引き続き某コンクールだが、私にとっても最大級に重要なことがあった。
途中からではあるが、私の師と一緒に演奏を聴くことができたのだ。これは生まれて初めてのこと。
こちらの師から学んだのは、ほとんどがヴァイオリンの技術面だった。しかも、恐らくはアメリカで発達したと思われる技術。お陰様で、音の出し方については根本から見直すことができたし、現在の私の根幹になっていると言って良い。
その中で、右手の小指の使い方というのがある。
フランコ・ベルギー流だと、弓先ではほとんど用をなさない小指だが、せっかく5本ある指は、しっかり使う、弓先でも手首を下げて小指が離れないように、という教えだった。
これだけだと、実際はどちらでも結果にあまり差がない。
大事なのは弓元での小指の使い方である。
約60グラムあるヴァイオリンの弓、そのまま弓元で弾いたら重すぎて音がつぶれてしまう。だから重さをのせすぎないように弾くのだが、この時、手全体で重さがかからないようにすると、必要なアタックがつかないだけでなく、弓元数センチを超えたところで、必ず音が肥大する。
それはさすがに不本意なので、持ち上げた弓を必要なだけまた押し戻すという、とても複雑なことをやる。そういう人は結構多い。かくいう私もその一人だった。
ここで小指を使う技術を使うと、弓の重さだけで音を出すことができる。
弓の根元を使う時だけ、小指でスティックを少し押す、これだけのこと。親指をてこの支点、小指が力点、弦との接点が作用点(てこの原理、覚えていますか?義務教育)
重さが必要以上にかかってしまうのは、(弓を使う速度次第で変わるが)弓もとから数センチまでなので、少し押す、これで充分。
一旦マスターすると、全然難しくないのだが、使ったことがない人には少々訓練がいるだろう。
使ったことがない人、これが存外多くて、このコンクール、滅茶苦茶うまい子供たちであっても少なくとも3割は使えていなかった。
また、使えなくてもほとんど差し支えない曲(シベリウス、ショスタコーヴィチ等)もあることを発見したのも、私には収穫。
はっきり使えているとわかる演奏は(感覚的には)3割くらいの印象。
これが、私としては気になって気になって仕方がなかった。
そして私にとってラッキーだったのは、それを伝授してくれた師匠の同席である。
審査の合間に、お伺いを立てたらば「ああ、(元弓が)使えていないわねぇ」の一言。
その一言に意を強くして・・・
このコンクールの良い試みは、終わってから審査員の講評会があること。
この場で、右手の小指が使えていないと思われる皆さんには、上述のことを教えまくった。
そのアドバイスだけでできるようになる人は、かなり優秀だと思う。
だけれど、それをきっかけにしてくれる人が少しでもいれば、将来は明るい、それを願って終わったコンクールだった。
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