18090 銀行の信頼崩壊 <スルガ銀 不正「経営陣の責任」 第三者委報告>などを読みながら
昨夕、勾留執行停止申立を当直に提出し、夜9時過ぎ頃、決定があったことの報告を受け、これで葬儀に出席が可能となりました。その後喪服をどこで着替えるかなど家族、警察署と連絡調整して、さきほどうまく進む段取りが決まりました。富田林警察署での逃走事件があり、通常の弁護人接見でも以前より警察では緊張感が高まっていますので、少し気になりましたが、ま、これで安堵しました。
昨日は夕方から夜にかけて和歌山まで往復したので、年齢の影響もでまして、今朝は疲れが残りぼっとしていました。
そういえば、NHK番組でろう者がバス運転手の道を歩んでいるのを紹介していました。彼は、幼い頃からバス運転手になることに憧れ、なんども大きな壁に跳ね返されてもチャレンジを続け、ようやくあるバス会社が唯一採用してくれ、定期運行のバス運転手になることができ、乗客とのコミュニケーションは車掌が代わって対応していました。
彼はいまでは自信満々で運転しています。そして将来の夢は観光バスの運転手になり、さらに多くのろうの人が後に続いてくれるように、環境整備をしていきたいというのです。実際、この会社ではたいていの社員が手話を少しずつできるようになってきています。
その彼が言った言葉がすてきです。リポーターが彼に、ずっと運転をしていると緊張して疲れるでしょう、どうやって疲れをとるのですかと聞きました。私も聞きたくなります。音が聞こえないのですから、目に余計な負担がかかるので、余計大変だと感じます。すると、彼は疲れません。運転するのが楽しいからというのです。あこがれの職業をいま自信を持ってやっていることに誇りと満足感を抱いた、しっかりとした口調でした。
障害に立ち向かうすてきな笑顔でした。
ところで、今日の話題は、昔は多くの優秀な人が憧れたであろう銀行のあってはならない不祥事・不正というか、悪質で背任なり各種の違法行為が組織全体で行われていたケースです。
そういえば私が関与した特殊詐欺事件でも、銀行員というとすぐに信用するような高齢者がだまされていますね。それだけ昔は銀行の信用度が高かった、いやいや現在でもそうですが、今回は残念な結果で、まいえば、日本版・サブプライムローン問題の小型版でしょうか。
今日の毎日記事に複数の紙面に掲載されています。
<スルガ銀第三者委調査報告書 要旨>では次のように指摘されています。
<不正行為> として、以下の事項が指摘されていますが、不正方法については預金残高の水増しや虚偽の物件価格の設定、キックバックなど一部だけ取り上げた印象で、ただ、それがすべての不動産融資に、組織全体に及んでいたことを指摘しています。
<・預金残高を水増しして返済余力があるように見せかける不正や、物件価格を偽って融資を引き出す手法を確認
・不動産融資と無担保ローンの抱き合わせ販売も認定
・正確な不正行為の件数を数えるのは不可能だが、不正は不動産融資全般にまん延
・支店長と執行役員も不正に直接関わった
・行員が不動産業者から見返りに金銭を受け取っている疑いも浮上 >
<問題の原因> については、経営トップから末端までコンプライアンスの欠如があったことを指摘しています。
<・厳しい営業ノルマがトップダウンで策定され、営業部門に強度のプレッシャーをかけていた
・審査担当者が不正に否定的な意見を述べても、営業側の意見が押し通された
・内部監査は形式的かつ外形的な確認に終始
・経営層は執行の現場に深入りせず、営業本部と情報を断絶、放任していた
・極端な法令順守意識の欠如が認められ、企業風土は著しく劣化 >
<責任> は、元専務執行役員のみ具体的な不正関与を指摘し、会長や社長は注意義務違反にとどまっています。
・(引責辞任した)岡野光喜会長や米山明広社長は不正を知っていた証拠はないが、注意義務違反や経営責任が認められる
・営業担当の麻生治雄元専務執行役員は審査部門に審査を通すよう強く要求するなど企業風土の劣化を招いた
・(社長に就任した)有国三知男氏は明らかな注意義務違反があったとは認められない>
この具体的な内容をスルガ銀行のホームページで報告書自体をダウンロードしてみようかと思いましたら、一切できなくなっています。これは私のネット環境のせいでしょうかね。このようなことは初めてで、第三者委員会として公開についてもチェックしてもらいたいと思うのです。
報告書自体を見ることができませんので、新聞記事を手がかりに、少し検討してみたいと思います。
<スルガ銀不正「経営陣の責任」 会長ら引責辞任 第三者委報告>によると、
<報告書は、シェアハウスや中古マンションなどの不動産向けローンの融資の際、審査を通すために物件所有者の預金通帳残高や家賃収入の見通しなどを改ざんする行為が「まん延していた」と指摘。不動産販売業者の改ざんを黙認したり、行員から具体的な基準を示して改ざんを要求したりすることもあった。>ということです。
なにか最近、あちこちで起こっている不正の典型のような事例でしょうか。融資システムの根幹を揺るがすことを平気で行っていたわけです。それが膨大な数に及ぶというのです。
<書類の偽装が疑われる件数は2014年以降で795件あったが、不正融資の正確な件数や総額については「調査が困難で推定を断念した」と明らかにしなかった。>
具体的に実行責任者としては専務が指摘されています。
<営業担当だった麻生治雄・元専務執行役員や、過去の所属長ポスト経験者も不正に関与していたと指摘。麻生氏については、融資に疑問を呈した審査部の担当者を脅したり、人事に介入したりしていたと明らかにした。融資の際には、本来必要のないローンや定期預金、保険の契約を、抱き合わせで契約することを強く奨励していた。業者から金銭を受け取った疑いがある行員も14人いた。>
ま、これだけの明白な不正を組織的に行っていたわけですから、会社のトップが知らないなんてことは法的にも許されませんね。情報遮断なんて話は通用しません。インサイダー取引の規制とは違うわけで、逆にトップは情報を的確に把握しておく忠実義務があるわけですからね。
基本的な問題は、不正な融資を実行される、裏付けのない融資を受けて、債務を負担する借り主が当然、将来大きな借財を負うことになるでしょう。スルガ銀行が責任をもって対処できる金額にとどまるとは思えませんね。
ただ、こういった不正な融資を受けて投資した、シェアハウスの所有者となり、将来の安定収入に期待した人にも、まったく落ち度がないとはいえないでしょう。私自身、別の案件で、とても現実的とは思えない家賃設定と借り主側の経営計画プランの提示を受けて、安易に融資を受けて多額の損害を被った事例を担当したことがありますが、こういった融資案件・投資案件について、素人が安易に業者や銀行など説明を鵜呑みにする傾向を感じます。
そろそろ自分の判断で、あるいは適切なアドバイザーの支援を受けて、対処することが取引の常識になるよう、構造変革が必要でしょう。問題が起こってから、解約とか取り戻しとかといったことは容易でないですから。
そういえば<スルガ銀シェアハウス問題 不適切融資、J選手ら10人被害>では、<スルガ銀行が不適切融資をした物件所有者に、サッカー元日本代表ら約10人のJリーグ選手や元選手がいる。いずれも多額の借金を背負って返済に困窮しており、普段のプレーや現役引退後の人生に悪影響が出かねない状況だ。問題がスポーツ界に飛び火した。>とプロスポーツ選手も融資を受けていたようですね。
銀行なら信用できるというのは昔のはなしでしょう(ま、少しいいすぎでしょうけど、そのくらいの気持ちで対応すべきでしょう)。契約交渉の代理人の口利きなんかも、本来の業務外の言説を信用するのはどうかと思うのです。
だいたいこのスルガ銀行、溺れる者は藁をもつかむ、ではないですが、<スター銀欺く シェアハウス、融資引き出す>では、他の銀行にも虚偽情報を提供して融資させているのですから、ひどい話です。
<スルガ銀は昨秋、シェアハウス運営会社「スマートデイズ」(東京都中央区、今年5月破産)を支援するとの虚偽の決定を行い、東京スター銀行(東京都港区)から3億円の融資を引き出していた。>ということで、この詳細は省きます。
金融機関・証券会社など、金融秩序が大きくグローバル経済の影響を受けて、大変革の荒波を迎えているのに、こういう禁じ手の不正を行う銀行は、厳しい行政処分を課し、それでも改善の見込みがなければ、金融市場に参加すべきではないように思うのです。
これから金融庁がどうコントロールし、スルガ銀行が立ち直れるのか、注視したいと思います。
今日はこれにておしまい。また明日。
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