孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

現在の欧米中心の感染拡大は「悲劇の序章」か 今後アフリカ諸国、途上国貧困層などで感染爆発も

2020-04-17 23:07:14 | 疾病・保健衛生

(多くの人が普段通り外出しているリオデジャネイロの貧民街=13日午後【4月17日 朝日】)

【アフリカ地域で今後感染者1000万人?】
****新型コロナ死者14万人超す 感染者210万人に****
米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、新型コロナウイルス感染症による死者が16日、世界全体で14万人を超えた。15日に13万人を上回ったばかり。感染者も16日に世界全体で210万人を超え、増え続けている。
 
世界保健機関(WHO)の16日付状況報告によると、死者の68%は欧州地域事務所管内(トルコや旧ソ連諸国を含む)に集中。死者数が3万人を超え最多の米国は一国で約20%を占めており、欧米での被害拡大が依然として顕著となっている。
 
米国は世界で唯一、死者が3万人を上回り、2万2千人のイタリア、1万9千人のスペインなど欧州各国が続く。【4月17日 共同】
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現在は上記のように欧米を中心としていますが、今後は医療資源が未整備なアフリカ諸国・途上国において更に桁違いに拡大するものと思われ、それに比べれば現在の状況は「悲劇の序章に過ぎなかった」ともいえるレベルなのかも。

****アフリカ地域の新型コロナ感染、3─6カ月で1000万人=WHO****
世界保健機関(WHO)は16日、アフリカ地域の新型コロナウイルス感染者数は向こう3─6カ月で1000万人に膨れ上がる恐れがあると警告した。

ただ、WHOのアフリカプログラムの緊急対応責任者、マイケル・ヤオ氏は記者会見で、こうした予測は暫定的なもので、感染動向は今後変化する可能性もあると指摘。

エボラ出血熱の感染が拡大した際は人々が行動を変えたため最悪のシナリオは回避できたことに言及し、「公衆衛生面での措置が完全に実施されれば実際に効果が出るため、長期的な見通しを提示するのは難しい」と述べた。 

アフリカ地域の新型ウイルス感染件数はこれまでのところ約1万7000人、感染による死者数は約900人と、世界の他の地域と比べると抑制されている。 

ただWHOのマシディソ・モエティ・アフリカ地域事務局長は、感染は連日拡大しているとし、「地域的な感染拡大を懸念している」と述べた。

モエティ氏はまた、トランプ米大統領がWHOへの資金拠出の停止を決めたことについて、ポリオ、マラリア、HIV感染症など他の疾病への対応が阻害されるとし、「ポリオウイルス根絶などに大きな影響が及ぶ」と述べた。【4月17日 ロイター】
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感染件数はこれまでのところ約1万7000人・・・・検査態勢が整っていないアフリカ諸国にあっては、実態とはかけ離れた数字なのかも。

いずれにしても、ウイルスがアフリカで拡大しにくい特段の理由がない限り、爆発的な感染拡大は不可避であるように思われます。あるいはすでに水面下で始まっているのかも。

【途上国貧困層に深刻な感染リスクと「食べていけない」現実】
ウイルス感染拡大防止のための外出制限等の措置は、日本や欧米でも経済活動の停止という激痛を伴うため議論を呼ぶところですが、経済的基盤が弱いアフリカ諸国を含めた途上国では、先進国以上に難しい判断となります。

先進国では「命の問題か、それともカネか」という言われ方をしますが、日本など先進国にあっても、そういう議論は経済問題の持つ重要性を軽視しているように思います。

日本にあっても失業率が仮に20%、30%といった事態になれば、事業倒産や借金を苦に自殺といった話だけでなく、例えば持病に関して十分な治療がうけられないなど経済的困窮に由来する直接・間接の死亡者がコロナ死亡以上に増大すると思われます。

途上国にあっては、更に切実です。「コロナ感染のリスクか、より確実な収入途絶による餓死か」といった問題にもなります。

加えて、そういう地域にあっては衛生環境・居住条件が悪く、「感染のリスク」も先進国よりはるかに大きく、いったん感染が広がれば手がつけられない状況になることが予測され、更に対応が困難になります。

****感染200万人、新興国危機的 医療・補償、行き届かず 新型コロナ****
新型コロナウイルスの世界の感染者が15日、200万人を超えた。今月3日に100万人に達したばかりで、新興国や途上国でも流行が拡大している。

こうした国々で貧しさにあえぐ人たちは、政治の恩恵から漏れる憤りや、感染の危険、生活苦に震えている。

 ■貧困層「見捨てられた」
13日、ブラジルの最大都市・サンパウロの貧民街にある公立の医療センター前で、Tシャツやサンダル姿の男女が集まっていた。

感染が拡大するなか、狭い自宅を出て、風通しの良い路上で過ごすためだ。住民団体の代表は「すでに15人の感染が確認された。感染して亡くなった人も8人いると疑っている」と話す。
 
状況は第2の都市・リオデジャネイロでも同様だ。感染者が出た貧民街に住む主婦マリルセ・マリアさん(38)は「各家屋に最低5人は住んでいる。1人が感染すれば全員にうつる」。
実家では、れんがを積んだ約50平方メートルの2階建てに家族14人が暮らす。せっけんや水道のない家もある。

感染拡大を招く「密集」「密接」「密閉」がそろった環境で、感染症の専門家は地元紙に「貧民街で感染が広がれば、致死率は格段に上がる」と指摘する。

ただ、住民の懸念は感染の危険より明日の食事だ。地方政府が出した外出自粛要請で、多くの人が仕事を失った。 

ブラジルの15日時点の感染者は2万8320人、死者も1736人で、いずれも中南米で最多。だが、検査は重症者や医療関係者らにしか行われておらず、複数の研究機関が、実際の感染者は公表数の12~15倍になるとの試算を発表した。
 
それでも、ボルソナーロ大統領は「社会的隔離はブラジル経済を壊す」と訴え、買い物に出たり、支持者と間近で写真を撮ったりする姿をツイッターに投稿。地方政府による自粛要請と矛盾する内容で、社会に混乱が広がっている。
 
政権は仕事を失った低所得世帯に1人あたり月600レアル(約1万2千円)を支給し始めたが、システムの混乱で、受給できない人は少なくない。サンパウロの貧民街に暮らす家政婦フェルナンダ・ソウザさん(37)は「子連れ家族が、この額で暮らせると政府は思っているのか。私たちは見捨てられた」と嘆いた。
 
トルコでも、エルドアン大統領が経済への影響を考慮し、21~64歳の主な生産年齢層には外出禁止を課していない。

労働者は公共交通機関で出勤を続け、3月11日に国内で初めて確認された感染者は1カ月余りで7万人近くまで急増した。

世界的な感染拡大による国内景気の減退を受け、政権は、近く企業に従業員の解雇を3カ月禁じる法律を成立させる予定という。
 
だが、トルコに約358万人いるシリア難民は労働許可なしで働く人が多く、この法律では保護されない。
イスタンブールでアパートを借り、旅行会社で働いてきたシリア難民のムナフさん(32)は先月すでに解雇を告げられた。母語のアラビア語を生かし、アラブ諸国の旅行客の通訳をしてきたが、感染拡大を受けた国際線の停止で仕事がなくなったためだ。
 
難民たちはこれまでも、低賃金で長時間働く便利な存在として、企業の雇用調整弁とされてきた。ムナフさんは「コロナ危機の終息を祈るしかないが、危機が去っても僕の将来には何の保障もない」と嘆く。
 
古里を離れ、避難キャンプ暮らしを強いられている人々はより悲惨だ。イラク北部シェイハン郊外のキャンプでは、過激派組織「イスラム国」(IS)に迫害された少数派ヤジディ教徒ら約1万5千人が生活する。イリヤス・ハデルさん(29)は妻子3人と約30平方メートルのテントに住む。
 
イラクは全土に外出禁止令が出されており、ほとんどの支援団体がキャンプから一時的に撤収した。政争による政治空白が続くことに加え、最近の原油価格の暴落で、政府に避難民らを支える余裕はない。
 
キャンプ内で感染者は報告されていないが、移動制限の影響で、住民は日雇い仕事にも行けない状態という。政府の食料配給が頼りだが、マスクや消毒液はない。イリヤスさんは「一人感染すれば、キャンプは大混乱だ」と不安がる。(後略)【4月17日 朝日】
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【インドの巨大スラムでも】
アジア最大規模のスラムが存在するインドでも非常に懸念されるニュースが。

****インド最大のスラム街に新型コロナ拡大、感染者・死者共に増加****
インド・ムンバイにあるアジア最大規模のスラム街ダラビで、新型コロナウイルスの感染者数が43人に増え、死者は4人となった。当局が12日、明らかにした。同国では感染拡大の抑止を急ぐため、検査数を増やしている。
 
約100万人が密集して暮らすダラビは、2008年に米アカデミー賞を受賞した映画『スラムドッグ$ミリオネア』の舞台として有名になった。
 
今月初旬に初の死者が出て以来、インド当局はこのダラビ内で、感染が確認された地区を封鎖する措置を強化してきた。
 
だがムンバイ市は12日、前日の11日から新たに15人の感染と1人の死亡を報告。同スラムの感染者数は計43人になったと発表した。
 
同市によると、無症状の感染者を特定するため、過去数日間に複数の検査場が設置され、「結果、陽性の症例が増えた」という。
 
市は11日、AFPの取材に対し「より多くの新型コロナウイルス検査を行い、無症状の感染者を放置しないために、ダラビ内およびムンバイ各地に大規模な医療拠点を複数設置している」と話していた。
 
また地元当局は10日以降、公共の場の往来を減らすため、ダラビ内の「感染抑制区域」周辺の薬局以外の店舗をすべて閉鎖している。 【4月13日 AFP】
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感染者数が43人・・・実態よりは桁違いに少ない数字にも思えますが、すくなくとも今後は桁違いに増加するでしょう。

そのときどうするのか?地区全体を封鎖すれば、この地区の貧困者は餓死を余儀なくされます。
インド政府に貧困者の生活を支援する余力があるのか?
対策を取らなければ、感染は13億人インド全体に拡散する恐れも。

インドではユニークな対応も。

****インド、寝台車両を隔離施設に改造 最大32万人を収容****
輸送距離が6万キロ超と世界有数の「鉄道大国」インドで、新型コロナウイルスの感染者が急増して病院のベッド数が足りなくなる事態を防ごうと、鉄道省が寝台車両の隔離施設への改造を始めた。2万車両を造りかえ、32万人を隔離できるようにする計画だ。
 
世界銀行によると、人口1千人当たりの病院のベッド数は日本13・4、中国4・2に対し、インドはわずか0・7。すでにスポーツスタジアムや結婚式場、ホテルなどを隔離施設として利用しているが、人口13億人の国にとって十分とはいえない。

日本の支援で進める新幹線事業の一環で西部グジャラート州に建設した研修施設も、隔離施設として利用されるという。特に農村部では医療施設が乏しく、対応が急務となっている。
 
そこでモディ政権が目をつけたのは、英国の植民地時代に整備が進んだ、国内に約7300カ所あるという鉄道の駅。庶民にとって身近な場所である駅や車両を活用することを決めた。

現在、3月末から始まったインド全土での都市封鎖で、鉄道は運休中。感染者数が増えてベッドが足りない場所に、車両を移動させることができる。
 
寝台車両のベッドをそのまま使い、医療器具を使えるよう改造、整備する。ただ「窓を開けて空気循環をよくするため、冷房がついていない車両が対象」(鉄道省)だといい、すでに気温40度を超えているインドの酷暑を車内でどう緩和するかが課題となる。
 
同省担当者のナライン氏は「竹製のマットで日よけをするなど、快適な環境を工夫する。使える資源は最大限、有効活用してコロナと闘っていく」と話している。【4月15日 朝日】
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これはこれで実情に即応した対処ではありますが、巨大スラムを抱えるインドの状況が厳しいことには変わりありません。

【中東サウジでも王族にも感染拡大 中東の感染拡大で原油生産は?】
感染は中東地域でも拡大しています。よく取り上げられるのがイランですが、その成り行きが注目されるのがイラン以上に秘密主義で国内状況が分かりづらいサウジアラビア。

****新型コロナ感染拡大で苦境に陥るサウジアラビア****
(中略)サウジアラビア保健省は4月7日、「国内の新型コロナウイルス感染者が今後数週間で最大20万人に増加する公算が大きい」とする見通しを明らかにした。

サウジアラビアにおける直近の感染者数は3000人強だが、4月下旬にラマダン(断食月)入りすることで感染爆発が起きる恐れがあるからだ。
 
宗教行事をきっかけに新型コロナウイルスの感染が広がる例が世界で相次いでいるが、宗教行事の中で最も大きなイベントはラマダンであると言っても過言ではない。

サウジアラビアをはじめ各国政府は大規模な集会を避けるよう求めているが、4月下旬から約1カ月続くラマダンはイスラム教徒信仰心が一段と高まる時期である。

日没後は解禁された飲食を集団で楽しむ習慣があるが、武漢市やダイヤモンド・プリンセス号などの経験から、集団飲食が感染爆発を引き起こす最も危険な行為である。

サウジアラビア政府は既に禁止措置を採っているが、イスラム教の聖地であるメッカやメディナに世界のイスラム教徒が大量に巡礼に訪れることだろう。(後略)【4月12日 藤 和彦氏 JB press】
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サウジでは王族の感染も拡大しているようです。

****サウジ、コロナ感染爆発の恐れ 王族に拡大、巡礼に影響も****
イスラム教の聖地を抱えるサウジアラビアで、新型コロナウイルスの感染が爆発的に広がる恐れが出てきた。当局は感染者が最大20万人に上るとの推計を発表。感染が王族に広がっているとの報道に加え、世界各地から200万人以上が集う大巡礼(ハッジ)の中止や規模縮小も取り沙汰されている。
 
米紙ニューヨーク・タイムズは今月、約150人の王族がウイルスに感染し、重症者もいると報道。頻繁に欧州を行き来する王族がウイルスを持ち帰ったとの見方を伝えた。
 
サウジの王族は約1万5千人。84歳と高齢のサルマン国王は西部ジッダに近い島の宮殿に退避したとされる。【4月17日 共同】
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サウジアラビアで感染爆発すると、石油生産がストップする事態も。
サウジだけでなく中東産油国は同じような状況でしょうから。

そうなると、今は協調減産もコロナ禍による大幅な需要減少をカバーしきれないということで低迷している原油価格が一転して大幅上昇することもあるのかも。

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(中略)イラクに加えてサウジアラビアで新型コロナウイルスが蔓延し、隣接するアラブ首長国連邦(UAE)やカタール、クウェートなどアラビア半島での原油生産にも悪影響が及べば、世界の大原油地帯(日量2000万バレル以上)が新型コロナウイルスのせいで封鎖されるかもしれないのである。
 
リーマンショック後の2011年、リビアの政変による供給の大幅減を材料に大量のマネーが原油市場に殺到し、原油価格は1バレル=100ドル超えとなった。

新型コロナウイルスによる不況を警戒して世界の中央銀行が再びマネーを大量に放出していることから、中東地域での未曾有の地政学リスクが火種となって、原油価格が再び高騰するリスクが生じているのではないだろうか。【4月12日 藤 和彦氏 JB press】
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