孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエル  国内外に多くの問題を抱えるネタニヤフ首相 来年になれば援軍トランプ氏が復権

2024-11-22 23:49:47 | 中東情勢

(【11月17日 ABEMA news】)

【ネタニヤフ首相 今年限りのバイデン大統領を辛辣に批判】
イスラエルを支持するアメリカ・・・という構図は今も変わっていません。

****ガザ即時停戦決議案、米の拒否権で否決 停戦めぐり米の拒否権行使は5回目****
パレスチナ自治区ガザ地区で人道危機が深刻化する中、国連の安全保障理事会は20日、即時停戦を求める決議案を採決しましたが、アメリカが、またしても拒否権を行使し、否決されました。

イスラエルとイスラム組織ハマスによる戦闘が続くガザ地区をめぐり、日本を含む非常任理事国10か国が共同提案した安保理決議案は、すべての当事者に即時かつ永続的な停戦を求めています。また、無条件での人質の解放や人道支援の確保を呼びかけています。

採決では、理事国15か国のうち日本を含む14か国が賛成しましたが、イスラエルの後ろ盾となっているアメリカが拒否権を行使し、否決されました。投票後、アメリカは、「人質の解放を伴わない無条件の停戦は支持できない」と反対の理由を説明しました。

米・ウッド国連代理大使「この決議案はハマスに対して『交渉のテーブルに戻る必要はない』という危険なメッセージを送ることになる」

去年10月以降、ガザ地区での停戦などを求める決議案にアメリカが拒否権を行使するのは、今回で5回目です。【11月21日 日テレNEWS】
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ただ、アメリカ国内にはアラブ系市民や若者の反イスラエルの動きが先の大統領選挙でも注目されましたし、戦闘を終息させたいバイデン大統領と戦闘を継続したいイスラエル・ネタニヤフ首相の間には溝もあります。

来年の政権交代を控え、もはや「死に体」となったバイデン大統領に遠慮する必要がなくなったネタニヤフ首相は辛辣な発言も。

****イスラエルのネタニヤフ首相、米バイデン大統領の判断を的外れと批判 ガザ地区の戦闘について****
イスラエルのネタニヤフ首相は18日、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘について、アメリカのバイデン大統領の判断は的外れだったと批判しました。

イスラエルメディアによりますと、ネタニヤフ首相は18日の演説で、ガザ地区での戦闘を巡り、分岐点におけるバイデン大統領の判断を繰り返し批判しました。

ネタニヤフ首相は、ガザ市やハンユニス、とりわけエジプトとの境界があるラファへの地上部隊の投入に、アメリカが反対したと発言。

イランがイスラエルに大規模攻撃を行った際にも「報復する必要はないと言われたが、我々は行った」とし、助言は的外れだったと主張しています。

一方、トランプ氏が大統領に就任した後、イランの核開発計画に対抗するイスラエルの軍事力をアメリカとともに見直すだろうとも語っています。

ネタニヤフ首相は、先月のイランへの攻撃により、核開発計画に関する一部施設に打撃を与えたことも明らかにしました【11月19日 日テレNEWS】
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ネタニヤフ首相が期待していたトランプ氏が復権することで、アメリカとイスラエルの間の溝は完全に埋まり、両国は一体となって行動することになります。

イスラエル側は、完璧にイスラエル支持のトランプ氏復権に花を添える「贈り物」を用意しているとも報じられました。

****イスラエル、レバノンでの停戦案準備か トランプ次期大統領へ““贈り物”****
アメリカの有力紙「ワシントン・ポスト」は13日、イスラエルが、アメリカのトランプ次期大統領への「贈り物」となるよう、レバノンでの停戦案を準備していると報じました。

レバノンの首都ベイルート近郊などでは13日、イスラエルから複数のミサイルが着弾し、6人が死亡、15人がケガをしました。

イスラエルとイスラム教シーア派組織ヒズボラとの間で戦闘が続く中、ワシントン・ポストは13日、イスラエル当局者の話として、レバノンでの戦闘終結に向けて、イスラエルが停戦案を準備していると報じました。

アメリカ大統領選でイスラエル寄りの姿勢を示すトランプ氏が勝利しましたが、就任する来年1月に向けて、レバノンでの停戦合意という「外交成果」を用意することで、イスラエル高官は「トランプ氏に対する『贈り物』となる」との認識を示したということです。【11月14日 日テレNEWS】
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レバノン・ヒズボラに関しては、現在アメリカ提案の停戦案をヒズボラ側が同意し、あとはイスラエルがこれに同意するのかどうか・・・イスラエル有利に事を運んでくれるトランプ氏就任を待つのかどうか・・・国内事情から戦闘をなるべく長く継続したネタニヤフ首相が停戦に語彙するのかどうか・・・という段階にありますが、そのあたりはまた別機会に。

【国内には、保身のための司法改革、人質解放の遅れへの強い批判が】
イスラエルの国内事情に目を向けると、対ハマス・対ヒズボラで強気姿勢を貫くネタニヤフ首相ですが、国内では強い批判もあります。

ハマスとの戦闘が始まる以前から、ネタニヤフ首相は収賄や詐欺、背任などの罪に問われて起訴されており、自分の裁判が有利に運ぶように司法制度を変更しようとしているとして、強い批判にさらされていました。

ハマスとの戦闘が終わると、裁判が再開され、政治的にも上記司法改革への批判、ハマス襲撃を許したことへの批判が強まり、総選挙で権力の座を失うということになるので、なるべく戦闘が長く続くように停戦を拒否してきた・・・また、停戦・人質解放より「ハマス壊滅」を掲げての戦闘継続を優先させている・・・・との批判があります。

*****イスラエル・ネタニヤフ首相自宅に照明弾 反政府活動家3人逮捕 首相不在でけが人なし****
イスラエルで16日夜、ネタニヤフ首相の自宅の庭に照明弾2発が着弾し、反政府活動家3人が逮捕されました。当時、ネタニヤフ首相や家族は自宅におらず、負傷者は出ていません。

イスラエルの警察の発表によりますと、16日午後7時半ごろ、イスラエル中部カイザリアにあるネタニヤフ首相の自宅の庭に照明弾2発が着弾しました。 当時、ネタニヤフ首相や家族は自宅におらず、けが人はいないということです。

地元メディアによりますと、この事案に関与したとして反政府活動家3人が逮捕され、うち1人は軍予備役の上級将校だということです。

今回の事件は先月19日のレバノン武装組織ヒズボラの無人機(ドローン)攻撃以来およそ1カ月ぶり。 

イスラエル政界からは「暴力的で無政府的な行為」(レビン法相)、「レッドラインを越えた扇動」(ベングビール国家治安相)という批判が出てきた。

現在イスラエルではネタニヤフ首相が主導する戦争と司法府権限縮小の動きに反発する反政府デモが続いている。7月の反政府デモにはテルアビブなど主要都市から約50万人(主催側推算)が集まった。 

16日には政府の徴集命令に抗議する超正統派ユダヤ教派「ハレディー」の数百人が高速道路を占拠するデモも発生した。ハレディーは1948年の建国以降、ホロコースト(ナチのユダヤ人虐殺)で抹殺されるところだった文化と学問を守るという名分で兵役が免除されてきた。 

しかし15日、イスラエルのカッツ国防相はハレディー約7000人の入営命令を承認した。ハレディーに対する兵役免除が不当だという裁判所の判決に基づくものだ。

今回の徴集命令は今月初めにガラント前国防相が解任される前日に決定された。ガラント前国防相は超正統派政党の連立政権脱退の動きに兵役免除のための追加立法を推進してきたネタニヤフ首相と異なる意見を出し、更迭された。 

一方、イスラエル現地ではネタニヤフ首相側が反政府デモに対する反発世論を形成するために軍事機密文書を流出させたという疑惑が提起された。

ハアレツなど現地メディアによると、首相室のフェルドスタイン報道官と3人の高官が不法に予備役から受けた「ハマスの指導者シンワル氏が人質解放と停戦会談合意を拒否した」という内容の機密文書を独メディアのビルトに流布した。その後、フェルドスタイン氏は自国メディアに報道を要請したという。 

メディアはフェルドスタイン氏が文書を確保した時点は6月だったが、報道は反戦ムードが高まった8月末ごろ出てきたと伝えた。これに対し「ハマスとの人質交換と停戦会談推進を要求するデモ隊に対する反発世論を形成するためのもの」(ハアレツ)、「ハマスに対する強硬路線を正当化するために選択的に情報を流した」(タイムズ・オブ・イスラエル)などの指摘が出ている。(後略)【11月19日 中央日報】
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【首相周辺からの機密文書漏洩 戦闘継続のための世論操作が目的】
上記記事の後段に書かれている機密文書漏洩問題は、首相周辺の者がハマス側から押収した機密文書を、人質交渉より戦闘継続を優先させる政権に有利になるように一部改ざんし、有利なる時期にメディアに漏洩したというもの。

****イスラエル軍の機密文書流出で首相報道官ら逮捕 政権に打撃か****
 パレスチナ自治区ガザ地区での停戦と人質解放を巡る交渉を妨げる機密文書が海外メディアに流出し、波紋を呼んでいる。

イスラエルのネタニヤフ首相周辺が意図的に情報を漏らした疑いがあり、首相報道官ら5人が逮捕された。ネタニヤフ氏の愛称「ビビ」にちなみ「ビビリークス」問題として、イスラエル政界を揺るがすスキャンダルとなっている。

問題となっているのは、イスラエル軍がガザ地区で押収したイスラム組織ハマスの関連文書。文書の一部は、戦闘継続を求めるネタニヤフ氏の意見に都合の良い形で改ざんされていた疑いがあり、英国とドイツの2紙に漏えいした。
 
流出したのは8月末にハマスに拘束されていた6人の人質が殺害されたことが明らかになり、人質解放を求めるデモが広がった直後のタイミングだった。

英紙「ジューイッシュ・クロニクル」は9月5日、ハマスがガザとエジプトの境界地帯を通じ、人質をイランやイエメンに移送させる計画があると報じた。しかし、同紙は文書が改ざんされた可能性があり、誤報だったとして記事を削除。記事を書いたフリー記者との契約を打ち切った。

独紙「ビルト」も翌日、別の機密文書に基づき、ハマスが停戦交渉に関心がないなどと報道。ビルト紙はイスラエル軍が文書を本物だと認めたとしているが、ネタニヤフ氏の主張を補強する内容だった。

ネタニヤフ政権は8月29日、ハマスによる武器の密輸を防ぐため、ガザとエジプトの境界地帯で軍の駐留を継続させると閣議決定した。これに対しハマスが反発し、交渉は停滞。その直後に人質6人が殺害され、イスラエル全土では「人質が見殺しにされた」などとして、大規模なデモが連日行われた。

文書流出を受けて、イスラエル軍は調査に着手。裁判所は11月1日、流出に関与した疑いで首相報道官らを逮捕したことを明らかにした。

ネタニヤフ氏は報道官について「安全保障の会議には参加していない」と主張。しかし、イスラエル紙ハーレツは、昨年10月のハマスとの戦闘開始以降、報道官が軍事基地などの訪問に同行し、機密情報に触れる会議にも参加していたと報じている。

首相の政敵で元国防相のガンツ氏は、機密文書が「(ネタニヤフ氏の)政治的な生き残り工作」のために利用されたなら、国家に対する犯罪だと指摘。最大野党党首のラピド前首相も、ネタニヤフ氏が漏えいを把握していたとすれば「最も深刻な安全保障を脅かす共犯者だ」と非難した。

ガザではいまだ100人以上の人質が拘束されている。イスラエル国内では人質解放の優先を求める声が強いが、ネタニヤフ氏はハマスの壊滅を優先し、戦闘を続けている。一方で、ネタニヤフ氏は汚職疑惑で起訴されており、裁判を遅らせるために、戦闘を長引かせているとの見方がある。【11月17日 毎日】
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裁判所は情報漏洩の目的について、人質解放交渉に対する世論に影響を与えようとしたとの見方を示しています。

情報漏洩の直前の9月1日には、イスラエル軍が、パレスチナ自治区ガザ地区で人質6人が死亡したと発表していましたが、死亡した人質のうち4人は人質解放交渉の第1弾で解放されることになっていました。

こうした状況で、人質解放のための停戦を求める声が強まる時期に、戦闘を続けるネタニヤフ首相に有利なるような形で機密文書をメディアに漏洩した・・・ということです。

【ICC ネタニヤフ首相らの逮捕状 「飢餓を戦争手段にした」】
上記のように、保身のための司法改革、人質解放より戦闘継続を優先させていることへの批判、更には首相周辺からの機密文書漏洩と国内的に問題を抱えるネタニヤフ首相ですが、国際的にも国際刑事裁判所(ICC)がネタニヤフ首相の逮捕状を出すという問題も。

***ICC、イスラエル首相らに逮捕状 人道に対する罪の疑い「飢餓を戦争手段にした」****
国際刑事裁判所(ICC)は21日、パレスチナ自治区ガザに対するイスラエルの攻撃をめぐり、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相に対し、人道に対する罪と戦争犯罪の容疑で逮捕状を出したと発表した。

ICCの発表によると、パレスチナ自治区ガザへの人道支援活動を制限し、食料や水、医療品供給を阻んだことで、2人容疑者は「飢餓を戦闘の手段にした」と信じるに足る根拠があるとしている。イスラエル側は容疑に対して異議を申し立てていたが、ICCは退けた。

ICCには日本を含めて124カ国・地域が加盟しており、自国に容疑者が来た際には逮捕の義務を負う。

また、ICCは21日、イスラエルと交戦するパレスチナのイスラム原理主義組織ハマス軍事部門のデイフ指導者に対しても逮捕状を出した。デイフ容疑者については死亡情報が流れたが、ICCとして確認に至らなかったとしている。

3容疑者に対しては、ICCのカーン主任検察官が今年5月に逮捕状を請求していた。この時、ハマスのハニヤ最高指導者とガザ地区トップだったシンワール指導者に対しても逮捕状が請求された。この2人はその後、イスラエルに相次いで殺害された。【11月21日 産経】
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ネタニヤフ首相は「反ユダヤ主義の決定だ」と反発する声明を発表しています。

****ネタニヤフ首相「この決定の妥当性を認めない」ICCから戦争犯罪などの疑いで逮捕状を発行されたことをうけ反論****
イスラエルのネタニヤフ首相は、ICC=国際刑事裁判所から戦争犯罪などの疑いで逮捕状を発行されたことをうけ、「この決定の妥当性を認めない」などと反論しました。

イスラエル ネタニヤフ首相
「イスラエルはこの決定の正当性を認めない。我々は国民と国家を守るためにやるべきことはすべて続ける」

ネタニヤフ首相は21日、ビデオ声明を出し、「イスラエルがガザで行っている戦争ほど正義のある戦争はない」などと主張したうえで、ICCによる「決定の妥当性は認めない」として、今後もガザでの戦闘を継続する姿勢を示しました。

ネタニヤフ氏はイスラエル軍の戦闘について、「民間人の犠牲を避けるために全力を尽くしている」と主張しましたが、ガザでは去年10月の戦闘開始以降、4万4000人を超える人が死亡し、このうちの多くは女性や子どもを含む市民だとみられています。【11月22日 TBS NEWS DIG】
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アメリカ・バイデン大統領も「言語道断」と逮捕状発行を批判しています。

****ネタニヤフ氏らへの逮捕状発付は「言語道断」 バイデン米大統領****
米国のジョー・バイデン大統領は21日、国際刑事裁判所がイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアブ・ガラント前国防相らに逮捕状を出したことを、「言語道断」だと批判した。

バイデン氏は声明で、「ISSがイスラエルの指導者らに逮捕状を出したことは言語道断だ」「もう一度はっきりさせておきたい。ICCが何をほのめかそうが、イスラエルと(イスラム組織)ハマスは決して同等ではない。われわれは常にイスラエルと共にその安全保障の脅威に立ち向かう」と述べた。 【11月22日 AFP】
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「イスラエルがガザで行っている戦争ほど正義のある戦争はない」「民間人の犠牲を避けるために全力を尽くしている」・・・・そうでしょうか?

もちろん実際に逮捕されることはありませんが、多くの国に訪問できないということで、外交活動には支障がでます。

国内外に多くの問題を抱えるネタニヤフ首相ですが、年末をもちこたえたら来年1月にはトランプ大統領という強力な援軍があらわれ、状況は一変します。
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