孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ・ウクライナだけでなく・・・アフガン・ミャンマー・コンゴでも

2023-10-11 23:32:18 | 国際情勢

(地震により倒壊した自宅の中庭で、猫を抱いているアフガニスタンの少年=10月8日 )

【相次ぐ地震で2400人以上が死亡】
イスラエル・パレスチナに関する報道は連日山のように。それに隠れた感もある(戦線がやや膠着していることもあるでしょうが)ウクライナに関する報道もそこそこに。

ただ、言うまでもないことですが、パレスチナ・ウクライナ以外でも世界各地で悲惨な出来事が起きています。
そうした出来事をいくつか。

アフガニスタンでは7日に発生した相次ぐ地震で2000人以上が亡くなっています。****

****アフガニスタン地震 タリバン暫定政権“2000人以上が死亡”****
アフガニスタン西部で7日発生したマグニチュード6.3の地震で、現地で実権を握るイスラム主義勢力タリバンの暫定政権は、これまでに2000人以上が死亡したと明らかにしました。現地では倒壊した建物に取り残されている人の救助活動が続けられています。

USGS(アメリカの地質調査所)によりますと、日本時間の7日午後、アフガニスタン西部を震源とするマグニチュード6.3の地震が2回発生し、その後も複数回、地震が観測されました。

現地で実権を握るタリバンの暫定政権は8日、これまでに2053人が死亡し、けが人は9000人以上にのぼると明らかにしました。

また、地震で1300の住宅が全壊したということで、取り残されている人も多くいるとみられていて、救助活動が続けられています。

被災した地域では地震のあと、電話がつながりにくい状態が続いているほか、道路の状況も悪化していることなどから、救助活動への影響が懸念されています。

被害はイランと国境を接するヘラート州に集中しており、この地域ではれんがや土でできた簡素な住宅が多く、被害が拡大したとみられています。

アフガニスタンではこれまでにも地震による被害が相次いでいて、去年6月に東部のホスト州で発生したマグニチュード5.9の地震では1000人以上が死亡しています。

上川外相「必要な支援を迅速に」
上川外務大臣は8日夜、談話を発表し(中略)「この困難を乗り越えるにあたり、日本は国際機関と連携しつつ、必要な支援を迅速に提供すべく尽力する。アフガニスタンの国民との連帯を表明するとともに、人道状況の改善に向け引き続き取り組んでいく」としています。【10月8日 NHK】
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タリバン暫定政権の幹部も現地入りし、被災者支援に全力を挙げる姿勢をアピールしているようですが、救助に関する能力は限定的でしょう。

ロイター通信によると、これまでに確認された死者は2400人超。ただ、倒壊した建物の下敷きになったままの人がいるとみられ、犠牲者は増える恐れがあります。

同じヘラート州では、11日にも再び大きな地震がありました。

****アフガン西部で新たにM6.3の地震****
アフガニスタン西部ヘラート州で11日午前5時10分(日本時間同9時40分)ごろ、マグニチュード6.3の地震が発生した。米地質調査所(USGS)が明らかにした。同地域では7日にもM6.3の地震が発生し、死者数は2000人を超えている。
USGSによると、震源は浅く、州都ヘラートの北方約29キロの地点。 【10月11日 AFP】
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被害の拡大が懸念されます。
同地域はヒマラヤ造山帯に位置しています。

****アフガン西部地震 M6規模相次ぎ発生 二つの地震のメカニズム****
アフガニスタン西部ヘラート州で2000人以上が死亡した7日のマグニチュード(M)6・3の地震では、発生から30分後に数キロ南で同規模の地震が相次いで起きたことが被害を拡大させた。専門家は二つを「一連の地震だった」とみる。

東京大地震研究所の岩森光教授(地球ダイナミクス)によると、二つは東南アジアからユーラシア大陸を横断する「アルプス・ヒマラヤ造山帯」で起こった。インドプレートまたはアラビアプレートが、北にあるユーラシア大陸に衝突したり沈み込んだりする動きに伴って地震が起きたと考えられる。

二つはいずれもほぼ南北方向に圧縮された逆断層型で、造山帯の一部であるヒンズークシ山脈から東西に伸びる活断層の西縁で起きたとみられるという。

アフガンでは2022年6月にも東部で1000人以上が死亡する地震(M6・1)があった。岩森教授によると、今回地震の起きた西部は、東部に比べ地震活動は少ないという。

米地質調査所(USGS)によると、1920年以降、今回の地震の震源から250キロ以内でM6以上の地震は他に7回起きているが、いずれもイラン国内だった。1997年5月にはM7・3の地震で1500人以上が死亡した。【10月11日 毎日】
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壮大な地球の営みと言えばそうも言えますが、亡くなった方だけでなく、家を失った多数の住民の厳しい冬を迎えるこれからが危惧されます。

欧米・日本など国際社会とタリバン政権の溝が救援・支援活動を制約することになるであろうことも懸念されます。

今回の人道支援でその溝が多少でも埋まり、タリバン政権の国際社会への歩み寄りがあればいいのですが、多くは期待できないかも。

【ミャンマー 国軍の空爆被害が拡大】
ミャンマーでは国軍による少数民族武装勢力の拠点への攻撃が続いています。

****ミャンマーの避難民キャンプを国軍が攻撃 子ども含む32人が死亡****
ミャンマーの避難民キャンプが国軍による攻撃を受け、子どもを含む少なくとも32人が死亡しました。

現地メディアなどによりますとミャンマー北部のカチン州で9日、避難民キャンプが攻撃を受けました。国軍のドローンによる空爆とみられています。 この攻撃で、13人の子どもを含む少なくとも32人が死亡し、50人以上がけがをしたということです。

被害にあった避難民キャンプは国軍と対立する少数民族武装勢力の拠点の近くにあり、衝突の巻き添えになった可能性があります。【10月10日 ANNニュース】
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上記に限らず、国軍による空爆被害が拡大しており、国連人権高等弁務官事務所は「軍事作戦が民間人に対して組織的に行われてきた」と国軍を非難しています。

****ミャンマー国軍の空爆「23年7月末までに988回」 国連が非難****
クーデターを起こした国軍が実権を握るミャンマーで、空爆被害が深刻化している。

国連人権高等弁務官事務所が9月に公表した報告書によると、クーデターが起きた2021年2月から23年7月末までに計988回の国軍による空爆を確認。死者は少なくとも281人にのぼる。

ターク人権高等弁務官は26日、「軍事作戦が民間人に対して組織的に行われてきた」と国軍を非難し、海外からの武器調達を阻止すべきだと訴えた。
 
報告書によると、被害が最も大きかったのは、北部ザガイン地域で4月11日にあった空爆で、子供35人と女性19人を含む150人が犠牲になった。

軍用機が爆弾を投下した後にヘリコプターからの攻撃があり、銃創が確認された人もいたという。民主派武装組織の関連施設の開所式を狙ったとされ、国軍は直後に「空爆で武器庫が爆発し、武装勢力が死亡したとの報告を受けた」と説明していた。
 
一方で、報告書は民主派の「国民統一政府(NUG)」など反軍政勢力に対しても、民間人への人権侵害が確認された場合は厳正に対処するよう求めた。

NUGが組織した国民防衛隊(PDF)や少数民族武装勢力と国軍の衝突が続く中、軍政への抵抗として職務放棄する「不服従運動」に参加しない公務員らが攻撃されているという。6月にはヤンゴンにある税務署でゲリラ集団が関与した爆発があり、職員と一般市民の計6人が負傷した。【9月29日 毎日】
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なお、拘束中のスー・チー氏については、その体調が懸念されています。

****アウン・サン・スー・チー氏、医師の診察受けられない状態…歯周病悪化で一時は歩行困難に****
ミャンマー国内の刑務所に収監されているアウン・サン・スー・チー氏(78)について、民主派勢力が樹立した「国民統一政府(NUG)」のソー・バ・ラ・ティン駐日代表は28日、医師の診察を受けられない状態が続いていると明かした。
 
スー・チー氏は持病の歯周病が悪化して刑務所外の医師の診察を求めたが、国軍は認めず、一時は歩けなくなるまで容体が悪化したという。

同代表は「国軍はスー・チー氏を大病にしようとしている。クーデターから2年以上たっても国内を統治出来ない焦りの表れだ」と非難した。

スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)も14日、「命の危険にさらしている」と国軍を非難する声明を出した。【9月28日 読売】
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【コンゴ ノーベル平和賞あ受賞者の医師のデニ・ムクウェゲ氏が大統領選立候補 ルワンダのコンゴ侵攻を批判】
続いては、アフリカ中部のコンゴ

****ゾウ殺され食べられる 国立公園から逃走―コンゴ****
アフリカ中部コンゴ(旧ザイール)にある世界遺産「ビルンガ国立公園」から逃げ出したゾウ1頭が、武装集団に殺された上、現地住民に食べられたことが分かった。コンゴ自然保護協会(ICCN)などが9日明らかにした。

コンゴ東部では1990~2000年代に地域紛争が激化し、過去30年にわたり武装勢力が活動。「動物の聖地」として世界的に知られるビルンガ国立公園は、紛争地帯の中に位置する。
 
ICCNによれば、若者たちが数週間前、国立公園を囲む電気柵を破壊。9日に2頭のゾウが逃げ出し、うち1頭が殺された。住民らがゾウの肉を分け合って食したという。

コンゴは人口の3分の2が1日2.15(約320円)未満で過ごす世界最貧国の一つ。【10月10日 AFP】
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多くの武装勢力が跋扈し、暴力が蔓延し、住民は貧困に苦しむコンゴ・・・・ゾウを食べたくて食べたのか、ほかに食べるものがなく食べたのか・・・そこらは知りません。

そのコンゴの大統領選挙にノーベル平和賞を受賞した医師のデニ・ムクウェゲ氏が立候補しています。

****ノーベル平和賞受賞の医師 コンゴ民主共和国大統領選立候補へ*****
アフリカ中部のコンゴ民主共和国で、長年、紛争下での性暴力の被害者の治療に当たり、ノーベル平和賞を受賞した医師のデニ・ムクウェゲ氏がことし12月に行われる大統領選挙に立候補すると表明しました
ムクウェゲ医師は、武装勢力が衝突や襲撃を繰り返しているコンゴ民主共和国東部で、長年にわたって性暴力を受けた人々の治療に当たり、2018年にノーベル平和賞を受賞しました。

ムクウェゲ医師はその後も医療活動を続けていましたが、2日、首都キンシャサで開かれた会合で演説し、ことし12月に予定されている大統領選挙に立候補することを表明しました。

この中でムクウェゲ医師は「私が立候補するのは、祖国を救い、国を正し、人々の尊厳を取り戻すためだ」と述べ、治安の回復や政府の統治能力の強化に取り組む姿勢を示しました。

コンゴ民主共和国は、電気自動車のバッテリーなどに使われるコバルトや金などの鉱物資源が豊富に産出される一方、経済は低迷し、国民の半数以上が極度の貧困に陥っているとされて、12月の大統領選挙には、現職のチセケディ大統領らも立候補するとみられていて、政治的な実績はないものの国際的な知名度の高いムクウェゲ医師がどこまで支持を伸ばすか注目されます。【10月3日 NHK】
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昨年の会議でデニ・ムクウェゲ氏は「ロシアによるウクライナ侵攻と同様に、コンゴ民主共和国も隣国、特にルワンダによって侵攻されている。その侵攻からもうすぐ30年が経つ」と語っています。

ルワンダの侵攻・・・・ルワンダが支援しているとされるツチ族主体の武装勢力M23をさしています。

ルワンダ・カガメ大統領は支援を否定し、あくまでもコンゴの国内問題としています。また、カガメ大統領は「アメリカを含め皆はいつもルワンダを責めるが、コンゴ東部在住のルワンダ反政府勢力については沈黙しているではないか」とも

M23については以前も取り上げたことはありますが、最近の状況については、パレスチナやウクライナと違って、日本国内ではほとんど情報を目にしません。

下記は昨年12月と今年2月のもの。

****コンゴ民主共和国で政府とM23の対立激化、和平交渉は難航****
コンゴ民主共和国(DRC)東部の北キブ州において、DRC政府と反政府武装勢力「3月23日運動(M23)」間の対立が再び激化している。

事態を受け、11月23日にアンゴラの仲介で関係国が和平交渉のための会合(ルアンダ・プロセス)を開催。11月28日~12月6日にはケニアの首都ナイロビにおいて、東アフリカ共同体(EAC)が主導する3回目の和平交渉(ナイロビ・プロセス)が行われた。報道によると、こうした努力にもかかわらず、その後も断続的に戦闘が続いており、和平プロセスは難航している。

M23は、DRC政府軍から離脱した反政府勢力で、2012年4月に活動を開始したとされる。2013年11月には停戦を宣言するも、その後も断続的な攻撃が続き、2021年11月にM23による大規模な戦闘が発生したことで、以降、情勢は深刻化している。(中略)

なお、DRCは、隣国ルワンダがM23を支援していると主張している。DRC情勢については、米国のアントニー・ブリンケン国務長官が2022年12月4日、ルワンダのポール・カガメ大統領と会談を行い、和平プロセスへの支持を表明した上で、締結された諸協定について実効性を持たせることを求めた。

加えて、ルワンダによる支援を含め、M23に対するいかなる支援について、ただちに終了させる必要があるとした。なお、ルワンダはかねてM23への支援を否定している。【2022年12月09日 梶原大夢 JETRO】
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****コンゴ東部でM23をめぐる紛争続く****
(中略)M23をめぐる紛争については、アンゴラのロウレンソ大統領がアフリカ連合(AU)および南部アフリカ開発共同体(SADC)から委任を受けて仲介役を務めており、同時にケニヤッタ元ケニア大統領が東アフリカ共同体(EAC)のファシリテーターとして調停にあたっている。

昨年7月、ロウレンソがチセケディとカガメを首都ルアンダに招き、和平に向けた合意を得たが、停戦は続かなかった。9月以降、ケニアのイニシャティブでコンゴ東部にEAC軍が展開されたが、抑止力としては機能していない。
 
この間、コンゴとルワンダの関係は悪化を続けている。M23の攻勢はルワンダの支援によるものだというコンゴ側の主張と、コンゴの国内問題だというルワンダ側の主張が平行線をたどっており、チセケディとカガメは相互に非難を繰り返すだけで、直接対話もできなくなっている。
 
国際社会のスタンスは、ルワンダにM23への支援を止めるよう求めるものだ。それに対してカガメ大統領は、M23はコンゴ国内の問題であり、問題はコンゴのガバナンスだと繰り返し、国際社会へのいらだちを隠していない。

ルワンダが何らかの形でM23への支援を行っていることは、国連専門家委員会が認めるところである。一方、コンゴ側のガバナンスに深刻な問題があること、そして紛争の中で民兵組織を利用してきたこともまた事実である。

ルワンダを締め上げれば問題が解決するわけではない。こうした状況下、戦闘の意思と能力を持つM23に引きずられる形で、紛争が拡大している。【2月4日 現代アフリカ地域研究センター】
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1998年の国連人権委員会の特別報告者による報告書で、ルワンダがコンゴ侵攻当初の1996〜1997年、フツ系ルワンダ難民らに対するジェノサイド(集団虐殺)に関与していた可能性が指摘されています。

ジェノサイドの被害者とされるツチ族指導者のカガメ大統領が、一方でフツ族へのジェノサイドを行っていた・・・という話にもなります。

コンゴ領内でフツ族武装勢力と戦ってきたツチ族M23へのルワンダの支援を公の場で問題視すれば、上記のルワンダ・カガメ政権によるジェノサイドにもかかわってきて、国際政治上微妙な問題になります。

カガメ大統領は、PKOからの撤退などに言及し国連に圧力をかけています。そうした「微妙」な事情があって、報告書は国連では議論されていません。

一般的イメージでは、ルワンダ(ツチ族によるカガメ政権)はジェノサイドの被害者、フツ族は加害者、コンゴは自らの統治能力のなさで混迷しているという認識になっています。

ムクウェゲ氏のルワンダによるコンゴ侵攻を糾弾する発言は、ロシアは非難されるのに、どうしてルワンダは非難されないのか・・・という国際社会・メディアの二重基準に対する怒りがあると思われます。
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