ジャック・ブルース John Symon Asher "Jack" Bruce
【パート】
エレクトリック・ベース、コントラバス、チェロ、ギター、ピアノ、ハーモニカ、キーボード、ヴォーカル
【生没年月日】
1943年5月14日~2014年10月25日(享年71歳)
【出生地】
スコットランド ラナークシャー郡ビショップブリッグス
【経 歴】
ドン・レンデル・クインテット/Don Rendell Quintet(1962~ )
ブルース・インコーポレイテッド(1962~ )
グラハム・ボンド・オーガニゼイション(1963~ )
ジョン・メイオール・ブルース・ブレイカーズ(1965)
マンフレッド・マン(1966)
パワーハウス(1966)
クリーム(1966~1968)
トニー・ウィリアムス・ライフタイム(1970)
ジャック・ブルース&フレンズ(1971~1972)
ウエスト・ブルース&レイング(1972~1973)
ザ・ジャック・ブルース・バンド(1975)
ジャック・ブルース&フレンズ(1977)
ロケット88(1979~1981)
クリーム(1993)
ベイカー・ブルース・ムーア(1993~1994)
Jack Bruce & The Cuicoland Express(2001)
クリーム(2005)
「クリーム」のベーシストとして知られる。
ブリティッシュ・ロック・シーンを語るうえで外すことのできない、重要なミュージシャン。
ピアノやチェロもこなすマルチ・プレイヤーであり、ヴォーカリストとしても名高い。
10代の頃に王立アカデミーでクラシックを学んだ、ジャズにも精通しており、コントラバスの演奏にも優れているところから、トニー・ウィリアムス(drums)、ラリー・コリエル(guitar)、カーラ・ブレイ(piano)、ビリー・コブハム(drums)、ジョン・マクラフリン(guitar)ら、世界的なジャズ系ミュージシャンとの共演も多い。
幅広い音楽性を基にするブルースの活動はロックやブルースの垣根を越えたものであり、彼の存在はジャズ・ロックあるいはクロスオーヴァー・ミュージックの普遍化に大きく寄与したと言える。
卓越した技術を土台とするジャック・ブルースの演奏は、とくにライヴでその個性が際立っている。自由で縦横無尽に弾きまくる彼のスタイルは、当時のロック・シーン、あるいは後進のミュージシャンに多大な影響を与えた。
ジャック・ブルースは労働者階級の家に生まれた。
4歳の時に一家はカナダに移住するが、2年ほどで帰国する。
家庭は貧しかったが、音楽好きな両親のおかげで聖歌隊に入るなど、小さな頃から音楽に親しむ。
またラジオから流れるクラシック音楽を好んで聴いていたほか、ジャズ・ピアノを弾く父の影響もあり、10歳の時にはピアノを即興で弾いたり、作曲をしていたという。
11歳の頃には母や学校の教師に勧められ、音楽教育に力を入れていたベラハウストン・アカデミーに入学し、チェロを学んだ。そしてベラハウストン・アカデミーに通いながら奨学金を得て王立スコットランド音楽演劇アカデミーで作曲を学ぶが、次第にモダン・ジャズに傾倒するようになる。さらにアカデミーの指導方針とも対立するようになったブルースは結局17歳で中退した。
在学中からローカル・ミュージシャンとして報酬を得ていたブルースは、中退後にその活動を本格化させる。
一時イタリアに渡り米軍基地で働いていたが、1962年にロンドンに出る。
この頃、通りがかりにあったクラブに入り、むりやりシット・インしてその演奏能力で店にいた面々を驚かせた。その時にディック・ヘクストール=スミス(のちコロシアム)やジンジャー・ベイカーと知り合ったという。
1962年、マイク・テイラー(piano)、ジンジャー・ベイカー(drums)、グラハム・ボンド(sax)らとドン・レンデル(sax)のジャズ・グループに参加するほか、アレクシス・コーナーのブルース・インコーポレイテッドに加入する。
1963年、ブルースとベイカーはグラハム・ボンド(organ, sax)とともに「グラハム・ボンド・トリオ」(のちの「グラハム・ボンド・オーガニゼイション」)の一員となる。
グラハム・ボンド・オーガニゼイションではベイカーと対立することがままあり、これが元で65年8月にブルースはバンドを脱退する。
1965年には「ジョン・メイオール&ブルース・ブレイカーズ」に参加。この時エリック・クラプトンと出会った。
1966年にはマンフレッド・マンに3ヵ月ほど在籍。
クラプトンはこの年に発表されたエレクトラ・レコードの企画アルバムに「エリック・クラプトン&パワー・ハウス」名義で参加しているが、ブルースはマンフレッド・マン脱退後にこのユニットでベースを弾いている。
この頃エリック・クラプトンとジンジャー・ベイカーはふたりとも現状に満足していなかった。ベイカーは新しいバンドの結成をクラプトンに提案する。この時クラプトンは「ベースがジャック・ブルースなら」と返答した結果、1966年6月にクラプトン、ブルース、ベイカーが集結したスーパー・グループ「クリーム」が誕生する。
クリームは「スーパー・グループ」としてだけでなく、高い演奏力を存分に発揮した即興演奏でロック界から大きな注目を浴びる。
ここでのブルースは、卓越したベース・プレイだけでなく、ヴォーカリスト、マルチ・プレイヤーとしても高く評価された。
しかしベイカーとの関係は、当初から危惧されていたとおり徐々に悪化し、いかんともし難いほど冷え切ってしまった。そのうえブルースとクラプトンの関係にも亀裂が入り、これらが大きな原因となって1968年11月にクリームは解散してしまう。
クリーム以外の活動としては、1967年のマイク・テイラー・トリオのアルバム『トリオ』のレコーディングにコントラバスで参加。
1968年8月には自己初のソロ・アルバム『シングス・ウイ・ライク』を制作(リリース1970年)したが、クリーム解散後の1969年4月に録音した『ソングス・フォー・ア・テイラー』の方が先にリリース(1969年8月)されている。
1969年、ブルース、ラリー・コリエル(guitar)、ミッチ・ミッチェル(drums)、マイク・マンデル(keyboard)によるラインナップでライブ活動を再開したが、間もなく解散。
1970年、マイルス・デイヴィスの黄金のクインテットの一員だったトニー・ウィリアムス(drums)のバンド「ライフタイム」に参加。翌71年には再びラリー・コリエルと組んでライブを行っている。
1971年にはソロ3作目の『ハーモニー・ロウ』のリリース・ツアーでクリス・スペディング(guitar, 元ニュークリアス)、ジョン・マーシャル(drums, 元ニュークリアス)、ジョン・サーマン(sax)、グラハム・ボンド(sax)からなる「ジャック・ブルース&フレンズ」を編成するが、翌72年には解散。
同年にはレスリー・ウエスト(guitar)、コーキー・レイング(drums)とともに「ウエスト・ブルース&レイング」を結成したが、1973年半ばで解散。
1975年にはミック・テイラー(guitar, 元ローリング・ストーンズ)、カーラ・ブレイ(piano)、ブルース・ギャリー(drums)、ロニー・リーヒー(keyboard)による「ジャック・ブルース・バンド」を結成するが、レコーディングには至らなかった。
1977年、トニー・ハイマス(keyboard)、サイモン・フィリップス(drums)、ヒューイ・バーンズで新たな「ジャック・ブルース・バンド」を組み、アルバム『ハウズ・トリックス』を発表した。
1979年にはビリー・コブハム(drums)とともにジョン・マクラフリン(guitar)のツアーに参加。
同年、「6人目のストーンズ」とも言われたピアニスト、イアン・スチュアートを中心として結成した「ロケット88」に加わる。このバンドは、ジャズ、ブルースを基調としたブギ・ウギ・バンドで、チャーリー・ワッツ(drums ローリング・ストーンズ)やアレクシス・コーナー(guitar, vocal)らも参加していた。
1980年、ビリー・コブハムとともにモーズ・アリソン(piano)のサポートとしてモントルー・ジャズ・フェスティヴァルに出演。またアメリカで「ジャック・ブルース&フレンズ」(ブルース、ビリー・コブハムdrums、クレム・クレムソンguitar、デヴィッド・サンシャスkeyboard)としての活動を始める。
1980年代にはセッション・ベーシストとして、ロビン・トロワー(guitar)、キップ・ハンラハン(composer)、トレヴァー・ラビン(guitar)、ゲイリー・ムーア(guitar)、バーニー・マースデン(guitar)などのレコーディングをサポートしている。
1987年には来日し、鈴木賢司(guitar)とライヴを行った。
1993年1月、クリームは「ロックの殿堂」入りを果たしたが、その式典において、25年ぶりにクラプトン、ベイカーとともに「クリーム」としてステージに上がり、3曲を演奏した。この模様はTVでも放送された。
1993年、ブルースのドイツでのライヴにゲイリー・ムーアが参加したことがきっかけとなり、ブルースは請われてムーアのソロ・アルバムに参加することになる。後日、このプロジェクトにジンジャー・ベイカーも加わり、「BBM」(Baker-Bruce-Moore)が結成された。1994年5月に発表されたアルバム『白昼夢』は全英9位のヒットを記録したが、ツアー中にメンバー間の対立が深まり、バンドは消滅する。
以後ブルースはソロ活動に戻る。
2003年、肝臓ガンのため緊急移植手術が行われて一命を取り留めたが、このためChar(guitar)、サイモン・カーク(drums)とのトリオで企画されていた日本武道館でのライヴはキャンセルされた。
2005年5月、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでクリーム再結成コンサートが行われる。このニュースは世界中に流れ、一般紙にも取り上げられた。同年10月にはマディソン・スクエア・ガーデンでもコンサートを行っている。
2008年12月、ヴァーノン・リード(guitar)、ジョン・メデスキ(organ)、シンディ・ブラックマン(drums)とのカルテットで来日。
2014年3月、アルバム『シルヴァー・レイルズ』を発表、ドイツのアルバム・チャートで最高97位を記録した。これがブルースの最後のアルバムである。
同年10月25日、イングランドのサフォーク州にある自宅で、家族に見守られながら息を引き取った。71歳。肝臓を患っていたと伝えられている。
【ディスコグラフィ】(☆=ライヴ・アルバム ★=コンピレーションアルバム)
<ソロ・アルバム>
1969年 ソングス・フォー・ア・テイラー/Songs for a Tailor(UK6位 US55位)
1970年 シングス・ウイ・ライク/Things We Like ※録音1968年
1971年 ハーモニー・ロウ/Harmony Row
★1972年 アット・ヒズ・ベスト/At His Best
1974年 アウト・オブ・ザ・ストーム/Out of the Storm(US160位)
1977年 ハウズ・トリックス/How's Tricks(US153位)
1980年 アイヴ・オールウェイズ・ウォンテッド・トゥ・ドゥ・ディス/I've Always Wanted to Do This
1987年 Automatic
1989年 ウィルパワー/Willpower
1989年 クエスチョン・オブ・タイム/Question of Time
1993年 サムシン・エルス/SomethinEls
☆1994年 シティーズ・オブ・ザ・ハート~ライヴ1993/Cities of the Heart
1995年 モンクジャック/Monkjack
☆1995年 BBC Live in Concert
★1996年 The Jack Bruce Collector's Edition
☆1998年 Live on the Old Grey Whistle Test
2001年 シャドウズ・イン・ジ・エアー/Shadows in the Air
2003年 モア・ジャック・ザン・ゴッド/More Jack Than God
☆2003年 ライヴ'75/Live '75 ※録音1975年
2003年 ジェット・セット・ジュエル/Jet Set Jewel ※1978年録音
2007年 HR Big Band Featuring Jack Bruce
☆2008年 Spirit - Live at the BBC1971-1978
2008年 Can You Follow?
2014年 シルヴァー・レイルズ/Silver Rails(ドイツ97位)
<クリーム>
1966年 フレッシュ・クリーム/Fresh Cream(UK6位 US39位)
1967年 カラフル・クリーム/Disraeli Gears(UK5位 US4位)
1968年 クリームの素晴らしき世界/Wheels of Fire(UK3位 US1位)
1969年 グッバイ・クリーム/Goodbye(UK1位 US2位)
★1969年 Best of Cream(UK6位 US3位)
☆1970年 ライヴ・クリーム/Live Cream(UK4位 US15位)
☆1972年 ライヴ・クリーム Vol.2/Live Cream Volume Ⅱ(UK15位 US27位)
★1972年 Heavy Cream(US135位)
★1973年 Cream Off the Top
★1983年 Strange Brew:The Very Best of Cream(US205位)
★1995年 The Very Best of Cream(UK149位)
★1997年 Those Were the Days
★2000年 20th Century Masters - The Millennium Collection:The Best of Cream
☆2003年 BBCライヴ/BBC Sessions(UK100位)
☆2005年 リユニオン・ライヴ 05/Royal Albert Hall London May 2-3-5-6 2005(UK61位 US59位)
★2005年 Gold(UK186位)
★2005年 I Feel Free - Ultimate Cream(UK6位)
★2011年 Icon
☆2020年 Goodbye Tour:Live 1968
<レコーディング・セッション>
*ブルース・キャメロン/Bruce Cameron
1999年 Midnight Daydream
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