たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

介護施設での死亡と虐待 <川崎3人転落死 元職員に死刑判決>を読みながら

2018-03-24 | 医療・介護・後見

180323 介護施設での死亡と虐待 <川崎3人転落死 元職員に死刑判決>を読みながら

 

昨日の毎日記事は<川崎3人転落死元職員に死刑判決「冷酷な態様に慄然」>とこの事件を大きく取り上げていました。

 

高齢化社会はもの凄い勢いで進んでいますね。70歳は高齢者でないともいわれています。少なくとも老人とはいいにくいですね。介護施設を訪ねると、たいてい80代、90代の方がほとんどのように思えます。それぞれいろいろな病気を抱えているわけでしょうし、家族による自宅介護も困難なのでしょう。

 

では介護施設は万全か、私も自分で入ったことがないのでよくわかりません。保佐人としてとか、後見人として、介護老人保健施設や介護老人福祉施設、有料老人ホームなど、いろいろな施設に何度も訪問してはいるものの、介護の実態をしているわけではありません。

 

ただ、たいていは(とくに有料老人ホームは)とてもきれいで清潔感があり、職員の方の挨拶もきびきびしていますし、明るくしてもらえます。きっと入所者の方々も、理解できる人は過ごしやすいのではないかと思うのです。

 

でも事件は起こっていますね。一部かもしれませんが、それはマグマだまりが蓄積しているのではないか、マグマが大きくならないように、なんとか抑えるようなシステムがとられているのかどうか、気になります。

 

3人もの転落死が殺人となり死刑判決が言い渡された事件、記事では<川崎市幸区の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で入所者3人が転落死した事件で、3件の殺人罪に問われた元施設職員、今井隼人被告(25)の裁判員裁判の判決で横浜地裁は22日、求刑通り死刑を言い渡した。>と述べています。

 

死刑判決を言い渡すくらいですから、<渡辺英敬裁判長は3件の殺人罪の成立を認め、「人間性のかけらもうかがえない冷酷な態様には慄然(りつぜん)たる思いを禁じ得ない。死刑のほかに選択の余地はない」と述べた。>と厳しく責任を糾弾しています。

 

争点はいくつかあったようで、まず事件性ですね。<判決はまず事件性を検討し、転落死した3人のうち女性2人は「自力でベランダの柵を乗り越えることは不可能」と指摘。別の男性も「事故や自殺の可能性はほぼない」として3件とも第三者による事件と認定した。>

 

転落死した3人の事情が書かれていないので、なんともいえませんが、おそらく判決文では自殺等の可能性がないことを詳細に検討していると思われます。

 

他方で被告人の犯人性ですね。これは<被告が3件の発生時にいずれも夜勤をしていたことや、逮捕直前に母親に電話で「自分がやった」と述べたことなどから「被告が犯人と推認できる」とした。>

 

すべての発生時に夜勤だったとしても、それはちょっと薄弱な根拠ですね。それ以外に当てはまる夜勤者がいないかどうか、あるいは外部からの侵入可能性がないかどうかの検討も必要でしょう。また、転落死した3人との職務上の関係(担当であったとか)や、対応になにかトラブルがあったかとか、はっきりしませんが、あまり資料がないのでしょうかね。

 

母親に自供した点は、その通り裏付けられるのであれば、かなり有力ですが、なにをやったか特定できるのでしょうか、その言葉だけでこれを絶対視するは禁物ですね。

 

もう一つの重要な争点、自白の信用性について、<法廷で再生された取り調べの録音・録画映像から「取調官の高圧的な態度や誘導姿勢はない。具体的、迫真的で現場の状況と一致する内容の供述で、自白の信用性は相当に高い」と述べた。>

 

録音・録画が重視された印象ですね。録音・録画がいつどのような状態で行われたかがどのように審理されたか、気になるところですが、ま、控訴審で再び議論になるのでしょうね。

 

また、被告人の<「自閉スペクトラム症」についても、<影響も顕著ではないとして、責任能力も認めた。>とのことで、一般的な理解では、これだけで責任能力に大きな影響を与えるとはいえないと思いますが、具体的事情をみないとこれも判断が分かれる可能性もあっていいと思うのです。

 

判決では、<被告は2014年11~12月、当時86~96歳の入所者の男女3人をホームの居室のベランダから転落させ、殺害した。>ということですから、わずか実質1ヶ月強で3人もの高齢者、しかも86歳から96歳のご老人ですね、こういう方を転落させたのですから、大変なことです。

 

<有料老人ホーム入所者転落死事件の経緯>によると、被告人が20145月に勤務開始し、それから半年後の114日、129日、同月31日と転落死があったのにもかかわらず、県警は翌年5月に被告人を入所者の財布窃取で逮捕し、有罪判決を得たものの、殺人罪として逮捕したのは162月ですね。なかなか物証なり的確な証言もなかったのですね。

 

判決では、録音・録画を信用性あるものとしていますが、それならなぜ悪逆非道を犯した理由・動機が解明されていないのでしょうか。録音・録画時に、本来なら、そのことを聞いているはずですね。単に自分が犯した客観的な行為のみを話すのではなく、動機や背景を語らせるのが常道です。

 

その解明がなされていないのが腑に落ちません。とはいえ、動機を語りたくない犯人もいますので、客観的な事実だけを抑えておこうとしたのかもしれませんが、そういった事情が録画などからわかるのでしょうかね。

 

と長々と前置きを書いてしまいました。

 

この事件で気になったのは、なぜ被告人がこのような非道な行為を行ったか、その背景なり、事情を知りたいと思ったからです。いや、被告人の特殊な性行とか、自分勝手な思いとかで、談ずるのはどうかと思っています。

 

被告人がこの施設で働き出したとき、現在25歳で、4年前ですから21歳頃ですね。ほとんど社会経験がない、また、介護の経験もないかあったとしても十分とは思えない年頃ですね。

 

介護施設は、私自身体験していませんが、書籍やネット情報では、あるいは事件となったケースなどを参考にすると、施設利用者と介護職その他とのトラブルは日常的に起きうる状態にある、それをマグマだまりのように介護職員が耐えている状況があるともいわれています。

 

だからといって、人を殺したり、虐待したりしてよいはずは、もちろんありません。でも仮にマグマだまりのような状態があるのであれば、そういったストレスなりを解消するような仕組み、制度を施設が準備して備えておく必要があると思うのですが、どこまで整備されているのか心配です。いや、ほとんどないという話も聞きます。むろんしっかり備えている施設もあるでしょうけど、それがどうもブラックボックスに思えるのです。

 

介護職の仕事を理解しない方の中には(それは入所者や家族)、まるでお手伝いさんのように指示したりする人もあると聞いたこともあります。認知症や高齢化の影響で、入所者が騒いだり、暴言を吐いたり、何度も同じことを言ったり、叩いたり暴力を振るったりするひともいるそうです。ハラスメントもあるそうです。

 

さまざまなことをされても、入所者の病気等に配慮して、我慢、忍耐を指導されているのが介護職たちではないでしょうか。

 

それにはいろいろな対策をとっている施設もあるようです。一人で悩んでいる介護士がいれば、悩みを聞いて対応を検討するといったことを同僚、あるいは上司を含んだ会合で検討して対策を講じることも有効かもしれません。また助っ人を用意して代替するといったこともあるでしょう。入所者の個性をよく知り対応するため日誌等で、問題言動を書くなどして、そのときの条件を検討することも一つの策かもしれません。

 

いずれにしても一人で問題をか駆け込む、それが個人の中でマグマがたまってしまい、噴火につながるかもしれません。それを回避する策を施設経営者を中心にしっかり対応しておくことが大事ではないでしょうか。

 

また以前紹介したユマニチュードといった方法の取り入れも、検討してほしいと思うのです。介護士の研修などでは、技術的な手法は教えても、心のケアをどうするかについては十分でないように思えるのです。

 

外野から勝手なことを書き連ねましたが、転落死事件のようなことが二度とあってはいけませんし、虐待も同様です。だれもが介護施設を利用するかもしれない時代、みんなが利用しやすい、安心して利用できる施設になってほしいと思いますし、介護職の大変さも理解していきたいと思います。(ま、私は一人孤独死を享受したいと思っていますが)

 

今日はこれにておしまい。また明日。


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