ストレスとは、生物学的には何らかの刺激によって生体に生じた歪みの状態を意味している。元々は材料力学上の言葉で例えばスプリングを引き伸ばしたり、ゴム球を押し縮めたりした時にその物質の内部に生じた応力の事を言う。
起源
ハンス・セリエ(1907年~1982年)はこの非特異的生体反応を系統的な一連の反応として捕らえストレス学説(ストレス理論)を提唱した。この学説では、このようなストレス状態は主として内分泌系、特に脳下垂体、副腎皮質系が主役を演ずるものとし、ある種の心臓血管系、腎臓、関節等の疾患の原因は、この反応に深い関係を有しているとした。
ストレッサー
ストレスの原因はストレッサーと呼ばれ、その外的刺激の種類から物理的ストレッサー(寒冷、騒音、放射線など)、化学的ストレッサー(酸素、薬物など)、生物的ストレッサー(炎症、感染)、心理的ストレッサー(怒り、不安など)に分類される。ストレッサーが作用した際、生体は刺激の種類に応じた特異的反応と、刺激の種類とは無関係な一連の非特異的生体反応(ストレス反応)を引き起こす。
ストレス反応
ストレス反応とはホメオスタシス(恒常性)によって一定に保たれている生体の諸バランスが崩れた状態(ストレス状態)から回復する際に生じる反応をいう。ストレスには生体的に有益である快ストレスと不利益である不快ストレスの二種類がある。これらのストレスが適度な量だけ存在しなければ本来的に有する適応性が失われてしまうために適切なストレスが必要である。しかし過剰なストレスによってバランスが失われてしまう場合があるため、様々なストレス反応が生じる。しかしストレスがある一定の限界を超えてしまうと、そのせいで身体や心に摩耗が生じる。この摩耗の事をアロスタティック負荷と呼ぶ。
緊急反応
キャノンは1929年に外敵に襲われるような緊急事態において生理的・心理的な反応を観察した。その研究から交感神経系によって副賢髄質から分泌されるアドレナリンの効果と一致して、心拍数増加、心拍出量増加、筋肉血管拡張、呼吸数増加、気管支拡張、筋収縮力増大、血糖値増加などの緊急事態に有効なストレス反応が生じることが分かった。具体的に緊急事態において採られるべき闘争、逃走のどちらにも有効な反応である。
一般適応症候群
一般適応症候群(全身的適応症候群、汎適応症候群)とは下垂体から副賢皮質ホルモン系への反応が生じるというストレス反応についての代表的な考え方である。まずストレッサーの刺激が視床下部、下垂体に伝達し前葉副賢皮質刺激ホルモンが分泌され、活性化した身体にエネルギーが供給されるように働き、警告反応期(ショック相、反ショック相)、抵抗期、症憊期と段階的に発展する。
ストレス障害
急性ストレス障害(Acute Stress Disorder, ASD)とはトラウマの体験後四週間以内に見られる急性な高血圧、消化器系の炎症、乖離症状、フラッシュバック、感情鈍磨などの特異的な症状が見られるものを言う。心的外傷後ストレス障害(PTSD)とはトラウマ体験後に生じるフラッシュバック、過覚醒症状、感情鈍磨などの特定的な症状が継続するものである。(心的外傷後ストレス障害を参照)
ストレス対処
ストレス対処(ストレスコーピング)とはストレッサーを処理するために意識的に行われる行動及び思考を言う。これは個人と環境の相互作用的な過程であるとする対処戦略という考え方があり、ストレッサーの解決を目指して情報収集や再検討を通じて解決を図る問題焦点型対処と、ストレッサーが起因する情動反応に注目した攻撃行動や問題を忘却するような情動焦点型対処に大別できる。またパーソナリティ特性であるとする考え方もある。
(以上、ストレスをウィキペディアから引用)
前エントリーより、胃穿孔手術をしたストレスの原因(ストレッサー)について。まずは物理的ストレッサーである気温の寒冷。先月、フィリピンはちょうど雨季に入り、雨が降ったり止んだりして天候不順だった。当然、我が脆弱な胃はキリキリと痛み出した。しかしながら、雨が降っただけでは胃に穴は開くことはない、常備薬のパンシロン01を飲めばそれで対処できる。やはり、心理的ストレッサーが甚大な要因だ。そう、繊細なガラスの心と胃壁を持つビビリー氏だった。
別に隠していたワケじゃないが、昨年11月に今回胃穿孔手術をしたストレッサーに関連すると思われるであろう、ある出来事があった。それは、当時借りていたアパート近くを朝方散歩していた途中、教会側の道路に若い母親と4~5歳位の裸の子供に遭遇した。フィリピンで道を歩けば物乞いをする子供に集られるが、ホームレスのこの母子は物乞いをするワケではなくただ道路に蹲っていた。
その光景がショックで、そのとき持っていたお金(日本円で5千円位)を母親に手渡し(そのときの母親の虚ろな表情は今でも忘れられない)、急いでアパートに戻り、あるだけの現地通貨を持ち、ドラッグ・ストアでパンとミルクを買って母子のところへ行った。しかし、母子は既にその場所にはいなかった。
この日からジクジクと胃痛が続いて帰国しても治らなかった。翌12月のフィリピン渡航の際、クリスマス・シーズンなのでホームレス母子がいた近くの教会へお金(日本円で10万円位)を寄付したら果たして胃痛がようやく治まった。
今回、胃穿孔手術をした心理的ストレッサーは裸の子供よりも過酷な出来事だった。天候不順と車で14時間かけた長旅で疲労困憊した帰路の途中、山道で物乞いをする子供の集団に出会った。心優しき友達のドライバーは、普段は無視するのであるが、このときは子供の集団のなかに裸のハビット(小人)がいたため、傍らへ車を止め小銭を与えた。座席の隣にいた恋人のフィリピーナはボロボロ泣き出した。この出来事が大変なショックで、翌日胃に穴が開くほど心苦しい体験だった。
結局、胃穿孔手術で胃痛は治まったが、ストレス対処(ストレスコーピング)はまだだ。何かしなければ、と考えているが、思いつかない、どうしたらいいものか。