Bamboo(てのりぐま)日記

子どもの成長とお出かけの記録。気が向いたら好きなものの勝手レビューをします。毒も吐きます。月の最後は読書記録で締めます。

4月度月報

2011-04-30 00:01:17 | 読書
今月は9冊。

自分の中のタブーに踏み込むbamboo。

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1.坂の上の雲(7)
2.坂の上の雲(8)
司馬遼太郎さん 文春文庫

筆者は、日露戦争の勝因を分析、検証しないで舞い上がってしまったのが
のちの軍国主義を生んだ、と考えているように思う。
失敗したときになにが原因だったのか振り返るとの同じで、
うまくいったときも何でうまくいったのか、謙虚に振り返っておかないと
いけないのだろう。
運をつかむには、つかむだけの準備がいるのだ。

好之は、日本海海戦を考えに考え抜いたあとに、精神に異常をきたしてしまう。
ありとあらゆることを突き詰めていってそこを突き抜けてしまうと狂う、
というのは結構わかる。
自分が狂うのと、祖国の進路を交換というのは、究極の選択だと思う。



3.きのう、火星に行った。 笹生陽子さん 講談社文庫

これ、いい。推薦。

クールで冷めているのって、カッコいいって思っている子は多いと思う。
それが、弟とのバトルや、クラスメートとのバトルで少しづつ熱くかわっていく。
最後に、主人公の拓馬がハードル競争で全力を出し切る姿は圧巻。

熱いのもカッコいいんだよ、って言うのがわかる作品。
ぼくがうんちくたれるよりも、絶対伝わりやすいと思う。
ちび1号にぜひ読ませたい。
よんでくれ。
たのむ。
=>読んでくれた。面白かったとのこと。万歳。



4.ランナー あさのあつこさん 幻冬舎文庫

バッテリーは中学生だったけど、こちらは高校生が主人公。
いろいろと理由をつけて、本当に向かい合わないといけないものを避ける、
それってすごく痛い。
自分もそうしてきた部分があるから痛い。
少しづつ向き合っていく姿に感動。

スポーツドラマというより人間ドラマですね。
伏線に、複雑な家庭環境と離婚、虐待などの問題があります。
母親と妹の関係は、読んでいてちょっとしんどい気持ちになります。

登場人物一人ひとりの心の内面の描写がとてもみずみずしいです。
私のような鈍感な人間でもよく読みとれます。
これもこどもに読ませたいけど、
伏線で扱うテーマがテーマだけに、中学生になってからかな。



5.小学5年生 重松清さん 文春文庫

短編集。
男性の、もっとも心の底のほうにある記憶って、
こういう話の類なんだろうと思う。
現在進行形として読んでみることで、
小学5年生の男の子のリアルを思い出すきっかけになるように感じる。

重松さんのように、こういう深い愛情のこもった目線を、
僕はいつまでこどもたちに向けつづけけられるであろうか。

性に関する記述とかもかなりでてくる。
そのままこどもに読ませてしまうのもどうしたもんだか。
ちょっと気になる。



6.ビタミンF 重松清さん 文春文庫

性に関する記述をそのままこどもに読ませるのはどうしたもんだか、
と前段で言っていましたら、
この作者の作品で、もっともっと性の話で踏み込んでる短編がありました。
「愛妻日記」というやつ。こりゃR-18指定でしょう。
でも、家族をテーマにしていたらセックスの問題は避けて通れない話だと思います。
なので重松さんは一歩踏み込んだのでしょうね。
こどもに重松さんの作品を渡そうとしている人で、そういうの気にする人は、
実際に読んでみて判断したほうがいいでしょう。


さて、この作品(ビタミンF)ですが、
こどもを思う親の目線は好感がもてます。
30代後半から40代、小学生や中学生のこどもをもつ親御さんにおすすめ。
家族の物語ですね。

こどもの成長に伴ういろんな問題とか、
プロジェクトが急に中止になったりしてがっくりとか、
ある日ふと昔のこと思い出したりしちゃったりして家庭からとびだしそうになるときとか、
兄弟が離婚しちゃったとか、熟年離婚とか、
夜遊びしている連中のそばを通るときにちょっと気合をいれて狩られないようにするとか、
亡くなった親と話をしてみたいとか。

そんないまどきの話が、やさしい視線でつづられます。
いま直面している状況が劇的に変わらなくても、
そのやさしい視線だけで、ほっとできる本です。

後から知ったんだけど、これ、直木賞受賞作品らしいですね。へえ~。



7.セックスボランティア 河合香織さん 新潮文庫

そういう体験の記録じゃないです。
興味本位で読んでも意味ないでしょう。

(以下あえて”障害者”と記述します。)
障害者の性の介助の問題を真正面から論じた本。
性の問題自体が人によってかなり幅のあるテーマで、
かつ心の底に押し込んでいるものだけに、
筆者は、よくここまで取り組めたものだ、と思う。

 命の綱の酸素ボンベを、じゃまになるからとはずしてセックスする老人、
 性の介助をボランティアで行う女性、男性、
 障害者専用デリバリーヘルス、ホスト、
 知的障害をもつ人への性教育の取り組み、
 性の介助に関して公費による補助がおこなわれているオランダの現状とセックスボランティアについて、
 それぞれ障害をもった夫婦のセックス事情、

ひとりひとりに問いかけていく、というスタイルである。
こうあるべきという意見はまったくない。
このテーマは、それで充分なんだろうと思う。
読んだ人に対して性の問題を考えるきっかけを与える本なんだろうな、と思う。

私の場合、読めばよむほど、
問題が普遍的なもの(障害者に特定されない、人間全体の性の問題、自分の問題)に感じられた。
僕も自分の中のタブーに踏み込んだ気がする。



8.最後の言葉 戦場に遺された二十四万字の届かなかった手紙 重松清さん・渡辺考さん 講談社文庫

「ただいま。」
「おかえり。」
生きている人どうしでこの言葉が交わされることの価値が再認識できます。


戦地から帰ることのできなかった人達の遺品(日記)が、
連合国側の日本分析のために回収収集利用され、
そして戦後何十年もたってから遺族のもとに突然帰ってくるという話。
筆者たちは、
日記に書いてあることをたどり現地に赴き、
少ない手がかりから遺族を探して見つけ、
遺品である日記を渡します。
そして日記を渡された遺族が、想いを語ります。


時間と空間を越えて伝わってくる(日記に書かれた)言葉の想いをうけとめ、
その想いを読者に伝えようとする筆者たち。

 どんなに家族のもとに帰りたいか。
 どんなに好きな人に触れたいか。
 どんなにこどもの成長を感じたいか。
 死がすぐにとなりにある状況で、なにを感じていたのか。

読みすすめるうちに、
それぞれの日記を書いた人の生き様がくっきり見えてくることから、
筆者たちの意図は成功しているように思います。


最後に、いまどきの高校生にこれら戦死した人の日記をよんでもらい、
作文をかいてもらいます。
これは、単純に戦争反対ですべて丸くおわらせないための仕掛け、
のように感じます。

読後感ですが、
自分が家に帰ってただいまといえること、
おかえりと迎えてくれる家族がいること、
そのことに心から感謝せずにはいられない気持ちになります。
なんか重松さんと渡辺さんがねらったところに落とされた感じがしますが。



9.先を読む頭脳 羽生善治さん・伊藤毅志さん・松原仁さん 新潮文庫

羽生さんの語る、
将棋を知ったきっかけ、
成長ともに変化していった勉強法と思考法、
そして勝利を導くための発想法に対して
人工知能、認知科学の研究結果をもってその意味を説明していく
というスタイルの本。

 初心者と熟達者の思考法の差、
 コンピュータと人間の思考法の差(全件解析的な結果から導いているのか、直感的に常識的に正しいもの(大局的に正しいもの)を選んでいるのか)、
 成長時期と勉強法の変化の話(子どものころは手を使い数をこなす、思春期からは理由を深く考えるようにする)、
 自分でテーマを見つけてずっと考えつづけていける継続力とか、
 好不調をメタ認知するとか、

どれもなかなか面白い観点だと思います。
自分の頭の中でちらかっている情報を整理できるのではないのでしょうか。

以上です
コメント
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