180622 ブロック塀の安全確認? <ブロック塀、資格ない職員点検>などを読んで
一つの仕事を終え、次の仕事にかかろうとしたのですが、気になるニュースが目に入り、とりあえずブログを書くことにしました。
共同通信記事は午後1時過ぎ<ブロック塀、資格ない職員点検 高槻市教委が謝罪>と崩じています。これはひどいですね。
<高槻市教育委員会が22日、市役所で記者会見し、専門家の危険性の指摘を受けて点検した市教委職員2人には建築士などの資格がなかったと明らかにした。塀は安全と判断しており、市教委は「(事故を)結果として防げなかったのは痛恨の極み」と謝罪。安全対策の不備が浮き彫りになった形だ。
点検は2016年2月に実施。ブロック塀を目視し、棒でたたく簡易な手法だったという。>というのですから、お粗末を通り越していますね。
私は過去数十件くらいさまざまな危険性のある物件について、訴訟に関与してきました。とはいえ素人です。むろん訴訟では地質学者や地盤工学の研究者の協力を得て、専門家相手に尋問しますが、ほんとのところよくわかっていません。ただ、建築基準法や都市計画法などの技術基準を記載した施行令や告示の解釈には幅があり、前提があるなど、難しい計算式はわからなくても危険性をそれなりに肌で感じてきました。といっても、地盤工学会の研究会のメンバーになって難しい議論をなんども聞いていますが、よくわかっていないというのが正直なところです。
しかし、今回の事例は、そういう私が見ても、あってはいけない怠慢と言わなければならないと思います。先日もこの件の一報を踏まえて取り上げました。最初の記事では写真も漠然としていましたが、その後の情報でよりこのブロック塀の問題性が明らかになってきました。
ただ、私が基礎の高さ1.9mあるコンクリート上に1.6mのブロック塀を設置している状態を見ただけで、とても危険で放置できないと、当初指摘しました。控え壁がないことなど多数、告示に適合しないことはちょっと調べればわかりますが、この外観自体がとても危険で、安全を構造計算等で確認しないといけないということは素人判断でもわかります。
私は、高い擁壁を設置する建築物などの事件を多数手がけましたので、その安全性が建築確認や施工の中間検査などで行われていることから、周辺住民が不安視することは理解できても、外観からその危険性に結びつくような判断は避けています。
しかし、ブロック塀となると、全然別です。私の年代より若い世代でも宮城沖地震のときや、それ以前からブロック塀倒壊による死傷事例をたくさん見てきたはずですから、ブロック塀の危険性は直感的にわかるはずです。
自分の大切な子供を通わせている学校に本件様な高い基礎の上にブロック塀を設置している状態を見れば、しかもその真下に通学路がある状況なのですから、専門家の指摘をまつまでもなく、不安を感じた人がいたはずです。
この共同通信の記事では、そういった保護者などの声はまだ取り上げていませんが、私はもっと以前から懸念の声が上がっていたと思います。
とはいえ、本件では専門家もしっかり報告していたというのですから、これは行政のひどい対応だと指摘せざるを得ません。
毎日記事<大阪震度6弱ブロック塀危険性 外部専門家が2度指摘>はこの件をさらに詳細に報じています。<3年前に外部から危険性を指摘されていたこと>、その内容は次の通りです。
<指摘していたのは、2015年11月2日に同校で防災教室の講師を務めた防災アドバイザーの吉田亮一氏(60)。吉田氏は同日、子どもたちの登校風景や校区内を確認し、学校周辺や今回の地震で倒壊したプールサイドのブロック塀の危険性について、校長や教頭に口頭で伝えていた。
さらに、1981年の建築基準法施行令の改正で、ブロック塀の耐震規制が強化されたことを念頭に、「35年以上前に建てられたブロック塀は注意が必要」「危機感を持つこと」などと記した報告書を作成。>
この内容からは、吉田氏も、構造や法令の専門家ではない印象です。もし施行令を承知していたら、施行令の条項を指摘して、直ちに適合しないとの判断を報告書に記載できたはずですし、しなければならないと思います。
その意味で、学校の対応が、専門家とはいえ、建築法規や構造計算の専門でない方の報告書を基に、教育委員会に判断を仰いだのだとすると、それだけでも適切でないといえるでしょう。ところが、学校はこの報告を基に、市教委に対応を相談したりしたわけではなさそうなのです。
<高槻市教委によると、同校の田中良美校長は16年2月25日、別の用事で同校を訪れた市教委学務課の職員2人にブロック塀の点検を依頼。>このような依頼自体、真剣に問題に対処しているとはいえないでしょう。
当然、市教委職員も、問題を的確に把握せず、おざなりの確認?作業らしき事をしたに過ぎません。
<うち1人は建築職としての採用で、目視による確認と点検用の棒でたたく打音検査を実施し、塀に傾きやひび割れがないことから、「安全性に問題はない」と判断していた。17年1月にも業者に依頼して定期点検を実施していたが、点検結果の報告書については「業者の記憶が曖昧で、当時の安全状況を確認している」と説明していた。>
だいたい、<目視による確認と点検用の棒でたたく打音検査>でわかるほど、単純で有るはずがないでしょう。なぜ改正施行令がさまざまな安全措置を講じることを求めているか、ブロック塀の安全性を確認するとすれば、専門家として最低限やるべきことをやっていません。どうやら建築士などの資格ももっていなかったようですね。
<浜田剛史市長も三宅さんの両親と面会し、「市に責任がある」と謝罪している。【池田一生、大久保昂、津久井達、真野敏幸】>ということですが、死傷者がでてからでは遅いのです。
このブロック塀設置の際、ほとんど安全性を担保するような措置を行っていないと思わざるを得ないことは、すでに指摘したほか、毎日記事でも<倒壊の塀、鉄筋不足 基礎との接合部分>と根本的なミスを犯していると思われます。それだけでなく、長さ40mものブロック塀を連ねた場合、地震による揺れはさらに強まることが明らかで、そのような発想自体とそれに対する万全の備えに対する配慮を欠いていることを強く感じます。
別の記事では<塀の点検項目、国交省が公表 安全確認呼びかけ>と、とくにブロック塀の安全確認の点検項目を5つ指摘していますが、これくらいは簡単ですので、早急に確認・報告・是正措置をしてもらいたいものです。
改めてブロック塀など、高い塀を好むわが国の建築文化、それは開発する業者の意識だけでなく、施主の意識も変わらないと、簡単にはなくならないかもしれません。盗難防止という面では、一般的には逆に、これによって塀を上れば(泥棒にとって朝飯ですね)、家人がいない留守を狙うので、近隣の目を気にせず、ゆっくり盗むことができる状態となるので、効果的とは思えません。一般的な目隠しは確かにあるでしょうけど、それは家自体がいまはカーテンなどで目隠しできるのですから、あえて高い塀は必要ないと思うのです。
外国の住宅地を歩くのが好きですが、こういった塀があるのはいわゆるマンションといったほんとに超高級住宅くらいで、日本で言えば相当広大な敷地があっても、高い塀はないですね。わが国も最近の分譲地は塀が低いかないのが一般的ではないかと思いますが、古い分譲地や住宅だと、いまだ多く残っていますね。これも終活の一つとして解決しておくべき課題かもしれません。
30分あまりでざっと書き上げました。もう一つ、帰る前に書こうかと思っています。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます