長唄「静と知盛」は、能楽『船弁慶』を歌舞伎化し、
それを更に舞踊化した作品です。
《先ず、能の船弁慶は》
作者は観世小次郎信光と考えられる、室町時代の能楽、五番目物です。
前段 子方- 源義経 ワキ - 武蔵坊弁慶(ワキツレ 義経の従者三人) アイ - 大物浦の漁師 前シテ - 静御前
間狂言 アイ - 大物浦の漁師 ワキ - 武蔵坊弁慶(ワキツレ 義経の従者三人) 子方 - 源義経
後段 子方 - 源義経 ワキ - 武蔵坊弁慶(ワキツレ 義経従者三人) 後シテ - 平知盛
という作品構成ですが、
《歌舞伎の方では》
序=義経、弁慶の登場
破=静の舞
急=知盛の怨霊
というようになります。
《さて、長唄「静と知盛」は》
能楽『船弁慶』を歌舞伎化し、それを更に坂東三津之丞の発案により舞踊化された作品で、昭和19年初演されました。
能仕立ての優雅な衣裳、能面のような化粧、手には能に用いる扇の一種中啓(ちゅうけい)を持っています。義経に求められて、別れに舞を見せます。
舞い描くのは四季の京都の名所を綴る歌詞に乗った「都名所」です。
悲しい舞の最後に恋しい人からの烏帽子が落ちてしまい、思わず形見にと抱き締めて返そうとしますが、義経はそのまま与えるのでした。静は名残りを惜しみ、憂いの思いで花道を引っ込んで行きます。
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《静の舞—歌詞》
〽️その時静は立ち上がり。時の調子を取りあえず。
『渡口の遊船は。風静まって出ず』
〽️波濤の謫所は。日晴れて出ず
『立舞うべくもあらぬ身の 袖うち振るも恥しや』
〽️春は曙 しろじろと 雪と御室や地主初瀬
花の色香にひかされて盛りを惜しむ諸人が
散るをいとうや嵐山
花も青葉の夏木立 茂り鞍馬の山越えて
泣いて北野の時鳥
ただすの森の秋立ちて 涼しき風に乙女子が
手振り優しき七夕の 都踊りのとりなりは
その名高尾や通天の 紅葉恥かし紅模様
野辺の錦も冬枯れて 竹も伏見の白雪に
宇治の網代の川寒み あさる千鳥の音も鳴きつれて
吹雪に交り立舞うも 朝まばゆき朝日山影
静は名残り惜しまれて 涙にむせぶ御別れ
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