170305 百条委員会について <豊洲移転問題 百条委証人喚問と石原氏会見>を考える
今朝もほど気持ちのよい天候で、筋肉痛であちこちに痛みと緩慢な動きを意識しながらも、少し遅めに作業して、昼過ぎまで気持ちのいい汗とまではいかないけれど、体中に活性化された感覚が蘇ってきました。
本題に入る前に、こちらをテーマにしようかと思いつつ、調べる必要があるので、後日、取り上げようと思ったTV番組放送がありました。NHKのぷらタモリで、昨夜は奄美大島が取り上げられていました。関ヶ原の敗戦直後に薩摩藩が琉球を攻めて、「付庸」として、貢納を収めさせたこと、維新政府になり、今度は琉球処分により琉球王国を廃止して沖縄県と支配したことは、先住民族の歴史を学ぶ中で知っていましたが、その実態は分かっていませんでした。
ぷらタモリでは、いかに過酷な強要があったかをその特産物や地形的な残影で明らかにしていました。実は途中から見て、10分か15分くらいしか見ていないので、正確ではないかもしれません。私はアマミノクロウサギとかの絶滅危惧種の保護のため訴訟活動をしている仲間たちの活動から奄美大島を意識する程度で、まだ訪問したこともないため、よくわかっていませんでした。
タモリさんたちが見せられたのは、米を作るために無理に平地をつくった場所でした。薩摩藩から年貢としての米の提供を求められたのですが、平地のない奄美では水田の場所がありません。それで海辺の浅瀬に土堤をつくり、しかも干満の流れで土堤が崩れないように岩盤に穴を掘って貯水池まで用意したというのです。ところが土壌が適せず折角つくった米は評価されず、代わりに全島にサトウキビを作らされたというのです。そういえば沖縄本土でもサトウキビ畑だらけです。そしてサトウキビを利用して黒糖を献上品として提供したようです。琉球王国の人にとっては、まるで植民地支配に等しい状況だったのではないかと思うのです。薩摩が維新時に経済的に豊かで軍備も十分な備えができた理由の一つに、属国的扱いをした琉球という存在があったのではないかと思った次第です。
とりわけあまりに酷い仕打ちの残滓がありました。一つは写真で、切り立った山の頂上まで、わずかしか幅がない状態で段々畑がつくられ、すべてサトウキビということでした。もう一つは、ある山全体がソテツなのです。むろん植栽したものです。たしかに東南アジアにも輸出用にアブラヤシなどを広大な面積の熱帯林を伐採して植栽していますが、それとは違います。これらは食料として利用されたというのです。ソテツの実は毒性があり、注意して加工しないといけないそうで、デンプン状にして食べていたそうですが、これほど酷い仕打ちを受けていたとは知りませんでした。
たしか津軽藩も、やませが吹き、当時は米作には不向きなのに、江戸幕府の施策のため、無理につくって餓死者や人を食べたり、間引きしたりしたとの歴史があるとされ、司馬遼太郎が為政者のあり方を問うていました。しかし、琉球王国は、王朝の責任ではなく、薩摩藩の執政の責任でしょう。ただ、薩摩藩の立場からの見方もあるので、もう少し検討してから、この点は改めて議論したいと思います。
さて、本題に入ります。都政の問題は、長い間に膿が溜まった状態ですから、開ければパンドラの箱状態だったかもしれません。築地市場の豊洲移転問題もその一つ、氷山の一角に過ぎないと思います。とはいえ、最近あまり事件の推移をフォローしていなかったので、事実経過については、手元に資料もないため、調べる余裕もなく、とりあえずの記憶で、百条委員会の設置、証人として石原氏などを3月下旬頃に喚問、そしてその石原氏が昨日記者会見でしたか。
もう一つ、土壌汚染に係わる土地売買の問題としては、豊中市にある国有地の森友学園への売却に係わる多種多様な問題について、国会において自民党が会計検査院の調査に委ねる賭しているのに対し、野党は証人喚問を求めています。
いずれも土地売買と土壌汚染処理、そしてその後の土地利用(一方は魚介類を含む生鮮食料品市場、他方が小学校用地)という重要な問題を抱えているにもかかわらず、担当したのが前者が都知事を含む都庁職員、後者が財務省職員など、重要な職責を担っている人たちです。かれらがいずれも本来的な行政ルール、土地取引ルール、廃棄物処理ルールに則っていない疑いが強くもたれるような事件を引き起こしているのですから、適切な調査をして事件を解明し、問題点を明らかにして、是正措置を含む改善策を講じる必要があります。
ところで、いま話題の百条委員会は、どの程度その問題に対応できるのでしょうか。そのような権限なり、制度を有しているのでしょうか、そこを少し考えてみたいと思います。
私自身は、一度、ある市で行われた百条委員会で喚問された証人の依頼で、補佐人となって、その調査という、証人尋問をずっと立ち会いました。その狭い経験と、百条委員会の権限の由来となったのではないかと思われる国会の国税調査権に基づく証人喚問制度(議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律)については、時折、TVで見る機会があるので、そういった限られた経験から言及してみたいと思います。
まず、百条員会の法的根拠ですが、名前の由来となった地方自治法の100条に規定があります。
第1項をまず取り上げましょう。
議会は、当該普通地方公共団体の事務に関する調査ができ、いわゆる証人の出頭や証言や記録の提出を請求することもできるとされています。
で、国会の場合は「議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律」があり、有名な証人出頭、証言拒否や虚偽証言に刑事罰の規定があるほか、一定の証人尋問の規定ある一方、証人には弁護士の補佐人をつけることができると一定の防御権を認めています。
第一条の四 証人は、各議院の議長若しくは委員長又は両議院の合同審査会の会長の許可を得て、補佐人を選任することができる。
○2 補佐人は、弁護士のうちから選任するようにするものとする。
○3 補佐人は、証人の求めに応じ、宣誓及び証言の拒絶に関する事項に関し、助言することができる。
他方で、地方自治法100条には、上記の前段の規定があるものの、補佐人の規定がなく、証人尋問の手続きについては、民事訴訟法令に委ねています。
でこの種の法令の規定を取り上げて何を言いたいかというと、民事訴訟の規定は、司法手続きであり、公正な審理に基づき事実の有無を審理する、長年の法廷慣行を下に、各国制度を参考にしながら、つくられ、現在の司法制度において重要な機能を有しています。現行の司法制度では事実の解明はできないというかもしれませんが、それでも裁判官、双方の弁護士の努力で、ある程度まで合理的に納得しうるに近い?状態に達しつつある(まどろっこしい言い方であることは否定しません)と思っています。
それに対し、百条委員会における証人尋問は、一つの経験だけで断定することは避けるべきですが、適切な事実解明の場とはほど遠いと感じています。それはどういうことかと言うと、まず、百条委員会の議員が、その行使の根拠をほとんど理解していないのではないかと思われる節があります。
では、民事訴訟法(私も長いこと読んでいないので偉そうなことはいえません)では、対立当事者構造となっているので、そもそも主尋問と反対尋問という、方式で質問を行います。ところが、百条委員会では、証人ですから、だれもその立場で質問してくれる人はいません。一方的になる危険があります。それは議会という選挙で選ばれた議員による行為として、公共のためにということで一応、尊重しておく必要があると思います。しかし、ここに場合によっては偏向的な議論の場となる、まかり間違えば、その手続きの公正さを担保しつつ行わないと、魔女裁判的な状況になるおそれがあることを自覚しておく必要があると思うのです。
民事訴訟規則という手続きの細則を定めた最高裁規則には、上記の順番を定めた後、以下のように書いています。
第百十五条 質問は、できる限り、個別的かつ具体的にしなければならない。
2 当事者は、次に掲げる質問をしてはならない。ただし、第二号から第六号までに掲げる質問については、正当な理由がある場合は、この限りでない。
一 証人を侮辱し、又は困惑させる質問
二 誘導質問
三 既にした質問と重複する質問
四 争点に関係のない質問
五 意見の陳述を求める質問
六 証人が直接経験しなかった事実についての陳述を求める質問
尋問というのは、質問であること、個別的かつ具体的でなければならないとしています。そして質問の制限事項を定めています。侮辱したり困惑させる質問、誘導質問や意見陳述を求める質問などです。
ところが、百条委員会では、議員は、事前に議会が相談する弁護士にそれなりに助言を得ているとは思いますが、多くはこの規定を無視するか、よくわかっていないのか、滔々と自分の意見を開陳したりします。侮辱的な発言に等しいことも行ったりする場合もあります。そこには真実発見と言うより、日常行われている議会での行政当局への質問と同様の姿勢が見られることが少なくないと感じます。
重複質問も、異なる党ということでしょうか、平気で行われたりもします。先の質問に答えたことを踏まえて質問するのであればともかく、同じことを繰り返し聞く、たしかに質問であって意見ではありませんが、それを意見とともに話すといった議員もいます。
こういうやり方では、百条委員会も、国会の証人喚問も、有効に機能しないおそれがあります。単に偽証罪の制裁だけを矛にして攻めるのでは、有効な証言を得るというより、上滑りの議論に終わる危険があると思わざるを得ないのです。
なお、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律の補佐人制度については、地方自治法が援用する民事訴訟法に次の規定があり、これが根拠となっているのではないかと思っていますが、制度的には、証人の防御権規定としては不十分と思います。
(補佐人)
第六十条 当事者又は訴訟代理人は、裁判所の許可を得て、補佐人とともに出頭することができる。
2 前項の許可は、いつでも取り消すことができる。
3 補佐人の陳述は、当事者又は訴訟代理人が直ちに取り消し、又は更正しないときは、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。
さて、そろそろ百条委員会制度のあり方論に入らないといけないのですが、もう少し整理した後、また、石原氏の証人尋問などの報道の後でも、できればやってみたいと思います。
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