合唱コンクールの審査員を久しぶりにした。今回は「九州合唱コンクール」、いわゆる合唱連盟がやるコンクールの九州大会に相当する。この地方ブロック規模になると、毎回著名な合唱指揮者の方が見える。この方々に会えるのも、楽しみの一つ。なぜならば、大変な勉強家が多いからだ。
昨年から全国に先駆けて小学校部門がスタート、そして今年からは全団体に全審査員が講評を書く、それを従来通り三日間で行う、という極めて濃密な時間を過ごさせてもらった。(来年からは四日間なので少し楽になるはず。)
沖縄から小学校が5校も飛行機に乗ってやってきた。そのパワフルな歌声とひたむきさに、涙腺が緩んだ瞬間もあった。しかし一所懸命なのは、他校も同じ。コンクールなので評価を下さねばならず、そうすると涙が出るほど感動しても、技術的な問題ゆえに、いつの間にか下位に沈んでしまうこともしばしば。何のためのコンクールやら・・・。
審査の結果が出た後の審査会の席上で、期せずしてある審査員から以下のような発言があった。
「特に沖縄の子供とか、こういう風にしなさいって教えると、段々できなくなっちゃうんですよ。どうすれば良いか、何か教えていただけませんか?」
その場に審査員としていらした合唱連盟の理事長、すかさずI東氏に振った「それは専門家が・・・」
I東氏は10代から70代まで、児童、ジュニア、シニア、女声、男声、何でもござれのベテラン指揮者だ。以下、その時のコメント。
まずは「聴く」ことですね。指導者が、いわゆる「聴かせたい音」を、よく聴いてごらん、とやる訳です。二手に分かれてお互いに聴いたり、二人一組で相手の声を聴いたりと、その程度でも結果が全然違います。子供は耳がいいですから、すぐできるようになりますよ。
伊万里の小学校、私とS水さん(全国大会金賞ご常連指揮者)が一番高い点を入れたと思いますが、あれなんです。彼らはとても耳が良いです。そして聴くことができるスキルを持っています。
スキルの訓練をするのを子供が嫌がるかと言うと、そうでもありません。スキルを持ったおかげで、できることの枠が広がります。それを一番先に感じるのは子供たちであり、むしろ一番喜ぶのが子供たちです。
そしてそのスキルを持った子供たちは歌うのが好きになって、ずっと歌い続けるんですね。
最後の言葉が審査員一同、感銘をもたらした。しかもI東氏は審査員の中で最年少であり、同志社グリークラブ出身。一方、質問した人間や私は音楽大学卒で、音楽を教える立場にある。一体、音楽大学って何?と言いたくなる瞬間でもある。
それはともかく、ことほど左様に合唱コンクールは私にとって「いい話」が聴けるチャンスになっている。
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