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(中国・広州市 海外からの入国者が滞在する5000室の隔離施設「広州市国際健康ステーション」【9月30日 CNN】)
【シンガポールに続き、ニュージーランドも「ゼロコロナ」断念】
新型コロナ感染者をゼロ状態に抑え込む「ゼロコロナ」政策をとってきた国のなかで、一定の感染者の存在を容認する「ウィズコロナ」へ転換する国が相次いでいます。
「ゲームチェンジャー」となっているのは、感染力の強いデルタ株。
オーストラリア、ベトナムに続いて先月初めにはシンガポールも。成人の8割がワクチン完全接種を済ませるという高接種率をもってしても、ブレイクスルー感染を防ぎきれませんでした。
****豪に続いてワクチン接種率8割のシンガポールもゼロコロナ断念****
ゼロはムリ。
デルタ株でゲームのルールが変わるなか、ベトナム、オーストラリアに続いてシンガポールもゼロコロナの夢を捨て、ウィズコロナに方針転換しました。
リー・シェンロン首相が日曜のナショナルデー(独立記念日)の式典の席で明らかにしたもの。成人の8割が完全接種を済ませ、マルタ(82%)に次ぐ世界第2位のワクチン接種率を誇るシンガポールをもってしても完全撲滅は非現実的との判断です。
ゼロコロナで粘ってきたのはシンガポール(人口約570万人)とニュージーランド(同約500万人)、台湾、中国、ベトナム、オーストラリアの各国ですが、これで残りはニュージーランド・台・中のみとなりました。(後略)【9月3日 GINZODO】
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そして、ニュージーランドも。
ニュージーランド・アーダーン首相は8月17日には、感染者1人でも全土をロックダウンするという厳しい対策をとってきました。
****NZ首相、「コロナゼロ」戦略断念 デルタ株封じ込めできず****
ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は4日、これまで推進してきた「コロナゼロ」戦略について、主要都市オークランドでの新型コロナウイルス感染封じ込めに失敗したと認め、新たな取り組みが必要だと述べた。
ニュージーランドは、新型コロナウイルスの根絶を目指す厳格な政策により国土の大半が流行から守られ、国境封鎖下で国民はパンデミック(世界的な大流行)以前に近い日常生活を送っている。
しかし、人口の多いオークランドで8月に発生した半年ぶりの市中感染は、7週間に及ぶロックダウン(都市封鎖)を実施した後も感染者数の減少に至っていない。
アーダーン氏は記者会見で、感染力の強い変異株「デルタ株」が局面を一変させる「ゲームチェンジャー」となり、ウイルス根絶ができなくなったことが確認されたと語った。
「長期にわたる制限を導入しても、(感染者数が)ゼロになっていないのは明らかだ」
アーダーン氏は、コロナゼロ戦略を直ちに撤回するわけではないとしつつ、オークランドのロックダウンについては新規感染者数が減らなくても一部緩和する方針を示した。
ウイルス根絶という当初の目標からは大きな方針転換となるが、アーダーン氏は新型コロナウイルスワクチンの接種が劇的に進んだことで、政策変更が可能になったと説明。
「根絶が重要だったのは、ワクチンがなかったからだ。今はワクチンがあるので、やり方を変えることができる」と述べた。 【10月4日 AFP】
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アーダーン首相は、“これまで自ら先頭に立って実施してきたゼロ戦略は「驚くべき成果を上げたし、正しいことだった」と強調。その上でデルタ株の流行やワクチンの普及で「対策を変える」必要が生じたと説明した”【10月4日 共同】とも。
【中国 厳格な国境管理、強力な封鎖・隔離措置、大規模検査でゼロコロナ維持】
残る「ゼロコロナ」国は台湾と中国。
****台湾、国内感染4日連続なし 死者もゼロ 新型コロナ****
中央感染症指揮センターによれば、3日は新型コロナウイルスの国内感染と死者、いずれも報告されなかった。国内の新規感染者が確認されなかったのは4日連続で、死者も2日続けてゼロとなった。
海外からの輸入症例は6人。10代から30代までの男女で、マレーシアや米国、モンゴル、英国、ミャンマーに行動歴があった。先月19日から今月1日にかけて入国した。
台湾内で確認された感染者は計1万6250人となり、うち843人が死亡した。【10月3日 フォーカス台湾】
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台湾はコンパクトな島国なので、コロナ防衛には向いていそうですが、中国は多くの国と国境を接する広大な国土、しかも北朝鮮やミャンマーなどとは国境規制をかいくぐるような人の流れもあります。
以前はネパールとの国境になるヒマラヤ・エベレスト山頂に「隔離線」をもうけるといった話もありました。
****広州市に5000室の入国者隔離施設、「ゼロコロナ」厳格化の中国****
世界各国が出入国制限や新型コロナウイルス対策規制の緩和に踏み切る中で、中国が「ゼロコロナ」戦略を厳格化している。
南部の広州市は近日中に、海外からの入国者が滞在する5000室の隔離施設「広州市国際健康ステーション」の運用を開始する。
3階建てのビル群で構成される同施設は米ドル換算で2億6000万ドル(約290億円)を投じ、広州市郊外の広大な敷地にわずか3カ月足らずで建設された。
これまで海外から到着した中国人や外国人は、広州市内の指定ホテルで隔離されていたが、住民との接触を減らすために今後は新しい施設を利用する。
入国者は空港からの直行バスで同施設に到着し、それぞれの部屋に閉じこもった状態で少なくとも2週間過ごす。各室にはビデオチャットカメラと人工知能(AI)を使った体温計が完備され、1日3回の食事はロボットが届ける。いずれもスタッフとの接触を最小限に抑えるための措置。
中国でこうした施設が開設されるのは初めてだが、中国政府が一切の感染を容認しないゼロコロナ戦略を厳格化する中で、今後はこうした施設が多数建設される可能性があると専門家は予想する。
広州市から車で1時間ほどの製造業の中心市、東莞市でも2000室の国際健康ステーション建設が進む。南部のIT集積地、深セン市もそうした施設を計画している。
「これは単なる一時しのぎの対策ではない。(中国指導部は)このパンデミック(世界的大流行)が収束するまでにはまだ時間がかかると考え、厳格な国境管理を継続するだろう」。米外交問題評議会のシニアフェロー、ヤンゾン・ファン氏はそう指摘している。【9月30日 CNN】
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そうした国境管理に加え、ひとたび感染者が確認された地区は完全封鎖し、感染拡大が疑われる都市は数百万人規模だろうが徹底的に全員検査を行い「ゼロ」を維持しています。
しかし、世界が「ウィズコロナ」に舵を切るなかで、いつまで中国一人が「ゼロコロナ」に固執できるのか?
住民負担は甚大なものにもなりますし、世界との人的交流を阻害し、経済活動の足を引っ張ることにもなります。
そこらに関して中国国内でも議論はあるようですが、いまのところ中国当局は強気の姿勢を崩していません。
****中国、「感染ゼロ」対策の行方は 1人発見でも、隔離を徹底****
中国では1人でも新型コロナウイルス感染者が出ると、その街に足を踏み入れたすべての人が隔離対象になることがある。記者もその措置を自ら体験することに。
衛生当局は感染力が強いとされるデルタ株をも抑える「感染ゼロ」の対策に自信を深めるが、厳しい対策をいつまで続けるかの論争も起きた。
9月22日、黒竜江省ハルビン市の南崗区で1人の感染者が見つかったことが公表されると、約500キロ南の遼寧省瀋陽市の衛生当局はその夜、2週間以内に同区に行ったことがある市民に申告を求め「指定ホテルで隔離する」との内容の通知を出した。
瀋陽に住む記者はその5日前にハルビンに日帰り出張し、南崗区の取材先に約2時間滞在していた。同区は100万人近くが住む広大な地区で、公表されている感染者の立ち寄り先の近くには行っていない。
しかし、中国では当局が要請した行動歴の申告をせず、後に感染が判明して他者へ広げたと判断された場合は処罰される。そのため、申告の窓口になっている「社区」という地域の自治組織に連絡した。
申告した翌日の午前、社区から「自宅近くの指定ホテルへ歩いて行ってください」と連絡があり、仕事が一段落した夜に、市中心部の周囲が柵で囲まれたホテルに入った。防護服姿の衛生担当者に名前などを告げた後、ビニールシートに覆われたエレベーターや廊下を通って部屋に入った。
濃厚接触者でもないためか、1週間の行動歴は聞かれなかった。翌朝にPCR検査を受けたほかは、ただただ部屋を出ない隔離生活。着替えは最初に持ち込み、食事は弁当が出た。出張から2週間が経つ日まで続くことになった。
瀋陽のように感染者が1人出た区に入っただけでホテル隔離を要求する都市は少ないが、SNS上では別の街の市民とみられる「ハルビンから帰って在宅隔離になった」との投稿も。リスクがありそうな人をとにかく隔離しようとする地域は多いようだ。
■市民生活直撃、共存問う声も
中国本土では今夏以降、外国から入ってきたとみられるデルタ株の感染拡大が相次いだ。しかし地域封鎖と大規模なPCR検査、濃厚接触者らの徹底的な隔離、という組み合わせで抑え込んできた。
7月下旬以降に江蘇省南京市の空港周辺から最終的に14省・直轄市・自治区の約1160人に広がったケースでは、人口数百万人の各都市で次々に住民全員のPCR検査が実施された。
9月中旬からは福建省の帰国者の周辺から450人以上に広がったが、26日までに省内の延べ6800万人以上にPCR検査を施し、濃厚接触者ら4万4千人以上を隔離。およそ2週間で拡大は鈍化している。
中国本土では自国産ワクチンの接種回数が22億回を超え、必要数を終えた人も全人口の7割以上に上る。だが、対策の手綱を緩めるつもりはないようだ。
ただ、「ゼロ」対策では、封鎖地域から外の仕事に行けなくなったり飲食店が営業停止になったりと市民生活を直撃する。欧米などがワクチン接種の普及で「ウィズコロナ」へ向かう中、「ゼロ」を続けるべきかの論争も起きた。
ウイルス情報の発信役として国民の人気が高い医師の張文宏氏は7月末、自身のSNSに「世界中の専門家がウイルスの常在化を見越す中、世界は共存の仕方を身につけなくてはならず、各国はそれぞれ答えを出している」と投稿すると、「ウイルスに投降するのか」との批判が出た一方、「彼は客観的な事実を言っただけだ」との擁護の声も次々に上がった。
元衛生相の高強氏は8月初旬、総顧問を務める学会のホームページに「英、米などがワクチンに頼って共存を追求し、さらなる拡大を引き起こしている」「国際的に流行が続く間、我が国はコロナを完全に断つ戦略を変えてはならない」などとする論考を掲載した。【10月3日 朝日】
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【世界が「ウィズコロナ」に向かうなかで、中国だけが「ゼロコロナ」を続ける意味合いは?】
こうした対応が経済的に相当な負担となっていることは想像に難くないですし、厳しい対応の繰り返しは住民に徒労感をもたらすことも。
****中国「コロナ感染拡大」で公務員100人以上を処分 ゼロコロナの限界、共存の時代へ****
2021年10月現在、中国やタイ、ベトナムなど、比較的コロナ対策で高い評価を受けていた国においても、デルタ株の感染拡大や水際対策の崩壊により感染者が再拡大している。
武漢研究所からのウイルス起源説も取りざたされる中国では100人規模の感染が発覚し、公務員100人以上が失策として処分された。
そのような状況で「もはや、世界はコロナと共存するしか方法がないのではないか」と、従来の封じ込め対策に疑義を唱える専門家も増えている。
■「感染対策怠慢」で公務員100人以上を処分
厳格かつ迅速な感染対策が功を奏し、世界に先駆けて経済活動を本格的に開始した中国だが、ここにきて不穏なニュースが相次いで報じられている。
8月には感染対策を怠っていたとして、国内の公務員など100人以上が処分を受けたと中国メディアが報じた。
事の発端は、7月下旬に南京の国際空港の作業員がデルタ株に感染した。その後、18の省や自治体などに感染が拡大し、国内の1日あたりの新規感染者数が半年ぶりに100人を上回った。観光シーズン真っ只中で人流密度が高まっていたことも、感染を広げる要因となった。
政府は感染者の出た地区を封鎖し、大規模なPCR検査を実施するなど即座に対策を強化したものの、繰り返す封じ込め策に観光業界には憔悴の色が見える。
本来であれば、かき入れ時のはずの北京などの観光地でも団体客の姿が見えず、飲食店や土産物店は閑古鳥が鳴くような状態だという。ある土産物の店主はメディアの取材で、「売上がゼロの日もある」と語った。
■中国、近づく我慢の限界
ワクチンの普及で死亡や重症化するケースは減っているとはいえ、ロックダウンや行動規制を講じても感染が止まらない。
束の間の「収束」も虚しく、再拡大を目の当たりにした国民の間では疲労感と共に絶望感が広がっている。「感染を早期に食い止め、社会の正常化に向かって順調に前進している」という期待が高まっていただけに、なおさら今回の「後戻り」は骨身にしみるだろう。
再拡大は観光業だけではなく、国内の生産や消費にも多大な影響を与えている。コロナ禍の経済回復に苦戦する主要国を尻目に、「中国の一人勝ち」などと言われているが、「実際は経済回復がピークを越え、苦悩にあえぐ企業が増加している」という報道もある。
中国人民銀行が小規模な金融機関以外の預金準備率を引き下げるなど抑制に動いているが、春以降急上昇している生産者物価指数(PPI)は、8月に入り13年ぶりの高い伸びを記録した。(後略)【10月3日 アレン琴子氏 THE OWNER】
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余談になりますが、人間ですら有無を言わせぬ対応がとられている状況ですから、犬猫などのペットに対する措置は・・・。
****「猫ちゃんは死んでしまった」飼い主のコロナ感染で猫3匹殺処分 中国の“ゼロコロナ”政策に例外なし****
「皆さん助けて下さい かわいい小さな命で私の命と同じです」
9月28日、中国のSNSに1人の女性が悲痛な訴えを投稿した。そこには次のような言葉が書かれていた。
「私は新型コロナウイルスの患者で今病院で治療を受けています…居住地域の担当者から飼い猫が陽性なので安楽死させるという通知を受けました…心が折れそうです。猫は私にとってとても大事な存在です。5、6年も一緒に生活しました。私の命と同じくらい大事です・・・皆さん声をあげていただけますか。人は治療・隔離できるのにどうして猫に機会が与えられないのか…猫はずっと家にいて外に出ていないのに・・・猫にも隔離と治療をしてもらえないのか、皆さんお願いします」
安楽死させる同意書を…
メッセージを投稿した女性は中国黒竜江省のハルビン市に住んでいる。この地域では新型コロナウイルスの感染が9月20日頃から広がっていて、当局によって外出禁止などの封鎖措置がとられている。
女性は9月21日に感染が確認され、自宅で隔離されていた。その後、病院に入院し治療していたところ27日に住んでいる地域の担当者から「飼っている3匹の猫が2回行った検査で2回とも陽性と確認されたため安楽死される」と通知が来たという。
女性は猫を安楽死させることについて同意書を書くよう求められたが当初は同意せず、猫を治療する機会を求めた。しかし、地域からの回答は「ペットを治療する前例はない」というものだった。女性によると3匹の猫のうち、1匹は5〜6年、残りの2匹は4年飼っていた猫だという(中略)
ただ、人から動物への感染は確認されているものの、ペットから飼い主への感染を示す証拠はまだ確認されていないという。このため、実際に感染したペットを殺処分するほど厳しい対応が必要なのかは、感染対策をどこまで徹底するかにかかっていると言えるだろう。
中国の場合は、「国は人を救うために全力を尽くしている」とされ、ペットも“ゼロコロナ”の例外ではないことがわかる。3匹の猫を殺処分された女性も悲しみながらも「現在の状況では、国と人々の安全が最優先だと思う」と受け入れている。
それでは日本で同じような状況になった場合はどうなるのか。
東京都福祉保健局の担当者は「ペットに対する考え方は国によって違う」とした上で、東京都の場合は、「新型コロナウイルスの感染に関わらず、基本は普段から飼い主に何かあった時にペットを預かってもらえる場所や人を確保しておいてほしいが、どうしようもない時は東京都の動物愛護センターで預かります。」と話す。そして、「中国のように殺処分することはあり得るか?」という質問に対して、「そのような対応は現時点ではない。」と話した。
【10月4日 FNNプライムオンライン】
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中国がゼロコロナに固執するのは、人権が問題となる欧米とは異なる中国独特の強力な対応に「欧米より優れた中国の体制」としての自信を持っているのか・・・、逆に、中国製ワクチンの感染防御力に自信がないのか・・・はたまた、「中国は我が道を行く」といった国際社会からのデカップリングに何らかの意味を感じているのか・・・いろいろ想像はできますが、さだかなことはわかりません。
中国の感染者が少ないということで、海外旅行が再開されたらまずは中国かな・・・と思っていたのですが、タイなどが観光再開に舵を切る中で、当分逆に中国はむつかしそうです。