孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエル  フランスの和平交渉仲介にも反発 厳しい国際世論にイメージ戦略も?

2016-06-08 22:13:00 | パレスチナ

【6月8日 AFP】

【「イスラエルの過度な防衛力使用に対し深刻な懸念が高まっている」】
イスラエルとパレスチナ・ガザ地区を実効支配するハマスは、パレスチナ人2251人とイスラエル人73人が死亡した2014年7~8月の交戦後に停戦合意していますが、和平交渉の枠組みが全く進展しない状況にあって、再び衝突する危険性は常に存在しています。

5月6日ブログ「パレスチナ イスラエル・ハマス・エジプトの“あり得ない同盟”収監されていた12歳少女釈放」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160506では、イスラエルとハマスの間の「対IS」での“奇妙”な連携を取り上げましたが、そのブログを書いていた丁度そのときにも、両者は激しい武力衝突を行っていたようです。

****ハマスとイスラエルが武力衝突、女性1人死亡 ガザ地区****
パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配しているイスラム原理主義組織ハマスの幹部イスマイル・ハニヤ氏は6日、イスラエルとの紛争を望んでいるわけではないが、ガザ地区への侵入には断固として抵抗するとの姿勢を示した。

ガザ地区では今月4日から、パレスチナとイスラエルの間で50日間の激しい戦闘があった2014年以降で最も激しい戦闘が起きている。
 
ガザ地区のモスクで行われた礼拝に出席したハニヤ氏は、イスラエル軍がガザ地区に200メートル近く侵入したと非難。「われわれは、新たな紛争を望んでいるわけではないが、いかなる状況下でもこのような侵略は容認しない」と述べた。
 
今月4日以降、ハマスをはじめとするパレスチナの武装組織は、イスラエルとの境界沿いとガザ地区に少し入った地点で、イスラエル南部に通じるトンネルを捜索していたイスラエル軍を攻撃し、イスラエルに向けて少なくとも12発の迫撃弾を発射した。一方のイスラエルは「ハマス関連の目標」とするものに対して戦車による攻撃を繰り返している。
 
複数の目撃者の証言によれば、イスラエル軍は4日以降、ガザ地区に4回の空爆を実施し、ガザ北部ベイトラヒヤと南部ハンユニス付近を攻撃したという。空爆による死傷者は報告されていない。
 
イスラエル軍は空爆を1回だけ実施したことを認め、パレスチナ側からの迫撃砲による越境攻撃に報復するため戦闘機が「ハマスがテロを実行するためのインフラ」を標的にしたと発表した。
 
しかし医療関係者らは、5日にイスラエル軍の戦車に自宅を攻撃されたパレスチナ人女性(54)1人が死亡し、今回の交戦で初の犠牲者となったとしている。(後略)【5月7日 AFP】
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また、イスラエル国内においても、パレスチナ人のイスラエル政府・社会への不満は募っており、昨年末には「第3次インティファーダ(抵抗運動)」を懸念させるような、パレスチナ人によるイスラエル人襲撃、それへの報復とイスラエル軍による鎮圧行動が続発しました。

“昨年10月以降に発生した一連の衝突で、パレスチナ人204人とイスラエル人28人が死亡。イスラエル当局は、死亡したパレスチナ人の大半は、刃物や銃、車を使った襲撃を行ったとしている。”【5月15日 AFP】ということで、前出イスラエル軍によるガザ侵攻でもそうですが、パレスチナ側の犠牲がイスラエル側に比べ非常に大きなものになり、“イスラエルの過度な防衛力使用”が問題視されることにもなります。

****昨年10~12月、パレスチナ人の子ども25人死亡 ユニセフ****
国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)は、イスラエルとパレスチナの衝突が激化した昨年10月から12月に、パレスチナ人の子ども25人が死亡し、拘束された子どもの数が過去7年間で最高を記録したとする報告書を発表した。
 
ユニセフは報告書で、「イスラエルの過度な防衛力使用に対し深刻な懸念が高まっている。特に、ナイフを使用した攻撃を実行、もしくは実行したとみられるパレスチナ人の子どもが、イスラエルの治安部隊に射殺された事件について懸念している」と述べた。
 
報告書によると、襲撃が急増した同期間に、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸とエルサレム東部を中心にパレスチナ人の子ども1300人以上が負傷。一方、ヨルダン川西岸とエルサレム西部で負傷したイスラエル人の子どもは3人だったという。
 
ユニセフは、ヨルダン川西岸のへブロンで昨年10月25日、17歳の少女が「イスラエル国防軍(IDF)に取り調べのため拘束され、少なくとも5発撃たれて射殺された」事件を引き合いに出し、「イスラエル当局は、少女が警官を刺そうしたと述べたが、目撃者によると、少女は撃たれた際にいかなる脅威も示しておらず、自分はナイフを持っていないと叫んだだけだった」と述べた。(中略)
 
ユニセフはまた、イスラエル軍に拘束された12~17歳のパレスチナ人の子どもの多さにも懸念を表明。イスラエルの刑務当局によると、昨年12月末にその数は422人に上り、2009年3月以来最も多かったという。イスラエルの法律では、12歳以上のパレスチナ人の子どもを裁判にかけることができる。(後略)【5月15日 AFP】
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フランスが和平交渉仲介に乗り出すも、イスラエルは反発
イスラエルとハマスの衝突にしても、イスラエル国内のパレスチナ人の抵抗にしても、和平交渉が進展しない限りいつまでも繰り返されます。

アメリカが仲介したイスラエルとパレスチナの和平交渉は2014年4月に頓挫し、中断したままとなっていますが、フランス・オランド大統領が仲介の動きを見せています。

****仏大統領、和平へ「勇気ある決断を」=パレスチナめぐる国際会議****
フランスのオランド大統領は3日、パレスチナ和平問題をはじめとする中近東の混乱について、放置すれば「過激主義やテロの台頭につながる」と指摘した上で「最終的にはイスラエルとパレスチナが平和のために勇気ある決断を下すことが必要だ」と両者に歩み寄りを求めた。米欧や中東など約30カ国の外相らとパリで開いた国際会議の冒頭演説で語った。
 
会合には当事者であるイスラエルとパレスチナは出席せず、効果を疑問視する声も出ている。

エロー仏外相は終了後の記者会見で、「事態が手遅れになる前に、急いで行動を起こさなければならない」と強調し、両者が直接協議できる環境を年内にも整えたい意向を示した。
 
フランスにはパレスチナ問題の解決に貢献することで外交的な存在感を高めたい狙いがある。エロー外相やバルス首相が5月に相次いでイスラエルを訪問。しかし、ネタニヤフ首相はフランスの介入に難色を示し、自国とパレスチナの直接交渉を提案していた。【6月3日 時事】 
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****2国共存案「唯一の解決策」=パレスチナめぐり国際会議****
米欧や中東など約30カ国の外相らが3日、パリでパレスチナ和平に関する国際会議を開き、イスラエルとパレスチナの共存を前提に両者の関係改善を促す方針で一致した。

会合後にフランス外務省が発表した共同声明は「2国共存こそが持続的な平和を達成できる唯一の方法だ」と明記。ただ「2国共存案」にはイスラエル、パレスチナ双方に慎重論があり、すんなり受け入れられる可能性は低い。(後略)【6月4日 時事】
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パレスチナ自治政府は和平交渉再開を歓迎していますが、自治政府・ファタハと一線を画し、イスラエルの存在を認めないハマスの問題があります。
イスラエル側は、保守派ネタニヤフ首相が2国共存を否定するような“本音”をもらすなど、そもそも和平への誠意が疑われるようなところがあります。

****仏提案の和平会議、イスラエルが反発 パレスチナは歓迎****
フランスのバルス首相は24日までに、イスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナ自治政府のハムダラ首相を訪れ、それぞれ会談。フランスが両者の和平に向けて提案している国際会議の開催について、イスラエル側が反発した一方、パレスチナ側は歓迎する意向を示した。
 
23日にバルス氏と会談したネタニヤフ氏は「和平は国際社会の絶対的命令では達成されない」と述べ、パリで自治政府のアッバス議長と直接交渉したい考えを示した。

これに対し、24日に会談したハムダラ氏は開催を歓迎。AFP通信によると、「時間稼ぎをしようとしているが、国際社会から逃げられない」とネタニヤフ氏の姿勢を批判した。(後略)【5月25日 朝日】
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国防相に極右 疑われる和平への本気度
国際世論を無視し、「オスロ合意」に反して力を背景にユダヤ人入植地を拡大し続けるイスラエルが、国際介入を嫌い、パレスチナとの直接交渉で話をつけようとする、一方、力で劣るパレスチナ側は国際世論を喚起してイスラエルをけん制する・・・・南シナ海に力で進出し、アメリカ等の介入を排して、力の差を背景に二国間協議で事をおさめたい中国の姿勢と良く似ています。


フランスが仲介に乗り出した思惑が何なのか、内政で人気を失ったオランド政権が外交で点数を稼ごうとするものなのか・・・よく知りませんが、今のイスラエル・ネタニヤフ政権はとても和平交渉に本気で取り組む考えがあるようには思えません。

****イスラエル、極右連立参加で閣僚辞任 和平交渉再開遠のく****
イスラエルのネタニヤフ首相が今月、極右「わが家イスラエル」との連立で合意したことで、政権の極度の右傾化を懸念する声が強まっている。

27日には連立相手である中道「クラヌ」のガバイ環境相が、わが家イスラエルのリーベルマン党首が国防相に任命されることに抗議し辞任。対パレスチナ強硬派で知られるリーベルマン氏の入閣で、頓挫している中東和平交渉の再開はさらに困難となりそうだ。
 
「(リーベルマン氏の国防相任命は)さらなる極端主義をもたらし、国の安全を危うくする」。ガバイ氏は辞任発表の声明でこう述べ、ネタニヤフ氏を強く批判した。
 
現地から報道によると、ネタニヤフ氏は今月、わが家イスラエルが連立に参加する見返りとしてリーベルマン氏に国防相ポストを提示。2012年から国防相を務めたヤアロン氏は20日、ネタニヤフ氏のこうした動きに反発し、辞意を表明している。
 
15年に発足した現在の連立政権は、ネタニヤフ氏が率いる右派リクードを中心とする5政党がかろうじて過半数を確保する状況にある。ネタニヤフ氏としては、わが家イスラエルを連立に引き込むことで政権の安定化を図る狙いがある。
 
ただ、わが家イスラエルはパレスチナとの「2国家共存」構想を一応は容認しつつも、パレスチナ人をイスラエルから完全に分離するなどの強硬な主張を繰り返している。パレスチナ側からの反発は大きく、14年に頓挫した和平交渉の再開が遠のくのは間違いない。
 
わが家イスラエルの連立参加について米国務省のトナー副報道官は25日、今後のイスラエルの2国家共存に向けた取り組みに「妥当な疑問を生む」と指摘し、ネタニヤフ政権のさらなる右傾化に懸念を表明した。【5月29日 産経】
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ネタニヤフ首相も保守強硬派と言われていますが、リーベルマン氏は更にその右を行く“極右”と評される政治家です。

****イスラエル新国防相は筋金入りの夕力派****
(中略)
アラブ人に容赦なし 
何年も前からテロリストの死刑を主張していた彼だが、最近では処刑法について具体的に触れた。
「われわれに逆らう奴らは首をおのではねられて当然だ」
(中略)
家は入植地にある 
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地に在住。入植地の拡大を強く主張している。【6月7日 Newsweek日本版】
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かつては外相も務めた人物ですが、政権安定化のためとは言え、こうしたパレスチナをあからさまに敵視する人物を国防相に迎えるということは、和平交渉に本気で取り組む考えも、入植地拡大を辞めるつもりも全くないと宣言しているようなものでしょう。

国際世論の厳しい目に、イメージアップ作戦?】
パレスチナ和平交渉が進展しない責任がイスラエル側だけにあるとは言いません。ハマスとの分裂状態を解消できないパレスチナ自治政府側にも大きな責任はあります。

ただ、入植地拡大を続け、和平交渉に後ろ向きなイスラエルの頑なな姿勢、また、ガザ地区での武力行使や国内治安対策における先述のような“過剰な武力行使、その結果としての犠牲のアンバランス”に対し、国際社会はアメリカ・オバマ政権を含めて冷やかな視線を向けています。

こうした結果、国連など場でパレスチナ側の“外交攻勢”を許すことにもなっており、イスラエルとしても看過できない問題です。

そんなこともあっての、イメージアップ・ソフト化作戦でしょうか?性的少数派の活動に急に気前よく資金をするようになったとか。

****イスラエルでゲイ・プライド・パレード LGBT活動家からは批判も****
イスラエル中部の都市テルアビブで3日、毎年恒例の「ゲイ・プライド・パレード」が開催され、大勢の人々が参加した。同市が資金提供し、PRしているこのパレードは世界的な注目を集めている。
 
しかし、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の活動家らは、イスラエルがパレードのために気前よく金を使っているのは、パレスチナ自治区を占領したことによって傷ついたリベラルなイメージの回復を図るイスラエル政府の取り組みの一環だと主張している。
 
かつては、イスラエル政府が性的に寛容な姿勢を打ち出しているのはいわゆる「ピンクウォッシング」と呼ばれるイメージ戦略であり、煙幕にすぎないと非難するのはパレスチナ寄りの活動家たちだけだった。
 
しかし、パレード開催の1か月前に、イスラエル観光省がこのイベントを欧州の旅行客に宣伝するために1100万シェケル(約3億円)拠出するという発表を受け、LGBTの活動家らからは今年のパレードをボイコットすることも辞さないという声が上がった。
 
この金額は、イスラエル政府がLGBT団体に拠出している年間の助成金総額の10倍に相当する。
 
イスラエル最大のLGBTの非政府組織(NGO)「Aguda」代表は、「まるで一瞬にして皆の目が覚めたようだった。大金を使って観光客いっぱいの飛行機にレインボーを描くなんてばかばかしい。やっとこの政府と首相の偽善に気づいたんだ。外国に行ってはイスラエルのゲイの人々の自由について英語で自慢するのに、国に帰ってきてからヘブライ語でその話をすることは一切無い」と一蹴した。
 
活動家らから今年のパレードの中止を求める声が上がるなか、財務省はゲイ・トランスジェンダーの団体に対し、イベントの広報にかかる費用と同じ1100シェケルの助成金を今後3年間で拠出することに不本意ながら同意し、パレード中止は回避された。【6月5日 AFP】
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これもイスラエルの“イメージ戦略”・対外関係改善戦略の一環なのか・・・「杉原千畝通り」

****イスラエルに「杉原千畝通り」=没後30年で記念式典*****
第2次世界大戦中に「命のビザ」を発給し、数千人のユダヤ人を救った日本外交官、故杉原千畝氏の没後30年にちなみ、イスラエル中部ネタニヤ市で7日、同氏の名を冠した通りの記念式典が行われた。杉原氏の四男、伸生氏(67)は「とても名誉なことだ。父もここにいたら良かった」と語った。
 
ネタニヤ市は、杉原氏が発給した日本通過ビザによって難を逃れたユダヤ人が、多くたどりついたことで知られる。通りは今後建設される予定だという。
 
式典に先立ち伸生氏は、同市などに住む「杉原サバイバー」約50人と対談。両親と共にリトアニアで杉原氏からビザを得て、幼少期に日本へ上陸したというポーランド出身のニナ・アドモニさん(83)は「杉原さんは特別なことをしてくれた」と感慨深い表情を浮かべた。【6月7日 時事】
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杉原氏の行動が評価されることは、日本人として大変うれしいことではありますが、ガザ地区はイスラエルの封鎖によって「天井のない監獄」と化し、ヨルダン川西岸地区は「壁」によって侵略・分断され、イスラエル国内あってはパレスチナ人が「アラブ系イスラエル人」として差別を受けるという現実は、杉原氏が生きていたら強く抗議するところではないでしょうか。

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