「もし、尺が足りなかったらもう1曲演奏しますから」
「これとこれは尺が同じだから・・・」
と、最近、やたらと「尺」という言葉を使う学生が増えてきた。
おっと、これは尺貫法復活か、と思いきや・・・
「ピアノの位置、1尺、奥に下げて」
などとは使わない。もっぱら時間的な長さだけのようだ。
二、三十年前、舞台関係においては尺貫法が当たり前に使われていて、それを使えないやつはこの世界には入れてやらないぞ、という雰囲気だった。曰く、
「リノリウム、もう一間分足して・・・」
「ひな段、もう5寸下げて下さい」
尺貫法の方が、人間サイズにマッチしやすい。歩行の一歩は約1尺、両手広げて約1間、ヤード・ポンド法への換算もスムーズ。
家屋は今でも実質的に尺貫法が基準になっているし、「平方メートルあたり」よりは「坪あたり」の方が耳馴染みだ。なので、舞台関係がこの延長線上の考え方になるのは必然的なのだが、最近は舞台関係者もメートル法で表現してくれるようになった。ただ何となく味気ない。
一方、学生たちの「尺」の使い方は違和感大有り。いったいどこでこんな使い方を覚えたのか?
と、注意深く見渡してみて、ある時わかった。
テレビだ。
テレビに出てくる芸人さん達が、最近頻繁に使っているようだ。こういう業界用語は表では使わないものだったのだけれど、粋がって使っているとしたらちょっと「シャク」にさわる。
しかし、日本古来の尺貫法を使うことが気障に見えるとは、妙な世の中になったものだなぁ。
(4月11日は「メートル法公布記念日」だそうだ。)
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