千代の納骨が終わった。
千代の娘が赤くなった目を山谷に向けた。気丈だった娘がすっかり気弱になったように見える。山谷が、娘の気持ちを受け止めるように頷いた。
すみれは、二人から隣にいる竜子に目を移した。竜子は無言で微笑んだ。
「ママに幸せにって、言ってあげようね」
ママを見送った時の情景が思い出される。
「山谷のおじさんと、千代おばぁさんの娘さんと一緒になるといいのにね。すみれは、どう思う」
歩きながら竜子が聞いた。すみれは聞こえないふりをした。
竜子は何かを感じたらしく口を噤んだ。
『寂しい、寂しい』と、すみれは、心の中で呟いた。『リュウちゃんにも私の気持ちなんて解らないんだ』と、苛立ちだけが沸き上がる。
「ポピー公園に行ってみようか」
竜子がすみれの目を覗いて言った。気遣っているのが解る。竜子が、すみれの手を取ろうとした動作に反応して駆けだした。
走りながら悪いことをしたと思った。自分のことを大切にしてくれるのを解っていながら、どうしても素直になれない。私はママに会いたいのだ。ママに捨てられたのは、竜子のせいだ。竜子がママの再婚を許したからだ。そんな想いが、グルングルグルグルリンと、頭の中を巡る。
藤棚の下のベンチに腰を下ろした。息を切らして近づいてくる竜子が、急に可愛そうになった。すみれは立ち上がって迎えた。竜子はすみれと並んで腰を下ろした。
「すみれ、寂しい想いをさせてごめんね」
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著書・夢幻に収録済み★連作20「すみれ五年生」が今回で終わります。
主人公だったすみれと祖母の竜子やその他の登場人物たちの今後はどうなっていくのでしょう?
お読みいただいた皆様の想像にお任せします。
作者の私は、きっと逞しく育っていくだろう、すみれ。
竜子の心配は少しずつ軽減していくでしょうね。
そして、千代の娘と山谷の関係が良い方向へいくことを願っています。
お読みいただいた皆様には長い間ありがとうございました。
どなたにもそれぞれのドラマがあって、喜怒哀楽の人生があります。
その皆さまには、良い人生だったと思えるような毎日でありますように。
ありがとうございました。
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