を発表していた。

支援策には1000億ユーロの政府による信用保証のほか、企業に対する無制限の流動性供給などが含まれていたが、ユニバーサル・ベーシック・インカムでこれを補完する狙いがあるとみられる。

スペインではロックダウンの開始から3週間で90万人が失業し、3月の失業者数は過去最大を記録していた。

カルビニョ経済大臣は現地メディアLa Sextaの取材に「ユニバーサル・ベーシック・インカムの導入に向けた手続きは、非常に煩雑なものになるが、我々のチームは決意をもって取り組んでおり、可能な限り迅速に導入する」と述べた。

スペインにおける新型コロナウイルスの感染者数は13万人を突破し、死者は1万2600人を超え、欧州ではイタリアに次ぐ規模の被害を受けている。ただし、全土にわたるロックダウンを4月26日まで延長することを決めたスペインでの死者は、イタリアやフランスと並んで減少傾向にあり、わずかな希望の光が見えつつある。【4月8日 Forbes】
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下記記事によれば、上記スペインの対応は、全国民ではなく低所得層を対象としたもののようです。

新型コロナに感染したボリス・ジョンソン英首相も、一時的措置ではあるものの、全国民に最低限の所得を保障する「ベーシック・インカム(BI)」を検討する考えを示しています。

****コロナ危機により、ついにベーシック・インカムが実現する可能性****
<各国で何度も議題に上がりながら、机上の空論のイメージを拭えなかった「最低所得保障」だが、真剣に導入を検討する国が現れ始めた>

ボリス・ジョンソン英首相が、全国民に最低限の所得を保障する「ベーシック・インカム(BI)」を検討する考えを示したことが話題となっている。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一時的な措置ではあるが、主要国がこの制度について本格的に議論するのはおそらく初めてだろう。

スペインも低所得者に限定した形だが、コロナ対策の一環として、最低限の所得を保証する制度について検討を開始している。

BIは経済的に豊かな欧州の小国を中心に以前から議論されており、2016年にはスイスが導入について国民投票を行ったこともある(結果は否決)。フィンランドでは17年から2年間の実証実験を行っており、オランダでも同様の実験が行われた。

BIでは最低限の所得が常に保障されるので、経済危機などで多くの人が一時的に仕事を失っても、安心して当面の生活を続けることができる。新しいビジネスにもチャレンジしやすくなるので、推進論者はBIを導入しても経済に悪影響を与えないと主張している。

一方で、労働者の就労意欲がなくなり、経済が低迷することを危惧する声も根強い。フィンランドの実験では、BI実施前後で就労状況に大きな変化はなかったので、限定された範囲内であれば、就労意欲の低下はそれほど心配しなくてもよいのかもしれない。だが何といっても最大の懸念材料は財源だろう。

財政目標棚上げの可能性
フィンランドのケースでは1人当たり月額560ユーロ(約6万7000円)を配るというものだったが、仮に日本において全成人(20歳以上)に月額7万円を配ると仮定すると、毎年88兆円もの財源が必要となる。

日本政府の一般会計予算は約100兆円しかないので、今のままでは到底不可能だが、一方で、日本は一般会計とは別に、年金に約52兆円、医療に43兆円、介護に10兆円、合計105兆円の社会保障関連支出を行っている(一部、一般会計と重複)。

年金受給者にBIを支給しなければBIの給付金額は58兆円に減らすことができ、BIの給付を月5万円にするとさらに41兆円まで下がる。それでも医療制度を自助努力型に変えるなど、根本的な歳出見直しを実施しない限り日本での導入は難しいと思われる。

ジョンソン首相が言及したのは一時的な措置なので、金融危機や今回の感染症のような事態が発生したときだけこの制度を発動する形にすれば、国によっては財政との両立が可能かもしれない。

もっともアメリカは今回のコロナ対策として、現金給付を含む2兆ドル(約220兆円)規模の経済対策を検討しているし、イギリスも休業者に賃金の8割を2500ポンド(約32万5000円)を上限に支給するプランを発表した。日本政府も金額は小さいが、現金給付を実施する予定である。

これまでBIに対しては、机上の空論というイメージも強かったが、非常時における期間限定の措置ということになると話は変わってくる。やり方によっては、いわゆる従来型BIと現金給付の違いは限りなく縮小するので、BIの定義そのものについても再検討が必要かもしれない。

筆者自身は金利上昇という日本にとって最悪の事態を回避するためにも、長期的な財政目標の維持が不可欠との立場だが、最近では消費減税を求める声が大きくなっており、財政目標が一時、棚上げされる可能性も高まってきた。大幅な財政拡大が国民の総意として許容されるのであれば、BIの導入についても一気に道筋が開けてくるだろう。【4月9日 Newsweek】
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もちろん問題も多々ある「ベーシック・インカム」でしょうが、マスク2枚で揉めている国では、「ベーシック・インカム」の議論など遠い世界の話ですね。

コメント
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