たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

海・魚・漁業 <日本漁業のIT化が進まぬワケ>を読みながら

2017-09-11 | 海・魚介類・漁業

170911 海・魚・漁業 <日本漁業のIT化が進まぬワケ>を読みながら

 

今朝はヒノキの梢の上で昨日とは別の鳥がとまって、かわいい声を響かせています。いつものホオジロとも違う、望遠のビデオカメラを取り出しているうちに飛び去ってしまいました。またこんどのチャンスを待ちましょう。

 

漁師がそんなのんきなことをいっていたら、食っていけないと思いつつ、わたしが神奈川で経験した実情はそうでもなさそうな感じでした。当地は海のないところですが、神奈川で仕事をしているときは海に囲まれていることもあり、漁協(漁組ともいいます)との交渉などそれなりに仕事がありました。

 

漁協側ではなく、その構成員の漁民、あるいはダイビングなど海水面利用舎、あるいは漁港周辺の利用者たちの立場でです。ま、漁協側と対立する立場で事件を担当してきました。そんな狭い偏った経験から漁業の世界を覗くと、今日のメールで案内された日経ビジネスの表記の記事を含め日経ビジネス特集「独り負けニッポン漁業」で描かれている漁民の一部はそのとおりと合点がいくこともあります。

 

ただ、昔一緒に議論した研究会のメンバーで、その後ずっと漁民の視点から漁業権問題に取り組んでいる熊本一規さんから見れば、一面的なとらえ方と映るかもしれません。そういえば、熊本さんにも漁業権問題を相談したことがあり、その後彼からその著書『海はだれのものか』をいただいたのですが、体調不調が続いていた頃で、なかなか読めないでそのままになっているのを思い出しました。ダム・原発・空港・港湾など埋め立てをめぐる開発圧力に抗して闘う漁民、その延長線にある漁協の視点で整理された立論をされていると思います。

 

そういうことを前置きにして、上記の日経ビジネス記事を取り上げてみたいと思います。漁業といっても遠洋漁業などではかなりハイテク化しているように思っていますが、実情は知りません。この漁業のIT化で取り上げられているのは沿岸魚漁、地先漁業がメインのように思います。

 

漁業ITの研究者、和田雅昭氏がこの分野に足を突っ込むきっかけが<1990年代に自分の機械を使っていた養殖場でホタテが大量死したことがありました。それは温暖化による水温の変化が顕著になってきた時期と重なっていました。大量死の要因は複合的なものだと思います。ただ、理由がどうであれ、私が問題と思ったのは、そもそも漁業者が水温をちゃんと測ったことすらないということでした。>

 

そうですね、これは銀鮭養殖をやっている漁業者の依頼でその実態を調べたことが昔ありましたが、その感覚わかります。また、漁民は競争意識が強く、他人の収穫量の増減を常に意識しながら、貪欲に収穫を上げようと懸命で、他方で、その全体の収量の保全管理といったことにはあまりというか、ほとんど関心を示さない人がほとんどとも言われています。これは私の依頼人の漁民の一人の弁で、温度管理や収穫場所、時期などをきちんと数値管理して、将来の収穫量を永続的に担保するように、県の研究所とも連携して漁業を営んでいましたが、他の多くの漁民や漁協とはまったくそりが合わない状況でした。異端視されていましたね。

 

和田氏が指摘する<いい漁場を見つけても、それを他人には教えたくないという人が多い。>というのも、漁民のふつうの感覚ではないでしょうか。留萌地区でナマコの競争収奪状況から、資源不足を懸念して、和田氏のアドバイスで、<彼らが航路や漁獲量のデータを共有して、資源管理をしようとルールを決めた。>というのは、理想的な在り方ではないかと思います。

 

和田氏は<日本の漁業者はやっぱり、漁場などの大事な情報を取られる、盗まれるという発想なんですよね。>と述べて、IT漁業の大きな壁となっている趣旨を発言されています。こういう話を聞くと、漁業だけでなく、零細錯圃の農家、小規模林地の林家(こういう人はほとんどが農林家でもっぱら農業のみになっているのでしょう)と似たような印象を受けるのです。

 

<データは取られるんじゃなくて、預けるんです。預けてもらった情報というのは適正な人が適正に管理して、そこから得られた新たな情報を利子としてお返しする。>そして<情報銀行>としてそのIT情報で漁業を行うことで、元本たる資源の枯渇を回避し、利子部分の収穫を拡大するというのは、夢物語のようでもあり、ノルウェー型漁業では実現できているのかもしれません。そういえば林業も北欧はIT化、機械化が抜群に進んでいますね。

 

IT漁業を標榜する和田氏の視点は重要ですが、他方で、私自身は地先漁業、沿岸漁業の小規模な、ITに頼らない漁師の生き様も魅力を感じています。うまく併存できるといいのですが。

 

なお、日経ビジネスは<漁業は世界の成長産業、日本は宝の持ち腐れ>など連載記事で、次のように問題を追っています。

 

「独り負けニッポン漁業」の目次

 

たしかにマグロ、ウナギ、クジラなどなど、次々と厳しい要求が海外から突きつけられ、他方で中国や韓国、北朝鮮あるいはロシアからはどんどん日本近海に大型漁船が大量にやってきて収奪している状況は深刻でしょう。

 

ただ、私の個人的な好みから言えば、それでもわが国ほど、魚介類が美味しいところがないと思っています。骨を抜き取り、さまざまな調味料?で味付けされた魚は、海外では当たり前ですが、これは魚介類の味を壊していると思うのです。この日本流の食べ方を残しながら、

何かに一つの魚などのみを食べ尽くす日本人の消費者にも反省を促したいものです。そういえば、私は最近、マグロもウナギも食べていません。特別欲しいとも思いません。イワシの干し物で十分ですし、他にもその味に負けない魚介がありすぎるほどです。

 

漁業のIT化は、ある意味必要だとは思いますが、日本人の食べ方にもITによるコントロールが必要かもしれません。

 

今日も一時間半を超えてしまいました。この辺でおしまい。

 

 

 

 


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