http://wiredvision.jp/blog/takeda/201007/201007151800.html
以下、引用
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明日のテレビ
分子から細胞、細胞から生物、生物から社会、というように、階層が上がっていくに従って、その下の階層にはなかった特性が発現していくことを「創発」と言いますが、これに近いことが社会学では「創発特性」という言葉で語られます。
「創発特性」は、いくつかの個体が集まったときに単純な足し算以上の性質が現れることを指します。例えば、1人1人は大人しいのに、30人くらい集まるとやたら騒々しい小学校のクラスルームとか、大人しいソロを弾いているギタリストが、数人のインプロビゼーションになった途端、とんでもなく激しいプレイになる、というような様子を想像してもらえるとわかりやすいでしょう。
同様に、ライブコンサートで盛り上がれるのは、やはり多数の聴衆が集まっているからで、客席が閑散としていたら、寂しいことこの上ありません。この場合、演奏内容以上に、「(自分もそれの構成員であり、かつ)他にそれを聞いているたくさんの聴衆がいる」という事実がコンテンツとして魅力的だ、と言ってよいと思います。
テレビにも同じ性質があります。先日大いなる盛り上がりと感動を与えて無事終了したW杯南アフリカ大会などのように、ライブ中継されるスポーツ番組などが良いサンプルになります。中継されている華麗なサッカーのプレイ以上に、「この放映を今、同時に見ている人が、(日本人だけでも)数百万人以上いるだろう」という事実を共有しているということ自体がコンテンツになっています。地上波の最大の魅力は実はこの同時性の共有にあります。
英語で「Let's Socialize!」といえば、「飲みに行こうぜ」というくらいの意味だと思いますが、「見ているという事実こそがコンテンツ」というのは、このSocializeそのものがコンテンツであることを物語っています。で、インターネット以降のテレビを中心としたSocializeの様子が米国ではでずいぶん変ってきているようだよ、と伝えているのが、今回ご紹介する『明日のテレビ』(志村一隆、朝日新書)です。
ソーシャルテレビに近い発想はWeb上にもずいぶん古くからありましたが、いよいよ「Let's Socialize!」に近い臨界点にユーザー数が達し、前述の「創発」特性によって、次のステージに上がろうとしているのでしょう。プレイヤーとユーザーに勢いがついてきているのです。
ワイアードビジョンでも2008年9月から2009年6月までの長期間にわたって「IPTVビジネスはどのようにデザインされるか」という連続セミナーを実施し、国内外の事業者サイドの動きをレポートしてきましたが、『明日のテレビ』を読むと、直近の米国内でのユーザーサイドのネットを通じた動画の視聴態度が、すでに日常生活に相当定着していることがわかります。
先日、出勤途中にすれ違った小学生の集団が交わしている会話中に「昨日のニコニコ動画の○○云々、、、」という言葉が出てきてびっくりしましたが、日本でも同様の動きが、Ustreamなどの流行も併せ、爆発寸前まで来ています。加えて米国の場合は、いろんなビジネスモデルを試すための実験の場になっているところがあり、そのあたりも様々なケースで紹介してくれています。
余談ですが、アメリカの著作権法をすこしかじってみると、いわゆる「フェアユース」というのは、ものすごく乱暴に言ってしまえば「問題あったら裁判しようね」ということだと理解しました。このあたりの融通無碍なところが、ソーシャルテレビをめぐる様々なビジネスモデルの多様性につながっているのだろうと思います。ある意味うらやましいところがありますね。
ともあれ、米国で今起きているテレビビジネスの大きなうねりをダイレクトに伝えてくれる好著です。ぜひご一読ください。
(竹田 茂)
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この記事を読んでからずっとこの本のことが気になっていたのだが、最近ようやく手に入れて読み始めました。
日本の放送業界は規制が多く、なかなかそこを突破するのは大変なのかもしれませんが、大きな流れは日本も規制緩和に向かうでしょうから、今(規制のほとんどない)アメリカでどんなことがおきているのか、というのは意識しておくべきだとおもいます。
どちらかというと(アメリカの)テレビ・メディア業界側の話が中心ですが、そこを踏まえていないと、ネット上のサービスも、メーカーの端末(テレビやケータイ、iPadなどの各種デバイス)も、いいものが作れないから、そういった意味でメーカーの企画の人もネットビジネスの企画の人も読んで損はしない、と思いますね。
感想は月報でまとめたいと思います。
以下、引用
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明日のテレビ
分子から細胞、細胞から生物、生物から社会、というように、階層が上がっていくに従って、その下の階層にはなかった特性が発現していくことを「創発」と言いますが、これに近いことが社会学では「創発特性」という言葉で語られます。
「創発特性」は、いくつかの個体が集まったときに単純な足し算以上の性質が現れることを指します。例えば、1人1人は大人しいのに、30人くらい集まるとやたら騒々しい小学校のクラスルームとか、大人しいソロを弾いているギタリストが、数人のインプロビゼーションになった途端、とんでもなく激しいプレイになる、というような様子を想像してもらえるとわかりやすいでしょう。
同様に、ライブコンサートで盛り上がれるのは、やはり多数の聴衆が集まっているからで、客席が閑散としていたら、寂しいことこの上ありません。この場合、演奏内容以上に、「(自分もそれの構成員であり、かつ)他にそれを聞いているたくさんの聴衆がいる」という事実がコンテンツとして魅力的だ、と言ってよいと思います。
テレビにも同じ性質があります。先日大いなる盛り上がりと感動を与えて無事終了したW杯南アフリカ大会などのように、ライブ中継されるスポーツ番組などが良いサンプルになります。中継されている華麗なサッカーのプレイ以上に、「この放映を今、同時に見ている人が、(日本人だけでも)数百万人以上いるだろう」という事実を共有しているということ自体がコンテンツになっています。地上波の最大の魅力は実はこの同時性の共有にあります。
英語で「Let's Socialize!」といえば、「飲みに行こうぜ」というくらいの意味だと思いますが、「見ているという事実こそがコンテンツ」というのは、このSocializeそのものがコンテンツであることを物語っています。で、インターネット以降のテレビを中心としたSocializeの様子が米国ではでずいぶん変ってきているようだよ、と伝えているのが、今回ご紹介する『明日のテレビ』(志村一隆、朝日新書)です。
ソーシャルテレビに近い発想はWeb上にもずいぶん古くからありましたが、いよいよ「Let's Socialize!」に近い臨界点にユーザー数が達し、前述の「創発」特性によって、次のステージに上がろうとしているのでしょう。プレイヤーとユーザーに勢いがついてきているのです。
ワイアードビジョンでも2008年9月から2009年6月までの長期間にわたって「IPTVビジネスはどのようにデザインされるか」という連続セミナーを実施し、国内外の事業者サイドの動きをレポートしてきましたが、『明日のテレビ』を読むと、直近の米国内でのユーザーサイドのネットを通じた動画の視聴態度が、すでに日常生活に相当定着していることがわかります。
先日、出勤途中にすれ違った小学生の集団が交わしている会話中に「昨日のニコニコ動画の○○云々、、、」という言葉が出てきてびっくりしましたが、日本でも同様の動きが、Ustreamなどの流行も併せ、爆発寸前まで来ています。加えて米国の場合は、いろんなビジネスモデルを試すための実験の場になっているところがあり、そのあたりも様々なケースで紹介してくれています。
余談ですが、アメリカの著作権法をすこしかじってみると、いわゆる「フェアユース」というのは、ものすごく乱暴に言ってしまえば「問題あったら裁判しようね」ということだと理解しました。このあたりの融通無碍なところが、ソーシャルテレビをめぐる様々なビジネスモデルの多様性につながっているのだろうと思います。ある意味うらやましいところがありますね。
ともあれ、米国で今起きているテレビビジネスの大きなうねりをダイレクトに伝えてくれる好著です。ぜひご一読ください。
(竹田 茂)
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この記事を読んでからずっとこの本のことが気になっていたのだが、最近ようやく手に入れて読み始めました。
日本の放送業界は規制が多く、なかなかそこを突破するのは大変なのかもしれませんが、大きな流れは日本も規制緩和に向かうでしょうから、今(規制のほとんどない)アメリカでどんなことがおきているのか、というのは意識しておくべきだとおもいます。
どちらかというと(アメリカの)テレビ・メディア業界側の話が中心ですが、そこを踏まえていないと、ネット上のサービスも、メーカーの端末(テレビやケータイ、iPadなどの各種デバイス)も、いいものが作れないから、そういった意味でメーカーの企画の人もネットビジネスの企画の人も読んで損はしない、と思いますね。
感想は月報でまとめたいと思います。