孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

同性婚の法制化 「関係ない人にはただ、今までどおりの人生が続くだけです」

2023-02-04 23:02:46 | ジェンダー

(【2021年6月23日 エコノミスト】
日本の大手新聞社調査によれば、「同性婚を認めるべき」が2015年調査の41%から2021年調査では65%に増加、「認めるべきではない」は37%から22%に減少しています)

【「見るのも嫌だ。隣に住んでいたら嫌だ」】
報道されているように、同性婚をめぐって「見るのも嫌だ」などと発言した荒井勝喜総理大臣秘書官について、岸田首相は、政権の方針と相いれない発言で言語道断だとして、更迭したことを明らかにしました。

****岸田首相 同性婚「見るのも嫌だ」などと発言の荒井秘書官 更迭****
(中略)荒井秘書官は3日夜、オフレコを前提にした記者団の取材に応じた際に、同性婚についての見解を問われ「見るのも嫌だ。隣に住んでいたら嫌だ。人権や価値観は尊重するが、認めたら、国を捨てる人が出てくる」などと発言しました。

しかし、発言への批判が相次いだことから改めて取材に応じ、不適切な発言だったとして撤回し、謝罪しました。

岸田総理大臣は、訪問先の福井県で記者団に「大変深刻に受け止めており、秘書官の職務を解く判断をした。本人からも辞意があった」と述べ、荒井秘書官を更迭したことを明らかにしました。

そして、荒井氏の後任には、経済産業省の伊藤禎則秘書課長の起用を決めたと説明しました。

その上で、荒井氏の発言について「今の内閣の考え方には全くそぐわない言語道断の発言だ。『性的指向』や『性自認』を理由とする不当な差別や偏見はあってはならない」と述べました。

また、みずからの任命責任を問われ「任命責任を感じているからこそ今申し上げた対応をとっている」と述べました。

荒井氏は、経済産業省出身で、岸田内閣が発足したおととし10月から総理大臣秘書官を務め、広報やメディア対応を担当し、岸田総理大臣の演説などの原稿の執筆役も担っていました。(後略)【2月4日 NHK】
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荒井秘書官は、「首相秘書官室全員に聞いても同じことを言っていた」とも発言。同時に「LGBT(の人)も好きでなっているわけじゃない。サポートしたり、救ってあげたりしないといけない」と語っていました。

荒井秘書官の発言は、岸田首相が2月1日の衆院予算委員会で同性婚に関し、「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」として慎重に対応する考えを示した答弁に関する記者の質問に対してなされたものです。

****岸田首相 夫婦別姓や同性婚「改正で家族観 価値観 社会が変わってしまう」****
岸田総理大臣は、夫婦別姓や同性婚について「制度を改正すると、家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と述べ、慎重な検討が必要だという考えを示しました。

岸田総理大臣は、2月1日の衆議院予算委員会で、児童手当をめぐって自民党が民主党政権時代に所得制限の導入を主張したことについて「この10年の間に子ども・子育て政策のニーズ自体も大きく変化し、より経済的な支援を重視してもらいたいと、求められる政策も変わってきた」と述べました。

そのうえで、与野党双方から所得制限の撤廃に加え18歳までの支給対象の拡大などを求める声が出ていることを踏まえ、政府として内容の具体化を進める考えを改めて示しました。(中略)

また岸田総理大臣は、夫婦別姓や同性婚について「制度を改正するということになると、家族観や価値観、そして社会が変わってしまう課題なので、社会全体の雰囲気のありようにしっかり思いをめぐらせたうえで判断することが大事だ」と述べ、慎重な検討が必要だという考えを重ねて示しました。【2月1日 NHK】
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【急速に変化する社会】
十数年前、所得制限なしの子供手当支給に対し「愚か者めが」と罵声を浴びせた自民党でしたが、「ニーズも、求められる政策も変わってきた」との首相の認識です。 同性婚については?

東京都は昨年11月から同性カップルを公的に認める「パートナーシップ宣誓制度」の運用を開始しました。

****東京都、同性パートナーを公認 「宣誓制度」の運用開始****
東京都は1日、都内に居住または勤務する同性カップルを公的に認める「パートナーシップ宣誓制度」の運用を開始した。日本では同性婚が認められておらず、同制度の開始は待ち望まれていた。

LGBTなど性的少数者のカップルは、都から受理証明書を受け取ることで、住宅、医療、福祉などさまざまな公共サービスで結婚したカップルと同等の扱いを受けられる。これまでに少なくとも137組からの届け出があった。

東京都では2015年、渋谷区が国内初の同性パートナーシップ証明制度を導入。以降、全国200以上の自治体が同様の制度を設けている。結婚と同じ法的権利は保障されないが、性的少数者に対する差別の撲滅につながると期待されている。 【2022年11月2日】
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性的マイノリティーの権利を守る活動をする認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」(大阪市)と渋谷区の共同調査によると、性的マイノリティーのカップルを公的に認める「パートナーシップ制度」を導入している自治体は9府県を含めて239(2022年10月11日時点、人口でみると全国の55.6%を占めるとのことで、東京都の開始により、6割を超すのは確実な状況です。

アメリカでは、日本以上にドラスティックに変化しています。おそらく日本もスピードに差はあれ、同じような流れをたどるのではないかと想像されます。

****米 同性婚の権利を連邦レベルで保障する法律 大統領署名で成立****
アメリカで、同性どうしによる結婚の権利を連邦レベルで保障する法律が、バイデン大統領の署名で成立しました。
首都ワシントンのホワイトハウスでは13日、記念の式典が開かれ、バイデン大統領が、「平等と自由に向けて重要な一歩を踏み出す日だ」と述べたあと、法案に署名し法律が成立しました。(中略)

アメリカでは、2015年に連邦最高裁判所が同性婚を認める判断を示し、すべての州で事実上、合法化されていますが、保守派の判事が多数派を占めるようになった連邦最高裁が、同性婚についてのこれまでの判断を覆す可能性が指摘されています。

今回、成立した法律では、仮に連邦最高裁が判断を覆し、一部の州で同性婚が禁止されたとしても、同性婚が認められているほかの州から移動してきたカップルの権利は維持されることになっていて、法案を提出した民主党としては先手を打った形です。

アメリカの2020年の国勢調査によりますと、同性どうしのカップルの世帯数は全体の1.5%に当たる98万世帯となっていますが、同性婚を認めるか認めないかをめぐっては、保守層とリベラル層の間で長年対立が続いています。【2022年12月14日 NHK】
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世論の同性婚への賛否は、ここ10年でほぼ逆転しました。
ピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、マサチューセッツ州が同性婚を初めて容認した2004年当時は同性婚支持が31%に対し、反対が60%でした。

しかし、2019年には支持が61%、反対が31%と逆転しています。


【「同性愛宣伝禁止法」のロシアメディア 「岸田首相が率いる保守の自民党議員の多くは認めることに反対している」】
荒井秘書官の更迭は、海外メディアでも報じられています。5月に広島市で主要7カ国首脳会議(G7サミット)を控えるなか、先進国のなかで同性婚を認めていない日本の異質性と合わせて取り上げられています。

一方、性的少数者(LGBTなど)の情報発信を事実上、禁止したロシアの国営タス通信は、荒井氏の発言を紹介し、「岸田首相が率いる保守の自民党議員の多くは認めることに反対している」と伝えています。

ロシアでは昨年12月、「同性愛宣伝禁止法」にプーチン大統領が署名して成立。性的少数者を小児性愛などとまとめて「非伝統的な性的関係」だとし、メディアや書籍を含めて情報発信をほぼ禁止。すでに違法とみなされる恐れのある本の公開を取りやめたほか、大手書店で販売を取りやめる事態となっています。

【「同性婚を認めても、関係ない人にはただ今まで通りの人生が続くだけ」】
同性婚への社会の理解・支持は変わりますが、同性婚を認めることで「家族観や社会が変わってしまう」のか?
その変化は忌避すべきものなのか?

****同性婚で社会が変わる?合法化から17年のスペインから見る同性婚の価値観****
同性婚の法制化をめぐって岸田総理が「家族観や社会が変わってしまう」と発言し、さらに首相秘書官がその発言について「僕だって見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」とコメントをしたというニュースをSNSで目にしました。

国のトップやその秘書官がこう言った差別的な発言をしれっとしてしまうことに驚きを隠せませんが、今日はこれを機会にスペインでは同性婚を始め家族の多様性についてどのような動きがあるのかを紹介したいと思います。
  
同性婚は2005年から合法
スペインでは、2005年7月3日から同じ性を持つ2人の婚姻(同性婚)が法律で認められています。(中略)

この法が制定された時、当時のホセ・ルイス・サパテロ首相は演説でこう述べています。「皆さん、私たちは遠くにいる奇妙な人たちに向けて法制定をしているわけではありません。私たちは私たちの隣人、仕事仲間、友人、家族が幸せになる機会を広げるとともに、よりまともな国を構築しているのです。まともな社会というのは、国民たちを辱めることのない社会です。」

オランダ、ベルギーに続いて世界で3番目に同性婚を合法化したスペインでは、これまで4万組を超える同性カップルが法的に夫婦として認められてきました。

スペインに住んでいて同性カップルを見かけることは珍しくありませんし、同性カップルに対して冷たい視線を向ける人を見ることもありません。

同性カップルの存在はもはや当たり前の存在なので、同性婚に対して周りの友人に意見を聞いても「普通じゃない?好きな人と一緒にいたいなら勝手にすればいいと思うよ。自分たちには関係ないし。」と、特に男女のカップルと区別していないという印象を受けました。

家族観や価値観は他人の結婚で変わるものなのでしょうか。具体的にどう変わるのか私には想像がつきません。愛し合う2人が夫婦になることの何がいけないのでしょう。
  
16の家族の形を発表
同性婚を認めて17年。スペイン社会は多様性へ向けて年々変化しています。去年12月、社会権省のロネ・べララ大臣は新しい「家族法」を発表しました。

この法律には3歳未満の扶養児童1人につき月100ユーロの子育て支援、2親等以内の親族や同居人の世話(怪我・病気等)をするための年5日の有給介護休暇、子どもが8歳になるまで継続・中断可能な8週間の育児休暇などの内容が含まれています。そのほかに「父親・母親・子供」という従来の家族のステレオタイプを取り除き、多様性教育や補助金支給に役立てるために「16タイプの家族」というリストも今回の法で定められました。

リストには「片親家族」「同性婚家族」「養子縁組家族」「事実婚家族」から、「複数民族家族」「多国籍家族」「移民家族」「貧困家族」など16種類にわたる家族の形が記載されています。今後これらは学校の多様性教育にも組み込まれていくそうです。

社会は変わらなければいけない
今回はスペインの同性婚や家族の多様性について紹介しましたが、世界でこのような動きがどんどん進んでいます。2019年には隣国台湾が、2022年にはチリ、スイス、スロヴェニア、キューバが同性婚を合法化しているのです。

社会や世界の価値観がどんどん変化し前進している中で、それらの変化を恐れて古い当たり前にすがりつき立ち止まってしまうことは、世界からどんどん遅れをとっていくことを意味するでしょう。

「よそはよそ、うちはうち」と言われたらそれまでですが、それは日本が所詮それまでの国であることを認めることになるのではないでしょうか。私は日本も同性婚を法制化するべきだと思いますし、法制化をしないということは差別だと認識しています。(後略)【2月4日 松尾彩香氏 Newsweek】
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岸田首相の言うように、同性婚法制化によって社会の価値観の変化が後押しされるというのは事実でしょう。

ただ、一部の者を極度に抑圧する現状について、変わるべきものは変わらなければいけないし、それによって異性婚の者が不利益を被るものでも、価値観を強制されるものでもありませんので、その変化を恐れる必要もない・・・ということでしょう。

今回の「騒動」で、ニュージーランドの元議員のスピーチが改めて注目を集めています。2013年に当時議員だったモーリス・ウィリアムソン氏が、同性婚を認める法案の最終審議と採決の際に行ったものです。

****「同性婚を認めても、関係ない人にはただ今まで通りの人生が続くだけ」*****
(2013年に当時議員だったニュージーランドのモーリス・ウィリアムソン氏が、同性婚を認める法案の最終審議と採決の際に行ったスピーチ)

「『不自然なもの』を支援していると批判されました」
私の選挙区の有権者に、「同性婚を認める法案が通れば、その日からゲイによる総攻撃が始まるだろう」と言った聖職者がいました。 

ゲイの総攻撃って、どんなものでしょうね。大勢のゲイたちが軍隊となって高速道路を攻めてくるんでしょうか? それともガスか何かが流れてきて、私たちを選挙区に閉じ込めてしまうんでしょうか? 

カトリックの聖職者にも、私が『不自然なもの』を支援していると批判されました。面白いですね。だって、一生独身、禁欲の誓いを立てた人がそう言うんです。まぁ、私には禁欲がどんなものかはよくわかりませんけどね。 

『永遠に地獄の業火で焼かれるだろう』とも言われました。間違いです。私は物理学の学位を持っています。自分の体重や体水分率を測って、熱力学の式で計算しました。もし5000度の火で焼かれたら、たった2.1秒で燃え尽きます。これはとてもじゃないけど永遠とは言えないですよね。 

養子縁組についてひどい意見もありました。私には3人の素晴らしい養子がいます。養子縁組がどんなに素晴らしいか知っていますし、だから、そういう意見がくだらないものだとわかります。邪悪ないじめです。私は小学校の時から、いじめには屈しないと決めています。

「この法案が社会にどういう影響があるか、心配しているんでしょう。言わせてください」
反対する人の多くは、この法案が社会にどういう影響があるかということに関心があり、心配しているんでしょう。
その気持ちはわかります。自分の家族に起こるかもしれない「何か」が心配なんです。

 繰り返しになりますが、言わせてください。 今、私たちがやろうとしていることは「愛し合う二人の結婚を認めよう」。ただそれだけです。 

外国に核戦争をしかけるわけでも、農作物を一掃するウイルスをバラ撒こうとしているわけでもない。お金のためでもない。 

単に、愛し合う二人が結婚できるようにしようとしているのであり、この法案のどこが間違っているのか、本当に理解できません。なぜ、この法案に反対するのかが。自分と違う人を好きになれないのはわかります。それは構いません。みんなそのようなものです。

「関係ない人にはただ、今までどおりの人生が続くだけです」
この法案に反対する人に私は約束しましょう。水も漏らさぬ約束です。 明日も太陽は昇るでしょうし、あなたの10代の娘はすべてを知ったような顔で反抗してくるでしょう。明日、住宅ローンが増えることはありませんし、皮膚病になったり、湿疹ができたりもしません。布団の中からカエルが現れたりもしません。 明日も世界はいつものように回り続けます。だから、大騒ぎするのはやめましょう。

この法案は関係がある人には素晴らしいものですが、関係ない人にはただ、今までどおりの人生が続くだけです。 

最後になりますが、私のところに、この法案が干ばつを引き起こした、というメッセージが来たんです。この法案が干ばつの原因だと。

ええと、私のTwitterアカウントをフォローしている方はご存知かもしれませんが、パクランガでは今朝、雨が降ったんですよ。 そしたら、今まで見たことがないくらい、大きな虹が見えたんです。ゲイ・レインボーが。 

これは、しるしに違いありません。あなたがもし信じるならば、間違いなく、しるしです。 

結びとして、この法案を心配している全ての人のために、聖書を引用させて下さい。旧約聖書の申命記、1章29節です。 「恐れることなかれ」【2月2日 HUFFPOST】
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