孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

スリランカ  最終局面に入った「解放のトラ」との闘いの後にあるもの

2009-01-21 21:29:00 | 国際情勢

(シンハラ人とタミル人の争いを象徴する事件となったのが1998年、スリランカの古都キャンディの最も由緒ある寺、仏歯寺に対する自爆攻撃 日本で言えば東大寺が爆破されたようなものでしょうか 06年のGWにキャンディを旅行したときは、LTTEのテロが頻発していた時期で、超国宝“仏歯”を収める仏歯寺周辺は厳重な警戒でピリピリしていました。
“flickr”より By lanka nuwan
http://www.flickr.com/photos/lanka_nuwan/3063510392/)

【LTTEの首都制圧】
スリランカでの政府軍と反政府組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」の闘いは、LTTEの事実上の首都キリノッチ制圧で、“戦闘”としてはいよいよ最終局面に入っています。

***スリランカ政府、「解放のトラ」軍事拠点制圧を発表****
スリランカのラジャパクサ大統領は2日、テレビ演説を行い、反政府組織「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」の拠点である北部の都市キリノチを同日制圧したと発表した。
大統領は「国民にとって比類なき勝利だ」と述べ、北部のLTTE支配地域一帯の「首都」だったキリノチ制圧の意義を強調。LTTEが武装闘争を直ちに放棄し、25年を超す内戦に終止符を打つよう、呼びかけた。

しかし、大統領演説の直後には同国最大都市コロンボの空軍司令部前で自爆テロが発生、少なくとも兵士2人が死亡した。LTTEがあくまで抵抗を続ける姿勢を誇示したものと見られ、国内各地で厳戒態勢が続いている。(中略)

LTTE指導者プラバカラン議長の動静は不明だが、同議長は昨年11月末の演説で、キリノチ陥落も視野に、兵力をジャングルに分散させたゲリラ戦や、都市部でのテロによる抵抗を激化させる姿勢を示していた。
内戦の背景にある少数派タミル系と、多数派シンハラ系住民の対立はもとより根深く、政府の目指す北部の平定と和平実現には、なお曲折が予想される。【1月2日 読売】
**********************

【進展が遅いような・・・】
これはあくまでも素人の見当違いな感想ですが、政府軍の作戦進行はなんだか妙に遅いような気がします。
意図的に遅らせているのでは・・・と思えるぐらいです。
政府軍は一昨年夏にはLTTEの東部拠点を奪い、戦線は北部に集中。
去年の9月頃から政府軍がキリノッチに迫っているというニュースが報じられていました。

スリランカは小さな島国です。そんなに広い戦線がある訳でもありません。
確かに昔は政府軍の力がLTTEに及ばないという時期もあったようですが、現在はその装備には格段の開きがあります。
いくら小国とは言え、政府軍がそれなりの空軍力を持つのに対し、LTTEは数機の軽飛行機で爆弾を投下するのがやっというのが実情です。
特に、政府軍攻勢の流れが明確になってからは、普通なら、戦局は一気に政府軍へ・・・と思ったのですが、結構時間をかけてやっているように思えます。

スリランカ政府はあまりLTTE制圧を急いでいないのではないか・・・なんて邪推する理由は、内戦状態のほうが何かと他国からの援助が引き出しやすく、そこに利権が発生すること、更に、内戦を終わらせるとシンハラ人とタミル人の融和という、戦闘以上に困難な問題に正面から取り組まないといけないことです。

まあ、軍事に全く素人の的外れな妄想でしょう。
LTTEとの戦闘は、LTTE支配下の最後の拠点ムラティブ周辺に移っています。
LTTEはムラティブの沿岸地帯を40キロにわたって依然支配しており、スリランカ海軍はLTTEの船舶の活動を抑えるため、海上に4重の航行規制措置を講じています。
20日には、政府軍の包囲網を突破しようとしたLTTEの船4隻を破壊したと政府軍が発表しています。
また、軍事筋によると、ムラティブ沖での20日未明の戦闘でLTTE側に16人前後の死者が出たとのことです。
【1月20日 AFP】

“フォンセカ陸軍司令官は「LTTEの終わりに1年もかからないだろう」と北部全域の早期掌握に自信を示した。”【1月3日 朝日】とのことで、まだまだ少なくとも1年ぐらいはLTTEとの戦闘が続くようです。

【今後も続くゲリラ戦】
メディア・関係者の認識が一致しているのは、かりにLTTEとの今のような戦闘が終結しても、LTTE側はゲリラ戦やテロ攻撃を続けるであろうということです。
その点では最大の資金援助国である日本政府も同じ認識です。

****スリランカ情勢 「政治的解決が不可欠」、外務省関係者*****
スリランカ政府軍が2日、反政府勢力「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」支配地域の事実上の「首都」だった同国北部のキリノッチを制圧したことについて、スリランカに対する最大の援助国である日本の外務省関係者は5日、同国の民族間紛争を収束させるには政治的解決が不可欠だと語った。

日本はスリランカが受けている国際援助額の3分の2近くを拠出しており、スリランカ政府とLTTEの停戦と和平を仲介をするため、過去3年間で特使を4回派遣している。
ある外務省関係者は5日、AFPの取材に対し、民族間対立を真に解決するには政治的努力によるしかないと述べ、日本政府は今後もLTTEが実効支配する同国北東部の自治促進による政治解決を目指すようスリランカ政府に促していくと語った。
また、キリノッチ陥落には象徴的な意味合いはあるものの軍事面の影響は限定的で、今後も東部のジャングルでスリランカ政府軍とLTTEの戦闘が続くことが予測されるという。【1月5日 AFP】
*********************

【ひとつのスリランカ】
“LTTEが実効支配する同国北東部の自治促進による政治解決を目指す”というのは、スリランカ政府にとってはLTTEとの戦闘以上に難題です。
多数派シンハラ人と少数派タミル人の融和に至っては、イスラエルとパレスチナの融和と同様に、人々の心の中の憎しみ・恐怖を消す作業であり、そんなことが果たしてできるのだろうか・・・とすら思えます。
以前、スリランカを旅行した際、知人の奥さんがタミル人のことを“あの人たちはスリランカ人じゃないから”と切り捨てたのが、今も思い出されます。

しかし、この小さな島に平和を取り戻すためには、オバマ新大統領の言う“ひとつのアメリカ”のように、“ひとつのスリランカ”を実現すべく努力するしかありません。
そのためには、多数派で既得権益を持つシンハラ人側が譲らないといけないことが多々でてくるように思えます。
偏狭な民族主義が跋扈しがちなのはスリランカも同じですが、スリランカ政府・国民はそれを超えて“ひとつのスリランカ”をつくることが可能でしょうか。


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タリバンとの和解の可能性 その女性蔑視の考え方

2009-01-20 20:43:19 | 世相

(アフガニスタン 04年の選挙の際、選挙登録する女性 タリバン支配となれば、こういう光景もなくなります。 “flickr”より By Advocacy Project
http://www.flickr.com/photos/advocacy_project/517836868/)

【オバマブーム、タリバンも】
オバマ次期大統領の就任式を控え、アマリカ国内はもちろん日本の国民・メディアも大きな関心をこれに寄せています。
なんだかんだ言っても、腐ってもアメリカ・・・というところでしょうか。
戯言はともかく、アメリカ内外でのオバマブームには、人々の“変革”への期待という理由があります。
こうした政治への期待を感じさせるというのは素直にうらやましく思いますし、日本の政治に目をやるとため息が出るところです。

オバマ次期大統領に期待するのはアフガニスタンのタリバン関係者も同じのようです。
タリバンの精神的支柱とされるイスラム教スンニ派デオバンド学派の指導者の発言として
「タリバンの戦いは自由のための戦いだ。だが、米国もタリバンも互いに武力だけでは永久に解決しないことを知っている」
「米国がもっと早くアフガンの現実に向き合っていれば、ここまで治安状況は悪化しなかった。米国はタリバンの役割を認めて真摯(しんし)に対話を求め、両者が話し合いを開始する時だ」
「父親がイスラム教徒でイスラムの名を持つオバマ氏なら(タリバンとの対話を始めるという)英断ができるはず」
といった言葉が伝えられています。【1月20日 毎日】

駐留米軍の増派とタリバンとの対話という硬軟両にらみのアフガン戦略を目指すオバマ次期大統領のアフガン戦略が、なかなか難しいことは先日も触れたところですが、タリバン側に話し合いの余地があるならなんらかの出口もみつかるかもしれません。

【女子校閉鎖】
そのタリバン、イスラム原理主義勢力が影響力を強めるパキスタン北西辺境州からは、彼等の女子教育否定の考えのために、多くの女子校が閉鎖に追い込まれていることが報じられています。

****パキスタンの女子校400校閉鎖危機 タリバーン脅迫で*****
パキスタン北西辺境州のサワット地域で、女性への教育に反対しているイスラム原理主義勢力タリバーンによる脅迫で、女子校が閉鎖の危機に直面している。私立の女子校400校はすでに、冬休みが終わる2月以降も学校を再開しない方針を決めた。
地元紙ニューズなどによると、タリバーン系組織「パキスタン・タリバーン運動」のサワット地域幹部が昨年12月末、「女子の教育は反イスラムであり許さない」と女子校教育をやめるよう要求。一帯では07年以降、すでに女子校約120、男子校50校が放火され、4万人以上が通学できなくなっている。
私立女子校400校(生徒数約4万人)でつくる団体も15日、冬休み明けの2月以降も学校を再開しない方針を発表した。
パキスタン政府のレーマン情報相は18日、「女子生徒の安全を確保し(冬休み明けの)3月1日から学校が再開できるよう努力する」と述べた。だが、住民の間には「タリバーンの脅迫に逆らえば、身に危険が及ぶ」との恐れが強く、保護者が通学させないだろうとの見方が強まっている。
パキスタンでは近年、米軍などのアフガニスタンでの掃討作戦を逃れたタリバーンが入り込み、国境に近い部族地域を中心に影響力を強めつつある。都市部でも、「反イスラム」と見なすビデオ店やCD店への脅迫が相次いでいる。【1月19日 朝日】
*********************************

アフガニスタンでは、登校中女子学生がタリバン関係者によって顔に硫酸をかけられ火傷する事件もおきています。
2008年だけで、11月時点で115校が放火や爆弾・ブルドーザーなどによる攻撃を受け、教師や生徒など約120人が死亡していると言われています。
(11月27日ブログ「女性に対する暴力撤廃のための国際デー」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20081127

【女性蔑視のタリバンとどう向き合うのか】
私は特別フェミニストでもないつもりですが、いつも言うように、こうしたタリバンの女性に対する考え方、仕打ちにはどうしても馴染めません。
また、こうしたことを座視することも難しく感じます。
冒頭のデオバンド学派の偉い方なども同じような考えなのでしょうか?
それとも、イスラムというよりは、パシュトゥン人の部族社会の規範なのでしょうか?

いずれにしても、仮に今後タリバンとの和解が進むことがあるにしても、その女性への対応については再考を促すことができないものでしょうか。


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タイ、ミャンマー難民を海上放置死 ソマリア難民、イエメン沖で座礁

2009-01-19 20:56:20 | 世相

(ミャンマー難民ロヒンギャの少女 バングラデシュの難民キャンプで
“flickr”より By Austcare - World Humanitarian Aid
http://www.flickr.com/photos/austcare/2777410962/

昨日・今日で目についたニュースというと、タイの難民海上放置死の問題。
詳細はわからないところがありますが、衝撃的な内容です。

****タイ当局 移民300人放置死か ミャンマー人縛り船上に*****
不法に入国しようとしたミャンマー人に対し、タイの沿岸警備当局が手を縛るなどして船上に放置し、約300人が死亡した疑惑が浮上した。タイの英字紙バンコク・ポストなどが18日伝えた。タイ外務省は調査を開始しており、重大な人権侵害事件に発展する可能性がある。
この疑惑以外にもミャンマー人に対する人権侵害が指摘されており、こうした対応がタイ警備当局で定着していた疑いも出ている。

同紙によると、タイ海軍など沿岸警備当局は昨年12月、アンダマン海でミャンマーの少数民族「ロヒンギャ」412人を乗せた船舶を摘発。しかし、保護しないまま不法移民として手を縛るなどし、エンジンのない別の船舶に乗り換えさせた上で、海上に放置した疑いが持たれている。船舶は15日以上漂流し、インド領内で同国の沿岸警備隊に保護されたが、生存者は107人だったという。

このほかにもタイの警備当局が昨年12月末、ミャンマーからの出稼ぎ労働者らをボートで沖合に連れ出して放置したり、英国のBBCテレビによると、海軍が不法移民摘発の際、沿岸の島で暴行を加えた疑いも出ている。
ロヒンギャは、軍政の迫害を受けて1990年代から隣国のバングラデシュに逃れるケースが続出。多くが、その後に仕事を求めてタイやマレーシアを目指している。【1月19日 産経】
*************************

別の記事によれば、“タイ海軍は「事実と異なる」と否定。タイ外務省は17日、調査の開始を明らかにしたが、「不法移民については人権に配慮しながら国内法に基づき対処している」などとする声明を出した”【1月18日 朝日】とのことです。
また、“数日分の食料や水しか与えず、手などを縛ったまま、船に乗せて海上に放置”【1月18日 共同】
本当に上記記事のとおりなら、殆ど殺人行為と言ってもよいかと思います。

ロヒンギャはミャンマー西部に居住するイスラム教少数民族で、多数派の仏教徒と対立関係にあり、軍政によって弾圧されていると言われており、バングラデシュやタイへ難民として逃げて暮らしています。
バングラデシュでのロヒンギャ難民については、12月26日ブログ「非合法キャンプで暮らすミャンマー難民」で取り上げたところです。
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20081226

また、難民を受け入れる国も大変なのは事実で、その負担を軽減することもあって、タイのミャンマー難民について日本政府が第三国定住を受け入れることを決定したことも紹介しました。
(12月20日 「第三国定住受け入れ ミャンマー難民30人程度」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20081220

難民を殆ど受け入れていない日本に今回事件をとやかく言う資格があるかは疑問ですが、難民の置かれている立場を明らかにした事件でもあります。

ときおりニュースになる難民に、無政府状態のソマリアから対岸のイエメンに脱出する難民の話題があります。
悪質な仲介業者によって海上で追加費用を要求され払わないと海に投げ込まれる・・・といった類の、これも悲惨なものです。

そのソマリア難民についても最近また報じられていました。

****座礁:イエメン沖で数百人不明か ソマリア難民乗せた船****
AP通信によると、イエメン沖で17日、アフリカ東部ソマリアからの難民を乗せた船3隻が荒天のために相次いで座礁した。計約400人が乗っていたとみられ、イエメンの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)当局者は、数百人が行方不明で多数が死亡した可能性があると述べた。
同当局者によると、紅海沖で計300人を乗せた2隻が座礁、うち約30人は救助されたが、少なくとも十数人の遺体がイエメンの海岸に打ち上げられているという。
*********************

【命の軽さ】
今回事件は荒天による事故ですが、ソマリア難民にしてもミャンマー難民にしても、いとも“簡単”に、数百人単位の命が失われていきます。
日本や欧米で数十人の死傷者が出る事故があれば大騒ぎになりますが、ソマリアやミャンマーなどでは、日常的に大勢が死んでいきます。

こうした現実に対し何もすることができないのが実際のところですが、少なくとも、こうした国々における命の軽さを、そうした世界が自分たちの世界と並存していることを知るべきでしょう。
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アフガニスタン  増派に対話 イスラム国軍にバイアグラ

2009-01-18 11:54:26 | 国際情勢

(アフガニスタンで女性教育を進めるNGOの運営する学校 お母さんについてきた少女でしょうか タリバンを受け入れ難い最大の問題は、国民の半分を占める女性について、その権利を殆ど認めていないように思われることです。
“flickr”より By thechildrenofwar
http://www.flickr.com/photos/tcow/3203042453/in/set-72157612623743205/)

【あいかわらずのアフガン情勢】
最近あまり目立った動きを聞かないアフガニスタン情勢ですが、あいかわらずタリバンの攻勢は続いているようです。

昨年12月28日には、東部ホースト州で地元政府の建物を狙った自動車による自爆攻撃があり、子ども14人を含む16人が死亡しています。
また今月17日には、首都カブールの米軍基地とドイツ大使館の近くで車を使った自爆テロがあり、米軍の1人を含む計5人が死亡、28人がけがをしています。タリバンは「ドイツ人武官の車を狙った」との犯行声明を出しています。
ドイツはアフガニスタンでは対タリバン戦の前面には出ていませんが、「ドイツ軍はアフガン北部で住民殺害に関与している。今後はアフガンに部隊を送るすべての国を標的にする」(タリバン報道官)とのこと。

【米軍3万人増派】
20日の就任式にのぞむオバマ次期大統領は、かねてよりイラク戦には批判的で、テロの闘いの主戦場はアフガニスタンにあると主張してきました。
米紙ワシントン・ポスト(電子版)は13日、オバマ次期大統領がアフガニスタンに最大3万人を増派する国防総省の計画を承認する意向だと報じています。これによりアフガン駐留米軍の規模はほぼ倍増します。
“ただ、同紙によれば、オバマ次期政権は、アフガンの治安情勢をこの増派で劇的に転換させられるとはみておらず、抜本的なアフガン戦略見直しを行うための時間稼ぎと考えている。”【1月13日 時事】

アフガニスタン戦略にとってマイナスとなりそうな動きも伝えられています。
“AFP通信は17日、中央アジアのキルギス政府が近日中に、領内にある米軍基地の閉鎖を命じると伝えた。
これはロシアの要求に基づく措置で、見返りとしてロシアは大規模な財政支援をキルギスに供与するという。
キルギスは米軍にとって、アフガニスタンに兵員や物資を運ぶ重要な拠点。実際に基地閉鎖を求められれば、オバマ次期政権のアフガン戦略には打撃となる。”【1月17日 読売】

キルギスの米軍基地は、ロシアにとっては伝統的に自国勢力圏と見なす中央アジアへの米国の勢力拡大を象徴する施設であり、メドベージェフ大統領はキルギスに対する総額20億ドル(約1800億円)の資金供与によって、キルギスのバキエフ大統領に米軍撤退を求めるとのことです。
普段“2兆円の定額給付金”などを耳にしていると、“1800億円”というのは世界情勢に変化をもたらす金額としては少ないような気もします。“2兆円”のほうが巨額すぎるのでしょうか。

【和解促進にイスラム国軍を】
いずれにしても、前出【1月13日 時事】にもあるように、国際社会には、「タリバンを武力で打ち負かすことはできない」との認識が定着しつつあります。
アフガニスタンのカルザイ大統領はタリバンとの和解対話に乗り出しており、米国もこれを支援する姿勢をみせています。
オバマ次期大統領も3万人増派と対話のふたつの方策を同時に模索することになると思われますが、米軍撤退を求めるタリバンとの両面作戦は厳しそうです。
しかし、今の情勢での一方的米軍撤退はアフガニスタンの内戦を再び引き起こすことも予測されます。
そんななかで、米軍にかわるイスラム国軍のアフガニスタン駐留を求める意見もあるようです。

****アフガン安定化:イスラム国軍が駐留を…前パキスタン大使*****
パキスタンの前駐アフガニスタン大使、モハメド・ルスタム氏(65)が11日、毎日新聞と会見。アフガン安定化を実現させる策として、「武装勢力タリバンが敵対視する米軍など既存の駐留外国軍に代わり、インドネシアやマレーシアなどイスラム国家の軍隊を、国連の承認を経て駐留させることが望ましい」との考えを示した。
ルスタム氏はパキスタン部族支配地域出身の有力者。02~05年に大使としてカブールに駐在した。アフガン、パキスタンの国境地域の有力者がテロ対策を協議する「アフガン・パキスタン大会議(ジルガ)」でパキスタン側の責任者を務める。

氏は「タリバン指導部の考えを熟知している」と述べたうえで、タリバンとの和解交渉について、「アフガン政府が米軍の駐留と増派を拒否できない以上、和解は困難」との見通しを示した。
一方で、アフガン再建には「外国軍の駐留が当面不可欠」とも述べ、「米国は軍を撤退させ、イスラム諸国に代替派遣を求めるべきだ」と主張した。
米軍がアフガンから撤退したうえで、タリバンが受け入れ可能な「イスラム国家によるアフガン管理」を行うというものだ。(中略)

ルスタム氏は「パキスタンやイランなど、過去にアフガン支配に野心を持った国が派遣されれば再び混乱を誘発する恐れがある」と述べ、派遣されるべきイスラム国家について、利害関係を持つ近隣国ではなく、インドネシアやマレーシアなどを挙げた。
タリバン指導部の考えを熟知しているとする同氏は、これらの国軍による駐留が実現すれば「タリバンは政治勢力となり、駐留軍を攻撃することは絶対にない」と強調した。(後略)【1月13日 毎日】
***********************

ひとつの考えではありますが、パキスタン・イランならともかく、インドネシアやマレーシアが敢えてアフガニスタンに出て行くか・・・。
これもなかなか実現は厳しそうです。

【民兵組織やバイアグラ】
こうした和戦両方の取組みのほか、イラク・スンニ派で成功したとされる民兵組織をつくる動きもあるようです。
“24日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、イスラム原理主義勢力タリバンの掃討支援に当たらせるため、アフガニスタン当局と米軍が地元住民に武装を施す計画を進めていると報じた。来年から中部ワルダク州で実施し、効果があれば全土に拡大する方針という。
米当局はイラクで部族勢力を武装し、反政府過激派の鎮圧で成果を上げたとみており、アフガンでも同様の措置を取ることにした。同紙によれば、カルザイ・アフガン大統領も今月に入り計画を承認。地区ごとにライフルなどで軽武装した100-200人の民兵部隊を組織するという。”【12月24日 時事】

変わったところでは、性的不能治療薬「バイアグラ」が情報収集に役立っているとか。

“ワシントン・ポスト紙は情報機関筋の話として、CIAによる情報提供者への報償の支払いは以前から行われていたが、アフガニスタンの地元有力者らから情報を得るのにバイアグラを利用するようになったという。
CIAはこれまでに部族長らに対し、ポケットナイフや工具、玩具や学校用備品、旅行ビザや手術などの医療サービスのほかに、時折「バイアグラ」を提供してきたという。現金や武器を渡すという手段もあるが、武器の場合は流出の危険性があり、また、現金を突然手に入れた人は目立ちやすいという問題があるという。
ワシントン・ポスト紙によると、アフガニスタンの部族長には複数の妻がいることが多く、バイアグラは「彼らが権威ある立場を回復する」ために効果的だという。”【12月27日 AFP】

あの手この手ではありますが、アフガニスタンの人々自身はどのような国を望んでいるのでしょうか?

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ソマリア  更に混迷に向かうのか・・・

2009-01-17 13:56:30 | 国際情勢

(2008年2月3日 厳重に警備されているモガディシオ空港近くで路肩爆弾が炸裂、ミニバスが破壊されました。この爆破で女性9名が死亡。
Photographer:Abdurrahman Warsameh
“flickr”より By ISN Security Watch
http://www.flickr.com/photos/securitywatch/2471318634/)

【海賊対策に各国の思惑】
国際海事局(本部・ロンドン)が16日に発表した08年の海賊事件の報告書によると、昨年1年間に乗っ取られた船は計49隻で計889人が人質となったとのこと。
うち42隻はソマリア周辺で乗っ取られ、昨年末時点で13隻と乗組員計242人が未解放だそうです。

各国は海賊対策のための艦船派遣を進めており、併せていろんな政治的効果も狙って動いています。
EU初の海上作戦、中国の台湾船護衛など。

海上自衛隊艦艇の派遣を進める日本も、自衛隊法82条に基づく海上警備行動の発令、更により本格的な活動のための新法の検討を急いでいるようです。
また、海上自衛隊の護衛艦に加えてP3C哨戒機の派遣を検討していることも明らかになっています。
哨戒機が収集した海賊船に関する情報を各国に提供し、国際貢献につなげる狙いがあるとのこと。【1月14日 時事】
着々と海外での実績づくりを進めています。

ただ、常に指摘されるように、ソマリア沖の安定のためには、ソマリアの無政府状態の解決が根本にあります。
そのソマリア情勢ですが、あまり日本語情報がなくよくわかりませんが、あまりいい方向には向かっていないようにも思えます。
最近目にした関連ニュースは、大統領の辞任とエチオピアの撤収の記事でした。

****ソマリア大統領が辞任****
ソマリアのアブドラヒ・ユスフ暫定政府大統領が29日、辞任した。紛争などで疲弊した同国の治安不在に加え、政情不安が深まりそうだ。
ユスフ大統領は特別国会で「国民が指導者を選出できる平和と安定、民主主義をもたらすことができなければ辞任すると公約していた」と語った。
2004年に暫定政府大統領に就任したユスフ氏は、首相人事などをめぐってヌル・ハッサン・フセイン首相と対立するなど、過去数か月は内紛に巻き込まれていた。この対立問題により、権威を確立することができない政府はさらに弱体化した。
ユスフ大統領は、国際社会の支持がなかったため有効に統治することができなかったと批判している。【08年12月30日 AFP】
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****エチオピア軍、ソマリア首都から撤退*****
ソマリア暫定政府報道官がAFPに語ったところによると、エチオピア軍は15日、ソマリアの首都モガディシオからの撤退を完了した。
Abdi Haji Gobdon報道官は「エチオピア軍はけさ、首都から完全に撤退し、1人も残っていない」と述べた。
エチオピア軍は2006年末、ソマリア国内の大部分を制圧したイスラム系反政府勢力に対抗し、基盤のもろいソマリア暫定政府を支援するため、ソマリア国内に本格的に軍事介入した。ソマリア全土からのエチオピア軍撤退の一環として、首都からの撤退は13日から開始されていた。【1月15日 AFP】
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大統領辞任で後がどうなるのか?
エチオピア撤収も、確かに紛争の一方の当事者ではありますが、混乱状態を極めていた当時のイラクからアメリカが一方的に撤収するようなものではないでしょうか。
紛争解決後の撤収ならともかく、先が見えないなかでの撤収は本格的な内戦状態・一層の混乱を招きかねません。

情報が少ないので定かではありませんが、今後暫定政府の存続は更に厳しくなり、イスラム原理主義勢力との紛争は更なる混乱へと向かうような感じがします。

Flickrで写真を探していたところ、イスラエルのガザ侵攻に抗議するソマリア若者のデモ(1月9日 モガディシオ)の様子を写したものがありました。
http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/3194095223/

よその心配をできるということは、そんなに現地の情勢は悪くないということでしょうか?
それとも、イスラエル対ガザにエチオピア対ソマリアを重ね合わせての、対エチオピア抵抗運動の一環でしょうか?

【身辺雑記】
***********************
私事では、引越し5日目にして、電気工事・エアコン修理が終わり、ようやくエアコンが使用できるようになりました。
併せて、これまでの雪がちらつく天気も回復して、今日は部屋に温かい日がさしています。
ここ宮崎の五ヶ瀬町(宮崎とは言っても、スキー場もある山奥の町です)に来て、はじめて寒さから解放された思いです。
(やっと部屋の中でコートを脱ぎ、マフラーをとることができました。)
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加速する中台蜜月  WHO、ソマリア沖、故宮博物院

2009-01-16 21:08:47 | 国際情勢

(中国北京の故宮博物院にある“大禹治水図玉山” ひとの背丈をはるかに越えます。(高さ2m 重さ5t)
玉の産地、新疆の和田(ホータン)で見つかった玉を運ぶのに3年、更に天禹の治水の伝説を彫り込むのに8年かけたという逸品です。
今回台湾側に貸し出される文物に含まれているのかどうかはしりません)

【WHOオブザーバー参加】
台湾の国民党・馬政権成立依頼の中国の台湾接近ぶりには驚かされるところがあります。
こうした中台蜜月にとって、ひとつのハードルとみられていた台湾のWHOオブザーバー参加についても、中国はこれを容認する方針を固めたと正月に報じられています。

****WHO総会 中国、台湾参加容認へ 「中華台北」名 オブザーバー****
関係筋が31日語ったところによると、中国は2009年5月の世界保健機関(WHO)年次総会(ジュネーブ)で、「中華台北」名で台湾のオブザーバー(観察員)参加を認める方針を固めた。馬英九台湾政権発足以来、改善著しい中台関係を加速させる狙いだが、台湾がWHOはじめ国連機関への加盟の動きに出ることを警戒しており、近く台湾側との調整に入る見通しだ。

台湾は、国際的地位回復の一環として李登輝政権時代の1997年以来毎年、「中華民国」名義でWHOへの参加を申請。陳水扁前民進党政権は2007年、「台湾」名での申請に切り替えたが、中国は「一つの中国」に反するとし加盟もオブザーバー参加も一貫して反対、申請は失敗した。
03年に中国で新型肺炎(SARS)が猛威を振るい、被害が台湾にも及んだ際、台湾は当初、WHOから情報や支援を得られなかった。鳥インフルエンザなど感染症への国際的対応が急がれる中、日米を中心に台湾のオブザーバー参加に支持が広がっていた。

台湾では、WHO参加に広範な支持があり、05年に訪中した当時の野党国民党の連戦主席も胡錦濤中国国家主席に加盟承認を求めたことがある。しかし中国は陳水扁政権の「独立陰謀」と警戒、主権国家で構成されているWHOに、台湾は参加資格はないとの立場を取ってきた。
08年5月、対中重視路線の馬英九国民党政権の誕生で、状況は変わった。馬氏は総統当選後の4月、国際オリンピック委員会(IOC)など国際組織で使わ れている「中華台北」名で加盟したい意向を表明。同5月末に訪中した呉伯雄国民党主席に対し胡錦濤主席は検討する意思を示した。(後略)【1月1日 産経】
***********************

また、中国の胡錦濤国家主席は昨年末の31日、「台湾同胞に告げる書」発表30周年記念座談会で演説。その中で「台湾の国際組織活動への参加」について、「二つの中国」「一中一台」をつくらない前提下で「両岸(中台)の実務的協議を通じ、情理に合った処理ができる」と述べています。
これは、当面最大の焦点になっている台湾のWHO参加問題に関した言明とみられています。【1月1日 産経】

中国側としては“「二つの中国」「一中一台」をつくらない”という基本線を崩さないことが大前提ですので、
こうした中国側の動向について、“台湾側関係者は「中国は台湾の参加に向け準備中だが、なお慎重だ」とし、オバマ米次期政権の台湾政策や台湾社会の反応を見極めようとしているようだと述べた。”とも報じられています。
それにしても、これまでの中国側対応を考えると、驚きです。

【抱き合うふたり】
1月7日には、台湾の対中国交流窓口機関、海峡交流基金会トップ、江丙坤理事長の率いる訪中団が広東省深セン入りし、金融危機で深刻な影響を受ける台湾企業を視察、また、中国側の海峡両岸関係協会トップ、陳雲林会長らとも会談しています。
会談内容よりも、このニュースを伝える記事【1月7日 共同】に掲載されていた、両代表が抱き合うようにしてにこやかな笑顔を見せている写真が印象的でした。

また、新華社通信によると、海賊対策のためにソマリア沖に派遣された中国海軍の駆逐艦2隻が12日、台湾商船を含む4隻を護衛したそうです。【1月12日 毎日】
更に、中国中央テレビは14日、北京の故宮博物院が、所蔵する貴重な文物17点を台北の故宮博物院で10月に開かれる「雍正帝展」に貸し出すことに同意したと伝えています。
1949年の中台分裂で離れ離れになった故宮の文物が一緒に展示されるのは初めてです。【1月14日 時事】

【警戒感も】
台湾海峡が緊張する事態は日本の安全保障にとってもゆゆしいことであり、中台蜜月はその意味で歓迎すべきところでしょう。
ただ、台湾の立場で考えると、大国中国に飲み込まれていくような不安もあるのではないでしょうか。

****台湾:総統府を捜索、職員ら拘束 中国への機密漏えい容疑****
台湾総統府の職員らが、中国の情報機関に総統府の機密を漏えいしていたとして、台湾の検察当局が14日、総統府を家宅捜索した。総統府が捜索を受けるのは初めてで、緊張緩和が進む中台関係にも影響を与えそうだ。【1月15日 毎日】
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上記の記事も、そうした台湾内部にある不安感・警戒感を反映した動きのように思えます。


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フランス  出生率が2を越える その背景にあるものは

2009-01-15 20:22:06 | 世相

(フランスの赤ちゃん 将来のパリジャン、パリジェンンヌです。
“flickr”より By EssG
http://www.flickr.com/photos/essgee/3147153987/)

【41歳マリ人女性 パリの歩道で出産】
フランスからのトピックに下記のようなものがありました。

****病院に間に合わず歩道で出産、パリ
パリで12日、外出中に産気付いた41歳の女性が、警官の助けを借り、歩道で無事出産した。
パリ警察が13日明らかにしたところによると、マリ人のこの女性は、バスを降りたところで急に産気付き、近くの病院に駆け込もうとしたが、激しい陣痛のため歩道にうずくまった。
巡回中の2人の警官が苦しんでいるこの女性を見つけ、1人が病院に通報に向かい、残った1人が産まれたばかりの赤ん坊を自分のジャケットでくるんだ。
看護師らはまもなく現場に到着し、その場でへその緒を切り、母子を病院へ搬送したという。【1月14日 AFP】
**************************

母子ともに無事だったとのことで、まずは何よりです。
一方、フランスからは出産がらみでもっと重要な話題、“出生率が前年を上回り、女性1人あたりが産む子どもの数が平均2人以上となった”ということが報じられています。

****フランス出生率2.02に上昇、欧州トップ****
フランス国立統計経済研究所(INSEE)が13日に発表した統計によると、2008年のフランスの出生率は前年を上回り、女性1人あたりが産む子どもの数が平均2人以上となり、欧州トップの座を確かなものにした。
INSEEによると、フランスの人口はドイツについで欧州第2位で、2009年初頭の住民数は08年から36万6500人増え、6430万人となった。
フランスでは、出産適齢期の女性数は減少しているものの、出生率は上昇を続けている。08年の女性1人あたりの出産数は、07年の1.98人を上回り、2.02人となった。
また、08年のフランスの出生数は80万人を超えた。これは過去最高数で、フランスの家族支援政策が成功したことを示す結果となった。

フランスでは、政府による養育費支援や家族支援手当が定着しており、また、妊婦支援や育児休暇を提供する労働法が整備されたこともあり、若いカップルの育児が支援される環境がある。
欧州全体の平均出生率は1.5人で、フランスとアイルランドが高い出生率をけん引している。
多くの西欧諸国と同様、フランスでは高齢出産が多く、出産時期は1980年代と比較して2歳ほど伸び、30歳ごろからが多い。
出産率は30-40歳のグループで上昇しており、前年の出生数の5人に1人が35歳以上の女性の出産となった。1998年には、晩産は16.5%ほどにすぎなかった。
また、2006年以降、婚外子の増加傾向が続いている。2008年には、新生児の52%が婚外子となり、1998年より10%増加した。【1月14日 AFP】
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冒頭のトピック女性も41歳も高齢出産です。
また“マリ人”ということで、フランスにおける移民社会の一端を示すものでもあります。

【日本は・・・】
ちなみに、日本の状況は“07年の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの数に相当)は、06年を0.02ポイント上回り、1.34となったことが、厚生労働省が4日まとめた人口動態統計で明らかになった。同出生率は06年に6年ぶりで上昇し、2年連続増えた。ただ、人口減で出産適齢期の女性の数そのものが減っており、出生数は2929人減の108万9745人。史上最低だった05年(106万2530人)に次いで少なく、今後も上昇に転じる見通しはない。”【08年6月4日 毎日】といったところです。

長期低落傾向にあった日本の出生率は記事のようにここのところ若干改善してはいますが、フランスのようなレベルとは程遠く、少子化・将来的人口減少の大筋は変わっていません。
間違いなくこの問題は日本の将来を考えるとき最重要問題であると思われます。

【52%が婚外子】
フランスにおける出産に対する手厚い公的支援については以前も取り上げたことがありますので、今回は触れません。
個人的に一番驚くのは、“新生児の52%が婚外子”という点です。
どのような生活スタイルであっても、そのような生き方、その女性の出産を受け入れる社会、それを支援する公的援助があっての“出生率2.02”です。
単に手当てを増やせばいいという問題ではありません。

日本も、社会における女性の状況・役割についての再認識からスタートして、“本腰を入れた”対応が望まれます。
もちろん、これまでのあり方を変えることには摩擦が伴います。
婚外子が増加するような状況は、多くの新たな問題を生むと思われます。

しかし、新たな生活スタイルを否定し、これまでのあり方、伝統的文化に固執し、多くの難問をもたらす移民も認めない・・・それでは、おそらく日本社会は衰退の道から逃れることはできないのではないでしょうか。

【はじめての職場】
今日は職場を変えての1日目、かってがわからないことばかりで疲れます。
何もできない自分自身に気も滅入ってきます。
部屋も引越しの片づけがすんでいません。
エアコン調整や電気工事などもすんでおあらず、部屋でもコートにマフラーという状態です。
・・・という訳で、今日はこれでおしまい。


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アメリカ  注目される全米自動車労組(UAW)の対応

2009-01-14 20:16:43 | 世相

(北米国際自動車ショーに出品されたthe chevy beat  GMのハイブリッドカーでしょうか “flickr”より By daniel.gene
http://www.flickr.com/photos/danielgene/3190601740/)

アメリカ・デトロイトで北米国際自動車ショーが11日から開催されています。
環境に配慮したグリーンカーが多数出品されていますが、関係者の関心はビッグ3の経営危機にあるようです。

自動車販売は世界中で低迷していますが、中でもGMとクライスラーは、計80億ドル(約7200億円)にも上る公的資金の緊急融資を受けており、2月17日までに政府に経営改善策を提示しなければなりません。

【組合の論理】
個人的には、企業そのものの存続よりは、労働組合の対応に興味があります。
労組の対応如何で、企業の存続も左右されるという意味では、同じことですが。

****「なぜ労働者が犠牲を」、北米自動車ショーで労組が賃金カットに抗議****
米ミシガン州デトロイトで開幕した北米国際自動車ショーの会場前で11日、全米自動車労組(UAW)の組合員らが、業績が悪化している米自動車産業の再建目的での賃金引き下げに抗議した。

「必要なのはイラク戦争より医療保険」「米国車を買え」「米国を築いたのはわれわれだ」「(米国)車を殺すのは国を殺すことだ」「銀行や経営トップが金を出せ」――。会場前に集結した組合員らは、プラカードを手に抗議の声を上げた。
「なぜわれわれが犠牲を払わなければならない?」とUAW組合員の1人が言えば、別の1人は「すでに十分すぎるほどの犠牲を払った。生活はもうぎりぎりの状態だ」と訴える。
労組側が配布した冊子には、「われわれは外国の自動車企業の従業員ではない。同様に扱うな」などと書かれ、米企業に比べ低賃金とされるトヨタ自動車やホンダなど外国系自動車企業の現地工場を暗に批判している。

米政府は、クライスラーやGMに巨額の追加融資を行う条件として、従業員の労働条件を見直すよう求めており、数週間内にも労使交渉が行われる見通し。経営側は労組に対し、賃金引き下げや各種手当てカットなどを含むリストラ対策への理解を求めるものとみられる。
業界専門家は、米政府からの圧力がかかっていることから、労組がストライキを行使する可能性は薄いとしている。【1月12日 AFP】
*********************

【現状認識と正論のあいだで】
大昔になりゆきで、某政府関係特殊法人の労働組合を率いる立場に立ったことがあります。
当時、公務員や特殊法人については、“ヤミ手当て”“カラ出張”などの批判が噴出し、それまでの“既得権益”の殆どを失っていました。
更に、労働条件の切り下げ、組織自体の統廃合という形で労働側への逆風が続き、組合内部には“いつまで叩かれるままになっているんだ”“当然の権利を求めてなぜ闘わないのか”と、組合指導部の弱腰を批判し“組合的正論”
を主張する者も存在していました。

当時の組合の実態は労使協調でしたが、対組合員向けには過去の運動を踏襲する“正論”的な姿勢も残っていました。
政府・財政当局に対し“組合的正論”を盾に“目立つ”運動を行うと、狙い撃ちにされる・・・そういう現状認識と組合的正論を否定できない姿勢のあいだで随分苦慮したことがあります。
実際のところ、指導部の関心事は“いかに政府・当局と交渉するか”ではなく、“いかに組合内部の“正論”をかわすか・・・”ということでした。

私のような弱小組合の日和見役員と比べたら失礼でしょうが、アメリカのUAWも同じような悩みを抱えているのではないでしょうか。
おそらく指導部の間では、“この状況にあっては譲歩もやむなし”という認識もあるのでは。
しかし、それを組合員に対しストレートに出すことは憚られる・・・そういう感じではないでしょうか。
特に大幅な賃金引下げや合理化を組合として受け入れることは難しいところです。
自らの存在意義にかかわってきます。
さりとて、ここで再建案を拒否すれば、もともこもなくなることが予測されます。

UAWの場合、同じ自動車業界労働者でもUAWに加入していない労働者と比べると大きな権益を持っているようにも聞きます。
UAW指導部がどのような判断をするのか、組合員がどのように反応するのか・・・。

【売れている車もあるそうで】
絶不調の自動車販売の中にあって、例外もあるようです。
ドイツ自動車大手ダイムラーの小型電気自動車「スマート」の売れ行きが好調だそうです。
それは“まあ、そういう車種もあるかも”という感じですが、高級車も売れ行きは好調だそうで、こちらの背景はよくわかりません。

“米国を始めとして世界中の自動車市場が低迷しているにもかかわらず、英ベントレーや伊マセラッティ、同ランボルギーニ、英ジャガー、独マイバッハ、英ロールス・ロイスなどの高級車の販売は堅調で、特に、東欧などの新興市場での売り上げは前年比8-50%増となっている。
ジャガーのマーケティング責任者によると、同社は2008年、3-6万ドル(約270-540万円)の価格帯の車を6万5000台販売したという。これは前年比8%増の数字だという。”【1月14日 AFP】

不況だなんだと騒いでいますが、それは貧乏人の世界での話で、富裕層にはまた別の話があるのでしょうか。
住む世界が違いますので、よくわかりません。



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五ヶ瀬  引越し先は雪景色 そしてトラブル

2009-01-13 20:42:51 | 身辺雑記・その他


(五ヶ瀬の雪景色をバスの中から撮影したつもりだったのですが、なぜか記録されていませんでした。写真は五ヶ瀬とはまったく無関係なパリの雪景色。“flickr”より By Gregory Bastien
http://www.flickr.com/photos/gregory_bastien/3171028030/)

今日は引越し移動。 
今、新しい生活の場である宮崎県五ヶ瀬町に向かうバスの中にいます。
4年間暮らした鹿児島県奄美大島から、一昨日荷物は送り出しました。
今日の午後に五ヶ瀬町に着く予定です。

奄美は10℃を下回ることが年間数日しかない暖かい島でしたが、熊本から五ヶ瀬に向かうバスの外は、日は差しているものの雪がちらついています。
昨日は鹿児島川内の自宅でしたが、川内も霙、霰、ときに粉雪という天気でした。
五ヶ瀬は阿蘇も近い山奥で、スキー場もあるとか。

島の暖かさに慣れたからだには少し厳しいものがあります。
もっとも、島の冬も気温は下がらないものの、小雨まじりの曇天が続き、海から強い風が吹きつけます。
南の島のイメージとは程遠い薄ら寒い日々が多いのが実際です。

五ヶ瀬は一度も行ったことがありません。
住む所は仕事場の隣とか。
随分古い戸建てと聞いています。
五ヶ瀬・・・どんな町でしょうか。どんな家でしょうか。どんな仕事場でしょうか。

先ほどNTTから電話が入り、「移転先にこれまで住んでおられる方があさってまで電話を使用するようになっていますが・・・」とのこと。
大丈夫だろうか?
バスは阿蘇の裾野に入ってきました。
うっすらと雪が積もっています。

先ほど「うっすらと雪が積もっています」と書いて一旦PCを切ったのですが、今は“しっかりした雪景色”です。
道路も雪でぐちゃぐちゃです。
五ヶ瀬の町に入るところでバスが止まってしまいました。
スリップ事故のようです。
 
五ヶ瀬に着きました。
新しい勤務先は忙しそうです。
勤務時間中もブログ作成ができるようなのんびりした島の環境とは大違いです。
やっていけるか少し不安です。

家は確かに古いですが、DK以外に4部屋もあってひとり暮らしには十分すぎる広さです。
設備もまずまずです。
荷物が着きました。
運送業者の方が手際よく荷物を運び込んでいきます。
荷出しのときも思いましたが、さすがプロの仕事です。

トラブルです。
エアコンのガスが抜けているそうです。
取り外しを電気屋さんではなく、運送業者に頼んだのがまずかったのか・・・。
ガスの注入には2.3日かかるとか。
スキー場もあるような町です。
夜は凍結防止に水道の水は出しっぱなしにするような町です。
エアコンなしでどうする・・・。

島では押入れに眠っていたファンヒーターをフル稼働。
たまたま置いてあった勤務先の備品のハロゲンヒーターも全開。
ようやく室温が9℃にまで上がってきました。
もちろん室内でもコートをきたまま。

せめて暖かいコーヒーと晩御飯のお弁当でも(町には食堂なんてありません)と思って町で唯一の小さなスーパーにでかけると、“降雪のため早仕舞いした”とのことでアウト。
コンビニもどきの店を教えてもらい、食糧はなんとか確保しましたが、レンジで温めているとブレーカーが落ちて真っ暗。どこにブレーカーがあるのかもわからずオロオロするばかり。
頼みの綱のファンヒーターもなぜかストップ・・・と、次々に問題発生。

今はなんとか電気もファンヒーターも動いています。
まあ、この状況を楽しむほかありません。
難民キャンプや派遣村よりは数段ましでしょう。
雪景色の五ヶ瀬と違ってまったく雪のない隣町の高千穂が明日の最低気温が-5℃。
ということは、五ヶ瀬は・・・。
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カンボジア  進む「土地の収奪」と進まぬ特別法廷

2009-01-12 16:40:14 | 国際情勢

(カンボジアの象徴、と言うより、世界有数の文化遺産 アンコールワット “flickr”より By fedeil
http://www.flickr.com/photos/53318225@N00/1334204141/)

【外国企業の農地囲い込み】
昨年は世界的食糧価格高騰が多くの国々に深刻な影響・不安を与えましたが、将来的に食糧確保が各国の重要な国家戦略となってきています。
そうしたなかで、貧しい途上国の土地を日本を含む先進国・新興国企業が先を争って大規模に借り上げ、自国向けなどの農業生産を行う、農地・食糧の囲い込みの動きも顕著になっています。

****貧困国から奪われてゆく土地、背景に食糧危機や景気後退など****
資源の乏しい国々が、アジアの貧困国の広大な農地をわれ先に買っていく。活動家らはこれを「土地の収奪」と呼び、貧困と栄養不良がさらに悪化しかねないと注意深く見守っている。
食糧を輸入に頼っている国々は、原油・食糧価格の高騰、バイオ燃料ブーム、そして急激な景気減速の中、自国民の食糧を確保するための対策に追われている。中でも、耕作地が不足している中国と韓国、オイルマネーで懐が豊かな中東諸国が、アジア・アフリカの農地の権利取得に向けた動きをけん引している。

スペインに本部を置く農業権利団体「Grain」は、最近の報告書で、「今日の食糧および金融の危機が世界規模の新しい土地収奪を招いている」と指摘した。
同団体によると、こうして確保された農地の目的は、主に「本国の食糧安全保障を念頭に、本国で消費するための作物を栽培するため」と「ヤシ油やゴムなど、経済的利益を得るためのプランテーションを設立するため」の2つに分かれるという。
「こうした傾向により、世界で最も厳しい貧困と飢餓に見舞われている国々の肥沃な農地が急速に外国企業により統合・私物化されている」と、同団体は警鐘を鳴らしている。

韓国の物流企業・大宇ロジスティクスは前年11月、マダガスカルに、約60億ドル(約5400億円)を投資してベルギーの国土の約半分に相当する130万ヘクタールの農地を開発すると発表した。トウモロコシを年間400万トン、パーム油を年間50万トン生産し、その大半を輸出する計画だ。マダガスカルは現在でも世界食糧計画(WFP)から食糧援助を受けている。

■腐敗政府との契約で農民を苦況に

 タイ・バンコクに本部を置くNGO、フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウスのウォルデン・ベロ氏は、昨今の世界的な経済危機にあっても、土地を持たない農民を一層の苦境に陥れる可能性のある、1つの「傾向」は脈々と続いていると指摘する。
その傾向とは、腐敗した政府と土地に飢えた先進国が、農地契約の名のもとで私腹を肥やしているという事実だ。実際、契約の多くは、汚職が横行、または政府が機能不全に陥っているような国々で結ばれている。

クウェートは前年8月、カンボジアに対し、穀物生産の見返りとして、5億4600万ドル(約500億円)の借款供与に合意した。カンボジア政府はカタール、韓国、フィリピン、インドネシアとも同様の契約を結ぶ準備を進めているという。
だが、カンボジアのある野党議員は、クウェートのような裕福な国が、コメを輸入するのではなく、わざわざ他国の土地で栽培するという選択肢をとっていることに疑問を呈する。
この議員は、「カンボジアの農民たちは土地を必要としている」と主張。政府に対し、外国に貸与する土地に制限を設けるべきだと訴えている。【1月11日 AFP】
*************************

外国資本による農業生産が、食糧不足に苦しむ現地途上国の食糧事情緩和、技術移転、雇用創出などに貢献するのであれば意義のあることですが、上記記事の指摘するような「土地の収奪」にすぎないのであれば、形を変えた植民地支配とも言えるでしょう。
進出する側は、食糧確保・食糧安全保障という視点だけではない、広い視野が求まれます。

【日本 特別法廷に追加拠出】
上記記事で目にとまったのは、“腐敗した政府と土地に飢えた先進国が、農地契約の名のもとで私腹を肥やしている”という例として、カンボジアがあげられていることでした。
カンボジアが“腐敗した政府”かどうかはさておき、もうひとつカンボジアがらみのお金の話題を目にしました。
カンボジア特別法廷への日本からの資金提供の件です。

****ポト派法廷に24億円拠出 中曽根外相が表明*****
中曽根弘文外相は11日、カンボジアの首都プノンペンでフン・セン首相と会談し、予算不足が深刻化しているポル・ポト政権元幹部を裁く国連支援の特別法廷に、約23億8000万円を追加拠出することを表明した。中曽根外相は「(容疑者の)高齢化などの問題があり、迅速な裁判を期待する」と述べた。フン・セン首相は「支援に感謝する。国民和解のために特別法廷は重要だ」と応じた。【1月11日 共同】
**********************

知識人の殺害や強制労働で170万人とも200万人とも言われる自国カンボジア国民を死亡させたポル・ポト政権の元幹部を裁く特別法廷は、99年のアナン国連事務総長(当時)の勧告を受け、カンボジア政府と国連の交渉で03年に設置が合意されました。
その後、法廷運営費や裁判規則を巡る調整に手間取りましたが、06年5月に日本の野口元郎元東京地検検事を含む国際司法官12人とカンボジア人判事17人が選出され、7月に捜査を開始し、元幹部5名を拘束しました。
特別法廷は国連が運営予算の4分の3にあたる4300万ドルを拠出し、日本は国連負担の半額を支援しています。

しかし、その後の審議ははかどらず、老齢化し健康悪化が心配される元幹部を実際に法廷で裁くことができるのか危ぶまれる事態となっています。
カンボジア側が法廷の長期化に伴う資金不足を訴えており、昨年2月には、日本など支援国に対し、約1億1400万ドル(約123億円)の追加予算拠出を要請しています。

審議の方は、昨年秋にも開始する予定でしたが、再び遅延し、2月開廷を提案する方向で最終調整がされています。
初公判の日程を決める会議が今年1月中旬までに開かれることになっていると昨年段階では報じられていましたが・・・。

【国際政治の闇】
ポル・ポト政権の崩壊から7日で30年がたった今月7日には、首都プノンペンの国立競技場では記念式典が開かれ、フン・セン首相ら政府関係者や一般国民ら約5万人が出席しました。
“最大与党カンボジア人民党党首のチア・シム上院議長は「ポト派の犯罪などで国は消滅しかけた。30年たった今も後遺症に苦しむ国民は多い」と語った。会場には、ポト派幹部らの戦争犯罪を裁くために国連と共同で06年に設置した特別法廷への国民支持を訴える段幕も掲げられた。”【1月7日 朝日】

しかし、以前もこのブログで触れたように、フン・セン首相自身がかつてはポル・ポト率いるクメール・ルージュに身をおいていましたから、自身の古傷を暴くような法廷には消極的だとも言われています。
先の総選挙で圧倒的勝利を得て、国内に敵なしのフン・セン首相が今後どこまで本気で法廷を運営するのか・・・若干疑問もあるところです。

日本など資金提供国から金を引き出す手段に使われているのでは・・・との疑念も感じます。
もっとも、金を出すほうもそれは承知のうえで、なにがしらかのメリットを期待して出すのでしょう。
そのあたりになると、部外者には窺い知れぬ闇の世界です。

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