180626 農業と経営を考える <経営塾 育て!“農”のリーダー 県が実施、専門家に戦略学ぶ・・・和歌山>を読みながら
今日はなにかと忙しくて、会議などを終えたらもう7時を大きく回っています。簡潔に終わらせようと思い、少し難しいテーマは別の機会に譲り、見出しの記事を取り上げることにしました。
とはいえ、農業と経営というとほんとうはとても難解なテーマスですので、記事を頼りに安普請で仕上げたいと思います。
農業とはなんでしょうかね。少なくとも資本主義社会においては農地を利用して農産物を生産し、収益を得る事業を行うことでしょう。単に農産物を生産して自活できればいいということではないと思います。しかし、農地改革で生まれた小規模零細農家は一方でその収益を上げられず、農地を放棄し、あるいは兼業農家として本業を別に求めるなどして、なんとか維持している人も少なくないでしょう。大地主だった農家は小規模化して経営する能力を失ったかもしれません。他方で、多くは地道に、あるいは画期的な栽培方法を開発するなどして、収益を飛躍的に増大させ、農地を拡大化した農家も少なくないでしょう。
それにしても農業経営という議論は、なかなか俎上にのってこなかったように思うのです。農業技術を教える学校や各地にあると思いますし、研究機関も多数あると思います。しかし、農業経営となるとさほどおおくないように思います。実は私は最近まで知りませんでした。
今朝の毎日記事和歌山版では<経営塾育て!“農”のリーダー 県が実施、専門家に戦略学ぶ 来月17日スタート 受講生募集中 /和歌山>では、経営塾をスタートさせたというのです。
<農業分野で経営感覚を備えたリーダーを育てるため、県は今年度、経営講座「わかやま農業MBA塾」を初めて実施する。就農人口減少と高齢化が進む中、規模拡大や雇用創出につなげ、農産地の振興を目指す。7月4日まで受講生を募集している。【高橋真志】>
農業MBAとはすごい名称ですね。和歌山県は農業を主たる産業としていると思いますが、実態は危機的状況にあるようです。
<農林水産省が公表した2015年の農林業センサスによると、県内の農業就業人口(兼業農家も含む)は約3万7000人で、10年間で25%減った。75歳以上はほぼ横ばいだったが、働き盛りの49歳以下は半減し、高齢化が進行している。一方、近年の新規就農者は130人前後にとどまっている。
山地が8割を占める県内は、農家減少などに伴う遊休地が増え、効率的な経営を阻んでいる。>
そこで<県はこうした状況が続けば、将来的に産地が維持できなくなると懸念し、塾の実施を決めた。>というのですね。
期待したいと思うのですが、その内容は残念ながら<農業MBA>という看板について過大広告と言われないか懸念してしまいそうなものと考えるのはちょっと言い過ぎでしょうかね。
<塾では7月17日から来年3月5日の間に12回の講座を開く。農業に詳しいコンサルタントや先進的な取り組みをしている農家、公認会計士らを講師に招き、経営戦略や財務管理、マーケティングなど幅広い内容を学ぶ。
・・・ 定員20人程度で、受講料は2万円。対象者としては、県内で農業に従事▽就農年数がおおむね5年以上で青色申告の知識がある▽経営や地域の発展に意欲がある--人を想定している。>
はてさて12回の講義で、経営戦略や財務管理などを学ぶのはよろしいのですが、受講料2万円という過激に低廉な額と、<わかやま農業MBA塾>のカリキュラムと時間を見たとき、それでどのくらい生きた経営能力を培うことができるか、はたと気になりました。
たしかに12回とはいえ、毎回6時間近い講義があるのですから、相当な長時間です。しかし経営管理の経験があったり知識があれば別ですが、単に農業経験があることだけでは、この講義についていくこと自体簡単ではないでしょう。むろん講義内容次第によっては相当実践的な能力を培うことができるかもしれませんが、カリキュラムの幅広い内容から、短期間で取得するには容易でないと思われます。
よほど講義者も、参加者も双方のコミュニケーションをうまく取り合っていないと、上滑りするリスクが多いと思います。とはいえ、このような取り組みには賛成したいと思いますし、どんどん参加者が増え、和歌山県での新しい農業経営の担い手が革新的な道を切り開いてくれることを期待したいと思っています。
ところで、この種の取り組みはすでに多様な形で始まっているようです。たとえば日本農業経営大学校 堀口健治 校長は<目指すは「農業のMBA」。日本農業経営大学校の挑戦>と銘打って、ここでは和歌山県のような縛りはなく、都会らしく門戸を広げる一方、全寮制など本格的な大学方式を採用しています。
他方で高い学費制をとりながら、農業に就職することで免除される方式も採用しているようです。
<2年間で必要な学費等は、寮費を含めて320万円です。一方で当校は農林水産省による青年就農給付金制度の対象となっており、学生の大半がこの給付金に応募し、給付を受けています。青年就農給付金制度では2年間で300万円が本人に給付されます。つまり給付されたらそれで支払い、不足する20万円を本人が用意すれば済む計算になります。卒業後に一定期間、独立・自営型の就農、または雇用就農することが給付の条件になっているのですが、当校の生徒は卒業後に就農しますので給付金を返済する必要はありません。>
ほんとうにそのとおり順調にいくかは気になるところですが、私自身、農業MBAをうたうのであれば、このくらい本格的なものでないといけないのではとも思うのです。
いずれにしてもさまざまな方式で農業経営というものをしっかり学ぶ時代がやってきたと思うのです。それはGHQや農地改革を進めた識者・官僚らが当時、農地改革後の制度化を図ろうとしたのが挫折したのをようやく持ち替えそうとしているようにもみえるのです。
これが林業分野となると、林業経営という書物自体、最近ではほとんど発刊されていないように思いますし、大学でもあまり講座がないのでないでしょうか。残念に思います。
といって、農業経営や林業経営が単に、収益の増大を目指すだけであれば、それは問題です。現代の経営は地球環境あっての経営であることが基本ですから、そのような視点での教育が欠けているとこれまた問題でしょう。
これで30分となりました。今日はこれにておしまい。また明日。