たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

農地の2層活用? <農業の新しいビジネスモデルに、ソーラーシェアリングのススメ>を読んで

2017-08-08 | 農林業のあり方

170808 農地の2層活用? <農業の新しいビジネスモデルに、ソーラーシェアリングのススメ>を読んで

 

昨日は台風5号がどうやら紀ノ川を遡ったようで、当地の頭上あたりを通過したのでしょうか。隣の五條市を含め奈良県各地、とくに深い山里が多い南部では土砂災害警報や避難勧告などがでて不安だったでしょう。当地も大雨暴風警報くらいはでていたと思いますし、それなりの激しい雨と風でしたが、さほどでもなかったように思います。仕事を早めに切り上げ明るいうちに家路に向かいました。紀ノ川護岸を通るのですが、水嵩もその時点ではたいした量でなく、堤防内のグラウンドなどの高さまでまだだいぶある感じでした。

 

家ではのんびりと窓ガラス越しに雨脚や風の様子を見て過ごしていましたが、雨戸を閉めるほどの激しさもなく、強い雨風に打たれるスギ・ヒノキ林や田畑などをゆったりとした気分で見ることができました。

 

そういえばだいたいたいていの家は雨戸を閉めるのでしょうが、昔の和風建物なら別ですが、窓サッシの構造が防水性が優れているので、何か飛んでくる心配がなければ、雨戸を閉める必要がないように思います。普通の家屋用の窓サッシは防音性はなかなか高まりませんが、防水性は結構いいと思うのです。北米ではほとんど雨戸をみた記憶がないのですね。

 

それでも雨戸をつけ、雨戸を閉めるのは、雨風と関係なく防犯のためでしょうかね。わが国の場合防犯性の見地から外塀も高くしてきましたが、最近は低くしたり、あるいはなくす分譲地が増えてきたのではと思うのです。防犯機能という面では別のハード・ソフトの方が効果的であったり、景観的にも望ましいように思うのです。どんどん余談が続くので、この辺にしておきます。

 

さて、見出しの記事タイトルは、スマート・ジャパンから今朝送信されてきたものです。

 

再生可能エネルギーの一つである太陽光発電は、最も普及していますが、農地の場合もその目的で転用されるほとんどがソーラーエネルギー施設目的ですね。

 

農水省の<農地に再エネ発電設備を設置するための農地転用許可の実績について>を見ると、風力など他の再生可能エネルギーを凌駕しています。欧米などでは農地でも風力発電用風車がどこまでも続く風景が見事な景観の一つになっているように思うこともありますね。でも日本では北海道は別にして、大規模なものは見かけないですね。

 

再エネが今ひとつ増えないのはなぜか、現行の土地利用規制に問題の一つがあるかもしれません。安倍政権は規制緩和を第一次政権時代から唱え続けていますが、どこまで進んだのでしょうか。岩盤規制に穴を開けるという議論が獣医学部を新設するなど多くは細々としたところに終わっていないのでしょうかね。

 

農地転用について、太陽光発電については急速に伸びてきいることがわかりますが、平成26年を頂点にして、27年度になると下火になった印象があります。

 

だいたい太陽光発電設備が農地の中にできると、反射熱・光や雨水排水の影響、風の遮断などあなどれない悪影響があるように思うのです。耕作放棄地に立地する場合でも、周辺に農地があると同じようなことになるおそれがありますね。

 

わが国の農地は零細錯圃が一般的です。一戸当たり数haあるとか、いったことは平均像と隔絶していると思います。合計すると1ha持っている人でも、実際に耕作している区画は1反、2反(10アール)程度、いやもっと少ない数畝(アール)くらいではないでしょうか。それだけその区画の栽培を、耕作を大事にして育てているように感じます。そういうわけで、隣接農地の利用に敏感です。田んぼが畑に変わること、畑で栽培する農作物を変えることを気にします。むろん木を植えるといったことになると、当然、光や風などを遮るので、セットバックを求めるのが普通でしょう。

 

こういう農地利用ですので、太陽光発電設備も転用許可を与えるのには慎重となるのは当然です。

 

で、本日の話題はその進化系のソーラーシェアリングです。上記の記事によると、<ソーラーシェアリングとは、太陽の恵みを太陽光発電システムによって創った電気と農作物の栽培で分け合う(シェアする)という考え方に基づき、農地で植物の生育にとって必要な太陽光の日射量を保ちながら、農業が維持される限り安全で安定した収入源として太陽光発電を運用する仕組みのことである。>とのこと。

 

農水省は、平成25年3月運用通知(通達という用語は通達行政廃止後もこの種の通知でしっかりと生き続けていますね)で、<支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて>と題して発せられ、「営農型発電設備」(業界用語ではこれをソーラーシェアリングと呼んでいるようです)を新たな転用許可指針(基準)として制度化しました。その後次第に普及して、事業化が順調に進んでいると言うことで、新たに平成28年4月、より詳細化した運用通知で改正を行っています。

 

加えて転用許可の審査を担う農業委員会などに向けて<営農型発電設備の実務用Q&A>を発表して、農水省も本格的に取り組みを始めている印象があります。

 

たしかに見出し記事の筆者は、ソーラーシェアリング業者サイドの顧問の立場で書いていますので、太陽光発電をやりながら営農もできる、まいえば2階建てで、一階では農業生産を行いながら、二階では太陽光発電をして、二重の収入源をもてると、なかなか魅力的な話となっています。

 

実際にも、<ソーラーシェアリングは、農林水産省によって設置が認められるようになった2013年から、事例が徐々に増えてきた。2015年度には年間374件が許可され、累計の導入件数は775件となっている。2016年度中には累計許可件数が1000件に達したと予測される。>とのことで、太陽光発電設備全体の趨勢と異なり、人気が上向きとのことですね。

 

筆者の意見は次のようになかなか魅力的です。<下記は参考例になるが、複数の発電設備を持つことで年間100万円ほど現金収入を増やすことができれば営農継続の弾みになると考えている。

 

全国平均年間農業所得

5.9万円/(1反=10a=1000m2

全国平均耕地面積

235a/戸(2万3500m2/戸)

太陽光発電年間売電収入

100.8万円/反

 

と指摘しています。が、この数値自体がどうかと思うのです。上2段の数値もどうかと思うのですが、太陽光発電年間売電収入が仮に100.8万円/反だとしても、上段では収支差し引きした後の所得を取り上げているのに、ここでは費用を計上していません。

 

そして問題は、農水省の営農型発電設備の転用指針(基準)では高さが2m以上となっているところを、この筆者が勧めるのは4mとなって、トラクターなど機械作業を可能にするものになっています。

 

そうなると、通常の太陽光発電設備でも相当の設備設置費用がかかるのに、指針の高さ2mでも相当費用が増大することが予想されますが、倍となるとそれだけ支柱の構造強化を図る必要があり費用もかかるでしょう。それに遮光率33%を維持しつつ、太陽光発電を効率よく行うにはその分太陽光パネルの改良などに費用がかかることが予想されます。

 

いずれにしても初期投資だけでも通常の太陽光発電設備に比べて大きな負担になることが推測できます。

 

それに周辺の農家の理解を得ることもより大変でしょう。こういった農地利用も一つの方法として検討すること自体は反対ではないですが、言うほどに効率的な、採算性のある事業といえるか、まだ疑問が少なくない状態と思うのです。

 

それにこの構造からすると、大規模化とか大面積での利用は困難であることが想定できます。実際、<農地に太陽光パネルを設置するための農地転用許可の実績について>で見る限り、その転用件数に比べてその面積はきわめて僅少です。その件数自体も全体に比べればまだまだという状況でしょうか。上記の筆者の引用実績はより最近のものがありますが、基本的な傾向は変わらないように思えます。

 

農地転用のあり方自体について、より根本的な問いかけが必要とされているように思うのですが、これはまた別の機会にしたいと思います。

 

なお、今朝の毎日に<再生可能エネルギーコスト半減 日本は異例、石炭依存続く 英機関2040年予測>という記事で、<再生可能エネルギーとして代表的な太陽光と風力の世界規模の発電コストは、2040年までにいずれもほぼ半減するとの予測を、英民間調査機関「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」(BNEF)がまとめた。>とのこと。風力も同様に半減ですね。日本も同様にコストダウンするのですが、石炭依存構造が災いして、<現在、原発の再稼働の遅れを石炭火力で補っている結果、依存は高止まりとなると分析。日本が掲げる温室効果ガスの削減目標達成の根拠となる電源構成では、30年時点で▽石炭火力38%(目標は26%)▽再生可能エネルギー28%(同22~24%)▽原子力10%(同20~22%)--などと予測した。>というのです。

 

石炭依存状況は困ったものですが、太陽光発電などのコストダウンに希望の光が当たりそうなので、農地での活用も、見通しが明るくなるかもしれません。

 

今日はこれでおしまいです。

 


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