フィリピン人妻は日本のテレビ番組をほとんど見ない。しかし、唯一よく見るのが夕方5時から始まる水戸肛門じゃないや水戸黄門シリーズの再放送。そういえば前のフィリピーナの彼女もファンだった。然るに来日したフィリピーナによる肛門様じゃないや黄門様への支持はかなりのモノだと推測される。羨ましいぞ、肛門様。そして、妻はナンと言ってもジャパニーズ・クラシカル・ファッションの特にヘアースタイルに魅力を感じてやまないようだ。それが「ちょんまげ」だと教えるや、水戸のご老公が陰毛じゃないや印籠を翳して悪代官を成敗する毎度のクライマックスシーンでは「チョンマゲ、チョンマゲ」と言って応援する無邪気な妻だった。これが一日のなかで最も平和な時なのだ。さて、フィリピーナと良好な夫婦関係を維持するには1、フィリピン人の目線で物事を考える。2、夜の営みを怠らない。この2つが大切だと言われている。1については「忍耐」ってことでいつも気をつけているが、問題は2だ。なんたって50近いオッサンでしかも猛暑が続く日本の夏。愛息が元気がないのは自然の摂理である。そこで、妻とのコミュニケーションを円滑に図るため、2の欠陥を埋めるべくあるアイデアが閃いた。過日、妻がメイクアップしているとき背後から忍び寄り、しなびたティムポを愛する妻の頭上に乗せて「チョンマゲ、チョンマゲ」と囁いたのだ。ナムジュンパイクがジョンケージのネクタイをハサミで切ったパフォーマンスに匹敵する突然のちょんまげアートだ。妻が奇声を発して笑ったのは言うまでもない。素晴らしい成果だった。そしてズに乗り、数日してまたまた同じちょんまげアートを試みた。しかし、このときは妻から「イラナイ」と冷たく言われ、相手にされなかった。やはりパフォーマンスというアートは一回性の芸術であることを再認識しながら、落胆して「ソーリー」と呟き、しなびたティムポをパンツに仕舞う様は日本男児として情けないものだった。