(2月7日 アテネ 国会議事堂に突入しようとして警官隊と衝突するデモ参加者たち ギリシャに緊縮策を“強要”するドイツの国旗が燃やされています。ナチスのハーケンクロイツも見られます。“flickr”より By Eleanna Kounoupa (Melissa) http://www.flickr.com/photos/ekounoupamelissa/6835543889/ )
【債務強制カットならデフォルト認定も】
ギリシャは3月20日に145億ユーロの国債大量償還を控えており、これを乗り切るためにはEU・IMFからの計1300億ユーロ(約13兆円)の2次支援がどうしても必要とされています。
しかし、2次支援を受けてハードルを超えるためには、債務削減を巡る民間債権者の合意、新たな財政緊縮策に関する連立与党内の合意が必要ですが、そのふたつとも「合意は近い」「今日、明日には・・・」と言われながらも難航し、ずるずると先延ばしされている迷走状態が続いています。
債務削減については、大幅な削減率に対する民間債権者の抵抗が強く、民間債権者が保有するギリシャ国債を強制的にカットする案も出ているようです。
ただ、強制カットに踏み切れば“デフォルト(債務不履行)”“国家破綻”と認定され、危機は一気にイタリア・スペインなどに拡大する危険もあります。
なお、一部民間債権者には、大幅削減率を認めるよりはいっそのことデフォルトに持ち込み、倒産保険の一種である金融商品「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」の適応を受けた方がいい・・・との思惑もあるとか。そうなると話はまとまりません。
****ギリシャ国債、削減交渉大詰め 2次支援へ強制カット案****
■連鎖暴落リスクも
欧州債務危機の元凶であるギリシャの債務削減をめぐり、同国政府と民間債権者の合意期限が週内に迫る中、民間債権者が保有するギリシャ国債を強制的にカットする案が浮上している。ヘッジファンドなどの債権者が削減の枠組みに参加せず、十分な削減効果を得られない恐れが高まっているためだ。
強制カットに踏み切れば、欧州連合(EU)などからの第2次金融支援を受けられる。だが、実質的なデフォルトと認定され、イタリアやスペインなど他の重債務国でも同様の事態になるとの不安から国債が暴落し危機が深刻化する懸念もある。
◇
銀行などの民間債権者が保有するギリシャ国債は元本で計2千億ユーロ(約20兆円)に上る。EUは昨年10月、ギリシャへの1300億ユーロの2次支援の条件として、国債の元本を50%削減することで合意した。削減は価値の低い新たな国債と交換する方式で行うが、利率をめぐり交渉が難航している。ギリシャ政府が要請している4%以下の場合、削減率が70%超に達することに債権者が猛反発しているためだ。
先月30日のEU首脳会議では、業を煮やしたファンロンパイEU大統領が「今週末までの合意を目指しあらゆる手段をとる」と、早期合意を要請した。
これに対し、民間債権者の一部は「あくまで自主的な取り組みであるべきだ」とし、削減の枠組みに参加しない意向を示している。このため、合意に達したとしても、財政再建に必要な削減規模に達しない可能性がある。
ギリシャは3月20日に145億ユーロの国債大量償還を控える。債務削減による「計画的なデフォルト」で合意できないと、2次支援を受けられず、「無秩序なデフォルト」に陥り、金融市場が大混乱しかねない。
このため、同国政府やEU、国際通貨基金(IMF)は、全体の3分の2程度の合意を取り付け、すべての債権者に一律で適用する「集団行動条項」と呼ばれる手法を検討している。
だが、強制カットに踏み切れば、「一定の秩序は保たれるが、市場参加者が『国家の破綻』と見なすリスクは否定できない」(大和総研の山崎加津子シニアエコノミスト)。
デフォルトと認定されれば、倒産保険の一種である金融商品「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」が発動される可能性が高い。民間債権者の損失はカバーできるが「(CDSの引受先である)金融機関は損失を肩代わりしなければならなくなる」(SMBC日興証券の嶋津洋樹シニアマーケットエコノミスト)。CDSの保険料も跳ね上がり、同様のリスクがあるイタリアやスペイン国債の大量売りを招くのは必至だ。強制カットは、“諸刃”のリスクをはらんでいる。【2月3日 産経】
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【テクノクラート首相と選挙を控えた議員に溝】
更なる財政緊縮策についても、すでにこれまでの緊縮策で国民からの批判にさらされているなかで、最低賃金や年金額の引き下げ、公的部門の人員削減といった国民への痛み(激痛)を覚悟しなければならないため、連立与党議員も選挙を控えて、おいそれとは合意できないところです。
“ユーロ離脱もいとわない共産党など左派が支持率を伸ばしている。主要労組も「国民にどこまで犠牲を強いるのか」と政府批判を強め、7日朝から24時間のゼネストに入った”とのことです。
****ギリシャ支援、足踏み 国内反発、緊縮策取れず****
財政危機に陥っているギリシャの連立政権が、国家破綻(はたん)の瀬戸際で迷走を続けている。欧州連合(EU)などからの2次支援を受けるために必要な財政緊縮策などを決められず、民間金融機関からも損失受け入れへの合意を得られていないからだ。
「緊縮策の合意がなければ、2次支援はない」。6日午後、メルケル独首相は、独仏首脳会談後の会見で強調し、ギリシャが緊縮策を直ちに受け入れるよう求めた。(中略)
EUなどは2次支援の条件として、最低賃金や年金額の引き下げ、公的部門の人員削減、国内総生産(GDP)の1%に当たる約22億ユーロ(約2200億円)の歳出削減を求めている。
これに対して、ギリシャ政府はとりあえず、GDPの1.5%にあたる33億ユーロ(約3300億円)の歳出削減で合意し、EUなどの要求よりも上積みした。6日には公的部門の人員1万5千人を今年中に削減することも発表した。
だが、最低賃金や年金額の引き下げを受け入れるかどうかが決められず、EUなどの了承を得られないでいる。2大政党を中心とした連立各党に反対論が根強く、意見をまとめられないからだ。
3党による連立政権はもともと同床異夢だ。元中央銀行総裁のパパディモス首相は議会に足場がない。連立各党とも、4月にも予想される総選挙で国民から批判されるのを恐れている。実際、緊縮策などに反対し、ユーロ離脱もいとわない共産党など左派が支持率を伸ばしている。主要労組も「国民にどこまで犠牲を強いるのか」と政府批判を強め、7日朝から24時間のゼネストに入った。
一方、2次支援のもう一つの条件となる民間金融機関との債務削減交渉もまだ決着を見ない。ギリシャ政府は「合意は近い」と繰り返しているだけだ。
パパディモス首相は7日午後、債務削減交渉と、緊縮策などを話す連立与党党首との会談を立て続けに開き、現状を打開しようとしていると報じられている。ユーロ圏の財務相は今週後半に会合を開く考えだ。
ただ、ギリシャに詳しいUBSのアナリスト、コミネッタ氏は「近く総選挙がある以上、ギリシャの連立与党が緊縮策を受け入れるのは難しい」と話す。「もう時間がないので、EU側がしかたなく折れるしかないのではないか」との見方を示している。【2月8日 朝日】
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「もう時間がないので、EU側がしかたなく折れるしかないのではないか」とは言っても、そうなると支援の負担を担うドイツなどで国内世論の反対が強まります。
なお、年内の公務員1万5千人削減は、ギリシャ政府によると、主に採算の取れない公社の解体や、その人員削減により実施される見通しとのことです。
欧州中央銀行(ECB)前副総裁という実務家としての手腕が期待されたパパデモス首相ですが、選挙の洗礼を受けねばならない各党議員がテクノクラート出身の首相と距離を取り始めた・・・とも言われています。
5日に与党各党党首との会談前、首相は説得できなければ、辞任すると述べたとも伝えられています。【2月6日 産経より】
パパデモス首相も、そう簡単に投げ出すことはないでしょうが、事態が困難を極めているのは間違いないようです。
【「国民にどこまで犠牲を強いるのか」】
直接的痛みを被る労働者側も、“これまでのツケ”とは言いつつも、生活がかかっていますので必死です。
官民労組はゼネストに入り、一部は暴徒化して警官と衝突しています。
*****ギリシャ:官民労組が24時間スト…新たな緊縮策に反発****
アテネからの報道によると、ギリシャの官民労組は7日午前0時(日本時間7日午前7時)、今年初となる24時間のゼネストに突入した。ギリシャ政府が借金返済のため欧州連合や国際通貨基金から1300億ユーロ(約13兆円)規模の第2次支援を受けるための公務員削減など新たな緊縮策に対する反発で、一部住民が暴徒化して衝突も発生した。
省庁や学校、病院など公共機関に加え、地下鉄やバスなど空路を除いた交通機関、銀行もストに加わった。
ギリシャでは昨年11月、(1)2割削減済みの公務員給与をさらに2割カット(2)年収1万2000ユーロから8000ユーロに下げられた所得税免税枠を5000ユーロに減額--などを盛り込んだ緊縮策を制定した。
前回、11年中に公称約75万人の公務員を3万人減らす予定だったが一向に進まず、政府は12年中に公務員を1万5000人削る案を挙げている。【2月7日 毎日】
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【「ギリシャが誠意を見せない限り、オランダとドイツは納税者にギリシャへの緊急支援を納得させられない」】
こうした状況に、ギリシャ国内でも、先述のように共産党などのユーロ離脱論が高まっていますが、国外からもギリシャのユーロ離脱に言及する発言が出始めています。
*****ギリシャのユーロ離脱可能性に言及 欧州委副委員長*****
欧州連合(EU)の行政機関・欧州委員会のクルス副委員長は7日付のオランダ紙フォルクスクラント(電子版)のインタビューで、債務不履行の危機が迫るギリシャがユーロ圏を抜ける可能性に触れた。欧州委員がギリシャの離脱可能性に触れるのは異例。欧州委員会はこの日の定例会見で、「ギリシャはユーロ圏に残って欲しい」として、離脱観測を打ち消した。
クルス氏は「ある国が離脱すれば、すべての組織が壊れるといつも言われている。だが、それは単なる間違いだ」と述べた。仮にギリシャがユーロ圏を離れても、ユーロ圏全体が壊れることはないという見方だ。
クルス氏は、ドイツとともにギリシャへの支援に異論が強いオランダの出身。インタビューでは再建策を実行できないギリシャの政治家を批判した。「ギリシャが誠意を見せない限り、オランダとドイツは納税者にギリシャへの緊急支援を納得させられない」と、EUなどが求める緊縮策の受け入れも求めた。
ギリシャではEUによる追加支援の前提として突きつけられた緊縮策に反対し、ユーロ離脱もいとわない左派が支持され始めている。【2月8日 朝日】
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【日本は・・・・】
国の借金総額がGDPの2倍の約1千兆円という“借金の上で暮らす”日本にとって、明日は我が身の話です。
これまで国債の低金利・国内消化の原資となってきた経常収支が2016年にも赤字になる可能性があるとも言われていますが、ギリシャ破綻を契機とする欧州・世界経済の混乱といった事態にもなれば、もっと早い段階で日本が抱える爆弾がさく裂する危険もあります。痛みをフォローできる余力があるうちに対応したらいいのに・・・というのは多くの人が思うところでしょう。
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