都内散歩 散歩と写真 

散歩で訪れた公園の花、社寺、史跡の写真と記録。
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「日本経済 戦後の夢を明日に」  伊東光晴

2013-12-24 11:47:06 | 抜粋

伊東光晴 「日本経済 戦後の夢を明日に」 『これからどうする ― 未来のつくり方』p262-264に収録の論文 岩波書店 2013:発行


第二次大戦後、日本人の多くは三つの夢をもった。何よりも平和、それは憲法となった。そして豊かさ。さらに一人だけの豊かさではなく、誰でもが安心して生きることのできる福祉社会。一九六〇年代の高い経済成長とそれに続く七〇年代の中で、日本は少しずつ所得格差縮少への道をたどった。所得の平等化を測るジニ係数がそれを示している。 


戦後日本の成長と平等化の同時進行がおかしくなるのが、英米日で規制緩和と市場優位の政策が登場した八〇年代である。不平等と経済格差が大きくなり、さらに二〇〇一年からの小泉政権による労働政策の転換によって、被雇用者の三〇%が非正規になってしまった。

今、取り組むべき経済政策の第一は、この若者が直面している反福祉社会をただすことである

私はかねて、日本の年金の水準は高すぎこれを推持したまま、福祉社会に向うのは難しいと思っていた。賃金も年金も、夫が働いて妻は家庭でという形にそって制度が作られていた。だがやがて夫婦が共に働き、共に年金を得るという形になろう。

今は過渡期である 問題を国際関係に移そう。まず為替レートを正常値にもどすことが必要である。そのために投機資金の流入を抑える「外国為替取引税」を導入する。これはケインズの考えからヒントをえて、エール大学のトービンが〇・〇二%の課税を提唱したものである。同一資金が頻繁に為替の売買をする投機資金にはこの税が累積するため、この導入を日本がきめた段階で投機資金は日本を去り、円は正常値にもどるだろう。これで日本のものづくりは活気をとりもどす。アメリカの投資銀行、ファンド等がおし進めているグローバリゼーションの弊害もとり除かれる

ガットは、世界の国々の制度、文化、慣習は多様であり、それと矛盾しない貿易ルールとして「内国民待遇」を基本とした。・・・・互いに自国の人、もの、企業に与える自由を、他国の人、もの、企業にも与えるというものである。俗に「自由化」というのがこれである。と同時に、自然的条件が大きく異なる農業と、制度が異なるサービス部門を自由貿易の横においた。  

だがアメリカは、一九八〇年代なかばごろから、これを「相互主義」にかえだし、貿易の主戦場を農産物とサービス部門に移しだした。アメリカの制度その他を他国に要求するというものである。日米構造協議がその一例で、二国間交渉が行なわれた。二国間交渉では強者の論理が発動されやすく、・・・・ブロック経済となり、・・・・、第二次大戟の原因になった・・・・。

 他方、アメリカが進める環太平洋経済連携協定(TPP)は、農業・サービス業の分野で強者の要求を通そうとするものであり、ガットの理想に反するものである。・・・・日本は互恵の「経済連携協定」を二国間で締結し続けてきた。・・・・・・。これをおし進めると同時に、ガットの精神の再構築を目ざすべきであろう。
(岩波書店編集部編 『これからどうする ―未来のつくり方』 p262-264 伊東光晴「日本経済 戦後の夢を明日に」     岩波書店 2013:発行。

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