歌詞等の曲情報→初音ミクwiki ジミーサムPさん(作者)のブログ
VOCALOIDは初音ミク以外にもいくつか存在する。巡音ルカは大人びた艶のある声で表現の幅を広げるのに貢献しており、多くの名曲が生まれている。代表的なものは「Just Be Friends」だが、今回紹介する「No Logic」も代表曲のひとつになっていくだろう。作者のジミーサムPさんは超有名製作者で、Toy Boxという一般流通もしているCDを出しており、私もCDショップで見かけたことがある。
キャッチーな旋律が耳を楽しませ、曲としての完成度の高さももちろんだが、この曲の一番の出色は歌詞にあるように思う。全体としてのテーマは、やりたいことをやって、あるがままに生きていきたいのだけど、それが不可能であることへの喪失感、というもので、共感できる人は多いのではないか。特に象徴的な部分として1回目のサビの歌詞を引用し、個人的に考えたことを書いてみる。
>神様、この歌が聞こえるかい あなたが望んでいなくても
>僕は笑っていたいんです 泣きたい時は泣きたいんです
>いつだって自然体でいたいんです
ここで「神様」は自然体でいたいと願う個人を抑圧する存在として描かれている。これは通常の神様のイメージとは異なるのではないか。私は、フーコーという人が言ったという、監視される者の内部で第二の監視者が生まれるという自己監視のシステム、この第二の監視者がこの曲でいう「神様」にあたるのだろうと思う。自分の本心を叱咤し「こうあるべき」という声を発する者だ。日本で言えば、対応する英語がない特殊な言葉、「社会人」と「受験生」のこうあるべき論の根が深い。受験生が少しでも遊べば誰にも気づかれない場合でも罪悪感が生まれてくる。非難をする主体は、超越的な神様でも現実にいる他人でもなく、自分自身の理性である。
アダムとイブの話で、創造主たる神は二人に善悪の知恵の実を食べることを禁じ、人間には善悪を判断する分別をつけないように試みた。善と悪を考えるようになると、あるがままの生き方を抑圧するようになる。世界で最も有名な神様の一人はそういう事態を避けようとしていたのだ。しかしアダムとイブは、禁止を破り、そのことを神に追及され、禁止を破ることが悪だと判断がついたために言い逃れをし、怒りを買って楽園から追放されることとなった。その子孫たちは、理性で設定した縛りを神様が設定した宿命と思うようになり、諦めの境地に達しようとしている。心の病は理性が強すぎて心が停止してしまった状態とも言われるが、心が壊れてしまうことがないように願うばかりである。
【曲関連の参考リンク集】
巡音ルカが歌うオリジナル版 歌ってみた合唱版
女声の「歌ってみた」おすすめ→栗プリンさん(YouTubeはこちら)
男声の「歌ってみた」おすすめ→けったろさん(YouTubeはこちら)
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【エッセイ部分の参考に】
受験生の自己監視システムを指摘したもの→竹内洋「日本のメリトクラシー」東京大学出版会
アダムとイブの話を善悪論で解釈したもの→泉谷閑示「普通がいいという病」講談社現代新書
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