(ウラジオストク空港 平壌に向かう高麗航空に搭乗する人々 “flickr”より By rapidtravelchai http://www.flickr.com/photos/rapidtravelchai/6073438506/ )
【「農場世帯は軍への軍糧米を保障するために苦しんでいる」】
北朝鮮の国民生活の窮乏は相変わらずのようです。
****北朝鮮支援157億円必要=国際社会に拠出求める―国連****
北朝鮮で人道支援を行う世界食糧計画(WFP)など複数の国連機関は12日、報告書を発表、同国の食料不足対策や衛生状況の改善などの目的で、今年1億9800万ドル(約157億円)が必要だとし、国際社会に拠出を求めた。5月1日現在で、4割弱しか集まっていないという。
報告書は、全人口の3分の2に相当する約1600万人が当局の配給に頼っており、「慢性的な食料不足や根深い経済問題に苦しんでいる」と指摘。5歳未満の乳幼児の3人に1人は年齢の割に背が低く、「栄養不足や不十分な発育の問題に対処する必要がある」と強調した。【6月13日 時事】
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もちろん、こうした状況の一番の原因は、国民生活を顧みることなく核開発やミサイル開発などにのめりこむ金王朝の先軍政治にある訳ですが、朝鮮労働党指導部内部で大量餓死の原因が先軍政治にあったことを認める報告がなされたとのことです。
金正恩(キム・ジョンウン)体制のもとで、少しは風向きに変化があるのでしょうか?
****北朝鮮:大量餓死は「人災」 労働党内部文書で認める****
北朝鮮南部の黄海南道(ファンヘナムド)で今年1〜2月に大量の餓死者が発生し、朝鮮労働党指導部が、軍への過剰な食糧供出が原因として事実上の「人災」と認める内部文書を3月中旬に作成していたことが北朝鮮貿易関係者の証言でわかった。
北朝鮮では新指導者、金正恩(キム・ジョンウン)体制の発足以来、金第1書記の「問題を直視する姿勢」を国民向けに宣伝しており、こうした方針の表れとみられる。
貿易関係者らによると、黄海南道の延安(ヨンアン)、白川(ペクチョン)、青丹(チョンダン)の3郡のほか、黄海北道(プクド)の開城(ケソン)市の一部などで、今年初めに集団農場の労働者や家族が多数餓死した。
これについて朝鮮労働党が作成した文書は「黄海南道が水害で困難に陥った」「特に農場員たちの中に食糧不足に苦しむ世帯が増えた」などの表現で食糧難に言及。
「農場世帯は軍への軍糧米を保障するために苦しんでいる」とも指摘、食糧難は不作だけではなく行き過ぎた軍への供出によるものだと認めているという。
北朝鮮は先軍(軍事優先)政治を国家の基本方針としており、軍への食糧供出を優先させたことで問題が起きたとの見方が内部文書に記載されるのは異例とみられる。
貿易関係者らによると、黄海南道は北朝鮮の穀倉地帯だが、昨年7月の水害で昨秋の収穫量は例年より減少。収穫の大半を国家に供出させられ、農場労働者たちには2〜3カ月分の食糧しか分配されず、餓死者が続出した。【6月1日 毎日】
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【「国際結婚をする北朝鮮女性は国と党レベルで選抜される」】
外貨不足に悩む北朝鮮の“究極の輸出品目”とも言える、人的資源輸出に関する記事が最近目につきます。
****北朝鮮、外貨稼ぎのため美女を国際結婚へ****
北朝鮮が外資誘致を名分に、中国に居住する中国人や外国人事業家に北朝鮮女性との国際結婚を奨励する動きを見せている。「美人計(系?)」を前面に出した国際結婚を国家的な事業として推進しているのだ。
12日のNK知識人連帯によると、北朝鮮の美女との結婚を望む人は、北朝鮮に結婚承認のための費用を前払いしなければならない。 金額は中国人民元で約30万元(約370万円)だ。
これを入金すれば、北朝鮮国家レベルで選抜されて教育を受けた美女と結婚できる。 中国国籍の事業家や外国人の事業家が北朝鮮女性と姻戚関係になれば、北朝鮮政府は美女を前面に出しながら大小の事業の提案をする。 事業名目の投資がない場合、100万ドル(約11億ウォン)の追加金額を追徴するという。
北朝鮮と中国の国境地域を行き来しながら国際結婚業を担当しているある関係者は「国際結婚をする北朝鮮女性は国と党レベルで選抜される」とし「主に労働党5課、中央党財政経理部職員選抜、最高司令部交換手選抜などの経路を通じて選抜募集された20歳代の美貌の女性」と伝えた。
北朝鮮が国家的に国際結婚に乗り出す理由は、それだけ外貨稼ぎが切実で、経済状況が良くないことを傍証していると、NK知識人連帯は伝えた。【6月14日 中央日報日本語版】
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真偽のほどはさだかではありませんが、“事業名目の投資がない場合、100万ドルの追加金額”というのは、どうでしょうか?
100万ドル(8000万円)も出すなら、もっと他の美女調達方法もあるようにも思えます。別に心当たりはありませんが・・・。
【外貨不足が深刻化、大量の労働者派遣】
****北朝鮮、労働者12万人派遣へ=外貨獲得狙い中国に―韓国紙****
23日付の韓国紙・朝鮮日報は、北朝鮮が外貨稼ぎのため、今年に入って中国に送り始めた労働者が来年までに12万人に達するとの見通しを伝えた。
既に図們、琿春、丹東など中朝国境に近い地域に4万人が送られ、さらに瀋陽、延吉、長春など東北地域の主要都市に順次、送られる見込み。IT関連の労働者も1万~2万人含まれるという。
北朝鮮では韓国との関係冷え込みなどが響き、外貨不足が深刻化。石炭や鉄鉱石を中国に売ってしのいできたが、限界に達しつつあることから、大量の労働者派遣を決めたもようだという。【6月23日 時事】
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こちらは、もう少し確からしい報道です。
この記事で感じたのは、派遣労働者の取り分はどの程度で、国家がどのくらいピンハネするのだろうか?ということでした。
そのあたりの説明になる記事が【朝日】にありました。
【「つらい仕事だが、国内にいるよりまし。最近は希望者も多い」】
****北朝鮮、覚悟の出稼ぎ 国が7割超ピンハネ〈動く極東〉****
■北朝鮮ビジネス:上
5月下旬のロシア。シベリア鉄道沿線にある小さなホテルに小柄な男が入ってきた。おびえた様子。しきりに辺りをうかがった。北朝鮮の元伐採工(49)。「賃金収奪」「人権侵害」で悪名高い、北朝鮮国外労働の経験者で、逃亡者だ。
軍人だった彼がロシア行きを志願したのは1995年9月。「苦難の行軍」と呼ばれた食糧危機で配給は途絶え、地方都市では餓死者が出ていた。「食べるためだった」と振り返る。
北朝鮮は国外逃亡を防ぐため、家族に韓国出身者がいる者など、思想面で問題がありそうな人は国外に出さない。彼も軍の上司から「反逆の道をたどるな」とクギを刺された。
■紙の証文のみ
ロシア最大の北朝鮮伐採現場があったアムール州ティグダ。約700人が働く第13事業所が彼の仕事場だった。朝8時から夜10時ごろまでカラマツなどを伐採して駅に運んだ。伐採、選別、運搬、貨車積み込みの四つの作業にそれぞれ2人ずつ、計8人が一つの小隊を作った。事業所全体で毎年3~4人が事故で死ぬ「強制収容所」だった。
毎月の伐採量のノルマは3千立方メートル。機材も足りず、ほとんど達成できなかった。
他の元伐採工らの証言によれば、当時の月収は、伐採の最盛期で2千~3千ドル(約16万~24万円)、平均500ドル程度だった。このうち7割以上は国がピンハネする。だから、彼が記憶する手取りの最高額は160ドル。さらに事業所から「故郷の家族に半額を送金しておいた」と言われ、取り分は80ドルになっていた。しかも紙の証文だけで現金はもらえなかった。本当の稼ぎがいくらなのか、最後まで教えてもらえなかった。
現金を手に入れるため、伐採現場近くの森林で熊や鹿、ブルーベリーなどを採って、ロシア人に売った。
67年に旧ソ連と北朝鮮が結んだ契約は、両国が伐採した木材を約65%と約35%で分配するとした。北朝鮮はティグダに近いハバロフスクに林業省の支部を置き、極東での伐採事業に力を入れた。
北朝鮮の国外労働者は派遣期間が一律3年と決まっている。だが、何とか現金を稼ぎたくて、事業所の朝鮮労働党と国家安全保衛部の責任者、行政支配人らに少しずつ賄賂を渡して見逃してもらい、ロシアに居残った。幹部の信頼を得た2000年ごろから、伐採現場を離れ、しばしば「請負(チョンブ)」と呼ばれるアルバイトに精を出した。事業所にはびこる拝金主義も、都合が良かった。「たばこ1箱で外出証をもらえた」
1週間ぐらい道路建設などの現場で働けば、2千ルーブル(約4800円)足らずになった。ウラジオストクなどの市街地で働く北朝鮮労働者の多くが、こうしたアルバイトでわずかな現金を稼いでいるという。帰国後の豊かな生活を夢見て、こつこつお金をためている。北朝鮮関係筋は「つらい仕事だが、国内にいるよりまし。最近は希望者も多い」と語る。
北朝鮮当局は思想の引き締めに躍起だった。97年冬、事業所のテレビで、黄長ヨプ(ファン・ジャンヨプ、ヨプは火へんに華)元党書記の亡命を伝えるロシアのニュースを見た。保衛部幹部は激怒し、「再びテレビを見たら、本国に送還する」と脅した。労働者の宿泊施設で起きたぼやで金日成(キム・イルソン)、金正日(キム・ジョンイル)父子の肖像画が焼けると、部屋の住人は翌日、本国に送還された。
■逃亡しバイト
アルバイトを重ねるうちに、自由へのあこがれが強くなった。05年1月、「1週間後に戻る」と伝えて事業所を出た。そのまま戻らなかった。
今、逃亡先で知り合った似た境遇の元伐採工4人と、ロシア人から時折もらう農業などのアルバイトをしながら、息を潜めて暮らす。いつ現れるかわからない保衛部の追っ手を警戒し、5人はあえて住居を別々にしている。不自由な生活を強いられ、逃亡資金はなかなかたまらない。
一昨年、2人の仲間が病で死んだ。「韓国に行きたいが、旅費もない。故郷に戻れば、死が待っているだけだ」
昨年12月、金正日総書記死去のニュースを自宅で見た。「独裁者のために、大勢の人間が死んだ」。絶望に似た表情が、シワが目立つ顔に浮かんだ。【6月24日 朝日】
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****国外労働者、北朝鮮の命綱 外貨の獲得源に〈動く極東〉****
■北朝鮮ビジネス:上
・・・・山を追われた北朝鮮労働者だが、ロシアにいる労働者数が減ったわけではない。韓国の人権団体などによれば、現在も1万5千人から2万人の数を維持している。ウラジオストクで5千人弱が働く。アムール州では、数千人の北朝鮮労働者が農地の耕作や発電所建設などに携わる計画が進んでいる。
北朝鮮が国外労働派遣にこだわる背景には、外貨収入の減少がある。昨年の貿易赤字は約6億3千万ドル(約504億円)に達する。
経済制裁による兵器売却益が減少したうえ、今年4月の故金日成(キム・イルソン)主席生誕100年など記念事業の準備のため外貨を使いすぎ、09年11月は1ドル=100ウォンだった為替レートが、今年4月には4150ウォンに暴落。
鉱物資源と並び、年間数億ドルを国にもたらす国外労働力は貴重な外貨獲得源になっている。中国にも今年1~3月に、昨年同期の4割増しの約1万9千人が労働ビザで入国した。
北朝鮮は国外労働者の賃金をどのぐらい収奪しているのか。北朝鮮の元軽工業省責任指導員で、00年から3年間、チェコで靴縫製の合弁会社を経営した金台珊氏(60)は「貯金できるのは1割もない」と語る。
この会社で働いた北朝鮮女性労働者の月収は150ドル。うち、75~80ドルを無条件で北朝鮮に送金した。宿泊費40ドルのほか、空輸された労働新聞の購読料1ドル、記念日には、平壌の金日成像に差し出す「国外労働者一同」という名目の花かご用として1人2ドルずつを徴収した。労働者は残るわずかな金で、安いマカロニを大量に買い、塩で味付けして食べていたという。
国外労働者は帰国後、国外で見聞きしたことを口外しないよう、誓約書を書かされる。当局に一定の報告を課せられたり、時には監視がついたりする。「苦難の行軍」以前の比較的豊かだった時代は、国外労働を希望する一般市民の数も多くなかった。
だが、劣悪な環境にもかかわらず、今では国外労働を希望する人が後を絶たないという。別の元伐採工は、伐採工のように比較的給与が高く、更に不自由な生活に耐え、幹部に賄賂を渡して「アルバイト」にも手を染めれば、3年間で千ドルを稼ぐことも可能と証言する。北朝鮮では現在、2千ドルもあれば、地方の住宅が購入できるという。
3月中旬、ロシア極東ウスリースク駅。十数人の北朝鮮労働者がロ朝国境の駅ハサンに向かう列車の出発を待っていた。一様に黒っぽい汚れた服を着た人々の浅黒い顔には笑みが絶えなかった。一行が乗車すると、ロシアの鉄道関係者が客車に逃亡を防ぐためとみられるカギをかけた。
■パイプライン通過料、ロシアが提案
「安価で勤勉。労使紛争も起こさない」と喜ばれ、極東開発に貢献してきた北朝鮮の労働者だが、ロシアにとって良いことばかりではない。
北朝鮮は伐採現場で「治外法権」を行使。人権改善を呼びかけるロシア側の要請を無視してきた。ロシアには現在、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が確認しただけで、モスクワに約30人、全体で100人以上の脱北者が潜むとされる。
北朝鮮の秘密警察、国家安全保衛部はロシア領内を勝手に「捜索」。発見した脱北者の片足に板を添えてズボンをはかせ、逃げられないようにしたうえで、公衆の面前から堂々と連れ去るという。
ロシアは脱北者を積極的に摘発しない一方、韓国政府に脱北者と直接接触しないよう要請。南北朝鮮に気を使ってきたが、韓国の人権団体からは、労働ビザを発給しないようロシアに求める声も強まっている。(後略)【6月24日 朝日】
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生活苦からの国外労働者は古今東西で広く存在します。
日本では“唐行さん”も多くいました。最近では、サウジアラビアでのインドネシア人家政婦の虐待問題なども話題になっています。経済難民・移民の話は政界中に溢れています。
ただ、北朝鮮の場合は、国家管理で賃金の殆んどをピンハネしている点でやや特殊です。
これだけの記事では実態はわかりませんが、「強制収容所」のような厳しい労働・生活でも、9割近くを国家にピンハネされても、国内で餓死するよりはまだまし・・・といったところでしょうか。
もちろん、国家管理の国外労働者とは言っても、時代や個々のケースで、その実情は様々でしょう。
【ロシア極東開発】
北朝鮮サイドの話は別にして、ロシアの極東開発について見れば、過去の日本軍捕虜のシベリア抑留とか現在の「強制収容所」まがいの北朝鮮労働者といったネガティブなものに頼ることなく、日本からの投資を含め、もっと経済合理性に基づいた継続性のある“普通の経済活動”を前提にしたものにしないと、将来も見えてこないように思えます。
“普通の経済活動”が行えないような厳しい自然環境にある・・・というのであれば、開発はあきらめるしかないでしょう。
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