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自分の趣味や、日常での感じたことを思いのままに留めてゆきたい。
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天使と悪魔 第14章

2009-03-23 23:49:50 | ユウ
天使と悪魔 第14章「望まぬ現実」

私は今、日曜日に紗江とルミと一緒に来た街に一人でいる。
理由は、そう、万引きなんてしている人を見つけ、それはいけないことだと注意してあげることだ。
そして、もしかしたらその人にダークマインドが取り付いているかもしれない。
そうなったらこれは天使である私の仕事だ。
それにしても万引きしてる人なんて探してみるとなかなか見つからない。
まあ、そんな人はいないほうがいいけど。
そう思いながらも私はもうコンビニ、デパート等の店に数回出入りしている。
しかし本当に見つからないものだ。
もう4時半、学校が終わってから2時間も探している。
ソラ(もう、そろそろ帰ろうかな・・・・・・そういえばSPECIAL・CLOTHESはどうなったんだろう?福原さんと店長さん仲直りできたかな。)
気になったので帰る前に寄っていくことにした。
しかし以前店があった場所にSPECIAL・CLOTHESはなかった。
店内に山ほどあった様々な服はルビーやパールといった宝石が入っているガラスケースに変わっていた。
そう、店がまるごと宝石店になっていた。
 ソラ(なんでなんで!?福原さんは?店長さんはどうしたの?)
 「あっ、ソラちゃん!」
後ろから聞き覚えのある声が。
振り向くと福原さん大きな紙袋を両手に持って立っていた。
 福原「久しぶりです、もしかして服を見に来てくれたんですか?」
 ソラ「福原さん、SPECIAL・CLOTHESはどうなったんですか!?」
質問に質問で返す。
 福原「ああ、そこじゃなくてこっちだよ、これから店に戻るつもりだし、よかったらついて来る?」
 ソラ「えっ?でも私今日服を買いに来たわけじゃ・・・・」
 福原「いいんです、寄っていってください、店長も喜びます。」
 ソラ「はあ、じゃあそうします。」
もしかしたら私は店があった場所を間違えたのだろうか。
いや、確かにここにあったはず。
でも実際に福原さんはここにはないって言うし、どうなってるんだろう。
福原さんについてきてたどり着いたのはとっても小さな1階建ての建物。
横にも縦にも小さい、服屋にしては本当に小さな建物だった。
見た目も飾り気がまるでない。
コンクリート造りの建物。
しかし入り口のドアの上付近にはしっかりと看板があった。
そう、[SPECIAL・CLOTHES]と。
福原さんはその建物に入っていった。
 福原「店長ー、戻りました、あと4袋ぐらいですね。」
 店長「おー、頼むぞ、って、あ!ソラちゃんじゃないか!どうぞ、あがっていって。」
 ソラ「あ、どうも・・・」
中はすっきりとしていた。
休憩できそうな小さなテーブルが1つとイスが2つ。
試着室のようなスペースが2つ。
あとはほとんど何もなかった。
 福原「じゃあ、残りの服取りに行ってきますね。」
福原さんは今まで持っていた紙袋を見せの奥のほうに置いて出て行った。
 店長「何か飲み物をだそうか、コーヒーとウーロン茶ぐらいしかないけど。」
 ソラ「あ、いいです、のど渇いてないので。」
 店長「そう?」
本当はコーヒーもウーロン茶も飲めないから。
コーヒーは苦すぎるし、ウーロン茶は後味がどうも苦手。
以前このことを友達と話していたら黒陽に馬鹿にされた記憶がある。
「味覚まで子供なんだな」って。
苦手なものは苦手だ。
そんなことよりも店長さんに聞きたいことがある。
 ソラ「あの、店長さんは店をいくつか持ってたりするんですか?」
 店長「・・・・いや、ひとつだけだよ。」
 ソラ「じゃあ、ここは何ですか?」
へんな質問かもしれないと今更ながら思った。
 店長「・・・・あの後ね、店を移ったんだ、福原と話し合ってね、まだ開店もしていないんだけど。」
 ソラ「半分を宝石店にするのはやめたんですね、でもなんでそんなこと急に考えたんですか?伝統のある服屋さんなんですよね?」
店長さんは少し黙ってからこう言った。
 店長「・・まあ、大人には色々あるんだよ、そうだ、ちょっと待ってて。」
そう言うと店長さんは店の奥に行った、と思ったらすぐに戻ってきた。
さっき福原さんが持っていた紙袋と同じものを抱えて。
 店長「じつはソラちゃんにプレゼントがあるんだ、こないだのお礼。好きなものを選んで。」
店長さんは紙袋の中からきれいにたたまれた服をいくつか出した。
 ソラ「わあ、すごい、いいんですか?」
 店長「うん、福原のダークマインドを排除してくれたからね。」
へ?
 ソラ「ええ!?なんでそれを・・・・・あ、店長さんも天使だとか・・・?」
 店長「いや、天使になれなかった人間だよ。」
 ソラ「なれなかった・・・・?」
 店長「そう、精霊を召喚できなかったんだ、俺は力があまりなかったらしい、まあ、仕方ないよ、福原のこともわかってやれなかったし・・・・俺は天使になれるような、人のことをちゃんと考えられる人間じゃなかったんだ。」
私はおちこんだ様子でそう言う店長さんを見て思わず言ってしまった。
 ソラ「そんなことありません!店長さんは服をお客さんに薦める時何を考えてますか?どんなものがお客さんに似合うかを考えてるんじゃないんですか?どんなものを薦めればお客さんが喜んでくれるかを考えているんじゃないですか?店長さんはちゃんと人のことを考えることができています!」
店長さんに言いたいこと思いっきり言ったのはこれで2度目。
自分は人のことを考えられないなんて言う店長さんが見てられなかった。
元気づけてあげたいと思った。
店長さんはきょとんとしていたが、そのあと笑顔でこう言った。
 店長「ありがとう、俺はソラちゃんにおこられてばっかりだね。」
私の思いはわかってくれたみたいだ。
やっぱり店長さんのような美形に笑顔を向けられると照れる。
 ソラ「私、店長さんに決めて欲しいです、私に似合う服を、店長さんが考えて選んでください。」
 店長「うん、・・・・・これなんかどうかな?」
店長さんが選んでくれたのは白と水色のワンピース。
手触りが良くて、ヒラヒラしている。
 店長「向こうに試着室があるから着てみて。」
 ソラ「はい。」
というわけで着てみる、とっても可愛い服だ、素直に嬉しい。
まるでよく晴れた日の青空を着ているみたい。
 ソラ「うん、すごくいいカンジです、ありがとうございます。」
 店長「気に入ってくれてよかった、また新しい服が欲しいときには来て。」
店長さんは選んでくれた服を紙袋に入れて渡してくれた。
 ソラ「ありがとうございます、服好きな友達がいるので今度はその子も連れてきますね。」
 店長「わかった、楽しみにしてるよ。」
店を出たあとも店長さんは私が見えなくなるまで見送ってくれた。
帰り道を歩きながら私は考え事をした。
結局、どうして店を全部宝石店に譲るようなことをしたんだろう。
伝統のある服屋だから宝石店と店を共用するのが福原さんは嫌だった。
でも事情さえ説明すれば福原さんもわかってくれたはず。
それに以前の店ならフロアを半分にしたとしてもまだ今の店よりもずっと広いし、その場所のほうが人通りもあった。
半分を宝石店にしないという方法だってあったはず。
なんであんな店に移ってしまったんだろう。
店長さんは「大人には色々ある」と言っていた。
大人ってみんなそう。
私たち子供には何も話してくれない。
きっと私たちにはどうすることもできないって思い込んでいるにちがいない。
・・・たしかにまだ私は知らないことばかりだ。
そう思われるのは当たり前かもしれない。
でも、私は天使だ。
普通の人にはできないことができる。
店長さんも少しぐらい私に頼ってくれても・・・・・・
 ソラ「はぁ~。」
家に続く道をとぼとぼ歩きながらため息をついた。
急に子供であることがもどかしくなった。
 「あの店のこと、知りたい?」
不意に私の心を読んだかのように上の方から声がした。
 ソラ「誰!?」
上を見てみると電柱の上に翼のある人がいた。
その人は私の目の前にゆっくりと降りてきた。
 「きみと同じ、天使だよ。」
白い翼、たしかに天使だ。
同じクラスのアラタ君と同じタイプの美形、格好いいというより綺麗だ。
歳は私と同じくらいだろうか、背はそれほど高くない、普通ぐらいだ。
それよりも目を惹かれたのは髪だ。
長い髪、私も天使の姿になれば髪は伸びるのであまりめずらしくもないが、彼の髪は白かった。
よく見ると毛先だけが黒い。
今まで見てきた天使は皆髪の毛の色は金だったのでそれはとてもめずらしかった。
 「僕の顔に何か付いている?」
まじまじと見てしまったからか、そんなことを言われてしまった。
 ソラ「い・・いえ!すみません。」
あわててあやまったが、その天使はまったく気にした様子がなかった。
 「あの店長はね、店をデパートの社長から借りていたんだよ。」
そこまではそれほど驚くような話じゃない、よくあることだと思った。
 「さっきの店の店長は悪くない、悪いのはデパートの社長なんだ、最初はあの店長に店をまるごと貸す約束をしたんだ、でも開店から数日後、デパートで売っている服がさっぱり売れなくなってしまった、だからあの店長に無理なお願いをしたんだ、半分を宝石店にしろ・・・てね。」
 ソラ「でも最初に約束したんだからそれは無理なんじゃ・・・・」
 「ところがデパートの社長は本当に汚いやつでね、何をしたかわかる?」
私は首を横に振った。
 「店長を脅したのさ!彼の両親はその会社で働いているからね、その人たちをいつでもクビにすることができる、だから店長はその願いを聞き入れるしかなかった、黙って言うことを聞くしかなかったんだ。」
私はその話を聞いて唖然とした。
デパートの社長が店長さんを脅した・・・?
それもとても汚いやり方で・・・?
 「人間は醜いね・・・・・自分の利益のためならなんでもする、他人のことなんか知ったことじゃない、本当に酷い生き物・・・」
 ソラ「そんな・・・!」
私は思わず叫んだ、聞きたくないと思った。
 「ふふ・・・仕方のない子だね。」
男の天使は白い翼をはためかせ、微笑みながら夕闇へと消えていった。
そのときの彼の瞳は純粋な青ではなく、怪しい青紫色に光っていた。
私はその場で一人、しばらく下を向いて立ち止まっていた。


「現実から目を背けてはいけないよ、たとえ望まない現実が来ても・・・・
君には全てを受け入れなければならない日が来るのだから。」

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