孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ボストンマラソン・テロで表面化した中国高級幹部子女のアメリカ留学の問題

2013-04-22 21:47:50 | 中国

(事件犠牲者である中国人女子学生呂令子さんのミニブログに投稿された、事件当日の朝の様子 「新唐人テレビ」(http://www.ntdtv.jp/ntdtv_jp/society/2013-04-18/360133257270.html

【「遺族の要望」が生んだ「疑念の声」】
15日に爆弾テロ起きたボストン市内及び周辺地域にはハーバードなど多くの総合・単科大学があり、中国人留学生も多く在籍しています。
その関係もあって、テロ犠牲者の一人はボストン大学統計学学部の中国人女子学生呂令子さんで、友人の周丹伶さんも重傷を負っています。

この事実は、ネットでは動画サイト「新唐人テレビ」“ボストン爆弾テロ 中国人女子学生が犠牲に”(http://www.ntdtv.jp/ntdtv_jp/society/2013-04-18/360133257270.html)などで、詳しく報じられています。

しかし、中国当局は「遺族の要望」として、犠牲者の氏名や年齢、職業などの情報を公表しておらず、それが中国国内で思わぬ波紋を呼んでいるそうです。

****汚職官僚の子女に違いない! 中国で疑念呼んだボストンの悲劇*****
米北東部マサチューセッツ州の州都ボストンで1897年から開催されてきたボストン・マラソンは、96年に第1回大会が開かれた近代五輪に次ぐ歴史を誇る。その大会を揺らした惨劇は、遠く離れた中国にも瞬時に伝わった。そして、犠牲者の一人が中国人女子留学生であることが判明するや、中国のインターネット上に一枚の写真が出回った。

白と赤のチェック柄のテーブルクロスがかかったテーブル。トレイの上に並んだケーキとおぼしき食べ物に、スプーンを持った手を伸ばす女性の姿が写っていた。15日に発生したボストン爆弾テロ事件の犠牲者とされる女子留学生が、その日の午前9時(現地時間)ごろ、中国版ツイッター「微博」に自らアップした写真だった。

それから約6時間後、テロ事件に巻き込まれて命を絶たれるなど、本人も想像しなかっただろう。ネットの掲示板には、女子留学生への哀悼の辞や、テロへの怒りや恐怖の言葉が殺到した。だが、目を引いたのは、それらに交じって寄せられていた「疑念の声」だった。

ネット上では、早い時点から犠牲者の氏名や出身地、出身校が報じられていた。父親の名前も明らかになっていた。高校時代の担任の談話も流れていた。それにもかかわらず、中国当局は「遺族の要望」だとして、犠牲者の氏名や年齢、職業などの情報を公表しなかった。それが、汚職官僚や富裕層に対する不満を募らせている国民の思考回路を刺激した。

「どうして公開しようとしないんだ? 彼女の父親は中国の官僚だろう!」「米国に送り出せば天国にたどり着くと思ったのだろうが、落とし穴があった」「ある官僚の子女と推測できる。だから、死亡者の名字を公表する勇気がないのだ」「きっと外国に逃れた汚職官僚(の子女)に違いない」-。

中国では、欧米に移住した政府高官らの家族が、ぜいたくな暮らしをしているとの批判が出ている。指導者の親族による海外での不正蓄財を暴いた米メディアの報道に対し、共産党指導部は極めて敏感になっている。子女の海外留学も、指導者や官僚、富裕層の特権と受け止められている。

香港メディアは3月下旬、米ハーバード大に留学していた習近平国家主席の娘が昨年11月に突然退学して帰国したと報道。李克強首相や李源潮国家副主席ら指導部の子女も最近、米国から中国に戻ったと伝えられた。特権階級の多くが子女を留学させているのは事実だが、留学ブームは昨今、「大衆富裕層」にも広がっている。

中国で「大衆富裕層」とは、「10万ドルから100万ドルの投資可能資産を保有する中産階級」と定義されている。米経済誌フォーブス(中国語版)と北京の資産管理会社がまとめた「白書」によると、その4分の3が「子供を海外に留学させたい」と望んでいるという。2011~12年の統計では、米国で学ぶ中国人留学生の数は約32万人に達し、13年末には45万人を突破する見通しだ。

党機関紙、人民日報によると、中国の専門家は「所得増や中国国内の質の高い教育資源の不足、厳しさを増す雇用情勢によって留学ブームが続いている。他者に倣う心理も動機になっている」と分析している。家や車を売却したり、銀行ローンを組んでまで、子供を留学させる家庭も珍しくないという。

テロ事件の衝撃は小さくないが、今後も留学ブームは続くに違いない。ただ、これだけ多くの中国人が、多感な時期に海外に留学し、見聞を広めているはずなのに、母国の“素顔”に疑問を持たずにいることが不思議でならない。【4月22日 産経】
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“呂さんの両親と祖父母4人のうち、3人が悲報を聞いて気を失い、残りの人たちも精神が崩壊寸前になっている”【前出「新唐人テレビ」】という状況で、中国当局が詳しい情報を伏せたというのもわからないではないですし、ネットの反応も故人に対していささかつらいものがあるようにも思えます。

それだけ人々の心の奥に、特権階層への不満が渦巻いているということでしょう。
私的な話ですが、海外旅行にでかけた際に、最近旅先で中国人観光客をよく目にします。
昨年9月にアメリカ・ラスベガスでショーを観たとき、終わって出てくる観客の4割ほどが中国人だったのには驚きました。

経済成長著しい中国ですが、まだ多くの国民にとっては海外旅行で散財するというのは手の届かない贅沢です。
しかし、実際に大勢の中国人観光客が海外に出かけ、ブランド品などを気前よく買っています。いったい彼らは国内ではどういう職業・立場にあって、どのようにして金儲けをしているのだろうか?と訝しく思うこともよくあります。

中国のアメリカに対する屈折した感情
習近平国家主席はじめ高級幹部の子女の海外留学については、下記のような報道もありました。

*****習近平主席の娘ら指導者層の子女、米から一斉帰国 特権批判かわす狙いか****
香港紙、明報は30日までに、習近平国家主席の娘ら中国の国家指導者層の子女が、昨年11月に開かれた共産党大会前後に、留学先や居住先の米国から相次いで帰国していたと報じた。国内の経済格差問題が深刻化する中で、高級幹部とその家族など特権階級に対して高まっている批判をかわす狙いがありそうだ。

同紙によると、習氏の一人娘、習明沢さん(21)は2010年5月に米ハーバード大に留学。父親との関係を伏せて仮名で学生生活を送っていたが、党大会の前後に突然中退して帰国したという。
党大会で習近平氏は胡錦濤氏の後任の総書記に選出され、翌月には汚職対策など綱紀粛正や経費削減で倹約令を出している。

また、北京で今月開かれた全国人民代表大会(全人代=国会)で首相に就いた李克強氏の娘も同大留学を終えて同時期に帰国。国家副主席となった李源潮氏の息子、副首相の汪洋、馬凱両氏の娘も米国の生活を切り上げて中国に戻った。

同大などには江沢民元国家主席の孫娘や昨年失脚した重慶市の元トップ、薄煕来氏の息子らも留学経験がある。さらに同紙は、一斉帰国の背景に「政治的な要因もある」と指摘して、対米関係で何らかの変化が起きた可能性も示唆した。【3月31日 産経】
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国際関係では何かとアメリカとはりあうことの多い中国ですが、その指導層の子女の多くがアメリカへ留学している・・・・中国のアメリカという大国・富裕国に対する屈折した感情があるように思われます。対抗意識の裏の強烈な羨望・コンプレックスでしょうか。

【4月22日 産経】は、“これだけ多くの中国人が、多感な時期に海外に留学し、見聞を広めているはずなのに、母国の“素顔”に疑問を持たずにいることが不思議でならない。”と、産経らしいものの言いようをしていますが、汚職官僚や貧富の格差の問題はさておき、私は素直に“高級幹部の子女という将来のエリート候補たちがアメリカ生活で感じたものは、将来の中国の進路に多少の影響があるのかも・・・、そうあってほしいものだ。”と感じた次第です。

中国幹部子女を大勢受け入れるアメリカ側にも、単に金払いのいいお客さんというだけでなく、将来的なコネクションの形成など国家的深慮遠謀もあるかも。

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1 コメント

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お互いさま (getsu)
2013-04-23 16:07:57
汚い表現をすれば中国も米国も「握りキン玉」ということです。何かあった場合は共産党子弟が米国に人質にとられ口座も凍結されます。かと言って中国に資産を置く訳にはいかない。だから他の外国へも子弟とカネを分散しているのです。日本も外国人にこの神聖な土地を買わせないよう法を整備し、またこれ以上安易に出稼ぎの為の滞在ビザを出さぬようにすべきです。
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