180619 シャープは何が変わったか <シャープと東芝、何が運命を分けたのか>を読んで
昨夜は久しぶりに邦画を見ました。藤沢作品は一度も読んだことがないのに、いくつかの作品を朗読で、あるいは映画で惹かれるものを感じています。たしか森繁久弥と加藤道子の日曜名作座で、「蝉しぐれ」を語っていて、その内容と朗読の見事さに魅了されて、全部ではないですが、ある程度続けて聞いたのが最初でしょうか。そして出会ったのが山田洋次監督の映画「たそがれ清兵衛」です。このなにが惹かれるのか、これで3回目だと思いますが、NHKBS3で放映していたのを見てしまいました。
細かいところではちょっと気になる素材やストーリー展開もありますが、全体としては邦画としてはとてもよくできた作品と思っています。外国の映画が優れているといえるわけではないですが、ともかく滅多に見ない邦画を3回も見るというのは我ながら魅了されていると自覚しています。それを表現すると次々とできてしまいますが、そんなことは自分の中でしまっておけば良い事柄でしょう。
この映画に惹かれたゆえか、わたしのブログの名前にも影響を与えたように思います。むろん主人公・井口清兵衛の生き方を好ましいとか、理想としてみているわけではなく、ともえさんとやそこに登場する人物との関係はなにか心を打つものがあるのでしょう。
この話はこの程度にして、本題に移りたいと思います。
Japan Business Press提供の中川行彦氏の論評でしょうか<シャープと東芝、何が運命を分けたのか>は、興味あるテーマでした。
このブログでも、両社については何度か取り上げてきました。いずれも日本の成長企業として一時は飛ぶ鳥を落とす勢いにあったように思いますが、経営戦略の失敗などであっという間に経営危機のどん底に陥りました。東芝は、巨大赤字原因の米原子力企業を売却し、他方で稼ぎ頭で将来有望の半導体メモリ事業を売却して、破綻の危機から一時的に逃れたものの、先行きが見えない状況ではないでしょうか。
他方で、シャープは鴻海傘下に入ってどうなるかとおもいきや、見事なV字回復を見せています。何が変わったのか、シャープの社員から少し聞いてみても、現場ではよくわからないように見えます。
中川氏はそれをどのようにメスを入れて明らかにしてくれるのか、読みながら取り上げてみたいと思います。
まず中川氏は<シャープも東芝も、会社存亡の危機に瀕していた。しかし、シャープは完全復活し、一方の東芝はまだ危機から立ち直れていない。その立場の違いを象徴する出来事が、今回のシャープによる東芝パソコン事業の買収だ。
このような差はなぜ生まれたのか?>と当然の問題提起をします。
シャープと東芝のPCを利用したことがある私にとっては、両社ともこの分野から撤退したのではと思っていましたので、シャープの動きは楽しみです。
中川氏はまず、その答えとして、<大きな要因の1つに、危機に陥った時に他社との提携をどのように行うか、の経営判断の違いがあった。国際派、つまりグローバル提携か、国内派、つまり日本連合かの選択である。
もっと具体的に言えば、「官民出資の投資ファンド」と言いながら実質的に経済産業省が監督する「産業革新機構」とどう付きあったか、の違いだ。>というのです。
企業再生で重要なのは提携先の選択であり、その相手の企業戦略が破綻企業を生き返らせるだけの能力とエネルギー・資本があるかではないでしょうか。たしかに技術流出防止が優先するかどうかは重要ですが、官民出資ファンドだと自然船頭多くして・・・になりかねませんね。他方で鴻海はある種独断専行?といったら言い過ぎでしょうが、意思決定や実効が素早くなるのは当然でしょう。
しかも東芝の場合、技術流出防止のために、関係企業に議決権行使制限など複雑な仕組みを用意して、余計に果敢な企業戦略を発揮することができないようにしているようです。
シャープ買収の際、官民連合は同様の企業を合体して規模の利益を計る案を提供したのに対し、<鴻海の支援案では、鴻海とシャープが同業ではなく補完関係にあることが明確になっている。ひと言で言うと、シャープは研究・開発に強く、鴻海は生産・販売に強い。このため、両社の強みを生かした「国際垂直分業」によりグローバル競争に展望を持てる。さらに、単なる分業だけでなく、お互いの長所を生かし共同で価値創造する「共創」が期待できる。>
水平的統合か、垂直的統合かといった、昔習ったような形式的な問題だけではないと思いますが、それにしても要はいかに機能させるかが問われたはずです。
そして<今回シャープが東芝のパソコン事業を買収した理由は、シャープと鴻海の「国際垂直分業」と「共創」により、パソコン市場のグローバル競争でも十分な勝算があると判断したからに他ならない。>ほんとに大丈夫かはこれからでしょう。
ただ、<かつてシャープは、「メビウス」ブランドでパソコン事業を展開していたが、2010年に撤退している。この時はグローバル企業とのコスト競争に勝てなかったからだ。>ま、ガラパゴスの一つだったのでしょうね。<東芝のブランド「ダイナブック」は、かつてはノートブックPCでは世界トップに立っていたブランドである。>でも現在は赤字状態ですね。
はっきりした方向性は私にはわかりませんが、中川氏は<シャープは今でもパソコンの開発技術を有している。さらに鴻海は、今や「世界のサーバの過半が鴻海製」と言われるほどの規模のメリットを生かし、安価に部材を調達することもできる。また、委託先からのコストダウンの要求に応じることで発展させてきた生産技術に強みを持つので、東芝から引き継ぐ杭州のパソコン工場の管理もお手の物だろう。>
中川氏が注目する<「世界のサーバの過半が鴻海製」と言われるほどの規模のメリット>がPC分野にどう働かせることができるのか、液晶テレビと同様にいくのか期待しつつ、見えない世界です。
最近のPCの売れ行き、利用度は激減しているのではないかと思います。新たなPCのあり方が問われているように思えるのですが、シャープの開発力に期待するのでしょうか。
あるいは鴻海がもつ中国での市場支配力を生かすと言うことでしょうか。
液晶テレビの成功について中川氏は<シャープは製造した液晶テレビを、鴻海の販売網をフル活用し、中国市場での販売台数を約400万台と倍増させ、ついに1000万台を達成したのだった。鴻海系の販社が主体となって安値攻勢で売場を確保し、中国メーカーからシェアを奪っていったのだ。>
たしかに先進国におけるPC利用度は落ちてきていると思いますが、中国を含む東南アジアなどではまだまだ潜在需要が高いと思われます。そんなところを狙っているのでしょうかね。
他にもいろいろ書いているようですが、少々疲れる仕事を終えた後なので、読む元気がなくなってきました。今日はこの辺でおしまい。また明日。