(9日、クレムリンのスパスカヤ塔の上空を、ロシア国旗の3色の煙を出して飛行するスホイ25攻撃機=モスクワ(タス=共同)【5月9日 共同】)
【ロシア コロナ禍で対ナチス・ドイツ戦勝75年記念軍事パレードは中止】
欧州各国が新型コロナからの「出口」を探るなかで、ロシアは依然として感染拡大が続いており(モスクワ市長の見解では、感染者数増加は検査増加によるもの)、外出制限も延長されています。
****モスクワ、外出制限を5月末まで延長 マスク・手袋も義務化****
新型コロナウイルスの収束気配が見えないロシアで、首都モスクワ市のソビャーニン市長は7日、当初は11日までとしていた外出制限を31日まで延長すると自身のブログで表明した。
12日からは食料品店や公共交通機関など公の場所でのマスクと手袋の着用を義務付けることも発表した。
ロシアの7日時点の感染者数は17万7160人、死者は1625人。モスクワ市の感染者数は9万2676人で、全体の過半数を占めている。流行初期の感染者の隔離が不十分だったことが感染拡大の背景にあるとみられている。
一方、ソビャーニン氏はブログで「モスクワでの毎日の新規感染数はなお非常に多いが、これは検査の増加によるもので、実際に感染が拡大しているわけではない」との認識を示した。
ロシアではプーチン大統領が3月末、全国で自主隔離態勢を導入すると表明。モスクワなど各自治体はより厳しい外出制限を実施してきた。
しかし最近も毎日数千人〜1万人規模で感染が拡大するなど、目立った効果は出ていない。これまでにミシュスチン首相のほか、閣僚2人の感染も確認されている。【5月8日 産経】
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****ロシア全土のコロナ感染者が前日比1万817人増 計20万人に迫る****
ロシア全国の過去24時間におけるコロナウイルス新規感染者が1万817人確認され、合わせて19万8676人となりました。
全国コロナウイルス感染拡大対策本部の発表によりますと、新規感染者のうち40.7%は症状などが見られなかったということです。
また、過去24時間で104人がコロナウイルス感染により死亡しました。(中略)
5月9日、ロシアは大祖国戦争勝利75周年を迎えていますが、コロナウイルス感染拡大の影響により航空パレードを除く軍事パレードが無期限延期となりました。【5月9日 ParsToday】
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こうした厳しい情勢を受けて、「大祖国戦争勝利75周年」の軍事パレードを中止せざるを得ない状況にもなっています。
*****ロシア、対独戦勝75年祝う 「欧州解放」史観で孤立****
ロシアは9日、第2次大戦の対ナチス・ドイツ戦勝75年を祝う記念日を迎えた。新型コロナウイルスの感染拡大で、首都モスクワの赤の広場で毎年行われる恒例の軍事パレードは中止された。外出禁止令下の市民は自宅でプーチン大統領のテレビ演説を聞いた。
プーチン氏は演説で、ソ連が約2700万人の犠牲を出して対独戦に勝利し「欧州を解放した」ことは「われわれの誇り、歴史だ」と強調した。
しかし欧州は「ドイツとソ連がポーランドに侵攻、第2次大戦が始まった」と批判を強めており、「欧州解放」史観を国是とするソ連の継承国ロシアは歴史認識を巡り孤立を深めている。【5月9日 共同】
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航空パレードは実施されています。
“国防省によると、戦勝75周年にちなんで軍用ヘリコプターや爆撃機、戦闘機など75機が飛行。最新鋭ステルス戦闘機のスホイ57も登場した。”【5月9日 時事】
話が横道にそれますが、新型コロナを全く気にしていない旧ソ連ベラルーシ・ルカシェンコ大統領は軍事パレードを大々的に実施し、「旧ソ連の国々で唯一のパレードだ」と胸をはっています。
****ベラルーシは軍事パレード挙行 WHOが自制勧告も、戦勝75年****
旧ソ連諸国が対ドイツ戦勝75年の記念日を迎えた9日、ベラルーシの首都ミンスクでは恒例の軍事パレードが挙行され、ルカシェンコ大統領も臨席した。
新型コロナウイルス対策でWHOが多数の人が集まるイベントを開かないよう勧告し、隣国ロシアが大規模パレードを中止する中で、対照的な対応となった。
ベラルーシでは、四半世紀に及ぶ強権統治を続けるルカシェンコ氏の考えから近隣諸国が軒並み導入した外出禁止措置は現在も取られていない。ルカシェンコ氏は「旧ソ連の国々で唯一のパレードだ。ファシズムから世界を解放した全てのソ連兵に敬意を示すものだ」と意義を強調した。【5月9日 共同】
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「欧州最後の独裁者」の異名を持つルカシェンコ大統領ですが、新型コロナに関しては「ウオッカが効く」「ここにウイルスはいない」といった発言を繰り返し、制限措置は取られていません。WHOは「急速に感染者が増加している」として対策強化を呼び掛けています。【4月22日 共同より】
経済活動規制に反対しているブラジルのボルソナロ大統領もハイリスク者への対応は認めていますので、コロナ無視では、ベラルーシのルカシェンコ大統領とアフリカ・タンザニアのマグフリ大統領あたりが最右翼でしょうか。
【米・中東欧:旧ソ連の戦争勃発への責任、戦後の共産主義押し付けに関しロシアは「歴史を歪曲」】
話をロシアに戻します。
軍事パレード云々はともかく、問題は【5月9日 共同】の最後にもあるように、ロシアが歴史認識をめぐって「孤立」の道を歩んでいることでしょう。
****米と中東欧諸国、ロシアによる歴史「歪曲」を非難 戦後75年を控え****
マイク・ポンぺオ米国務長官と北大西洋条約機構に加盟する中東欧の外相らは7日、第2次世界大戦の終結から75年を迎えるに当たり、ロシアによる「歴史を歪曲(わいきょく)しようとする試みに遺憾の意」を表す共同声明を発表して同国を非難した。
同長官とブルガリア、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、スロバキアの外相による共同声明は戦争による犠牲者と「ナチス・ドイツを敗北させるために戦った全ての兵士ら」を顕彰するために発表されたもの。
だが各国はこの機会に、旧ソ連が東欧諸国に押し付けた共産主義の統治により、「1945年の5月、欧州の全域に自由がもたらされはしなかった」との見解を改めて示した。
同長官との9か国の外相らは、「かつてバルト三国は、ソ連に違法に占領され併合された。影響下に置いた他の国々に対する鉄の支配は、圧倒的な軍事力、抑圧、思イデオロギー統制を用いるソ連によって遂行された」と主張し、
「ソ連が第2次世界大戦と、戦争直後に生じた欧州の分断につながる歴史的な出来事を改ざんすることは、歴史を歪曲する遺憾な試みだ」と述べた。
ウラジーミル・プーチン大統領やロシアの政府高官らは最近、ポーランドに戦争勃発の部分的な責任があると非難したが、ポーランド政府と西側の同盟諸国はこれを誤った修正主義の主張だとして一蹴していた。
ロシア政府はこれまでも複数回にわたり、ソ連とナチス・ドイツが欧州を分割すべく、第2次世界大戦勃発前の1939年に密かに結んだ協定を過小評価しようと試みてきた。
ロシア政府はまた、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国を1944年から45年にかけて併合したことを占領とは認めておらず、謝罪や賠償もこれまで一切していない。 【翻訳編集】AFPBB News
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もちろん、ロシアにはロシアの言い分があるでしょう。
加害者側と被害者側が歴史認識で一致することは非常に困難です。日本だけの話ではありません。
認識を一にしたうえで、関係改善を・・・というのが、あるべき姿なのでしょうが、なかなか・・・。
一致しない部分は棚上げにしたうえで、関係を深め、信頼を醸成していく・・・というのが現実的なようにも思います。
【ドイツ:分かれる「終戦」の評価】
日本と同様に敗戦国の立場のドイツでも、「終戦」の評価については国内的に異論があるようです。
****ドイツの終戦、「降伏」か「解放」か 75年、式典 祝日化、求める声も****
第2次世界大戦でナチス・ドイツが連合国側に敗れて欧州での戦争が終わり、8日で75年を迎えた。ベルリン市は今年に限り、祝日とした。
ドイツでは人種や宗教などによる差別が絶えないなか、「ファシズムからの解放の日」として恒久的な国民の祝日にしようとの声も上がっている。
ベルリンの戦争犠牲者の追悼施設では式典があり、メルケル首相らが出席した。シュタインマイヤー大統領は演説で、戦後の平和の歩みを振り返るとともに「不名誉なのは、責任を認めることではなく否定することだ」と述べ、加害の歴史を思い起こすことの大切さを訴えた。
当初、ナチスの犠牲になった国の若者らを多数招き、市民の「解放」を祝うはずだった。だが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、人数を限定した式となった。
この日には、10年ごとの節目などに記念の催しを開いてきた。だが毎年、大規模行事をしているわけではない。連合国側のソ連の後継・ロシアが毎年、翌9日を「対独戦勝記念」として、国威発揚の機会としているのとは対照的だ。
戦後の一定期間、旧東ドイツが解放の日として8日を祝った一方、旧西ドイツでは降伏の日として、屈辱感や罪悪感が意識される風潮があったという。
それが戦後40年の1985年5月8日、ワイツゼッカー大統領が「ナチスの非人道的な暴力と迫害から私たちが解放された」と強調し、改めて注目された。「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる」と述べた有名な議会演説だ。
90年の東西ドイツ統一を経て、この日が過去を見つめ直す共通の機会になった。だが必ずしも「解放の日」として幅広く受け入れられているわけではない。
ここ数年、労組やユダヤ系団体などが「人種差別や排除に反対する日にしよう」と主張、祝日化を訴えてきた。だが、保守政党などは「過去を振り返る日は他にもある」などとして反対。ベルリン市政府は妥協の末、75周年の今年だけ祝日にした。他の州でも記念日にはしていても、祝日にはしていない。
ドイツでは、極右思想の人物が特定の人種や宗教を差別し襲撃するといった犯罪が後を絶たない。歴史記念館を運営するブランデンブルク記念財団のアクセル・ドレコル理事長は「ナチス時代を絶え間なく批判的にみることで、今の価値観や民主主義が支えられている。10年前よりも重要な日になった」と述べ、祝日化を支持している。【5月9日 朝日】
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