(フン・セン首相と長男であるフン・マネ氏 【2021年12月2日 STAR CANBODIA】
フン・セン首相は「私は今日、息子が首相として継続することを支持することを宣言しますが、私たちは選挙を通過しなければなりません。」と語り、形式上「選挙」による民意でフン・マネ氏への権力移譲がなされたという形を整える構えです。 憲法上、議員内閣制であるカンボジアですが、上下院とも政権党が議席を独占し、政府提案は満場一致で通ることになっています。 その選挙からは有力野党は排除されます。)
【総選挙での権力世襲に向けて、野党を選挙から排除】
カンボジアのフン・セン首相の強権弾圧政治の動きが止まらないことは、首相の息子の越権行為を批判した独立系メディアの免許剥奪などについて、2月23日ブログ“タイとカンボジア 総選挙に向けた政治状況 タイは親軍勢力の「分裂選挙」 独裁色強めるカンボジア”でも取り上げました。
その独立系メディアの免許剥奪の際、フン・セン首相は「私と息子を攻撃しようとした。政府の尊厳は守らねばならない」と。(【2月13日 時事】より) 要するに、批判は一切許さないということです。
そうしてフン・セン首相が強引に推し進めるのは、息子の権力の世襲です。
****フン・セン氏長男が出馬へ カンボジア、世襲に前進****
カンボジアの政権与党、カンボジア人民党が7月に実施される下院選の候補者として、フン・セン首相の長男フン・マネット陸軍司令官の選出を決めたことが1日、党関係者への取材で分かった。
フン・マネット氏は既に後継首相候補に選ばれており、首相世襲に向け一歩前進したことになる。
党首であるフン・セン氏が決定書に署名したという。首相在任40年近くのフン・セン氏も引退はせず、別の選挙区から出馬する予定で、首相交代がいつになるのかは不透明だ。
カンボジアを実質支配する人民党の議員に選ばれれば、フン・マネット氏の政界での存在感がさらに高まる。国政を長年担ってきた指導層全体の世代交代も進みそうだ。【4月1日 共同】
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更に、フン・セン親子の権力世襲の邪魔になりそうなものを次々に排除しています。
カンボジアの裁判所は3月3日、旧最大野党・救国党の元党首で国家反逆罪に問われたケム・ソカ被告に対し、禁錮27年の判決を言い渡しました。政治活動も禁じられます。
****カンボジア元野党党首、反逆罪で禁錮27年*****
カンボジアの首都プノンペンの裁判所は3日、国家反逆罪に問われていた元野党党首ケム・ソカ氏(69)に禁錮27年を言い渡した。人権団体は、ケム・ソカ氏の裁判は政治的動機に基づいているとしている。
ケム・ソカ氏は解党された救国党の共同創設者。同氏は長年、アジアで在職期間が最長のフン・セン首相の政敵とされてきた。
裁判官は、ケム・ソカ氏が「国内外で外国人と共謀した」と述べた。
ケム・ソカ氏は判決後、すぐに自宅軟禁となった。家族以外との面会も禁じられる。選挙権と被選挙権も剥奪される。
ケム・ソカ氏は2017年、外国の組織と共謀し政府転覆を計画したとして逮捕された。同氏は繰り返し、これを否定している。
フン・セン首相は民主主義と自由を後退させるとともに、反対勢力を押さえつけるために司法制度を利用し、多数の反体制派活動家や人権活動家を投獄していると批判されている。
裁判を傍聴したパトリック・マーフィー駐カンボジア米国大使は、裁判と判決について「誤り」だと非難した。【翻訳編集AFPBBNews】
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政敵である旧最大野党・救国党を潰したのと同様に、総選挙に向けて、最近国民支持を広げてきた(解党に追い込まれた救国党の流れをくむ)野党・キャンドルライト党への弾圧を強め、ついに今年7月予定の総選挙から排除しています。
****再開した野党弾圧、6月選挙で健闘したキャンドルライト党にも****
<長男への権力世襲を狙うカンボジアのフン・セン首相。総選挙はまだ1年も先なのだが>
来年7月に総選挙を控え、カンボジアのフン・セン政権は再び野党勢力の大規模訴追に乗り出した。
2017年に解党を命じられた野党カンボジア救国党(CNRP)の党員ら34人が国家転覆罪などで起訴されたと、8月22日に地元メディアが報じた。亡命中のサム・レンシー元党首ら幹部が含まれるが、彼らは既に繰り返し起訴されている。
野党関係者の大規模弾圧は2020年以降、3度目。2013年総選挙でCNRPが大躍進したことに与党カンボジア人民党(CPP)が危機感を募らせて以降、100人以上が反逆や扇動の罪で起訴されている。
フン・セン首相は長男マネットへの権力移行を進めており、総選挙を前に基盤強化を狙う。
今年6月の地方選挙ではCNRP系の新党キャンドルライト党が健闘したが、政権は同党の弾圧も強めている。
野党勢力にとって残る手段は欧米各国に制裁を求めることくらいだが、今回の起訴でそれすら「外国勢力との共謀」と見なされる恐れもある。【2022年8月29日 Newsweek】
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****カンボジア 政権に抵抗する野党の総選挙への参加 選管が認めず****
ことし7月に総選挙が行われるカンボジアの選挙管理委員会は15日、現政権に抵抗する野党の選挙への参加を認めない決定を行いました。
カンボジアではこの政党への弾圧が続いていて、欧米諸国などから民主主義後退への懸念の声が出ています。
カンボジアでは、ことし7月に5年に1度の総選挙が行われますが、現地の選挙管理委員会は15日、フン・セン政権に抵抗する野党・キャンドルライト党の参加を認めない決定を行いました。
理由については、政党と候補者の登録手続きに必要な書類が提出されなかったためだとしています。
キャンドルライト党は、前回の総選挙前に解党に追い込まれた当時の最大野党・救国党の流れをくみ、今回の総選挙の前哨戦として注目された去年の地方選挙で与党に次ぐ議席数を獲得していました。
このため、前回の総選挙と同様、政権側が主要な野党を排除したという見方が広がっています。
長く続いた内戦後に始まったカンボジアの総選挙が民主的に実施されるよう日本も長年支援を行っていますが、40年近く続くフン・セン政権による抵抗勢力への弾圧が続いていて、欧米諸国などから民主主義後退への懸念の声が出ています。【5月16日 NHK】
理由については、政党と候補者の登録手続きに必要な書類が提出されなかったためだとしています。
キャンドルライト党は、前回の総選挙前に解党に追い込まれた当時の最大野党・救国党の流れをくみ、今回の総選挙の前哨戦として注目された去年の地方選挙で与党に次ぐ議席数を獲得していました。
このため、前回の総選挙と同様、政権側が主要な野党を排除したという見方が広がっています。
長く続いた内戦後に始まったカンボジアの総選挙が民主的に実施されるよう日本も長年支援を行っていますが、40年近く続くフン・セン政権による抵抗勢力への弾圧が続いていて、欧米諸国などから民主主義後退への懸念の声が出ています。【5月16日 NHK】
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****「総選挙参加資格の剥奪は不当」カンボジア有力野党の訴えを憲法評議会が棄却****
今年7月に行われるカンボジアの総選挙をめぐり、憲法評議会は、選挙資格の剥奪は不当だとする有力野党の訴えを棄却しました。(後略)【5月26日 日テレNEWS】
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批判するメディアは免許を剥奪し、野党は解党に追い込み、また、総選挙から排除する。そして息子への権力世襲を進める・・・“民主主義後退”というより、もはや民主主義でも何でもない単なる強権支配です。
【中国との関係 更に強固に】
こういう暴挙をASEANは問題にしないのか?とも思うのですが、「内政不干渉」云々以前に、ASEANはそもそもベトナム・ラオスのような社会主義国も加盟国ですから、いわゆる欧米的「民主主義価値観」を前提にしていません。
こういう強権支配体制は政治的にも中国の共産党支配と親和性が強いところですが、経済的にも強固な関係があり、カンボジアはラオス・ミャンマーとともに、ASEAN内にあっては中国の代弁者的な立場にあります。
****カンボジア「全ては中国の内政問題」ラオス「二つの中国への意図に反対」…批判しない姿勢で一貫****
カンボジアの首都プノンペンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の一連の外相会議では、米中など大国間の対立が先鋭化する中、ASEAN各国が国際情勢にどう向き合うかが改めて焦点となった。対立から距離を置こうとする国がある一方、中国寄りの立場を明確にする国も目立った。
対面3年ぶり
一連の会議が対面で開かれるのは3年ぶりだ。カンボジアは議長国として、国軍による市民弾圧が続くミャンマー情勢などに対し、足並みをそろえて対応して域内の結束を確かめることを目指した。
(2022年8月)5日に開かれたASEAN地域フォーラム(ARF)外相会議の冒頭、プラク・ソコン副首相兼外相は「一触即発の事態を回避するため、この会議は貢献できると信じている」と語った。
会期中にナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問し、中国が大規模演習を展開するなど地域の不安定さが増す中、ASEANが主催する一連の会議が地域の安定に向けた協議の場となるとの見方を示したものだ。
割れる対応
台湾問題を巡り、ASEAN各国の対応はわかれた。
シンガポール外務省は3日の声明で、「地域の平和と繁栄には、安定した米中関係が不可欠だ」と表明。マレーシアのサイフディン・アブドゥッラー外相も「我々は米中両国を重要視しており、双方の友人でいたいと考えている」と述べ、中立的な姿勢で米中双方に自制を求めた。
カンボジアの外交アナリスト、リム・ソクビー氏は、「これらの国々は米中双方と貿易など経済的な結びつきが深く、どちらかに肩入れはしたくない。米中のどちらかを選択するような事態を恐れている」と指摘する。
一方、カンボジアのクン・ポアク外務次官は4日、議長国として行った会見で、「カンボジアの立場としては、台湾や新疆ウイグル自治区、香港などは全て中国の内政問題だ」と述べた。
ラオスも外務省報道官の声明で、「『二つの中国』の状況を作り出そうとするあらゆる意図に反対する」と表明した。カンボジアとラオスは中国に経済で大きく依存しており、中国を批判しない姿勢で一貫している。(後略)【2022年8月6日 読売】
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今年2月にはフン・セン首相が訪中し、その関係強化を確認したことをCGTN(中国国営テレビ・中国中央電視台の英語による国際ニュース放送チャンネル)が伝えています。
****CGTN:65年を経て、中国とカンボジアの共同体が未来を共有する新時代を開く****
中国国民の古い友人であり良い友人でもあるカンボジア王国のフン・セン首相が旧正月明けの3日間、中国を公式訪問した。
2月9日から11日にかけて、フン・セン氏は中国指導層との会談のほか、「中国・カンボジア友好年」(China-Cambodia Friendship Year)の開始式や中国・カンボジアのビジネス・投資・観光フォーラムの開会式に出席し、外交、経済・貿易、開発協力、農産物、インフラ、メディアなどの分野に及ぶ一連の協力文書への調印を行った。
中国のSun Weidong外務副大臣は10日、China Media Group(CMG、中央広播電視総台)に、中国とカンボジアは国交樹立65周年を迎え、「1つの立場、6つの協力、2つの回廊」を通じて二国間協力をさらに進める用意があると述べた。
▽1つの立場
中国とカンボジアは11日、新時代における未来を共有する中国・カンボジア共同体の構築に関する共同声明を発表し、双方はフン・セン氏の訪問中に重要な合意に達した。
声明には、「国際情勢がどのように変化しようとも、中国とカンボジアは揺るぐことのない鉄壁の友情を深め、互恵的で双方に利益をもたらす実務協力を行い、未来を共有する共同体の構築を推進する」と記されている。(中略)
フン・セン氏は3年前と今回の訪問を通じて、カンボジア国民は常に中国国民と固く結ばれていることを明確なメッセージとして伝えたいと述べた。同氏は、カンボジアと中国の包括的戦略協力パートナーシップの成果をさらに推し進め、未来を共有するカンボジアと中国の共同体を協力して構築することを誓った。
▽6つの協力
フン・セン氏の訪問中、双方は中国・カンボジアの「ダイヤモンド・ヘキサゴン」協力枠組みについても合意に達した。
習国家主席が指摘したように、双方は政治、生産能力、農業、エネルギー、安全保障、人的・文化交流の分野で協力枠組みを構築できる可能性がある。フン・セン氏は中国の協力枠組みの提案に全面的に同意した。
この協力枠組みは、共同声明に主要6分野の詳細な協力計画が記述されている。
このように、両国はすでにいくつかの分野で実務的な行動を起こしている。フン・セン氏が出席した中国・カンボジアのビジネス・投資・観光フォーラムには、両国の政府・企業代表者約300人が参加した。(中略)
中国商務省によると、中国は11年連続でカンボジアの最大の貿易パートナーであり、2022年も二国間貿易額は過去最高を記録し、前年比17.5%増の160億2000万ドルに拡大した。
また、中国人観光客が徐々に東南アジア諸国に戻ってきたことで、カンボジアは観光業の回復に大きな期待を寄せている。パンデミック以前、中国はカンボジアを訪れる外国人観光客の最大の供給源だった。
カンボジアのタオン・コン(Thong Khon)観光大臣によると、1月に2万5000人の中国人観光客が同国を訪問し、2023年には80万人から100万人の中国人観光客を誘致しようとしている。
▽2つの回廊
共同声明で強調されたように、両国はシアヌークビル州を中心とした産業開発回廊およびトンレサップ湖地域の魚・米回廊の2回廊の構築に注力することでも合意した。
産業開発回廊を構築するために、中国はより多くの中国企業のカンボジアへの投資を奨励し、シアヌークビル経済特区(SSEZ)を促進することを習氏はフン・セン氏に語った。
11平方キロメートルにおよぶ同SSEZは現在、世界各国の約170の工場を擁し、総投資額は13億ドル以上で約3万人の雇用を創出している。
習氏が湖の近くで農業協力の取り組みを促したことから、両国は多次元的、複合的、効率的な近代的農業システムを備えた魚・米の回廊を共同で構築することに合意した。
カンボジア農林水産省が発表した報告書によると、中国は2022年、カンボジアの農産物の主要輸入国の1つだった。2022年の1月から11月の間に、約68万9702トンのカンボジアの農産物が中国に出荷された。【2月14日 PRwire】
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7月の“形式的”総選挙で与党が圧勝し、長男への権力世襲のレールを確かなものとし、カンボジア・中国関係はいよいよ強固に・・・ということのようです。