おそらく、初めてスチール弦ギターを入手した人は、まずはスリーコードから練習をするだろうと思う。
スリーコード・・・例えばキーがCなら、C・F・G。キーがDなら、D・G・A。
キーがGなら、G・C・D・・・といった具合に。
スリーコードがある程度弾けるようになると、弾ける曲は一気に増える。
そしてスリーコードの次に、例えばキーがCなら、CからEm(マイナー)に行ったり、CからAmに行ったり、CからDmに行ったりするコード進行を覚える。
そういうマイナーコードをスリーコードに混ぜあわせていくようにもなる。
例えばC・Am・F・Gという流れなど。
いわゆる循環コードと呼ばれるパターンだ。
循環コードを覚えると、弾ける曲は更に増える。
曲を作ることが目的の場合、当面はこういう循環コードのパターンを覚えると、当分はそれでまかなえる。
実際私も、循環コードで多数の曲を作ったし、私のつたないレベルでは、それでなんとかなっていた。
もちろんプロの楽曲を聴いてると、色々凝ったコード進行を使っている曲は多かったと思うが、自分のつたないレベルではとりあえず循環コードがあれば曲は作れていた。
例えばビートルズなどはかなり凝ったコード進行を使っていたが、ビートルズと同時に私は拓郎さんやディランさんにも熱中していた。当時私が聴いてた拓郎さんやディランさんの曲は、シンプルなコード進行の曲が多かった。
なので、シンプルなコード進行でも、自分の曲作りでは間に合っていた。
そんな時。
井上陽水さんが現れた。
当時、拓郎さんと陽水さんはフォークと呼ばれたジャンルの中で両横綱で、私は拓郎さんからだけでなく、陽水さんからもかなり影響を受け始めた。
陽水さんの音楽性は、厳密にはフォークというジャンルに収まらない音楽性だったと思うのだが、一般的にはジャンル的にはフォークということにされていた。
私は拓郎さんのアルバムを聴くように、陽水さんのアルバムも熱中して聴き始めたのだが、陽水さんの曲は、当時の私にとってはコード進行に凝っているように思えた。
メジャーセブン、マイナーメジャーセブン、ディミニッシュ、他。
そういうコードが経過コードとして入っている流れが新鮮に思えた。
その流れを私も自作曲の中にどんどん取り入れていくようになった。
上記のコードのうち、メジャーセブンコードは、のちに私の前に現れた山下達郎さんの曲によって、私の中ですっかり日常化した。達郎さんの曲は、全面的にメジャーセブン系の響きを私は感じたから。
だが、ディミニッシュコードの使い方は、私は陽水さんの影響が大きかった。
ある意味、ディミニッシュコードの導入は、私は陽水さんに教えてもらったようなものだと思っている。
ビートルズもそういうコードは使っていたが、陽水さんや達郎さんの曲は日本語だったぶんだけ、余計に身近にそういうコードの響きが私の中で現実的に響いてきた。
なぜなら、私が作ってた自作曲は日本語だったから。
ただ、ビートルズというより、ジョージ・ハリスンさんのある曲には、日本語の歌詞ではないにもかかわらず陽水さんの曲と同等のディミニッシュショックを受けたけれど。
まさにその曲は、ディミニッシュコードの魅力極まれり!といった感じの曲だったから。
というのは、ジョージさんのその曲は、一応歌詞のあるボーカル曲ではあったが、ボーカル部分以上に全体的なサウンドに圧倒されたからだった。これがディミニッシュの響きた!と諭された気がした。それも大きかった。
陽水さんの曲にはあちこちにディミニッシュコードが出てきていたが、その中で特にディミニッシュの響きが私にとって印象的だった「ピンポイント」的な曲がある。
その曲とは、「小春おばさん」という曲だ。
ボーカルが始まっていきなり2つ目のコードでディミニッシュコードの響きが出てくる和音の流れには、「ディミニッシュコードとは、こういう風に使うものだ」と教えられたような気がした。
この一発の流れで「そうか、こういう風に使えばいいんだ」と納得した私は、その後ちょくちょくディミニッシュを自作曲に導入するようになっていった。
覚えたての頃は、ディミニッシュを自作曲にやたら入れようとしたが(笑)、やがてある程度慣れてくるようになると、だんだんポイントだけに使うようになった。
今では、ディミニッシュコードは私の中では、すっかり消化され、当たり前のコード進行のひとつになっている。
でも、ディミニッシュのコードの使い方は、私は「小春おばさん」という曲から教わったと思っている。
ちなみにマイナーメジャーセブンは、陽水さんの曲では例えば「冷たい部屋の世界地図」や「いつのまにか少女は」などに出てきてたが、「冷たい部屋の世界地図」での使われ方は一番定番っぽい使われ方で、その曲に出会う前にもいろんな曲(歌謡曲など)で出てきていたので、私はさほど影響は受けなかったと自分では思ってるが、「いつの間にか少女は」という曲での「さりげない使われ方」にはかなり影響を受けた。
「冷たい部屋の世界地図」でのマイナーメジャーセブンの使われ方は「いかにも」というか、定番っぽい使われ方だったのに対し、「いつの間にか少女は」での使われ方は実にスマートに思え、陽水さんのセンスがまぶしく思えた。
メジャーセブン、マイナーメジャーセブン、ディミニッシュのコードを、私が陽水さんのどの曲から学んだかをピンポイント的にまとめると、以下の感じ。
メジャーセブン・・・「帰れない2人」「眠りに誘われ」
マイナーメジャーセブン・・・「いつの間にか少女は」
ディミニッシュ・・・「小春おばさん」
井上陽水さんには、コード進行のパターンをいくつも教えてもらえたと私は思っている。
ディミニッシュが出てくるコード進行の効果的な響きを私に示してくれたミュージシャンは、私にとっては・・・やはり陽水さんとジョージ・ハリスンさんだ。
この2人は私にとっては、ディミニッシュの師匠みたいな存在かもしれない。
ディミニッシュの使い方や存在を教えてくれたのが陽水さんだとするなら、ディミニッシュの素晴らしさや可能性を教えてくれたのがジョージさん・・・私にとってはそんな位置づけだ。
陽水さんの使い方は、ある意味「隠し味」的なうまさで、ジョージさんの使い方は圧倒的な凄みだった。
https://www.youtube.com/watch?v=lZFICTkXh5w
意外ではありますが、納得する共通点です。
だんぞうさん御自身によるデミニニッシュコードで演奏されるオリジナル楽曲も聴きたいですね♪