たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

迷いと永遠の微調整 <特集ワイド 安倍首相は真の保守か>を読みながら

2018-08-10 | 国・自治体のトップ 組織のあり方 民主主義とは

180811 迷いと永遠の微調整 <特集ワイド 安倍首相は真の保守か>を読みながら

 

安倍首相の3選確定というニュースとともに、竹下派の動向や石破氏の立候補が話題になっています。そればかりか、毎日紙面では、批判的な視点での問題提起がなされています。

 

特集ワイド安倍首相は真の保守か 強引な姿勢に政治学者・中島岳志さんが異議>もその一つです。中島氏はTVなどでも登場して、しっかりした立論をされていて、注目している政治学者の一人です。

 

ここで中島氏は、真の保守とは何かを指摘し、安倍首相はそうではないというのです。私自身は、保守か革新かといった議論はあまり好みではありませんが、中島氏の立論のうち、なにか共鳴するものがありましたので、つい取り上げることにしました。

 

「迷い」が重要だというのです。少し中島氏の考えを引用しましょう。

<「本来の保守は、懐疑的な人間観をもっています。それは他者だけでなく、自分も間違えているかもしれないという人間観です。だから自分とは異なる意見を聞き、合意形成を試み、着地点を見いだしていくことが重要なのです」>

 

本来の保守とは何かは私にはよくわかりませんが、人間の生き方として、あらゆる場合に事実そのものを見極めることに疑問をもちつつ、また、選択に、その結果に悩みを抱くことは大切なことではないかと思うのです。それは個人の問題であるとともに、組織の問題でもあると思うのです。

 

多数決原理は民主主義の基本原則かもしれませんが、それは社会そのものが価値の多様性をもち、事実の見極めや、選択には必ず利害得失が伴う中、少数者の意見を十分にくみ取り、悩みながら、一歩前進二歩後退するような、漸進的なあり方が求められる時代が往々にして必要ではないかと思っています。

 

中島氏が取り上げた<7月下旬に閉会した通常国会では、働き方改革関連法や参院定数を「6増」する改正公職選挙法、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法など問題点を指摘された法案>の成立は、とてもその迷いや対立する意見への配慮が感じられませんでした。

 

このような安倍政権の強引さについて、中島氏は専制政治のごとき権力の使い方と批判しています。

<「このような政権運営は、合意よりも自分の主張を押し付ける権力の使い方です。北朝鮮や中国共産党の権力者と非常によく似ています。保守にとって最も避けなければいけない人間観が彼の中にある」と痛烈に批判する。また、数を力に少数者を排除する行き過ぎた民主主義は、フランス革命のような専制政治を生み出す恐れがあると危惧する。>

 

その歯止めになるのは立憲主義だと中島氏は力説します。そうありたいと思いつつ、戦後日本の中でその立憲主義がどれほど尊重されてきたのでしょうか。少なくない市民・研究者の意識の中に植え付けられてきて、時の政権運営になんらかの歯止めにはなったようにも思いますが、実効性ある形で具現化したかになると消極的にないますね。

 

その意味では安倍政権だけの問題でもないと思ってしまいます。この点、中島氏の指摘はシニカルですね。

<「多数決に代表される絶対民主制を強調し、合意形成や人間の英知を大切にする保守の思想や立憲的な歯止めを軽視してきた戦後日本の“あだ花”ではないでしょうか」>

 

ただ、これまでのような政権運営を批判しているだけでは、最近起こっているトランプ旋風を含む大きな地政学的変化に、日本が対応できない危機感を中島氏は指摘しています。

<東アジアから米軍が撤退すれば、その権力の空白を埋めようとするパワーバランスが生まれる。米国の後ろ盾を失った日本は、尖閣諸島や北方領土といった領土問題などで中国やロシアなどとシビアな交渉を迫られるかもしれない。中島さんは「国民の中で不安が高まり、ある種のパニック状態が起きれば、そのエネルギーが『中国に屈するな』などと右傾化に大きく流れる恐れがあります。また、靖国神社の公式参拝や南京事件などの歴史認識の問題についても、日本の保守政治家にブレーキを掛けてきた米国の重しがなくなると何が起きるのか。まさにディストピア(暗黒社会)を見るようです」と危惧するのだ。>と。

 

それは、自分は間違わないとして、100点満点を求めるのではないというのです。<大平正芳元首相の「政治は60点でなければいけない」という言葉に処方箋があると考える。>のです。

 

そして<さらに問題を拙速に解決しようとせず、寛容の精神で合意を目指す「本来の保守」という政治の選択肢を示すことを提案する。経済や安全保障などの問題について、東アジアで合意形成できる枠組みを作り、問題を一つ一つ解決していくことだ。「僕は『ぬるいリベラル』と呼んでいます。>

 

中島氏の処方箋は<いろんな余地を残しながら『保守的な60点の解決策』を目指す。保守のあり方とは『永遠の微調整』だからです」>

 

私は、常に迷いを抱き、永遠に微調整を続けるという、中島氏の考え方に共感したのです。少なくとも私個人の生き方にあっています。政治も、行政も、社会のあり方も、相であって欲しいと思いつつ、とりあえずは私個人の生き方と通底するところがあるかなと思ってしまいました。

 

おそらく私自身が、アセスメントという考え方に30年以上にわたって惹かれていています。未来の出来事は予知不能なことがすくなくないですね。迷うけど少しよくなるよう、さまざまな結果に対する利害得失を秤にかけ、未来を想定して対処しつつ、失敗があれば是正していくことが大切かなと思うのです。

 

中島氏の指摘とずれていますが、私自身は、その「迷い」と「永遠の微調整」にすんなり腑に落ちたのです。

 

今日は久しぶりにもう一つ話題をとりあげようかと思います。

 


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