夜、終電車を列の先頭で待っていた。
ホームには見慣れない列車が到着する。
あれ? こんな列車あったかな?
中に入ると、2列ずつの座席が前を向いている。長距離列車のようなレイアウトだ。
少し不思議に思うが、座席に座る。乗り込んできた客もみな首をかしげるような表情をしている。乗客はそれほど多くなく、立っている客はいなかった。
車掌の社内放送が流れる。
「この列車は急行です。このあと全ての駅を通過します」
え? どういうこと?
やがて安全バーが降りてきて、体が固定された。
ジェットコースターじゃあるまいし、何で安全バー?
バーはロックされており、手で上げようとしてもびくともしない。
「それでは発車します」
ドアが閉まり、列車はゆっくりと進み始める。窓の外に運転手と車掌が並んで立っているのが見えた。
誰が運転していのだろう?
しばらく進むと、列車はカタカタと音を立てて急こう配をゆっくりと上り始める。
まるでチェーンで引かれて勾配を登るジェットコースターのように…
列車はどこまでも上って行く。
な、なんなんだ、これは…
いつもの通勤列車とは明らかに違う。
街の夜景が遥かかなたの下界に広がっている。
信じられないほどの高さまで列車は上って行く。
ま、まさかこの高さから…
列車内はざわめき始めるが、安全バーが体を固定しているため、身動きはとれない。
列車は斜め姿勢から水平になったと思った次の瞬間、ものすごいスピードで下降して行く。
加速はさらに増していく。
加速力で胃袋を吐き出しそうなる。
たくさんの乗客が恐怖で大声を張り上げる。
列車はものすごいスピードでループを一周し、その先にはジャンプ台がある。
そこで線路は終わっている。
列車は猛スピードでジャンプ台から暗闇に放り出され、二度と戻ることはなかった。
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