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(27日、チュニジア・チュニスで開催されたアフリカ開発会議(TICAD)の参加者ら【8月27日 iza】)
【今後「巨大市場」に成長するアフリカ 課題も山積】
アフリカの人口が急速に膨張しており、単純な市場規模としても、また経済成長に伴う購買力の拡大という点からも、将来的にアフリカが世界経済を左右する巨大市場に成長するであろうことは今更の話です。
しかしながら、インフラ整備が追いつかないことや食料問題など、アフリカには課題も山積しています。
下記記事は3年前の古いものですが、今でもそのまま使える内容でしょう。
****アフリカの人口、21億人に倍増 変わる人口地図(4)****
国連の最新の予測によると、地域別で人口増のペースが最大なのが、サハラ砂漠以南のサブサハラアフリカだ。他地域に比べ高い出生率を保ち、2019年時点の10億6600万人から50年には21億1800万人に倍増する。2100年には約38億人と世界の人口の3割強を占める見通しだ。
国別の人口ではナイジェリアが19年の2億人から100年には7億3300万人へと大幅に伸びる。コンゴ民主共和国も同期間に8700万人から3億6200万人まで増えると見込まれる。
人口急増は課題も突き付ける。経済成長率が追い付かなければ、1人当たりの所得は減っていく。十分な雇用を創出できなければ、社会不安の火種となる。
農村から都市への人口流入で消費拡大が期待できる半面、電力、水道、交通網といったインフラの逼迫や公衆衛生の悪化も懸念される。
特に危惧されるのが食糧問題だ。アフリカの農業は自給用でない換金作物を優先して栽培しているうえに、他地域に比べ著しく生産性が低い。米や小麦といった主要穀物は域外からの輸入に依存し、都市化の進展がこの傾向に拍車を掛ける。
食料輸入による物価高が人件費に跳ね返り、製造業が育たない一因にもなっている。持続可能な発展のために何ができるのか。8月に日本政府が主催するアフリカ開発会議(TICAD)でも大きな議題となりそうだ。【2019年6月21日 日経】
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【日本主催のアフリカ開発会議(TICAD)開幕 中国に対抗して対アフリカ関係強化】
当然ながら、日本も対アフリカ戦略を意識しており、その中核にあるのが日本政府が主催するアフリカ開発会議(TICAD)です。
今日からそのアフリカ開発会議(TICAD)がアフリカ・チュニジアで開催されています。
現地参加を予定していた岸田首相は新型コロナ療養中で、オンライン参加となっています。
****岸田首相、アフリカで「人への投資」 巨額支援の中国念頭****
岸田文雄首相は27日から2日間、チュニジアで開くアフリカ開発会議(TICAD)にオンラインで出席する。「人への投資」を通じてアフリカの経済成長を後押しする考えを表明する。巨額の資金を投じてアフリカ各国への関与を強める中国に対抗する。
TICADはアフリカ開発のための国際会議で日本が主導して1993年に立ち上げた。2013年以降は3年ごとに開いており、前回の19年の横浜会合には42カ国の首脳級らが参加した。
今回は第8回でインフラ開発の課題や新型コロナウイルスの感染拡大で落ち込んだ経済の回復などを議論する。21日のPCR検査で新型コロナへの感染が確認された首相は現地への渡航を取りやめてオンライン形式での参加を見込む。
アフリカ支援で競合するのが中国だ。広域経済圏構想「一帯一路」を掲げ巨額の資金をアフリカ各国に投じている。21年にセネガルで開いた「中国・アフリカ協力フォーラム」で400億ドルの支援を公表した。19年のTICADで日本が掲げた200億ドルの民間投資を上回る。
中国はアフリカ各国へインフラ整備などの融資を拡大する。融資先の国々の返済能力や財政事情を考慮せずに過度な融資をした結果、債務が膨れて財政が悪化する国が目立つ。
債務の免除と引き換えに中国がインフラの権益などを奪う「債務のわな」に陥る例も出てきた。ウガンダは債務の代償として首都近郊の空港を中国に明け渡すことになりかねない状況にさらされている。
首相は資金支援の規模で中国に劣後する状況を踏まえ「人への投資」に言及する。首相が取り組む「新しい資本主義」も説明し、支援先に混乱をもたらす中国とは一線を画す姿勢を示す。
具体的にはインフラ開発や医療・保健、農業、ビジネスなど幅広い分野で専門知識を持つ人材の育成に注力する。例えば道路や橋などのインフラ整備では建設だけでなく、維持・管理に欠かせない技術を身につけてもらう。
起業を目指す若年層を日本の大学や企業に招き、ビジネスに必要な知識の習得の機会を提供する。経済的な自立を促し、人材が育てば企業や社会の成長にもつながると見る。
チュニジアのモハメッド・エルーミ駐日大使は日本経済新聞に「アフリカは若年層が多い人的資源といった潜在力に満ちている。日本は民間企業にとどまらず、大学などにも来てほしい」と語った。
資金支援も対中国の色彩を強める。アフリカでのインフラ開発などのために23年からの3年間で最大50億ドルを拠出する。融資先の中国の債務比率など財務の健全性を点検し中国との債務関係の再考を求める。
アフリカ支援は外交的な側面だけでなく、将来的な市場の開拓といった意味合いもある。アフリカは世界経済の「最後のフロンティア」と呼ばれる。現在のアフリカの人口はおよそ14億人に達しており、50年には24億人を超すといった予測がある。
その一方で日本は企業による投資が米欧や中国に比べて低調にとどまっている。
日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、20年のアフリカへの直接投資額は英国が最も多く650億ドルに上った。米国は480億ドル、中国は430億ドルだった。日本は48億ドルと国・地域別では上位10位に届かなかった。
ジェトロはアフリカに進出する日本企業を対象に21年度に調査をした。アフリカへの投資のリスクとして「規制・法令の整備や運用」を挙げた企業が6割超で最多となった。独特な法解釈や手続きの複雑さなどが進出の妨げになっているのが現状だ。
首相はTICADで企業がアフリカへ投資し進出しやすい環境の整備も呼びかける。脱炭素やレアアースなどの鉱物資源のビジネスで日本企業の参入を促す。【8月24日 日経】
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こうした中国を、特に“債務の罠”を意識した日本側の姿勢に中国メディアは「アフリカ諸国がうんざりしている」とも評しています。
****日本がアフリカ開発で中国けん制、「そのやり方にアフリカ諸国はうんざり」と中国メディア****
2022年8月26日、中国紙・環球時報は、日本がアフリカ開発を口実に中国をけん制しようとしているものの、その手法に対しアフリカ諸国がうんざりしているとする文章を掲載した。以下はその概要。(中略)
日本メディアは早い時期から日本政府の呼びかけに応じ、再三日本の投資は「中国とは異なる」ことを強調してきた。
日本メディアは早い時期から日本政府の呼びかけに応じ、再三日本の投資は「中国とは異なる」ことを強調してきた。
日本のアフリカ支援は日本企業に投資のチャンスを与えるものだが、日本国内からはアフリカへの投資、さらには中国への対抗を目的としたアフリカ投資に疑問の声も出ている。
日本によるアフリカ投資は2013年の100億ドルをピークに、20年には50億ドル足らずにまで減っているにもかかわらず、日本政府は他国との競争を目的として日本企業に投資を呼びかけている。
ウガンダメディアによると、日本企業はアフリカに対する理解が浅く、大多数の企業が拠点に近いマーケットばかりに注目しているという。アフリカ事業を展開する日本企業は10年の520社から19年には796社へと増えたが、新型コロナの影響もあって最近では投資額が減少している。
アフリカに行くと現地で「日本の要素」を多く見かけるものの、それは基本的に中古車、高級カラーテレビ、そして「寿司ロール」ばかりに集中している印象だ。
ウガンダメディアによると、日本企業はアフリカに対する理解が浅く、大多数の企業が拠点に近いマーケットばかりに注目しているという。アフリカ事業を展開する日本企業は10年の520社から19年には796社へと増えたが、新型コロナの影響もあって最近では投資額が減少している。
アフリカに行くと現地で「日本の要素」を多く見かけるものの、それは基本的に中古車、高級カラーテレビ、そして「寿司ロール」ばかりに集中している印象だ。
中古車は日本車がそのまま現地に流れてきたため、表示やステッカーがすべて日本語のままだ。高級カラーテレビは現地大衆の所得に見合わず、経済的に比較的裕福な南アフリカでも、家電市場シェアが高いのはハイセンスなどの中国ブランドだ。
そして、アフリカにおいて「寿司」は、人気の高い「中国料理」であり、多くのレストランが「中国料理」の看板を掲げながら寿司を主力メニューとして提供している。
南アフリカで20年近いビジネス経験を持つ呉(ウー)さんは、単身でアフリカでのビジネスを開拓しようとする日本人は少なく、基本的には大企業の駐在員だとし、それゆえアフリカ諸国やアフリカ人に対して何のアイデンティティーも持っていないと指摘した。
南アフリカで20年近いビジネス経験を持つ呉(ウー)さんは、単身でアフリカでのビジネスを開拓しようとする日本人は少なく、基本的には大企業の駐在員だとし、それゆえアフリカ諸国やアフリカ人に対して何のアイデンティティーも持っていないと指摘した。
一方、中国や韓国、インドからやってくるのはアフリカに活路を見い出そうとする中小企業のビジネスマンで、現地での各種プロジェクトに積極的に深く関わろうとする。「人と人とのふれあいがとても重要。アフリカ人が欲しているのは真の友人であり、アフリカを金もうけの場所としか考えていないような人間ではない」と呉さんは語る。
南アフリカのある雑誌編集長は、日本がアフリカ投資強化の意向を示したことは喜ばしいとする一方で、「意向を現実化して、アフリカの人々に幸福をもたらさなければ意味がない」と指摘する。
南アフリカのある雑誌編集長は、日本がアフリカ投資強化の意向を示したことは喜ばしいとする一方で、「意向を現実化して、アフリカの人々に幸福をもたらさなければ意味がない」と指摘する。
この数十年における日本の対外政策を見ると、アフリカは日本にとって優先的な選択肢ではない。日本はこれまで金融機関を通じて対アフリカ投資に参加してきたものの、往々にして西洋式の「付帯条件」を伴ってきた。このような「消極的な援助」を受けることに、多くのアフリカ諸国はもはやうんざりしているのだ。【8月27日 レコードチャイナ】
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日本の「消極的な援助」にアフリカ諸国が“うんざり”しているかどうか、また、“アフリカ人が欲しているのは真の友人であり、アフリカを金もうけの場所としか考えていないような人間ではない”という点で、中国人が“真の友人”と言える存在かどうか・・・そこらは今回は触れません。アフリカ諸国で、中国人と現地住民の間でトラブルが発生していることは、ときおり耳にする話ですが。
【現実には進まない日本のアフリカ進出 6千人対100~200万人超】
ただ、TICADなどの取り組みにもかかわらず、日本企業のアフリカへの進出が一向に進んでいないのは事実でしょう。日本の商品がアフリカ市場でなかなか売れない現実も。
第8回アフリカ開発会議(TICAD8)に民間企業代表の一人として参加する武藤康氏(33)(アフリカでスタートアップ(新興企業)を支援する事業を展開)は以下のようにも語っています。
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日本には昔ながらの「物づくりの国」としての誇りが大変強い企業が多いという。武藤さんは「アフリカの中間所得層が高価な日本製品を買える経済力をつけるまで、あと7〜10年はかかります。でも、そのころには、日本は中国や韓国との競争に勝てなくなっているかもしれません」と話す。「明確な戦略がなければ、今売っても売れないし、10年後に売っても売れない可能性が十分にあります」
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言い換えれば、日本企業は自分たちが売りたいと思うものを売ろうとしてうまくいっていないということでしょうか。現地のアフリカの人々が買いたいと思うニーズにうまく対応できていないようにも。
そこらに日本とアフリカの関係の“底の浅さ”がうかがえます。
一方、アフリカとの関係という点では、中国は日本の比ではありません。
外務省の海外在留邦人数調査統計(令和4年版)によればアフリカの在留邦人は6106人(長期滞在者5303人、永住者803人)に過ぎません。
一方、中国人は・・・・
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アフリカ全体での中国人在住数については100万人から200万人超まで――これまで様々に報じられてきた。もちろん、この中には旧世代も含まれるが、中国側が示す「世界各地華僑華人人口統計(2013年9月13日までの統計に基づく)」ではアフリカ全体で79.07万人に止めている。中国の活動を批判し警鐘を鳴らす人々は多目に、アフリカ各国の親中政権は極く控えめに数える傾向が強いようだ。
中国側から言えば非合法移住者も少なくなく、実態の把握は難しい。それがまた移動⇒定住⇒移動を繰り返しながら新たな生活空間を求める歴史を繰り返してきた彼らの偽りのない姿である。【2020年5月6日 WEDGE ONLINE
「新型コロナがあぶり出す中国とアフリカの浅からぬ関係」】
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6千人に対し100万人から200万人超・・・・比較になりません。
【日本人の予想を遥かに超えて長く深かい中国とアフリカの関係】
中国が毛沢東の時代からアフリカとの関係を重視してきたこと(イデオロギー面と、国際的孤立を避けるため)がすぐに思い浮かびますが、中国とアフリカの関係は、それ以上に遥かに分厚いものがあります。
****新型コロナがあぶり出す中国とアフリカの浅からぬ関係****
(中略) だが、それ(15世紀末、バスコ・ダ・ガマが喜望峰を回ってインドへの航路を開いた)より60年ほど早く、中国人はインド洋を西に向かいアフリカ東海岸に到達していた。
15世紀初め、大艦隊を率いて東南アジア海域からインド洋一帯の軍事制圧を試みた鄭和は、アフリカ東海岸とマダガスカルに挟まれたモザンビーク海峡を南下していた可能性は高い。(中略)
オランダの東インド会社による南アフリカ占領期(1652~1795年)の記録に依れば、この時期にインド洋西部のアフリカ東海岸に近いモーリシャスに中国から土木技術者が招来され、殖民地経営の下働きをしている。殖民地が開発されるに伴って、広州や梅州(客家居住地)から商人がモーリシャス経由でマダガスカルへ、さらにアフリカ南部に移り住んだようだ。
モーリシャスでは18世紀後半、広州在住のフランス商人と提携した中国人商人の活動が確認されている。その後、19世紀初頭になって初代総督がマラッカ海洋に浮かぶペナン島での経験に基づいた中国人管理制度を導入し、苦力(華工)と呼ばれる裸一貫の労働者の組織的流入が始まっている。
中国南部、インドネシア、シンガポールからアフリカへ
中国南部沿海地方からの移住者はもちろんだが、オランダ殖民地のインドネシア、イギリス殖民地のシンガポールやペナンからの強制的移住もみられた。
つまり彼らは故郷である中国南部の沿海地域を離れ東南アジアの殖民地へ。さらにインド洋西部海域に浮かぶモーリシャスへ。モーリシャスから近辺に浮かぶレユニオン、セーシェルへ、あるいはマダガスカルへと移り住み、さらに現在の南アフリカの地に新しい生活空間を求めて移って行った。
19世紀半ば、中国南部を混乱に陥れた太平天国の指導層が客家系であったことから、太平天国崩壊後、弾圧を恐れた客家系が大挙して海外脱出を試みる。その波はモーリシャスにまで及んだ。(中略)
公務員、技術者、軍人、労働者、農民からマフィアまで
文化大革命(1966年~76年)の初期、東海岸中部に位置するタンザニアから内陸部で銅を産出する隣国のザンビアへのタンザン鉄道を敷設するために、中国は「労働人民の国際連帯」を掲げて数万の労働者を送り込む。タンザニアの首都ダルエスサラームの港から銅を積みだそうとしたのである。
だが、このイデオロギーを軸にしたアフリカ接近は、文革がそうであったように当初に掲げた理想とはかけ離れた結果に終ってしまった。
やがて胡錦濤政権(2002年~12年)の時代になると、アフリカは中国が経済発展を推し進めるために必要なエネルギーと鉱物資源の供給基地となった。
対外開放政策によって中国が手にした“新武器”である人民元が、それまでの硬直したイデオロギーである毛沢東思想に代わって華々しく、しかも集中豪雨のようにアフリカの大地に注がれたのである。官民を問わずに多くの中国人――公務員、技術者、軍人、労働者、農民からマフィアまで――が中国から移り住む。
アフリカは中国が国際政治というパワーゲームを展開するための有力な“持ち駒”になると同時に、中国で大量生産される安価な商品のための広大な消費市場に変貌してもいた。
次いで登場した習近平政権はアフリカとの関係を一層深める。それというのも、アフリカに「一帯一路」の重要な柱という役割を振り当てたからだ。
アルミニュウム、コバルト、コルタン及び関連鉱物、銅、ダイヤモンド、天然ガス、金、鉄、石油、プラチナ、錫、チタン、ウランなどの資源のみならず農地までをも貪欲に求める中国の影響力は初期の東部から始まり、中央アフリカ、南アフリカ、西アフリカ、北アフリカと拡大し、いまや北西アフリカ西沖合の大西洋上に浮かぶカーボベルデにまで及んでいる。
つまりアフリカ大陸を挟み、東のモーリシャス、セーシェル、レユニオンから西のカーボベルデに至る広大な範囲の各地で、いつの間にか中国人(華僑・華人を含む)の活動がみられない国はなくなっていた。
もちろん旧世代の華僑・華人と同じように1970年代末の対外開放後に移住した「新華僑」と呼ばれる新世代もまた同姓・同郷・同業などを軸とする相互扶助組織を持つ。(中略)
こう見ると、近年になって伝えられるようになった豊富な地下資源を弄ぶ強欲な独裁者たちの利害打算ゲームだけでは直ちに推し量れない関係が、中国とアフリカの間にはあったことが分かるだろう。中国の歴史の断片が、アフリカ各地に様々な形で刻まれている。中国とアフリカの結びつきは日本人の予想を遥かに超えて長く深かった。この点を等閑視してはならないだろう。(後略)【2020年5月6日樋泉克夫氏(愛知県立大学名誉教授)
WEDGE ONLINE】
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日本がアフリカとの関係について、“中国に対抗して”云々と言うのであれば、まずはこのアフリカとの関係性における圧倒的差の認識からスタートするべきでしょう。