私がカーズというバンドを初めて聴いたのは、友人から誕生日プレゼントとしてカーズの「キャンディーオーに捧ぐ」というLPを貰った時だった。
そのアルバムに入っていた「レッツ・ゴー」というヒット曲のサウンドに、いきなり心を鷲掴みにされた。
ロックでもあり、ポップスでもあり、ヒット曲らしさにあふれてもいるのだが、なんとも斬新で風変りなサウンドに思えたし、一発で心に残った。
リズムのパターンといい、ストリングスといい。
当時、ニューウェイブと呼ばれる音楽スタイルが流行っていたのだが、カーズはその要素を基本線に盛り込みながらも、それだけに終わっていなくて、しっかりポップスにもなっている、そのバランス感覚に惚れこんだものだった。
で、その印象が頭にインプットされてから、カーズというバンドには私は一目置いていた。
で、やがて発売された「ハートビートシティ」というアルバムをリアルタイムで聴く。
これがもう最高で。
完全にカーズのファンになった私。
実際、「ハートビートシティ」というアルバムからは「ユーマイトシンク」「ドライブ」などのシングルヒットも連発。
「ユーマイトシンク」などはノリがよくて、しかもキャッチーなメロディで、いかにもシングルヒット曲らしさにあふれていた。
また「ドライブ」は、ジェントルなアレンジで、どこかAORっぽい味付けもあった、知的なサウンドに聴こえた。
そして・・
私が特に大好きだったのが、アルバム最後に収められていた「ハートビートシティ」。アルバムのタイトル曲でもあるこの曲には、私は多大な影響を受けたと言わざるを得ない。
この曲のサウンドセンスは、その後の私の音楽活動でも極めて重要なピースになった。
バンド活動してる時、バンド用に曲を作ってる頃に、この曲のエッセンスからヒントを得たアレンジの曲をバンドに持ち込んだ。
で、その曲は、そのバンドの定番曲にもなった。
「ハートビートシティ」がなければ、その曲は生まれなかったか、あるいは全然違ったアレンジになったはずだ。
全然違ったアレンジになっていたら、おそらくバンドの定番レパートリーにまではならなかったかもしれない。
それほど、「ハートビートシティ」は私にとって外すことのできない重要な曲である。
曲の全体的な印象はテクノ系を活かしたサウンドである。
ニューウェイブが更に進化した出来上がり。
でも、それだけでは終わらない、翳りのある知的な雰囲気。そして聴きやすい。
そんな聴きやすさの要素が、カーズを他のニューウェイブバンドと一線を画していた点だったと思う。
だからこそ、ニューウェイブロックのファンからも、伝統的なロックのファンからも、幅広く愛されたのだろう。
「ハートビートシティ」はボーカルメロディがうんぬん・・というよりも、曲の全体的なアレンジが私は大好き。
メロディラインだけなら「ユーマイトシンク」の方がキャッチーだし、覚えやすい。
だが、この曲の魅力は、やはりこのサウンドそのものにあると思う。
このアルバムを聴いてから、カーズの存在は私の中で更に大きくなった。
当時、車で通勤する時はカーステで、電車で通勤する時はウォークマンで、会社の行き帰り毎日カーズのアルバムや、リックのソロアルバム、ベンジャミンのソロアルバムばかり聴いてた時期が私にはある。
当時、それほどハマっていたのだ。
リック・オケイセックのソロアルバムを聴くと、カーズの鋭角的な部分はリックの才能によるものが大きいということを実感した。
事実上カーズの曲は、リックが書いていた。まさに中心人物はリックであったことは間違いないだろう。
一方で、ベンジャミン・オールのソロアルバムを聴くと、カーズの大衆的な要素はベンジャミンの存在によるものが大きかったのではないかとも思えた。
で、リックとベンジャミンの2人の異なるセンスやエッセンスが融合したからこそ、あのカーズがあったんだろうなあ・・とも思った。
また、ルックス面でもベンジャミンの存在は大きかったはず。
ベンジャミンは美形で、どこかクィーンのロジャー・テイラーや、今ならエグザイルのtakahiroさんにも通じるような「バンドの華」的な部分を感じた。
女性ファン獲得にも大いに貢献したことだろう。例えば、あのヒット曲「Drive」を静かに歌う姿など。
カーズは1990年代になる前に、解散が確認された。
だが、最近ではリックを中心に再びメンバーが終結して活動をしているらしい。
だがそれは、ベンジャミンが故人になってからのこと。
完全な形でのカーズの復活はもう望むべくもない。
ニューウェイブを更に進化させ、より高い次元に昇華させた知的サウンド、それが私なりのカーズ観である。
「ハートビートシティ」のエッセンスは、いつも私の中に残っている。
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