孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

台湾  トランプ氏復権で「見捨てられないか心配」 米の防衛協力「信じない」57.2%

2024-11-19 22:47:38 | 東アジア

(「台湾有事」が現実となった場合、日本政府は与那国島など先島諸島5市町村の住民を民間機やフェリーなどで九州・山口の8県に避難させる計画です。その数は12万人 【10月23日 読売】)

【台湾市民 「トランプ氏に見捨てられないか心配です。中国は台湾よりも経済とマーケットの力があるので」】
に続き、トランプ氏復権がもたらしている変化について、今回は台湾。

台湾は政治・経済・軍事の面で中国の「統一」に向けた圧力にさらされていますが、一方で経済的な中台の関係も深く、多くの台湾企業が中国に生産拠点を有しています。

しかしトランプ氏復権で中国製品への60%関税の課税が取り沙汰される状況で、台湾当局は台湾企業が中国から台湾に生産拠点を移すことへの支援を表明しています。

また、アリゾナ州では半導体ファウンドリー(受託製造)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が650億ドル以上の投資を行うとしており、同社に最大66億ドルの助成が発表されていいます。しかし、トランプ氏は選挙期間中、台湾が米国の半導体ビジネスを盗んでいると非難しており、復権に伴って補助金が取り消されるなどの変更も想定されています。【11月13日 JETROより】

****台湾、中国からの生産移転を支援へ トランプ氏の関税公約巡り****
台湾の郭智輝経済部長(経済相)は7日、トランプ次期米大統領が中国に関税を課すと公約していることに絡み、影響を受ける可能性がある企業が中国から生産拠点を移転するのを支援すると表明した。

来年1月に就任するトランプ次期大統領は、米国に輸入される中国製品に60%の関税を課すとしている。

台湾企業は過去40年間、低コスト化のため中国に多額の投資を行ってきた。一方で台湾当局は中国からの統一圧力が高まることを警戒し、台湾企業に中国以外への投資を促している。

郭氏は議会で、トランプ氏が中国に関税を課した場合、中国で生産活動を行う台湾企業への影響は「かなり大きい」と指摘。「できるだけ早期に台湾企業が生産拠点を移転できるような支援策を打ち出す」と述べた。詳細には触れなかった。

また、トランプ氏が半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)に対する補助金を取り消す懸念について議員から質問されると、不測の事態に備えた計画はあり、「TSMCが対米投資を拡大し続けるのはトレンドだ」と答えた。

TSMCは米アリゾナ州の新工場向けに650億ドルを投じている。同社は補助金に関する懸念について今のところコメントしていない。【11月7日 ロイター】
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上記のような経済問題も当面の話としてありますが、台湾の最大の懸念は、もし中国が武力による併合に乗り出したときトランプ政権は台湾を守ってくれるのか?という安全保障上の不安でしょう。

****「トランプに見捨てられないか心配」“アメリカ頼り”の台湾で心配の声 半導体業界からも「台湾企業の宿命」****
台湾では、アメリカ大統領選挙に勝利したトランプ氏が、どのような政策を行うのか注目されています。中国との緊張が高まり、アメリカを頼ってきた台湾だけに、今後を不安視する声も上がっています。

台湾の中心都市・台北市の飲食店。6日、アメリカ大統領選の開票状況を気にする人たちの姿がみられました。

中国との関係が緊張する中、台湾は軍事面などでアメリカを頼りとしてきましたが、市民からはトランプ氏が台湾への関与を弱めるのでは、と心配する声も聞かれます。

市民 「トランプ氏に見捨てられないか心配です。中国は台湾よりも経済とマーケットの力があるので」「驚きと恐れがあります。トランプさんはコントロールできないでしょう?」

半導体業界からも不安の声が。スマートフォンから生成AIまで幅広い用途で使用される半導体ですが、より性能の高い先端半導体の製造については、台湾が国・地域別シェアで68%と世界のトップです。

バイデン政権は国内製造を促進するため、受託製造世界トップシェアの「TSMC」をはじめ、台湾企業がアメリカに工場を建設する場合は、巨額の補助金を支給するとしていますが、台湾のエンジニアは。

台湾の半導体業界で働くエンジニア
「トランプ氏はバイデン政権のように(台湾の半導体産業が)アメリカへ移転するために補助金を使うのではなく、より政治的手段を使ってアメリカへの移転を加速させるだろうと思います」

ブルームバーグ通信などによると、トランプ氏は補助金には否定的で、「我々から半導体事業を奪った」と台湾をけん制。高い関税を課すことを示唆したといいます。

台湾の半導体業界で働くエンジニア
「これは台湾企業の宿命だと思うので(トランプ氏の方針に)協力せざるを得ないと思いますが、私自身はうまくいくとは思っていません」

不安も渦巻く中、トランプ氏はどのような台湾政策を進めるのでしょうか。【11月8日 TBS NEWS DIG】
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“中国は台湾よりも経済とマーケットの力がある”・・・・理念よりも実利的な「ディール(取引)」を好み、常に「自国第一」をアピールしているトランプ氏ですから、仮に関税問題で中国との厳しい対立が起きたとしても、最後は(アメリカと中国にとっての)「ウィン・ウィン」のディールがなされ、そこでは台湾への配慮は捨てさられる・・・・そんなことも十分に想定されます。

【トランプ氏 台湾有事にも関税対応 「台湾は防衛費を払うべきだ。われわれは保険会社のようなもの」】
ましてや、台湾有事の際の軍事介入となると、そんなアメリカにとって“一文の得にもならない”ことへトランプ氏が乗り出すことは考えにくいようにも思えます。

トランプ氏本人が「私が(軍事力を使う)必要はないだろう」と語っています。

****トランプ氏、台湾有事なら「中国に最大200%の関税」 軍事力は使用せず=WSJ****
 米大統領選共和党候補のトランプ前大統領は、中国が「台湾に侵攻」した場合、中国に追加関税を課す意向を示した。18日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた。

WSJのインタビューでトランプ氏は「もしあなたが台湾に侵攻するなら、申し訳ないが、150―200%の関税を課すつもりだと言うだろう」と述べた。

中国による台湾包囲に対して軍事力を使用するかとの質問に対しては、習近平国家主席は自分に敬意を抱いており、そのような事態にはならないと回答。

「私は彼と非常に強い関係を築いていた」と述べ、「彼は私を尊敬しており、私が著しくクレイジーであることも知っているので、私が(軍事力を使う)必要はないだろう」との見方を示した。(後略)【10月20日 ロイター】
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さすが自称「タリフマン(関税男)」、ここでも関税です。
またトランプ氏は、「台湾は防衛費を払うべきだ。われわれは保険会社のようなもの」とも。「保険会社」というよりカネで動く「用心棒」でしょう。

【台湾有事の際の米国の防衛協力を「信じる」:29.8%と過去最適に急落 「信じない」:57.2%】
ただ、中国にとって核心中の核心である台湾問題は、利害損得の範囲外のところがあります。また、習近平国家主席が「仮に台湾侵攻でアメリカとの経済関係が崩壊して経済混乱が起きても、国民は「統一」の方を評価する。トランプ氏もやがては中国の巨大市場を考えて関係修復に動く」と踏んで、武力統一に動く・・・というシナリオもあるでしょう。

台湾世論もトランプ氏の防衛強力をあまり信用していません。

****台湾世論の対米信頼低下=防衛協力「信じる」13ポイント減****
台湾の民間シンクタンク「台湾民意基金会」は19日、トランプ次期米大統領の当選を受けた世論調査結果を公表した。

中国が台湾を侵攻した場合、米国の防衛協力を「信じる」と答えた人の割合は前回の昨年2月調査比で13ポイント減となる29.8%に落ち込んだ。

「信じる」人の割合は2020年9月調査以降で最低。逆に「信じない」と回答した人は10.7ポイント増の57.2%と過半数を占めた。

米歴代政権は台湾防衛を明確にしない「曖昧戦略」を取ってきたが、バイデン大統領は台湾有事に対する軍事介入を繰り返し明言。

一方、トランプ氏は米台の地理的な遠さを指摘し、「台湾は防衛費を払うべきだ。われわれは保険会社のようなもの」などと発言した。台湾社会では米依存への懐疑論や動揺が広がり、米台離間を図る中国に好都合な展開となっている。

調査は20歳以上の約1000人を対象に、米大統領選後の今月11〜13日に実施した。【11月19日 時事】 
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【中国による“日頃から偽情報の流布や選挙介入、台湾軍兵士への接近などの浸透工作” 台湾軍の情報セキュリティーに問題も】
台湾においては、これまで避けてきたような中国の台湾侵攻という問題が映画・ドラマでも真正面から取り上げらるようになってきたことは10月10日ブログ“台湾  中国の圧力・脅威が強まるなかでの変化 中国の台湾侵攻を題材にしたドラマも”でも取り上げました。

****中国の「台湾侵攻」描くドラマ「零日攻撃」、台湾有事に警鐘…中国の浸透工作シナリオに「予告編を見て緊張した」****
台湾で中国による侵攻と浸透工作を描く初のドラマ「零日攻撃(ゼロ・デイ)」(全10話)の撮影が進み、話題を呼んでいる。中国による軍事的威圧が常態化する中、重苦しいテーマに正面から挑む作品で、制作関係者は台湾有事に警鐘を鳴らしたいとしている。

公開中の予告編動画によれば、中国が消息不明になった自軍機を捜索救助する名目で、台湾周辺の海域を封鎖する設定だ。ドラマでは、中国ハッカーによるサイバー攻撃や台湾に潜伏する内通者の反乱が起こるほか、半導体関連の株価は暴落し、在留外国人は脱出を図る。

中国が日頃から偽情報の流布や選挙介入、台湾軍兵士への接近などの浸透工作を図る中で描く有事のシナリオに、制作で助言した台湾の国防安全研究院の蘇紫雲スウズーユン・国防戦略資源研究所長は「予告編を見て私も緊張した」と話す。

制作を手がけるプロデューサー兼脚本総括の鄭心媚さんは、中国の侵攻を「デリケートな話題であり、私たちはいつもその話を避けてきた」と語る。制作の意図について「中台間で戦争が起きたり、台湾が中国の一部になったりすれば、話す機会がなくなるため、今こそ話すべきだ」と訴える。

危機に際して台湾の人びとがどう選択するのか、様々な意見を取り入れようと30〜60歳代の監督9人を起用した。脚本作りには軍事などの専門家が協力した。

制作費2億3000万台湾ドル(約10億9600万円)のうち3割を台湾当局が補助し、軍も制作に協力する。野党は、中国と距離を置く民進党政権のプロパガンダだと批判するが、予告編の動画の再生回数は196万回を超え、反応は上々だ。【11月8日 読売】
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中国による“日頃から偽情報の流布や選挙介入、台湾軍兵士への接近などの浸透工作”については、下記のような話も。

****台湾の親中国政党「中華統一促進党」、当局が解散請求へ…中国から3億5300万円受領し世論工作か****
台湾内政部(内政省)は6日、中国とのつながりが深いとされる政党「中華統一促進党」が組織的に中国のために働き、台湾の治安や社会秩序を破壊しようとしているとして、憲法裁判所にあたる司法院の法廷に解散を請求すると発表した。

2005年成立の同党は、台湾の歴代政権が受け入れを拒んできた「一国二制度」下での中台の統一を目指している。

同党幹部の男と妻は4日、中国から約7400万台湾ドル(約3億5300万円)を受領し、1月の総統選や立法委員(国会議員)選などで世論工作をしようとしたとして台湾の検察に起訴されていた。

内政部によると、同党は選挙妨害や組織暴力など、幅広い犯罪にも関わっているという。10年から今年までに殺人や強盗、国際的な人身売買などの犯罪に関与したとして、党員計134人が摘発された。【11月7日 読売】
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台湾軍及び台湾市民の防衛意識の問題もありそう。台湾住民のスマホ投稿で軍事情報が中国側に筒抜けになっている実態も。

****「スマホ投稿」が暴露した秘密...台湾防衛が中国に筒抜けとなる理由****
<市民がスマホで撮影した画像がネット上にあふれ、対艦ミサイルの位置情報が中国軍に筒抜けに>
それは台湾ではありふれた一日だった。中国がまたもや軍事演習を行ったのだ。

中国軍の艦船と軍用機が台湾周辺を威嚇的に旋回するのは毎度のこと。台湾軍も心得たもので、いつものように各部隊に緊急出動を命じた。

とりわけ重要な任務を担うのは、移動式の地上発射型対艦ミサイルを運用する機動部隊だ。実戦では、これらの部隊が本島各地の秘密の地点からミサイルを発射し、台湾上陸部隊を乗せた中国の艦船を撃沈することになる。

ところが、台湾側が知らないうちに機動部隊の動きはインターネット上にさらされ、秘密のはずのミサイル発射地点を、中国側がピンボイントで狙える状態になっていた。実戦であれば、機動部隊は装備もろともあっという間に吹き飛んでいたところだ。

これは台湾の頼清徳(ライ・チントー)総統の就任式が行われた今年5月20日の数日後に実際に起きた出来事である。(中略)

5月23日の演習では、いつもどおり台湾側もそれに対抗して周辺海域と空域に部隊を派遣したが、実弾は1発も発射されず、程なく中国は演習を終了。台湾政府はあたかも勝利宣言のように防衛体制は万全であり、何の心配もないと市民に保証した。

だがその後6月に中国最大のソーシャルメディアアプリ微信(ウェイシン)に、ある記事が載った。これは中国の防衛関連企業「北京藍徳信息科技」が投稿した記事で、一般公開されている。

記事が主に扱っているのは、地対艦ミサイルを運用する台湾軍の機動部隊が5月の演習時にどう動いたか。これらの機動部隊は「海鋒大隊」に所属している。(中略)

問題の記事は、海鋒大隊の12の基地の地理的位置を正確に伝えている。恒久的なミサイル発射基地は敵に見つかりやすい。台湾軍も自軍の基地が中国軍に知られていることを想定して、機動部隊を使うことにしたのだ。機動部隊は台湾各地に散らばり中国軍の上陸部隊を壊滅させつつ、飛来するミサイルを巧みにかわして任務を全うするはずだ。少なくとも理論上は。

海鋒大隊所属の機動部隊は通常、3〜4台のミサイル発射台と護衛のための数台の支援車両で構成される。台湾島内を自在に動き回り、発射地点で素早く準備し、中国軍の艦隊にミサイルを撃ち込み、反撃されないうちにさっさとその場を去る。「シュート・アンド・スクート(撃って逃げる)」と呼ばれる戦術だ。

政府と軍の「自殺行為」
だが問題の記事を投稿した企業は5月23日、台湾の機動部隊の数カ所の発射地点を正確に突き止めていた。(中略)

この中国企業は台湾軍にスパイを潜入させていたわけでも、最先端のハッキング技術を使ったわけでもない。台湾の人々(ジャーナリストもいるが、多くは一般市民)が移動中の機動部隊を見つけ、スマホなどで撮影し、ソーシャルメディアに投稿したのだ。(中略)

台湾のメディアやネット民は正確な場所までは示していないが、中国側が入手した画像を基にグーグル・マップなどを使って調べれば、簡単に発射地点が分かる。この中国企業は機動部隊の移動ルートや移動にかかった時間まで割り出していた。

ここ数年、スマホとソーシャルメディアの普及に伴い、一般の人たちが目撃した場面を撮影してネットに投稿するようになった。この手のOSINT(オープンソース・インテリジェンス)が軍事的にも利用されることはウクライナ戦争を見れば明らかだ。

ところが、台湾軍の上層部は自軍の機動部隊を中国のミサイルから守るために必要な情報セキュリティーをいまだ採用していない。(中略)

中国の商用リモートセンシング衛星システム・吉林1号は、報道によると昨年には既に138基が軌道上にあり、地球上の任意の地点の最新画像を宇宙から10分おきに撮影できる。軍と国の情報機関は数百基の強力なスパイ衛星群を利用している。

中国は既に台湾のあらゆる場所を常時追跡できる、というのは大げさかもしれない。しかし、今回の微信の投稿が示すとおり、中国の情報関連能力は急速に進化しており、ソーシャルメディア時代に台湾が機密を隠し切れないという現実がそれを助けている。

台湾軍はより慎重かつ柔軟な戦術で活動しなければ、戦争の初期段階で、最も重要な防衛資産を中国にたやすく破壊されかねない。(後略)【11月7日 Newsweek】
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“台湾国防部(国防省に相当)は【8月)30日、中国軍に関する年次報告書を議会に提出した。中国は装備を保有していないため台湾を「完全に」侵攻する能力はないが、先進的な新兵器を投入していると指摘した。また外国の貨物船に対する検査など、台湾を脅かす他の選択肢もあるとの認識を示した。”【8月30日 ロイター】

それならいいけど、台湾軍の防衛能力は?

以前のブログでも触れたように、台湾有事となれば日本も厳しい対応を迫られます。
もしアメリカが軍事的に動くとすれば、その最前線基地は日本にある米軍基地です。日本政府がこの米軍基地使用を認めないように中国は日本に圧力をかけてくる可能性もあります。

台湾周辺の沖縄県先島諸島からは12万人の住民を避難させる計画とか。どうやって?
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