2007シーズンのJリーグアウォーズ表彰式で、我らが聖地・東北電力ビッグスワンスタジアムが、『ベストピッチ賞』を授与されたのは、アルビレックスサポーターの記憶に新しい出来事です。
表彰を受けて、新潟サポは、我が事のように誇りに思い、また芝生の管理スタッフへの敬意を示したものです。
東北電力ビッグスワンスタジアム側も、当然のことながら、この名誉を喜び、ホームページに今後も芝生のより一層の整備に努めていく旨を表明しています。
新潟県は雪国・北国、そんな気候・環境下で、プロサッカーの興行を打てる芝生を養生し、保護し、管理することは相当に難儀な作業だと思います。
苦労の程を想像しますが、およそ吾輩の想像を遥かに超えるものでしょう。
そんな東北電力ビッグスワンスタジアムの芝生を、そして芝生管理を担う方々を侮辱するような発言を、犬飼基昭JFA会長は、口にしました。
時事通信と共同通信が昨日、配信したニュースに因れば
この御仁、以前から“人工芝でやればいい”なる発言を、専門誌のインタビューかましていたので、今更、驚きはないけども、地域訪問会議という公式の場で表明したことが残念でならない。
怒りを禁じえない。
つまり、“北国と雪国のサッカー競技場は人工芝にしなさい、そうすれば冬場でもサッカーが出来るじゃありませんか”、そう、この御仁は語っているわけですよね。
じゃあ、今も東北電力ビッグスワンスタジアムの芝生管理に携わっている職員の方々の苦労、立場、想いはどうなるのでしょうか?
東北電力ビッグスワンスタジアムだけの話じゃありません。
NDソフトスタジアム山形、札幌ドームの天然芝管理を請け負っていらっしゃる方々のプライドを踏みにじる発言だと想いませんか、みなさん?
“あんたたち、お払い箱です”
“芝生の管理なんてしなくて結構、人工芝に任せなさい”と通告しているも同然じゃありませんか!
冬場は人工芝、夏場は天然芝、そんなふうに移行できる競技場は有り得ません、札幌ドームみたいな施設を除けばだけど。
一度、人工芝に切り替えれば、ほいほい簡単に天然芝にチェンジしたり、また人工芝にすることは、かなり無理があります。
東北電力ビッグスワンスタジアムのピッチが、色鮮やかな天然芝じゃなく、人工芝に覆われるなんて、我慢ならないし、認めるわけにはいかないよ。
なにも、人工芝そのものを否定しているわけじゃありません。
人工芝メーカーに勤務されている方と、以前、仕事の関係で話を伺ったことがあるんですが、その方々の名誉の為に書きますが、人工芝の〝性能〟は、日々進歩し、格段に〝機能〟が良くなっています。
かつて、人工芝の上で滑ればヤケドをしたものですが、そんな人工芝はもう過去の遺物。
人工芝は足腰への負担が大きく、選手寿命を縮めるとも喧伝されていますが、これもかなり改良されています。
天然芝に近づこうと、研究と改良を重ねています。
とはいえ、完璧じゃない。
やはり、人工物は人工物、自然界のものに近づけるのは困難なんです。
足腰への負担が減ったとはいえ、ダメージ100を負うところを、50に減らしただけの話で、まだまだ改良の余地があるわけです。
松井秀喜選手が大リーグに移籍した理由の一つは、東京ドームの人工芝を嫌ってのこと。
どんなに優れた最新型の人工芝であろうとも膝や腰への負担は確実に掛かります。
でも、日本の球場で天然芝なのは阪神甲子園球場に広島市民球場、神戸スカイマークスタジアムなど少数派。
日本の球場は人工芝王国なわけです。
他方、アメリカは一時期、人工芝球場が席巻したのだけども、今じゃあ、人工芝は圧倒的に少数派で、新しく球場を作る際には、天然芝仕様にするのが一般的に。
そこで、松井は渡米したわけです。
イチローもそうで、スカイマークスタジアムは天然芝だけど、大部分は人工芝球場というのに嫌気を覚え、アメリカ行きを選ぶ動機の一つとなりました。
サッカー選手なんか、四六時中、走るんですから、それこそ野球選手の比じゃない負担が掛かるはず。
ケガ人が増える危険性も高まるのではないでしょうか?
それに、人工芝に熱吸収能力はないから、夏は、物凄く暑くなります。
仮に秋春制になって、5月や9月に試合をしたら、選手は熱のこもるピッチの上で走り回ることになるじゃありませんか。
それに、芝生養生の戦略的な目標は、ヒートアイランド化の抑制。
これでは理念と逆行ですよ。
FIFAは、随分と人工芝ピッチに理解を示すようになってきています。
その国の天候により、どうしても天然芝の管理が難しいようならば、人工芝でのサッカー興行・国際試合を認可するようになっています。
けど、やっぱり、天然芝が一番ですよ。
2007-2008シーズンのUEFAチャンピオンズリーグの決勝戦、チェルシーVSマンチェスターユナイテッドが戦った競技場は、ロシアのモスクワに存在します。
名称は「ルジニキスタジアム」。
寒冷のモスクワという事情から人工芝ピッチのスタジアムなんだけど、CLファイナルの時は、わざわざ巨額の事業費をかけて、天然芝に張り替えたんですよ。
決勝戦たった1試合の為にですよ!
費用は、欧州サッカー連盟持ち。
FIFAじゃなく、UEFAの意思だけど、天然芝の方が良いって認識が強いことの証じゃないですか。
米国の野球場が天然芝に回帰しているのも、根っこは同じ理由でしょ。
犬飼会長の私案は、世界の趨勢とも離れている考えだよ。
第一、Jリーグは「Mrピッチ」というキャラクターを作り、校庭の芝生化を進め、公園に芝生を増やそうという理念を推し進めてきています。
これはJリーグ100年構想の大きな柱。
だけど、サッカー興行のために、人工芝を認めるというのは大いなる矛盾だし、本末転倒も甚だしい。
最後に改めて、吾輩は、ベストピッチ賞に輝いた東北電力ビッグスワンスタジアムのピッチが、人工芝になるのを許せません。
東北電スはサッカー場のイメージが強いですが、本来は陸上競技場なんですね。これも世界基準のクラス1認証。
トラック部分に全天候舗装材が施工され一定の基準をクリアした陸上競技場は国内の陸上競技の公式ルールに従って「第一種、第二種、第三種、第四種」と分類されます。但し競技場の真ん中のピッチに人工芝を導入すると第四種に分類されてしまいます。
http://www.rikuren.or.jp/athlete/rule/documents/10_3.pdf
ピッチ部分は槍投げ、ハンマー投げの投てきの落下場所になり人工芝を突き破ってしまうので通常は人工芝を使用しません。
稼働率の悪い市民レベルの施設は人工芝にする場合も出てきましたが。
ですから新潟での犬飼私案で興行を行なう場合、2万人以上を収容できる施設を新たに建設するか、新潟市陸での陸上使用を停止し人工芝転用ぐらいしか手がありません。(それも屋根付きの)
東北電スの天然芝を剥がしたら国際陸上競技連盟(IAAF)から怒られます。きっと。
東北電スは「日本初」のクラス1陸上競技場で、
現在日本にクラス1は3ヶ所(長居と神戸ユニバ)
しかありません。
そこを人工芝にすることは不可能でしょう。
作るのも維持するのもとっても大変なんです。
(知り合いが以前その仕事に関わっていました。)
もちろん選手のためにも人工芝は大反対です。
なるほど、人工芝を敷き詰めた途端、ビッグスワンスタジアムはあんなに立派な器にも拘わらず、グレードが大幅ダウンしてしまうんですか。
これは陸連が許しませんよね。
確か、等々力陸上競技場のトラック部分を青色にしたいとフロンターレ側が働きかけたときも、陸連が難色を示して反故になりましたし。
NDスタなど他の北国スタジアムもそうですよね。
これじゃあ、普通に陸上競技大会を開催できなくなります。
犬飼会長は、フォローアップを考えているんでしょうか、考えていないような気がします。
巨額な資金を投入して造ったスタジアムなのに、秋春制のために、人工芝に張り替えられたら、たまったものじゃありませんよね。
人工芝は、近視眼的な対処で、マクロで見たら、愚の骨頂たるアイデアです。