180810 喫煙者の選択 <論点 受動喫煙対策の進め方>などを読みながら
前にもこのブログかfbで取り上げたことがありますが、ふと思い出したので過去の思い出に触れておきます。
20年くらい前でしたか、アメリカでは90年代後半になってほとんどの州政府が喫煙による病気治療費の増加の責任をたばこメーカーに求める訴訟が相次ぎました。
思い出すためネットで田中宇氏のコラム<アメリカ・たばこ訴訟の裏側>から引用すると、
<アメリカの46の州政府が、アメリカ国内の大手たばこメーカー5社を相手に、州政府が医療保険への補助金として支出したお金のうち、喫煙によってかかる病気の治療に使った分を、たばこ業界に支払うよう求めた裁判>で、20年前の98年12月に和解が成立し、その骨子は<和解金は、総額2460億ドル(約25兆円)で、アメリカの裁判の和解金としては、史上最高額である。>ということでした。この和解以前の評決などがニュースとなっていて、注目していました。
で、当時、禁煙権訴訟の第一人者だった伊佐山さんを含め何人かで、喫煙問題の解消のため、わが国でもたばこメーカーや国を相手にどのような訴訟をしようか、当時、アメリカの大学で研究されていたO氏に連絡したりして、さまざまな検討をしていました。
実際、昨日の毎日記事<たばこ損失2兆円 医療費・介護費・火災>の損失額が適切なものかはさておき、多大な損失であることを比定できる人はいないと思います。
私はこの医療費増大を理由とする訴訟がインパクトもあり、喫煙被害を訴えるより、多くの支持を受けやすいとの立場で、検討していたのですが、アメリカの法制と異なり、市民訴訟制度もなければ、地方公共団体による訴訟も期待できないことから、仲間の賛同を得ることができませんでした。そして喫煙者がその有害性を適切に告知されなかったことなどを理由に、たばこ訴訟を提起したのです。
この訴訟も長い戦いの結果、たばこ病被害としての訴訟は結局敗訴しましたが、この訴訟を通じて、国や自治体の政策が大きく変わり、JTも広告のあり方を大幅に改善し、社会の意識も大きく転換したと思います。
とりわけ都会では、公道での喫煙を制限する条例ができたり、つぎつぎと公共空間では喫煙を制約する大きな流れになったと思います。
ちょっと前置きが長くなりすぎましたが、今朝の毎日記事<論点受動喫煙対策の進め方>は、法規制が骨抜き状態であったものの、さまざまな対策を実践している3名がいい方向性を示してるのかなと思い、取り上げてみようかと思った次第です。
長谷川一男・日本肺がん患者連絡会理事長の話は、驚きます。長谷川氏が自らの健康被害を国会で切実に訴えていたにもかかわらず、<(自民党議員から「いいかげんにしろ」との)やじを浴びた。>という状況はすでに話題になりましたが、これが与党国会議員の少なくない人たちの意識でしょうか。
私が驚いたのは<私が出席した衆議院の参考人控室には灰皿が置いてあった>という箇所です。国民を代表する公共の場といってよい部屋で、現在までこのようなことがまかり通っていたことです。むろん<参考人が次々と「これはどうか」と指摘したところ、衆院厚生労働委員長の権限で即時撤去された。>これこそ恥ずかしいことです。ただ、もしかしたらまた灰皿が置かれているかもしれません。
残念ながら、東京弁護士会でも会議室では長い間灰皿がおかれていました。30年近く前でしたか、公害環境委員会が東京都環境保全局長と定期的な懇談会兼昼食会を開催していましたが、その当時も灰皿がまかれていました。そのとき激高して片付けさせたのは伊佐山さんでした(すみません、個人名をあげて。でも彼は優しい人ですが、こういうときは厳格でした、先輩として尊敬します)。それは30年近く前のことです。これだけ騒がれている喫煙問題で、国会の控え室、しかも受動喫煙を訴える人が入ることを承知しながらとは、厚顔無恥もほどがあります。
長谷川氏は長く受動喫煙問題に取り組んできたから、その闘いの厳しさを十分招致しているからこそ、また、喫煙者の気持ちも配慮しつつ、地道に受動喫煙のリスクを少なくする方向を探っていこうとしています。期待したいです。
<「全席禁煙」は経営戦略 貫啓二・串カツ田中社長>は、まさにこれからの居酒屋、飲食店のあり方を、経営的な合理性から先取りしたのでしょう。この成功でよりこの方向に向かって競争が激化することを望みたいです。
企業がその存続のために社員全員に禁煙を実現したという<たばこ社員ゼロで八方よし 佐々木洋寧・ネクステージグループ社長>は、これまた企業自体、また社員の家族も、取引先も、またお客さんも、誰もが喜ぶ結果を導いていますね。
社長が率先し、最初は幹部、次にはすべての社員と広がっていったというのです。
<社員には、卒煙に取り組む費用として2万円、卒煙に成功したら2万円の食事券を渡すことにし、元喫煙者の幹部が講師を務める「禁煙セミナー」を定期的に開いた。経験者が語る卒煙の歩みは、社員の心にも響いたようだ。一部に「抵抗勢力」が残ったものの、社長である私自らが個人面談を続けた結果、取り組み開始から2年で事務、営業、施工現場すべてで喫煙者ゼロを達成できた。>
結構徹底していますね。意識の問題でしょう。その結果は、八方よしですから、誰が不満でしょう。みんなハッピーです。
ところで、地方で仕事をしていると、喫煙者がいかに多いか驚きます。ま、そういう私も、若い頃は電車はもちろん飛行機の中でも家の中でもどこでも紫煙が漂っていることに違和感を感じたことがなかったのですから、不思議なものです。
とはいえ、農業、林業に従事している人ならまだ大空一杯なので、さほど違和感がないのですが、役場、学校、介護施設などでも、建物の外やベランダなどで職員が喫煙していることがあり、それは困ったことです。
私の事務所ではむろん禁煙ですので、来客は外で吸って入ってくるのですが、どうしても臭います。とはいえ、昔、すごいヘビースモーカーの依頼人がいて、その人が書いた文書が分厚くて、もうその紙面の中にしみこんでいるのですね。そうなると、読み出すとくらくらして、とても読めない状態になります。もうこういった依頼人はいなくなりましたが、わざわざ外で一気に喫煙するのも苦しいことだと思うのです。そろそろ潮時と思ってくれるとうれしいのですが。
余分な脱線をしてしまいました。今日は毎日記事で、受動喫煙対策に取り組む3人の話を取り上げました。どうかこういう意識の方が一人でも増えることを期待しています。
ほんとはある訴状を仕上げる予定でしたが、ちょっと資料が不足していて、できあがりそうにないので、ブログを2件書くことになりました。
今日はこれにておしまい。また明日。
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