180418 日本の自律性 <対米地位協定 独伊と差・・・主体的に事故調査/国内法で飛行管理>などを読みながら
横田基地、厚木基地、横須賀基地を調査したり、近くで眺めたりしてきました。私の場合はジェット機のきーんと耳をというか、神経をなで斬りするような音は何回も聞いたことがないですし、そのとき限りでした。
それが日常的に聞かされる住民は普通の生活ができなくなるでしょう。元々居住していた人も、後から転居してきた人も本質的に大きな違いはないと思います。法律論として区別する議論は合理的根拠を失っていると思います。
でもそんなことより、米軍が日本の空(米軍基地周辺一帯を広大に)を自国の空域として3次元で独占支配している状況、それを前提に自由奔放に活動している状況は、本土以上に、沖縄では深刻な被害を招いていることはこれまで何十年と報道されてきました。
米軍の活動に対するコントールだけでなく、米軍人の違法不当行為についても、日本法の支配下に及ばない状況は、本土ではさほど問題にならなくなってきましたが(実際は現在も起こっていますが)、沖縄の現在はまさに危機的状況ではないでしょうか。
この法的根拠たる日米地位協定は、アメリカの他国での基地管理において、極めて異常であることはずいぶん昔から指摘され、報道されたり、情報提供されてきました。今回は沖縄県が独自に調査した結果を毎日が<対米地位協定独伊と差 日本にない権限、沖縄県比較 主体的に事故調査/国内法で飛行管理>と本日朝刊で掲載したのです。
その比較表によれば、日本が異質であることがわかります。
<ドイツ南西部、在欧州米空軍司令部が置かれるラムシュタイン基地。米軍にもドイツの航空法が適用され、午後10時~午前6時は原則として飛行が制限される。基地内にドイツの警官2人が常駐して警察権を行使するほか、「騒音軽減委員会」が設置されている。
同委には米軍司令官や周辺5自治体の首長、市民団体の代表者ら20人以上が参加し、米軍から深夜・早朝の航空機の離着陸回数などのデータが報告される。地元市長は沖縄県の調査に「米軍の騒音軽減の取り組みにはポジティブな印象を持っている」と語った。>
これに対し<日米地位協定では原則、米軍に国内法が適用されない。航空法は地上の人や物、航空機の安全を確保するため最低安全高度(市街地300メートル)を定めているが、米軍機は対象外だ。政府には米軍の訓練・演習を規制する権限もない。全国の米軍専用施設の約7割が集中する沖縄では、騒音軽減のための日米合意さえも守られない状況が常態化している。>
<96年、日米両政府は嘉手納基地(嘉手納町など)と普天間飛行場(宜野湾市)について、午後10時~午前6時の飛行を原則として制限する航空機騒音規制措置(騒音防止協定)に合意した。だが、防衛省沖縄防衛局の目視調査では、2017年度(今年2月末現在)の飛行制限時間帯の離着陸などの回数は1420回に上る。嘉手納町では騒音などへの住民の苦情件数が同期間で940件もあり、既に前年度の3・6倍に達している。町によると、最新鋭ステルス戦闘機F35A12機が嘉手納基地に暫定配備された昨年11月以降、苦情が激増している。町基地渉外課の我謝(がじゃ)治彦課長は「寝静まっている時間帯に米軍機が飛ぶことに住民は不満を抱いている。米軍へ抗議しても状況は変わらない」と話す。>
普天間が危険なのは米軍の基地活動を彼が住民保護を視野に入れず、軍事目的を恣意的に解釈して自由奔放に活動しているからで、それを許容しているという問題が根本にあるでしょう。
わが国では、首都圏でも、首根っこの横須賀基地に原子力空母が入港すると、夜間の発着訓練が相当激しく行われます。私が鎌倉に住んでいるとき、普段は静かなのに、突然、上空をもの凄い轟音が鳴り響いて、木造家屋が壊れるのではないかと思うほどの経験をしたことがあります。ま、この程度の騒音・振動は基地周辺の人にとっては日常茶飯事なんでしょうけど、それを許すわが国というのは、本当に自律した国家といえるのかと自問する時期をとっくに過ぎているようにも思えるのです。
アメリカの支配下で米軍が規律されているのであれば、その法制度を利用して果敢に戦った事件もありました。日本版NEPA(National Environmental Policy Act)訴訟です。横須賀の呉東弁護士という優秀で強靱な精神力をもつ彼が中心にアセス法違反を裁判で追求したのはもう四半世紀以上前でしたか。
その後も彼は10数年前に原子力空母横須賀基地寄港の違法性を追求した訴訟を提起しましたが、その揺るぎない法の支配に対する努力は、わが国の司法のあり方、自律のあり方を問うてきたとも思うのです。
安倍首相はトランプ大統領と北朝鮮問題や貿易問題などを議論するため訪米して会談するとのことですが、いくらなお友達外交をしても、法的にいびつで不公正なくさびを改善できない限り、対等外交なんてものは、トランプ大統領緒のツイッター一言で裏切られても、断固とした抗議でそれを覆せない、状況にあると思わざるを得ません。
むろん、ドイツ・イタリアなどのアメリカの地位協定と、わが国のおかれた条件は異なるからとの理由で、一緒にすることができないというのが、軍事専門家の意見かもしれません。はたして北朝鮮・中国脅威論は、不平等な日米地位協定を合理化できるものでしょうか。慎重な検討を今後していくべきではないかと思うのです。
今朝の一面記事<沖縄・宜野湾の米軍ヘリ窓落下普天間、児童避難216回 米軍機、接近やまず 1日23回の日も>の状況は、自分の子供が通っていたら、許せますか。いやどこかに引っ越せばいいじゃないかという意見には賛成できません。
沖縄は、日本軍が侵した戦争の惨禍を本土防衛という屁理屈で、甘受させられ、何も言えず死を受け入れ、耐えてきた遺族たちの住むところです。故郷を大事にするのが日本人というのであれば、それはすべての人の故郷を自分の生活条件と同じように守るという意識があってこそ成り立つように思うのです。