(アフリカ・モザンビーク 美白化粧品の広告 【1月4日 ファンファン福岡】)
【人種差別への抗議の動きを受けて、「美白」などの文言を排除するロレアル】
アメリカから欧州に拡散した人種差別への抗議の動きを受けて、化商品広告における「ホワイトニング(美白)」の扱いも変化しています。
****ロレアル、商品から「美白」などの文言排除へ*****
仏化粧品大手ロレアルは27日、自社商品から「ホワイトニング(美白)」などの言葉を排除すると発表した。世界各国では最近、人種差別に抗議するデモが広がっており、大企業の間でもこれに対応する動きが広がっている。
同社は短い発表文で、肌の色を均一にする製品から「ホワイト/ホワイトニング」のほか、色白を指す「フェア/フェアネス」、明るい色合いを指す「ライト/ライトニング」の文言を削除すると表明した。
米国で先月、黒人のジョージ・フロイドさんが警察の拘束下で死亡した事件は、世界各地で反人種差別運動「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」を巻き起こし、ロレアルなどの企業が展開する美白製品に対する批判にもつながっていた。
ロレアルに先立ち、英国・オランダ系の食品・日用品大手ユニリーバや、米医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン、米食品大手マーズなども、自社製品の宣伝方法や商品イメージを変更する措置を取っている。 【6月28日 AFP】
*******************
【アジア・アフリカで根強い「美白信仰」】
ただ、こうした動きは欧米におけるものであり、アジア・アフリカにおいては根強い「美白信仰」があるのは言うまでもないところです。
それが行き過ぎたり、人種差別的とみなされると騒動になることも。
「色の白いは七難隠す」という美意識の日本でも、大坂なおみ選手に関する「漂白剤」発言が問題になったことも。
****大坂なおみ選手には「漂白剤」が必要と……漫才コンビが差別発言で謝罪****
日本の漫才コンビ「Aマッソ」がイベントで、テニスの大坂なおみ選手(21)は「漂白剤が必要」などと差別発言をしたとして、所属事務所が謝罪した。
Aマッソはこのほか、「大阪選手は日焼けしすぎ」などと発言したという。(後略)【9月26日 BBC】
*****************
中国では2016年、今や「伝説」ともなったCMでメーカーは謝罪に追い込まれました。
****黒人男性を洗濯して色白に、中国のCMが非難の的****
黒人男性を洗濯機に入れて洗うと、色白の中国人男性に早変わり――。中国の洗濯用洗剤メーカーが流したそんなCMがネットで出回って人種差別的だとして非難の的になり、メーカーが謝罪した。
問題のCMは中国のメーカー、チャオビが制作した。色白の中国人女性の前に、顔や服をペンキで汚した黒人男性が現れる。女性は気があるように見せかけて、近寄ってきた男性を洗濯機に放り込み、ふたを閉めて洗濯を終えると、出てきた男性は色白の中国人男性に変わっているという筋書き。
チャオビはこのCMについて謝罪したものの、海外メディアが過剰に反応したと主張。「このCMが出回って過度に騒がれた結果、アフリカ系の人々を傷つけた。私たちはここに謝罪を表明し、インターネットユーザーもマスコミも過度な分析をしないよう願う」とした。「我々は人種差別には強く反対し、非難する」とも強調している。(後略)【2016年5月30日 CNN】
********************
アジア・アフリカの多くの国では「美白信仰」は単なる美意識ではなく、国内の格差、欧米白人世界による植民地支配の歴史などとも密接に結びついています。
そうした国では、女性の美白クリーム使用が一般的となっており、健康被害も深刻です。
****白い肌は美と富の象徴…浅黒い肌への偏見に立ち向かうインド****
インドのチャンダナ・ヒランさんは子どもの頃、見知らぬ人から肌の色を白くするよう勧められたものだった。現在、学生となったヒランさんは、美白クリーム反対運動を率いている。
英国・オランダ系の食品・日用品大手ユニリーバの有名な美白クリーム「フェア・アンド・ラブリー(Fair & Lovely、色白で美しい)」に反対するオンライン署名運動を立ち上げたヒランさんは、この商品は「もし肌の色が浅黒ければ、人生において何も達成できないと伝えている」とAFPに語った。
ヒランさんの運動は、ユニリーバが「フェア・アンド・ラブリー」の商品名から「色白」を削除したことで最初の勝利を収めた。仏化粧品大手ロレアルや米医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソンも同様の措置を取った。
世界各地に広がった反人種差別運動「黒人の命は大切」は、アジアの人々の白い肌への執着を浮き彫りにした。
多国籍企業は美、成功、愛は色白の人だけのものだというメッセージを宣伝することで、美白クリームや洗顔料、さらにはデリケートゾーンの漂白化粧水などの販売で長らく利益を得てきた。
ブルームバーグによると、ユニリーバのインドでの「フェア・アンド・ラブリー」の販売額は昨年は5億ドル(約530億円)に上った。
「黒人の命は大切」運動によって人種差別への怒りが欧米各地で高まる今、ユニリーバなどの企業は「より多様な美の描写を率先して称賛したい」と述べている。
インドでは、浅黒い肌に対する偏見「カラーリズム」がまん延している。
英国の植民地主義がカラーリズムを助長した一方で、こうした偏見は古くから続くカースト制度に根ざしていると専門家は指摘する。
「高カースト階級は、低カースト階級よりも色が白いという思い込みがある」と同国南部の都市ベンガルール(旧称バンガロール)のキリスト大学の社会学者スパルナ・カル氏はAFPに語った。
■生まれた時から偏見に直面
この結果、多くの人が白い肌を富や美しさと結びつけるようになっている。インド映画界「ボリウッド」は、肌の浅黒い女優をめったに主役に配置せず、都市部に住む社会的に成功した人をしばしば色白として描くことで、このような偏見を支えている。
カビタ・エマニュエルさんは2009年、学校を回り浅黒い肌への偏見改善を訴える「浅黒い肌は美しい」運動を始めた。エマニュエルさんは、偏見は生まれた時から始まると語る。「女の子なのに色が黒いなんて。やれやれ、誰がこの子と結婚するんだ」と言われるのだという。
東南アジアでも、人々は白い肌に執着する。
「白い肌は…『魅力的な人物』であることの一つの条件であることがえん曲的に言われている」と、フィリピン大学の医療人類学者ギデオン・ラスコ氏はAFPに語った。
美白製品は心理的なダメージだけではなく、健康に深刻な危険をもたらす。
一部の製品は有害なレベルの水銀を含んでおり、腎臓の損傷、皮膚病、精神病の原因となり得ると、世界保健機関は警告している。
活動家らはこれまでに根付いた偏見を変えるには、特に美白市場はもうかることから時間を要すると指摘する。
美白業界は世界の美容業界で急成長した分野の一つで、WHOは2024年までに市場規模は312億ドル(約3兆3000億円)になると予測している。人口13億人のインドでは、美白製品がスキンケア市場の約半分を占めている。 【8月9日 AFP】
*****************
東南アジアでは比較的色白のベトナム女性が周辺国では好まれ、そのベトナムでは女性たちがバイクに乗るとき、暑い中でも長手袋でしっかり日焼け対策している光景をよく目にします。
一般的に、裕福な働かなくてもいい女性は色白・・・というイメージがあって、「美白信仰」を支えています。
日焼け対策はともかく、もともとの肌の色を「美白クリーム」で白くしようとすれば、深刻な健康問題を惹起します。
****危険と隣り合わせの美白、アフリカで広がる漂白クリーム****
自分の子どもの肌を漂白する母親たちの話を初めて耳にした時、医師のイシマ・ソバンデ氏(27)は学生だった。都市伝説だと思い、忘れてしまったが、その後しばらくして、実際に目にすることになった。
ナイジェリア南西部ラゴスの医療センターに、1人の母親が痛みで泣き叫ぶ生後2か月の赤ん坊を連れてきた。
「男の子の赤ん坊の体中に炎症性の腫れ物ができていた」と、ソバンデ氏はAFPの取材に語った。「普通では考えられない状態だった」。
肌を白くするため、ステロイドクリームとシアバターをまぜたものを赤ん坊の体にたっぷり塗ったと、母親は説明した。「がくぜんとした。痛々しかった」と、ソバンデ氏は言う。
ソバンデ氏はショックを受け、今では「ライトニング」や「ホワイトニング」と呼ばれる肌の漂白について以前とは異なる考えを持つようになった。多くのナイジェリア人にとって肌の漂白は、美と成功をもたらす「一般的な手段」となっているという。
「このような考えが社会をむしばんでいる。多くの人にとって漂白は、良い仕事に就き、良い人脈を得るための方法なのだ」
■有毒クリームのリスク
肌の漂白は、南アジアや中東を含む世界各地で人気となっている。だが、アフリカでは法の適用が厳しくなかったり、法律が軽視されたりすることも多く、肌の漂白が広まることで健康被害のリスクも高まっていると、医療専門家は指摘する。
文化保護団体は、肌の漂白を植民地時代の悪しき遺産とみなしている。
南アフリカのプレトリア大学の生理学教授、レスター・デービズ氏は、アフリカでは「特に10代の若者の間で(肌の漂白が)大幅に増加傾向にある」と指摘する。
世界保健機関(WHO)は2011年、ライトニング製品を「定期的に」使用している人は6000万人以上に上り、ナイジェリアだけでも女性の77%が使用していると推定している。
富裕層は一般に入手できる、高額な許認可を受けた製品を選ぶ傾向にある。それ以外の人々は、こっそり調合された密輸品のクリームなどを買うことが多い。このような製品は危険性が高く、明らかに法律や規制を無視して売られている。
中にはヒドロキノンやステロイド、水銀、鉛などが含まれている製品もある。エリザベス1世時代の廷臣たちは、顔を真っ白にするためこれらの成分が含まれたおしろいを塗っていたが、過剰使用で中毒死することもあった。
「これらの化学物質は呼吸器、腎臓、生殖器に損傷を与える」と、ナイジェリアの薬物規制当局職員は警告する。「がんを引き起こし、神経系に影響を及ぼし、胎児をむしばむ」
米国食品医薬品局(FDA)は、今日市場に出回っている製品でFDAの承認を受けているものはないと強調する。「これらの製品は危険で、効果もない。未知の有害成分や汚染物質が含まれている可能性もある」
ラゴスでは、コスメトロジストと呼ばれる美容専門家たちがこのようなクリームを調合している。販売価格は5000~2万ナイラ(約1500~6000円)だが、月の最低賃金が1万8000ナイラ(約5500円)のこの国では法外な価格だ。(中略)
■「メラニンは美しい」
(中略)米ノースカロライナセントラル大学の研究者ヤバ・ブレイ氏は、「肌の漂白は、白さと共に権力や特権を手に入れようとする人々の意識の表れだ」と指摘する。
「肌の色(を変えること)によって、自分にこれまで以上の価値があると認めてもらいたいと願う人々を多くみてきた」
最近は、このような認識を変えようとする動きが黒人たちの間で広がっている。
黒い肌をたたえるハッシュタグ「#Melaninpoppin(メラニンは美しい)」やほぼ全員黒人の出演者がアフリカ風の衣装を着て、自然なままの髪で演じている映画『ブラックパンサー』の大ヒットなど、長い間、欧州中心だった美の概念が変わり始めている。
だが、このような流れがアフリカに入ってきているかというのは別の問題だ。
ケニア北部出身で、ヴィクトリアズ・シークレットやヴィヴィアン・ウエストウッドのショーにも出たアジュマ・ナセニヤナ氏は言う。「私の美しさが祖国よりも外国で認められているのは事実だ」
「アフリカの業界では、肌の色が薄いほど美しいとみなされる。業界の考えが変わり、黒い肌を称賛するようになってほしい」と語った。【2018年9月2日 AFP】
*********************
“世界保健機関(WHO)の報告ではアフリカで美白に最も熱心なのはナイジェリアの女性で、77%が美白化粧品を使っているのだとか。2位からトーゴ59%、南アフリカ35%、マリ25%と続きます。”【1月4日 ファンファン福岡】
【フランス 多くの女性たちが求めるのは「美白」ではなく、「肌のなめらかさ」や「輝き」、「透明感」などを持つ健康的な肌】
白い肌に憧れるアジア・アフリカの女性ですが、もともと肌が白い欧州・フランスでは事情が異なるようです。
****フランスで封印された「美白」 美白化粧品は“悪”なのかフランス人のホンネを聞いてみた****
反人種差別運動の波にのまれた化粧品業界
(中略)フランス化粧品最大手の「ロレアル」は6月、「美白(ホワイトニング)」「白」「明るくする(ライトニング)」などの言葉を、商品から削除することを発表した。(中略)
SNS上では、「そこまでする必要があるのか。やり過ぎではないか」といった反対の声も多く見られた。
そこで、フランスの人たちは率直にどう思っているのか、街で聞いてみた。
結果は、黒人や褐色の肌をもつ女性たちが「良いことだ。遅すぎた。もっと早くにそうするべきだった」などと賛意を示す一方、白人女性たちは「化粧品の名前を禁止することはやり過ぎだ。そこまでする必要はない」といった反対意見を持っていて、それぞれの肌の色によって概ね意見が分かれた。(中略)
そもそもフランスでは、日傘を使用する人はほとんどいない。(中略)日焼けした肌こそセクシーだと思われがちなフランス。そんな場所で日傘を差していると、「なぜ?」と言わんばかりの視線を投げつけられるのだが、そんなことは気にしていられない。私は日焼けを避けたいのだ。
「美白」とは「肌を白くすること」ではない?
そもそも、私はこれまで美白化粧品に対して誤った認識を持っていた。
「美白」=「肌を白くすること」だと勘違いしていたのだが、実は日本の美白化粧品には明確な定義があった。
美白化粧品とは、厚生労働省の認可を受けている美白有効成分を含む薬用化粧品(医薬部外品)で、美白有効成分とは、「メラニンの生成を抑え、しみやそばかすを防ぐ、あるいはこれに類似した効能があると認めた成分」と定義されている。また、美白化粧品は、肌そのものを白く変えるための化粧品ではないので、商品広告としても「使うほど肌が白くなる」などの表現は認められていない。したがって「美白化粧品」=「肌を白くする化粧品」とは言えないのだ。
大手化粧品Valmont(バルモン)CEOが今回の騒動を解説!
こうした「美白」についての考え方のずれは、実はヨーロッパでも存在する。
(中略)スイスの大手化粧品「バルモン(Valmont)」のソフィー・バン・ギヨンCEOがインタビューに応じてくれた。
ギヨン氏は、「美白(ホワイトニング)」と言うと、ヨーロッパでは多くの人が「ハイドロキノン」が入った医薬品を思い浮かべると指摘する。「ハイドロキノン」は、実際に「肌を白くする」効果が認められているが、安全面などの理由から現在EUでは医薬部外品への使用が禁止されており、化粧品に使用することはできない。(中略)
現在のヨーロッパでは、医薬部外品である美白化粧品は、「肌のしみやそばかすを防ぎ、透明感を与え、肌色を均一化させる」ものであり、その考え方は日本と同じだ。さらに、追加の成分こそ異なるものの、美白化粧品の基礎的なレシピはヨーロッパでも日本でも実はほとんど同じだという。
ところが、ヨーロッパでは「美白」化粧品の需要は多くない。何故なら多くの女性たちが求めるのは「美白」ではなく、「肌のなめらかさ」や「輝き」、「透明感」などを持つ健康的な肌(=la bonne mine)なので、基礎的なレシピがほとんど同じでも、「美白」を謳わない傾向にある。(中略)
そういった傾向や需要面から考えると、ヨーロッパにおいて商品から「美白=ホワイトニング」の言葉を消すことは、化粧品メーカーにとって大した打撃にならないと思われる。ヨーロッパでは「ホワイト」という言葉が差別的なイメージを与えることに加え、消費者が「ホワイト」を求めていないからだ。
多くのアフリカ系住民がいるヨーロッパと、そうでない日本では、反人種差別運動をきっかけに起こった「美白」化粧品をめぐる反応が異なるのは当然と言えよう。(後略)【執筆:FNNパリ支局長 石井梨奈恵】
********************
もっとも、欧米の化粧メーカーもアジア・アフリカで、美白を誘導する広告のもとで多くの「美白」化粧品を販売しているのも事実ですが。