たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

マンション考 いま何が問題か

2016-11-18 | 建築が抱える問題

161118 マンション考 いま何が問題か

 

昨夜の月はすでにスーパームーンを終えたとはいえ、薄雲にもくっきりと欠けつつある微妙に円形を崩した形がなぜか艶を感じさせてくれました。次第に雲が晴れ、星空に月の輝きは一層まぶしい。今朝は川面には霞・靄が立ちのぼり、風情がありました。昨夜の放射冷却で、空気が一段と冷え込み、紀ノ川の情緒ある早朝風景です

 

昨日は終日、大阪の会議室で国交省の担当者や弁護士の話を聞きました。一つはマンション動向と課題の中で、建替等の新たな法制度について、もう一つは住宅紛争処理の現状です。防音設備がしっかりし、空調もほどよく、講演資料は十分に精査され、講演者はいずれも訓練を積んでいて、結構なボリュームですが、迅速的確に情報提供してくれます。私はあまり法律問題の講演を聴くことは最近ありませんが、この講演はなかなかよくできているのと、電車でいけるので、毎年のように拝聴しています。といっても、あまりにもスムーズに流れるので、眠気も十分満たしてくれて、心地よい雰囲気でこっくりすることしばし。

 

簡単に要約すると、マンション動向で言えば、マンション数はどんどん増えていて、しかも築後40年超は現在56万戸、20年後には316万戸となり、老朽化、空き室化が顕著になる見込み。これに対し、建替数は、平成284月時点での実績で227件、約1.8万戸と、老朽化対応ができていない現状。そして最近の東日本大震災、熊本大地震、鳥取地震と、マンション被害も増えています。

 

このような問題に対応するために、建替をよりやりやすくする措置をとりました。一つは共有者対策で従前は全員同意でしたが、共有者それぞれも一組合員として扱い、同意要件を緩和したのです。さらに住宅団地の場合に、区分所有法の要件を緩和する都市再開発法の3分の2要件での事業遂行を認める制度(平成28年改正)です。

 

それ自体は、硬直な区分所有法の要件を弾力化するという点では、悪くはないと思います。ただ、そもそも現在の管理組合の運営において民主的な手続きが確立しているか、情報公開が十分か、といった根本問題を抱えている中、都市再開発法がこれまでも情報公開や民主的討議を十分に行わないまま、3分の2要件を充足させて(実際は8割近い場合がおおいかもしれません)、少数派には強制的に事業を進めたと反発を招いた状況が改善されるか、気になるところです。

 

ただ、国交省は、それなりに配慮して、マンション管理適正化指針や標準管理規約の改正を本年3月に実施しています。たまたまあるマンション事件で、この指針を援用して議論していますが、従前に比べ、管理組合も運営方法が民主化や情報公開が進んでいると思います。とはいえ、管理業者へのチェックとか、専門的な部分、また、管理そのものについて十分理解していない理事が議論して意思決定をするという場合、なかなかうまく行かないことは容易に想定できます。他方で多くの区分所有者は無関心である状態はなかなか改善することが容易ではないでしょう。

 

地震被災にあったマンションの対応は一戸建て住宅に比べ、さらに問題が深刻です。まず被災状況が補修か復旧か、復旧は滅失を前提としますが、それが大規模滅失か、小規模滅失かで異なります。さらに全部滅失だと、区分所有法の対象外となり、阪神淡路大震災後に生まれた被災マンション法が適用されれば、これで救われますが、そうでないと全員合意が必要となり、問題処理が容易でありません。全部滅失でない場合は、区分所有法61条や62条の詳細な規定を基に整理して対応すればよいでしょう。といってもこれは決議要件や買取請求権の規定であって、管理組合としては、多くの問題解決の一つに過ぎません。

 

このようにちょっと建替問題を考えただけでも、マンション問題は容易に解決できない制度設計となっています。それを便利だ、機能的だということで、販売業者は分譲しますが、購入後のメンテナンスについて、より的確な説明や体制づくりを提供していないと、いつのまにか空き室だらけの見捨てられたマンションになりかねないことになります。

 

とはいえ、先に挙げたマンション管理適正化指針や標準管理規約改正は、よりよいマンション管理のための基本的なノウハウですので、これを前提に、個別の管理組合でもっとよりよい改善を試みれば、あそこは管理がしっかりしていると、その価値も上がるし、それだけでなく、地域コミュニティの充実した内容を形成できるのではないかと期待しています。

 

もう一つの住宅紛争処理については、マンション・一戸建て住宅を対象として、いわゆる住宅品確法と住宅瑕疵担保履行法を前提に、構造瑕疵、雨漏り等を中心に、買主、売主、請負業者、設計者、保険会社などを当事者として、問題解決を迅速適正そして安価に行うシステムがあり、その処理実績や概要が説明されました。

 

この問題の詳細は、いつか述べたいと思いますが、住宅購入者は、できるだけこれらの法律の適用を受ける住宅を購入することが肝要だと思います。とはいえ、私自身取り扱ったケースでは、これらの法制度の限界を感じる案件でしたので、新たな苦労をしました。障害者の方のための居住目的が主となる建築の場合に、その障害者基準(上記法律の瑕疵対象ともならない)というものが個別の障害の程度などに対応していないため、また、業者側でそのような障害者対応の仕様を理解していないことが多く、問題が多数起こり、解決も容易でありません。

 

とくに感じるのは、建築請負では、当初設計が変更されることが多々ありますが、その変更が口頭である場合が少なくなく、図面ないしメモ記載による情報共有が当事者間で十分にされていない点です。しかも中小の業者の場合、設計士や監理者が名義上にすぎず、実際は業者の設計者が代替して行う、そのため、監理がお手盛りとなったり、杜撰であったり、実際に工事を行う下請け業者との連携がきちととれていない等、数え上げればきりがないほど、問題が出る場合があります。

 

建築請負における文書化、あるいはPCデータ化、情報の共有、それが施工図を含め、実際の工事にきちんと照合されているか、多々改善の必要があると感じています。この問題は別の機会にもう少し問題を掘り下げたいと思っています。今日も別の件で出かけるので、長途ですが、ここまでとします。


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